Sunday, December 13, 2009

ギラニ首相が、オラクザイへの攻撃開始を示唆/Gilani Threatens Orakzai Campaign


オバマ大統領の新たなアフガン戦略、
さらなる兵力増派の発表のなされる直前
パキスタン政府が極度に動揺していたという、その事情とは?

Pakistan eyes Taliban front after S. Waziristan By Nahal Toosi (12/12、AP)

 パキスタン軍は近隣・南ワジリスタンでのタリバン掃討作戦を逃れた反乱勢力のリーダーたちが逃亡している、と思われるアフガン国境付近の地域で、新たな軍事攻撃を行うかもしれない、と土曜日に同国の首相は語った。

 ギラニ首相は次なる前線はオラクザイだという…南ワジリスタンの北の、無法な部族エリアのその地域で、政府はすでに幾度も空爆作戦を実施しており、国連はすでに4万人の住民が避難したという。

 「南ワジリスタンでの作戦は終わった。今はオラクザイについて討議している」とギラニ首相はラホールで記者たちに対して語った。
http://news.yahoo.com/s/ap/20091212/ap_on_re_as/as_pakistan_12

ギラニ首相が、オラクザイへの軍事作戦を示唆 By Juan Cole (12/13, Informed Comment)

  パキスタンのYousuf Raza Gilani 首相は、パキスタン軍の南ワジリスタンでの軍事作戦の終結を宣言したが、しかし、その継続の可能性も未だに残そうとしているようだ。 
 
 その曖昧さの理由は、南ワジリスタンが広大な地域で、パキスタンのタリバン運動の多くの武装兵たちがパキスタン軍が侵攻する以前に地域住民に紛れ込んで隠れてしまったかも知れないからに違いない。

 …つまり、南ワジリスタンは最近の短い軍事作戦で決定的に平定されてはいないようだ。逃亡した反乱勢力は、いまや国境のアフガニスタン側のサイドにいると目され、米国とNATOの頭痛の種となっている。もちろんギラニ首相は、オバマの兵力増派計画が、何千人もの怒れるPashtun族を、国境を超えてパキスタン側に送り返すかもしれないということに、茫然たる戸惑いを感じている。

 ギラニ首相はさらに、パキスタンのタリバンに対する次なる大きな軍事作戦は、Orakzai Tribal Agency(部族エリアのオラクザイ地区*)を焦点とすると表明している。それはカイバル峠へのルートを筋違いに横切り、パキスタンのタリバンがペシャワルを攻撃したり、NATOのコンボイや、米軍・NATO軍が物資を蓄えるペシャワル地域の倉庫を攻撃する際に拠点とするのに好都合な地域だ。Orakzaiはタリバンのベイトラ・メスードの後継者ハキムラ・メスードによって支配され、彼らの典型的な、厳格な宗教的支配のもとにある。しかし、パキスタン軍がこの2つの地域に介入することは、イスラマバードにとって脅威をよりいっそう凝縮する。

 多くのオブザーバーたちは、Haqqani族ネットワークとアル・カイダの同盟者たちの一大拠点・北ワジリスタンへの攻撃が(…これらグループによる奥地からのアフガンへの攻撃がなされる限り)オバマ大統領の戦争努力の一層の必然的成り行きだ、と感じている。オラクザイが次の攻撃目標となるかも知れないことは、イスラマバードで感じられるパキスタン本土への攻撃の脅威が未だに続いている(カブールでカルザイ政権にとって最も危険なグループに直面するよりも、重大な事項として)ことを示している。

 ギラニ首相は反政府的なBaluch族との和平交渉について語ったが、その反乱勢力とはイスラム過激派としてではなく、準ナショナリズムと部族主義を特徴としている。Baluch族の活動家たちは、国家政府が(徴税して)首都イスラマバードで公共サービスとして還元している分よりも、州政府が天然ガスや他のコモディティ(常用品)として、より多くのとり分を奪取しているのだと指摘する。…再びいいたいが、ギラニ首相はパキスタンの国内問題に取り組んでいるのだ──

 米政府担当者たちは、Baluchisutanの州都のQuettaは依然、オマール師と古いタリバン勢力の本拠地であり続けていると考え、もちろんそれがアフガニスタン国内に攻撃を仕掛けるQuetta Shura(パキスタンのタリバン部族会議)の中心地だとみなしている。

 …ギラニ首相が、オマール師とQuetta Shuraとの交渉よりも、イスラマバードでのBugti 族の分離主義者(連邦脱退論者)との紛争解決の件に捉われているのは、アフガンでの戦争においてはオバマ政権が未だに、パキスタン政府の完全な協力を得るためにハードルに直面していることのあらわれなのだ…(地図はBBC)
http://www.juancole.com/2009/12/pakistani-prime-minister-yousuf-raza.html
  *註:オラクザイ地区はパキスタン政府公認の部族エリアの一つ 

