Sunday, February 12, 2012

怖れと嫌悪がうずまくアメリカ湾 Fear and loathing in the American Gulf - By Pepe Escobar


怖れと嫌悪がうずまくアメリカ湾 - By ペペ・エスコバル (2/3, Asia Times)

 ペルシャ湾?Khaleej-e-Farsf? 忘れたほうがいい─もうそれを、アメリカ湾と呼ぶべきときだ─戦争のハゲワシや、ジャッカルやハイエナたち、イスラエル人やアングロ・アメリカ人が喜ぶだろうから。サウード家だって、さほど喜ばないわけもないだろう。

 最近、米国のバラク・オバマ大統領が宣言した中東から東アジアへのペンタゴンの「転回」戦略 "Pivoting"strategyも、もはやこれまでだ─中国との対立は、南西アジアから始まっている…アメリカ湾において。それは、イランのシスタンーバルチスタン県のJundallahの、筋金入りのスンニ派主義の人殺しらを応援するワシントンの政権や、CIA工作員を装うイスラエルのMossadエージェントたち、イランの核科学者の連続的暗殺やコンピューター・ウィルス攻撃、テヘランがアル・カイダを援助しているとか援助されている、といったばかげた告発なども越えて、そのはるかに上を行っている。 (*最近、イランの核施設の遠心分離機を、"イスラエルが"サイバー攻撃で運転不能にしたという)

MOPで消し去れ MOP it all up

 これらの証拠を再度、確認すべきときだ。約1ヶ月にわたって3隻を下らない米国の空母とその攻撃グループがアメリカ湾とオマーン湾、アラビア海でバチャバチャと跳ねまわることだろう─米戦艦エイブラハム・リンカーン、カール・ヴィンソン、エンタープライズ、それに古き良きフランスの原子力戦艦空母シャルル・ド・ゴールが。そしていまひとつの、太平洋拠点の米戦艦空母も速やかに派遣されることだろう。

 この海上の米空母グループによるhajj(巡礼)のほかに、築40年の古き米国戦艦ポンセも、アメリカ湾に派遣されるため新たな水陸両用特殊作戦用のハブ装置を設置されつつある。ペンタゴンのCENTCOM(米軍の中東・北アフリカ・中央アジア方面の中央司令部)は、理論的にはイランの地下核施設の破壊が可能な…1万4千KgのMOP(Massive Ordinance Penetrator)と呼ばれるオーウェルのSF風の怪物的バンカー・バスター爆弾を急きょ、アプグレードしている。

 ある超党派の政策センターによる合衆国防衛プロジェクトは─それはワシントンで政治家たちや軍産複合体系の人間を混ぜあわせている無数の回転ドアの一つなのだが─イスラエルにさらに200個のMOP爆弾と、3隻のKC-135 空母給油タンカーを供与したいと考えている─イランに対する「軍事攻撃への信用性を高めるために」。

 DEBKA-Netといえば、イスラエルのプロパガンダ/偽情報のデジタル・フロントだ─故に、それは基本的に信憑性がない。しかし、その最新の大言壮語は精査するに値するものだ。DEBKAはペンタゴンが戦略的な2つの島に関して猛烈な勢いのモードを呈しているという─パラダイスのようなSocotra島(Yemenの南東380キロにあり、そこではペンタゴンが2010年以来巨大な基地を建設中だ)、そしてMasirahのCampJustice島(Hormuz海峡の70キロ南のオマーン領内にある)に関して。

 Socotra島は、かくしてアメリカ湾の米国の基地帝国の結び目(node)に加わる─UAEにおけるJebel Aliと-Dahfra や、 Qatarのal-Udeid 、KuwaitのArifjan のように。わずか数週間前に、1万5千名の追加米軍部隊がKuwaitに派兵されたことは記憶しておいたほうがいい。ペンタゴンはSocotra島とMasirah島での建設については途方もないほどに無言を保つことが予想され、そしてYemenとOmanの官僚たちも話をしたがらない。

 DEBKAは、2週間で3千キロ離れたDiego Garcia島から、既にアメリカ湾に駐留する5万名の米兵に加えて約5万名の米軍が空路で両島に集結するだろうという。この空・海軍に加えて、英国・フランスからの特殊部隊がサウジ・アラビアとUAEにコンスタントに注入されている。イランに陸路侵攻するには充分ではない、しかし「"no options off the table"他にまだ提案されていないオプションはない(その言葉のcopyrightは オバマにある…)」というシナリオの主なロジスティック・サポートをするには充分すぎる。

陣営を整え、戦さのために祈れ Build up, and pray for war

 DEBKAはこうした展開をすべて勝手に解釈して、予想しまくっている─それぞれ、確証のない事柄だが─そして、オバマが「イランの核開発施設への攻撃を2012年中に決定する」というが、それは完全にナンセンスだ。それはイスラエルのネタニヤフの政府の(ヒステリックな)ウィッシュフル・シンキングを反映するのかも知れないが、オバマ政権の戦略とは何の関係もない(…オバマの戦略は、イランを「放置しておいて…死ぬのを待つ」型の外交戦略だ─経済制裁・石油禁輸+(プラス)ペンタゴンがアメリカ湾に陣容をととのえて、それによりイランを核開発の事件書類における降伏を引き出す方策として)。

