Wednesday, March 25, 2009

米国、アフガンで民兵団を組織?"U.S. and Afghans Plan to Recruit Local Militias " By DEXTER FILKINS


★昨年Xmasに、イラク戦争報道のベテラン、フィルキンズがアフガニスタン情勢をレポートした…

 米国およびアフガン政府が、地方民兵組織を計画 By デクスター・フィルキンズ

(カブール 12/24)イラクでの実験の成功をもとに、いまや、米軍の司令官らとアフガンのリーダー達は地方的な民兵組織(ローカル・ミリシア)を武装化しようとしている─ふたたびび力を取り戻しつつあるタリバンに対抗するためのこの計画は、希望も喚起するが、新たな武装兵力の出現がこの国をより深い流血の淵に押し出すのではという恐怖感も生んでいる。

こうした民兵組織は、山々が連なるこの国のはるか隅々にまで分散する、米軍とアフガニスタンの治安部隊を助けるべく配置されるだろう。このような地方の自衛のための武装組織は、来年の初頭にもワルダック県で組織されようとしている- ワルダック県は首都カブールのすぐ外郭にあり、最近、タリバンが多くの政府機関を蹂躙した地域だ─ もしも、この実験に成功のきざしがあるなら、同様な民兵組織が国中で早急に組織されるだろう、とアフガン政府幹部はいっている。

アフガンの民兵組織は、イラクにおいて同様の組織が果たしてきた仕事を引き継ぐだろう─イラクの元反政府勢力のメンバーであった10万人のスンニ派武装勢力が、政府の給与支払いのもとに、おこなってきたような仕事を ─そうした組織は「覚醒部隊(The Awakening Council)」として知られ、米国関係者は彼らがイラクでの暴力の画期的な減少をもたらす触媒となったことを認めている。

そうした計画は、多くのアフガニスタン人に大きな不安も与える──パシュトゥーン族が支配する民兵組織には、やがて政府による統率もきかなくなり、彼らは地方住民を脅かし、政府に反抗するのではないかと。アフガン政府は米国のサポートのもとに2001年以来数回にわたり、地方領主の民兵に対する野心的な試みとして、武装の解除と、武器の押収をおこなってきた。昨秋には、地方的な民兵組織を政府が組織するという提案はアフガニスタン議会で否決された。

「こうしたことで、パシュトゥン人と非パシュトゥン人のあいだの闘争が起こるだろう」、と、アフガニスタン議会のタジク族出身の議員、サリ・モハマド・レジスタニ(Salih Mohammad Registani)はいう。レジスタニは、アルバーキ(Arbaki)という民兵団の怖ろしい幻影について語る─それはパシュトゥーン人を主体に20世紀初頭に組織されたが、他のアフガン人との連携を断って勝手放題をはじめた組織だった。「Civil war (内戦)はすぐに勃発するだろう」と彼はいう。

しかし今月カルザイ首相によって承認された民兵組織の計画は、アフガニスタンで悪化をたどる治安を回復するため、いずれにせよ推進されることだろう。
軽度な訓練のみを受けた民兵軍団をどの程度配備するかは─、9・11のテロ攻撃以来、権力の座から追われつつも近年また顕著に勢力を回復しているタリバンとの戦いをとりまく緊急の感覚を反映している。

米軍の司令官たちは、アフガニスタンの(正規の)軍とその警察組織を使いたがるが、それは単純にいって不可能だ。 「我々には充分な警察の組織がない。」とアフガンの米軍司令官代理Michael S. Tucker大佐はいう。「我々には、警察勢力を準備しているような時間などない。」

<The International Council on Security and Development>のある調査によれば、現在、アフガニスタンの国土の72%で(1年前には54%だったのに対し)、タリバンが恒久的な勢力拠点を設置しているという。

最近タリバンは、カブールの西側ワルダック県を含む首都周辺各県にもあらたに勢力を伸ばした。アフガン初の地方民兵組織の設立だけでなく、米軍司令官たちはこの県に数百名の米軍部隊を配備する計画で、その先遣部隊はすでに到着している。ワルダック県はナショナル・ハイウェイで二分されており、そこではタリバンの反政府勢力が、物資輸送コンボイへの数知れぬ待ち伏せ攻撃をおこなってきた。
民兵組織の計画は米軍のデビッド・ペトラエウス大佐の到着とも時を同じくする─ 彼はイラクで反政府勢力の攻撃削減を監督してきたが、今、アフガニスタンとその周辺地域における米軍司令官に就任したのだ。
米軍は来年、アフガニスタンにすでに駐留する米・NATO軍の7万の兵力に加えてさらに2万から3万の追加兵力を増派する予定だ。オバマ次期大統領は米国のこの地での軍事的努力を倍増すると宣言している。

