Thursday, August 3, 2017

サウド家に生じた白色クーデター?A coup in the House of Saud? By Pepe Escobar

サウド家でクーデターが起きた?
秘密は暴かれた─モハメッド・ビン・サルマンの昇格と、CIAのお気に入りだったナイーフ皇子の降格。それは、事実上の白色クーデターだった  By ぺぺ・エスコバル (2017/7/20, Asia Times)

アラブ世界で公然の秘密だったことは、もはや…米国においてさえ、秘密でも何でもない─モハメッド・ビン・サルマン皇太子 "MBS"の王位継承者昇格に伴い、先月サウド家に起きた深い<陥没>というものは、実のところ白色クーデター(*)だったのだ。(*White coup:王の命令による革命、クーデター)

一か月近く前に  [私は別のメディアeにも書いたが]、サウド家に近いある中東のトップ情報筋は私に、こう語った─「CIAは前皇太子、モハメッド・ビン・ナイーフ(Mohammad bin Nayef)の降格をひどく不快に思っている。モハメッド・ビン・サルマン(Mohammad bin Salman)はテロリズムを資金援助している。2014年4月に、UAEとサウジ・アラビアのすべての首長一族と王族が、米国にテロリズム喚起の責任を問われて排斥される寸前となったが─ナイーフ皇太子がサウジ・アラビアの政権を引き継いでテロを防止する…という約束のもとに妥協が講じられたのだ」。

その情報筋はさらに、私に─中東諸国の特定の地政学的グループの間で、その時期に広がっていた、という説をしつこく説いた─それによれば、カタールの若き首長Sheikh Tamim al-Thaniに対して、アブ・ダビ(*UAEの首都)の皇太子Mohammed bin Zayedがもくろんだ別のクーデターを、(UAEに居たブラックウォーターとアカデミ傭兵部隊[*]の協力のもとで)米国諜報機関が「間接的に」阻止したのだ、という。Zayedとは偶然にもMBSのメンター(導師)だったのだ。*共に総帥Eric Princeが率いる傭兵会社)

しかし、ドーハでクーデターが起きる代わりに、実際に起きたのはリヤドでのクーデターだった。その情報筋によれば、「CIAがカタールでのクーデターを阻止したが、サウジ・アラビア人たちは、CIAの選んだ人物で次期国王にもなる予定だった、モハメッド・ビン・ナイーフの降格でそれに応じた。サウジ人たちは恐れている。CIA(の手先であるEric Prince)がサウジにおいても傭兵部隊を王には向かわせるのが可能にもみえるなかで、王政はトラブルの最中にある。このことは、MBSによる防御的反応だったのだ」という。(*註)


今や、およそ1か月が経過して、NYタイムスの一面には、白色クーデターとリヤドでの体制転換の確認情報が溢れている─主に、お馴染みの「(米国の)現政権および前政権幹部の情報によれば」という、ただし書き付きで。


それは、突き詰めれば米国のディープ・ステートのコード=中央情報局が、信頼するパートナーで対テロ担当の元ツァールでもあったナイーフの追放にいかにひどく不快感を感じているかの再確認なのだ。その一方で、CIAはただ単に、尊大で経験も乏しく自信過剰のMBSのことを信用していない。

戦士にして皇太子のMBSは、イエメンとの戦争の指揮責任を負っている─そこには何千もの市民の殺害のみならず、悲劇的な飢餓と人道上の危機も生じさせた。もしも、それでは不足なら、MBSはカタール制裁というものの設計者だった─それには、UAEとバハレーンとエジプトが追随したが─いまや完全にカタール政府が、サウジとアブ・ダビの政府が実質的にでっち上げた法外な「要求」への譲歩を拒否したなかで、彼への信頼は喪失してしまった。

ナイーフは畢竟、カタールの封じ込めには反対していたのだ。


昨今、サウド家とUAEがすでにカタール政策に関しては撤回の道を辿っていたのは不思議ではない─米国の国務長官レックス・ティラーソンが地上にあって圧力をかけたからというよりも…主に米国諜報部による影芝居の活躍のお陰で─米国のディープ・ステート(諜報部門)はペルシャ湾地域での権益の安全を確保したわけだ─カタールのAl-Udeid基地をはじめとした権益を混乱に陥れないように。