 ウィッシュフル・シンキング(希望的観測)とは、New York Timesの本日流行りの武器でもある─それはいまや、仲介人(ミドルマン)としての米国の立場を排除すべく、イスラエルのライターたちによるイランについての事件書類の作成を下請け作業しているかのようだ。

 この、武器を投入するすべての乱痴気パーティーのなかで唯一の良い点は テヘランとワシントンが未だに─何らかの意味で、対話を続けていることだ…所謂ブラック・チャネルを通じて…つまりバグダッド(の大使たち)や、トルコを通じて(Recep Tayyip Erdogan首相を仲介役に)、またウィーン(IAEAの本部があり、そこに外交官たちがいる)を通じて。ここでは7月1日までは、5ヶ月間の良い意志のための窓が開いている…EUと米国の対イランの石油制裁が発動されるまで。

 そしてそうなったら、そこには「Austere Challenge 12」(*) ─大がかりな米国・イスラエル合同の戦争ゲームが、そして何千もの米兵たちと、いくつもの米国・イスラエルのミサイル防衛システムのテストが再浮上することになる。

 「Austere Challange 12」はいまや、米国大統領中間選挙の直前1ヶ月以内の10月に再スケジュールされた─そのときにはMitt Romney…ネオ・コン・ギャングと気のふれたエヴァンジェリカル(キリスト教保守の福音主義者)がノンストップでイラン空爆をCATV放映するかもしれない。そのときまでは、Percy Bysshe Shelleyの「The Mask of Anarchy」のなかの言葉…「ライオンたちのごとくまどろみから目覚めて、立ち上がる…打ち負かされがたい数をもって("rise like lions, after slumber, in unvanquishable number"」(恐怖と嫌悪を、アメリカ湾から追い払すために)…を引用するかどうかは国際社会の世論に委ねられる。
"http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/NB03Ak04.html
 
(*)"Austere Challene 12": このところ「Austare Challenge 12」の名のもとに米軍とイスラエルが過去最大規模の合同軍事演習を行っている。Hormuz海峡近辺での昨今の米軍部隊の増派や周辺諸国の軍備の強化に加えて、それは演習ではなく実戦に備えた「何か」である…とイスラエルはみている。アメリカは、同時にイスラエルのTHAADミサイル防衛システムを強化、サウジには300億ドル分のF-15戦闘機を配備、UAEに最新の「バンカー・バスター」爆弾の供与を約束…米軍は新たにイスラエルに基地をも設置し、イスラエルはIDF(国防軍)がドイツにある基地から作戦に対応するという..
http://my.firedoglake.com/ctuttle/2012/01/05/austere-challenge-2012/


 ペンタゴンが、対イランのさらなる強力な爆弾を追求 Pentagon Seeks Mightier Bomb vs. Iran By ADAM ENTOUS And JULIAN E. BARNES (1/28, Wall Street Journal)

  (抜粋)
 ペンタゴンの戦争プランナーたちは、史上最大の爆弾が未だにイランの要塞堅固な地下施設を破壊するには能力が不足しており、さらにそれを強化するための努力をすることを発表した。
 3万パウンドの"bunker-buster"爆弾、MOP(Massive Ordnance Penetrator)は、イランと北朝鮮のさらに堅固に要塞化された核開発プラグラムを破るべく設計された。しかし最初のテストは、現在の爆弾がイランの施設を破壊できないことを示した。それは、その施設の深度のためでもあり、あるいはテヘランが、さらに堅固な要塞設備を追加したからでもある。

 …このためペンタゴンは今月、下院議会に密かに爆弾をより深く岩盤に喰いこませための開発予算の要求を行った。MOPのパワーアップは対イラン攻撃における非常事態プランのためだという。大統領の新防衛予算には他にも興味深いニューアイテムがある:無人偵察機のための浮遊基地は、コマンド部隊の輸送機発射台としても使える。

 国防省は3億3千万ドルをMOP爆弾20個の開発に費やし、その爆弾はBoeing社によって製造された。ペンタゴンはさらに8千200万ドルを投じて同爆弾のさらなる強化をはかるという …ペンタゴンは特にイランのシーア派イスラムの聖都Qom近郊のFordowのサイトのような山岳地帯の地下施設破壊能力についての懸念を抱いている。もしもそれを破壊したいならば、山そのものを吹き飛ばさねばならないという。ペンタゴン担当者は、MOPはNatanzのウラン精製施設の破壊に対してはより効果的だと推測しているが、それもあくまで推測であるという。

 パネッタ国防長官と前国防長官のロバート・ゲイツは、軍事攻撃は最大でもイランの核開発を数週間遅らせるだけだろう、という。攻撃賛成論者たちは、そうした遅滞を生めば彼らのプログラムを阻む他の手段を講じる時間を稼ぐのに決定的な効果があるはずだという …空軍関係者によれば、全長20.5フィートのMOPは5千3百パウンドの爆破薬を充填でき、爆発前に地下200フィートまで到達できるという。Fordowのウラン精製施設には少なくとも200フィートの高さがある…(後略)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203363504577187420287098692.html

イラン側の武装についての分析
Iran's Deterrence Strategy in the Strait of Hormuz
http://www.stratfor.com/analysis/irans-deterrence-strategy-strait-hormuz

Iran nuclear facilities map




Natanz uranium enrichment plant (from BBC)