こうした民兵組織の設立とは、向こう12ヶ月間に、米軍司令官たちがどうやってタリバンからイニシアティブを奪取するかの少なくとも部分的な回答だ。米国の次期政府高官たちは、米国人とアフガニスタン人が協力してタリバン内部の亀裂の利用を試みるという─米軍はフレッシュな新規兵力増派ともあいまって…タリバン内部で未だに彼らの側との和解が可能なグループに対し、タリバンから分離させようと試みる。これはタリバンを圧搾疲弊させることが彼らの主要課題であるということを示唆する。

米国とアフガン政府は、アフガニスタン各県に100名から200名のその地域出身者からなる武装民兵を組織したいという。実際ワルダック県には、8つの行政区がある。
そのような武装民兵各自の信頼性を増すため、米国とアフガン政府は地方のリーダーたち─部族長やイスラム宗教者の力を借りて民兵メンバーの選出をおこなうという。
こうした民兵は、短期間のトレーニングを受けると同時に、攻撃用ライフルや手榴弾ランチャーなどの武器、通信機器などを支給される、とアフガン防衛大臣Abdul Rahim Wardakはいう。

イラクでの米軍の司令官達はほぼ独占的に部族リーダー達の力を借りて、スンニ派武装勢力を自由な手足の如く使ってきた。しかしアフガニスタンでは、30年にわたる内戦が各地方の部族を蹴散らし、その組織を弱体化させてしまった。米国とアフガンのリーダーたちはそれらに代わり、より広範に部族のリーダーたちを寄せ集め、つぎはぎしたカウンシル(連合体)の設立を試みるという。
─彼らはそうした民兵組織をコントロールすることに自信を示し、またそうした民兵組織が数々の義務を果たすことを期待している─例えば米軍とアフガン軍がそれに頼って行動すべく、タリバンの動静を伝える諜報活動もおこなわせるという。
「我々には悪い奴らがいつ街にやってくるかはわからない」とTucker大佐はいう、「しかしローカルな人々は知っている。彼らは何でも知っているのだ。」

ワルダックのある部族リーダーがいうには、タリバンは彼らの地方の住民たちの間ではひどく不人気な状況にあり、地方的な民兵組織はより事態を悪化させるのではないかと人々は懸念している。

あるインタビューで、ヌリ族の部族リーダー、モハメド・ナイム・ハクマルはこのように言う──ワルダック県の約80%を支配下におくタリバンは、県内各地区(district)の中心部以外を全て実質的に支配していた。タリバンは自由に歩きまわり、チェックポイントを設立し、カブールからカンダハルへとハイウェイで抜ける米軍のコンボイを破壊する爆弾を仕掛けていた。

しかし結局のところ──タリバンは、ワルダック県の地元の人々が通常の暮らしをおくることを妨害するため、地元では人気を失ってきた。2ヶ月前にJajatooという村で タリバンが地方の道路を封鎖し、米軍に攻撃を仕掛けようとしたとき、地域住民のグループが反乱を起こした。タリバンはそうした村人たちに銃を向け、5人の村人が殺された。

「タリバンは戦うことを好むが、それは地域の人々との間に問題を生む。」とハクマル氏はいう。「人々は、彼らの生活をつづけたいと思っているのだ。」
ハクマル氏は、政府の支援する民兵組織が成功をおさめる可能性にも疑いを表明する。なぜなら、アフガン及び米国政府の担当者はこれまで、伝統的な地域のリーダーたちの頭をとび越えて、彼らと何も協議しようとしてこなかったからだという。これまで、彼らはその地であまり信頼のない人物ばかりを域共同体のリーダーに選んできた。
さらに、民兵組織が政府から適切なサポートやガイダンスを得ることができず、そして最終的にはタリバンのメンバーとの間での部族的な反目が噴出していくのでは、と懸念するという。
「我々は既にアフガニスタン軍と、警察をもっている─彼らがタリバンのことに対処すべきだ。」とハクマル氏はいう。

ワルダック県のあるタリバン指揮官は(彼は攻撃される恐れがあるとして匿名で語った)、もしもタリバンがすでにその地で根を張っているなら、政府の雇用する民兵組織がその地域に根をはるのは難しいだろう、という。

「我々は、村々の中の地区に住んでいる──我々は、山中に住んでいるのではないのだ、」とあるタリバンの長はいう。「そして、人々は我々とともにあるのだ。」

http://www.nytimes.com/2008/12/24/world/asia/24afghan.html?hp