向こう見ずな「ギャンブラー」


MBSはワシントンの政界では、いい古された「サウジ・アラビアは同盟国」というミーム(情報の遺伝子)のもとで、ベルベットの子供用手袋を嵌めさせてもらってはいても…あらゆる現実的な目的からみれば、最大の危険人物なのだ。

それはまさに、有名なBND(ドイツ諜報部)の2015年のメモがすでに述べていたことだ─その若き「ギャンブラー」は多くのトラブルを起こそうとしている。EUの金融業界は完全に震撼のただ中だ…彼の地政学的なギャンブルは、何百万の退職者の銀行口座を塵埃のなかに葬り去るかもしれない。


MBS kissing Prince Nayef in June 2017
BNDのメモは、サウド家がシリアでいかに征服軍(Army of Conquest)─それは基本的にジャブハット・アル・ヌスラ戦線(すなわちシリアのアルカイダ)のブラッシュアップ勢力で、Ahrar al-Shamの思想的な姉妹組織だ─の資金を賄っていたのかも詳細に物語っていた。

そのメモは、サウド家がいかにサラフィスト=ジハーディストによるテロを援助・扇動して武装させていたのか、を関連づけていた。そしてそのことはサウジ王国に…彼らが米国大統領のドナルド・トランプを同国に招いてレセプションの余興で)当惑を覚えるような剣のダンスの真ん中で踊るよう誘惑した後に…カタールをテロ国家だ、と自由自在に告発させるに至った。


MBSのカタール封鎖とは、アル・ジャジーラの報道を黙らせることとは関係ないが─それは、サウジのシリアでの敗北と関係がある─そして、カタール政府が(ノースドーム・サウスパーズの巨大ガス田からの液化天然ガスをヨーロッパに売るために)自らイランと同盟を組むベネフィットを優先して─「アサドは去るべきだ」という徹底抗戦主義者を捨てた、という事実とも関係するのだ。


MBSは─その病気の父君と同様に─ハンブルグでのG-20サミット会議をすっぽかした…カタール問題のはらむ当惑の重荷に耐えられずに─それは例えば、カタールの英・仏両国への投資国としての地位を考えれば、すべての責任を彼が負わされるからだ。MBSは「イラン内部での」戦争喚起をもくろんで、スンニ派対シーア派の激しい紛争の火種をターボチャージするとも約束した。

そして、さらにその先の道程にあるのは、MBSがいかにアラムコ石油会社のリスク満載の(民営化のための)最初の公募債の舵取りをするつもりなのか、という問いだ。


それは、アバヤで装った太ったレディ(サウジ王国の比喩)が歌を歌うまで
は終わりそうにない。http://www.atimes.com/article/coup-house-saud/

(*註:Sputnikのコラムで筆者はこうも書いている)

…その情報筋は付け加えた、「MBSは何処でも─イエメンでも、シリアでも、カタールでも、イラクでも失敗している。中国も彼に不満を抱く─彼が新疆地区でトラブルを喚起したからだ。ロシアも石油価格の低迷の影にいた彼に不満を抱いている。誰が彼に同盟するのか?唯一の同盟者は彼の父親だが、サルマン王は認知症で全く力がない」。

情報筋は頑固にこうも言った、「CIAがサウジ王国に反旗を翻す可能性は大きい」─それはトランプ大統領と米国のディープステートの一派の間の戦いが全く新たな段階に達したという事だ。 そうした謎解きには” Jared of Arabia”ファクターもある。カタールのクーデター未遂に関わった何らかのインサイド・プレーヤーがいたかどうかは、真面目に推測しようがないが…もしも、本当にそれが潰されたのなら…ジャレド・クシュナーならば内部情報を知っていたかもしれない─彼のコネクションを考えれば。

「 クシュナーは5番街666番地のビジネスで実質的に破産して、サウジの財政的援助を求めている。彼の義父のトランプでさえ、彼の窮状は救えない。だから彼はサウジの求める事ならばなんでもやるのだ…」