★英政府、ビンラディン容疑者追跡などで資金援助 73億円 (12/3、CNN)

英国のブラウン首相は12月3日、訪英したパキスタンのギラニ首相と会談、同国のテロ対策と対アフガン国境の山岳部に潜伏しているとされる国際テロ組織アルカイダの最高指導者、オサマ・ビンラディン容疑者の追跡作業を拡大・強化させるため総額5000万ポンド(約73億円)の資金援助を表明した。

 ギラニ首相は共同記者会見で、ビンラディン容疑者の潜伏先などを質問され、同国は米国と共同し優れた諜報(ちょうほう)活動を推進していると指摘、「パキスタン内にいるとは思わない」と語った…
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200912030027.html

★Yousaf Raza Gilani, Pakistan PM, Says Bin Laden Not In Pakistan パキスタン首相、「ビンラディンはパキスタンにいない」 (12/3、AP)

…パキスタンのギラニ首相は木曜日(3日)、ロンドンで会見したG.ブラウン首相からのリクエストに答えて、自国のテロ勢力との戦いの努力を擁護…ビンラディンはパキスタンにいるとは思えず、パキスタン軍はテロ勢力に対する戦いに成果をあげていると主張した。首相は同時に、米国のオバマ大統領の新Af-Pak戦略として発表された米軍主導の兵力増派案への賛同を拒否する、との慎重な回答へのシグナルを発した。ギラニ首相は、彼の政府はアフガンでの米軍のプレゼンスの拡大計画と、パキスタンへの援助拡大に関するより一層の情報が必要としている、とした。

 ギラニ首相と同国は火曜日にオバマ大統領が発表したポリシーを…CIAが秘密人員をパキスタン(その中央政府はイスラム過激派からの強い脅威に晒されている)に派遣するとの示唆を含め…検討しているという。「オバマ大統領の新戦略に関し我々は検討中だが、より一層の明確な情報が必要だ。それが得られれば我々が何をそこで実行できるかも判明するだろう」と彼はいう。…オバマの戦略を強く支持し、自身も500人の兵力をアフガンに増派中のブラウン首相とは違い、パキスタンは今回の首相の用心深く言葉を選んだコメントの発表までは沈黙していた。

 2001年以来、米国はパキスタン軍のアフガン国境でのイスラム武装勢力との戦闘に数十億ドルの援助を行ってきた。また昨年以降、米国は国境付近の目標への隠密なミサイル空爆作戦を開始した。そこには良し悪しの結果が生じ、軍はパキスタンのタリバンと対戦しているが、一方で国境地域の部族エリアを根拠とするアフガンのタリバン指導者たちの追跡に失敗している。同時に国内では、これらの軍事作戦に触発された反西欧の気運が爆発している。

 西欧の政府関係者やアナリストたちは、パキスタンが国境の両側で決戦をしていると信じている…パキスタン側の武装勢力粉砕への米国の資金援助を受け、一方でアフガンのタリバンについては、もしも米国がアフガンから撤退すればイスラム過激派勢力が支配権をとり戻すと予期しつつ、今は彼らを見のがしている。

 英国ブラッドフォード大学のパキスタンの治安専門家Shaun Gregoryは、パキスタンはオバマ大統領が発した2011年7月以降の米軍撤退の誓いを銘記するだろうという。「パキスタン人たちはワシントンからのシグナルを賢く読みとるだろう。アフガニスタンのタリバン勢力を広汎に支持するかのような、より長期的な軍の戦略は清算されつつあるようにみえる。そうした勢力は今元気旺盛になっている」

 ギラニ首相は米国のアフガン司令官Gen.Stanley McChrystalと、Adm. Mike Mullenがパキスタンを訪れる際に、米国の戦略をより詳しく知りたいという。首相は米軍の兵力増派には煮えきらぬ態度を示し…それが単にアフガン側の武装兵力を、国境の山岳を越えてパキスタン側に押し込むのではと怖れていると述べる──また米国と英国はパキスタンに圧力をかけ、国境のパキスタン側の武装勢力根絶を求めている。Hillary Clinton国務長官を含めた米軍高官たちはビンラディンが部族エリアにいると信じ、パキスタンがビンラディンを見つけられないことを酷評している。ギラニ首相は、パキスタンはテロリスト制圧にとても成功していると強調、主なタリバンのテロリストはアフガン側にいる、と主張する。
http://www.huffingtonpost.com/2009/12/03/yousaf-raza-gilani-pakist_n_378887.html?show_comment_id=35630771
(*写真下はオラクザイ地区で撮られたHakimullah MesuhdのPhoto)