Sunday, February 26, 2017

トランプのアドバイザーたちは、新たな南北戦争を望んでいる?…

トランプのアドバイザーたちは新たな南北戦争を望んでいる?彼らには、それをさせてはならない (By ポール・メイスン) 
Trump’s advisers want a new civil war ? we must not let them have it  By Paul Mason
(2017/2/6, The Guardian)
Dangerous men ... Steve Bannon and Newt Gingrich


スティーブ・バノンとニュート・ギングリッチの二人は、米国の歴史に対する危険なファンタジーを抱いている─彼らの抱く未来への恐ろしい結論

米国では、論議を呼び、分裂を醸し出す大統領が選ばれた。幾つかの州政府は、彼の意志に対し反抗している。人々の間の不満感の高まりが、数箇所の州で低レベルの暴力行動を生じさせている。…そして今や、何が起こるのだろうか…?

我々は以前にも、ここに来たことがある。1861年には、新たに選ばれた大統領、エイブラハム・リンカーンが、ボルチモアを迂回して(就任演説を行うべく)ワシントンDCへと向かう隠密の列車の車内で意気軒昂(わくわく)としていたことだろう。彼が、権力の座につくや否や…まもなく5年に及んだ南北戦争が始まったのだ。(*リンカーンは就任直前、北東部各都市を遊説して回っていたが、暗殺の陰謀の噂されたボルチモアを迂回し、ワシントンに向かった。彼の大統領就任とともにアメリカ南北間に溜まっていた膿が南北戦争という分裂に発展─戦争終結数日後に彼は暗殺された)

アメリカの内戦では敗北を喫したものの、米国のレイシストの南部勢力は、何十年にもわたって狂気じみた「オルタナティブな歴史」を描いた小説を読みながら、自らを癒してきた…その中では、物事が異なる展開を遂げていた。今や、「タイム」誌はホワイトハウスにおけるドナルド・トランプの首席補佐官で、最も親密な側近でもあるスティーブ・バノンが、アメリカの次なる歴史のフェーズが1861年~65年の紛争の時代と同様に、破滅的でトラウマチックなものとなる…とも信じていることを暴露した。

スティーブ・バノンが、ホワイトハウスを支配している─それは、恐るべき事態なのだ。

彼が選ばれたこと…その事に関する吟味はなされず、確定も行われていないが…その力は強大なものなのだ─すべては、経験不足で気もそぞろな、ドナルド・トランプのお陰で起きたことだ。

南北戦争に関する、「もしも…だったならどうなっていたのか?」といったストーリーは1950年代に、ポピュラーな文学作品となって出現した─それは、アパルトヘイトのジム・クロウ法の制度が黒人抵抗勢力からの挑戦を受け始めた時期だった。ワード・ムーア(Ward Moore)の1953年の小説 " Bring the Jubilee”では、南部同盟が南北戦争に勝利するのだが、(同時に)奴隷たちも開放する。それは、小説“South Had Won the Civil War(南部は戦争に勝利した)”においても同じだ…それは、左翼的作家、McKinlay Kantorが1960年に出版したものだ。

こうした小説や…南部同盟の勝利というファンタジーを描いた20世紀の他の小説では…南部は勝利するが、彼らは産業資本主義を解き放つために奴隷制を停止することも強いた。そのサブテキスト(背後の意味)というものを解き明かすのは難しい事ではない─それは、白人のアメリカ人の兄弟同士の戦いは無意味なものだったし、経済的発展というものはいずれにせよ、奴隷制の問題を解決するに違いがなかった、という考え方だ。

しかしながら、80年代以降には新しい米国の右翼が物事を異なる目で見ていた。当時、上院の議長だったニュート・ギングリッチとは今やトランプの親密な支持者だが、ビル・クリントンの弾劾への流れを止めさせ、南北戦争に関する…極度に不吉な代替的な歴史を描いた3つの小説を、共著で著していた。ギングリッチがウィリアム・フォルスチェンとアルバート・ハンサーと共作した3部作の最終章、「Never Call Retreat(退却を決して求めるな)」では北軍は戦争に勝利するのだ」が、それとなく、南軍が和解を取りつけたことが暗示される。シャーマンの北部連邦軍がアトランタを破壊すべく立ち止まった時、南軍の司令官ロバート・E・リーは南軍に降伏するよう説得する…空想的に描かれたこのリーは「わが敵方の軍の忍耐は限界に至りつつある」…と南部同盟政府に告げる。「我々は我々の国を未来の何世代にもわたって傷つける恐ろしいつむじ風を刈りとった」、と。…そして、リンカーンはゲチスバーグでの演説を行い、奴隷の所有者らと彼らの信奉する白人至上主義のイデオロギーとも和解したことが暗示される。

あなたが今日の状況との相似性に考えをめぐらしている間に、2015年12月にバノンが、彼のラジオ・ショーのなかで(彼が運営する)Breitbartのウェブサイトの世界観というものを説明した、この言葉についても考えてみてほしい─「戦争だ、戦争だ、我々はそれに耐えている…米国は戦争している、米国は戦争状態にある。我々は戦争状態なのだ…」。

そして、バノンとギングリッチ─この両人の抱く米国の歴史のダイナミックスに関する思想が、危険極まりないたわ言としか言いようのない─この二人の男が、世界最強のオフィスに影響力を及ぼしているのだ。バノンは文化的戦争を本当の戦争に変えよう、という夢想を抱き、ギングリッチは未破壊の南部のサバイバルを夢想している。彼らと比較したなら、トランプの抱く夢想とは、女性と金(gold)と高層ビルをめぐって回っているだけにみえて、その想像力ははるかに危険性が少ないものだ。

Breitbart のスター(記者・キャスター)Milo Yiannopoulos に反対するUCバークレー校での暴動の握り潰しや、白人至上主義者と反トランプ支持者の間で繰り返される衝突などによって、事態のエスカレーションへの潜在的可能性が明らかになっている。ミシガン州の共和党職員、Dan Adaminiはこうツイートした、「左翼の反対派デモの群衆に対しては"Kent州"方式の解決法がとられるべきだ」─それはつまり、1970年にオハイオ州の州警備隊が行ったように彼らを射殺せよ…ということだ。

反対派の新世代が、ポスト-1968年時代の神話を持ち出すとき、そこには大きな相違があると指摘するのは、意義のある事だ。…つまり、今回我々は、ケント州の4人の学生を殺害して政治的危機を招いたような、既存の秩序を擁護する冷血な保守派に立ち向かっているのではない。今回、我々は、米国の制度機構が爆発することを望んでいる人々に直面している。…それがすなわち、バノンのような輩が信じている、「第4の展開理論(Forth Turning theory)」といわれるもののなかで起こっていることだ。

それを認めるのは恐ろしいことだが、我々はそうすべきだ─アメリカの右翼の広汎な勢力は、新たな南北戦争を望んでいる。彼らは何年もの間、そのための武器を集積してきた、そして彼らのそうした選択を指し示すもの…ハンティング(狩猟)目的というカモフラージュ…が、彼らが何を考えているかの大きな手がかりにもなる。こうした状況で、アメリカの左翼やマイノリティ、あるいは女性にとっての選択肢とは…抵抗することだ…しかし、彼らが欲しがっている物を、彼らに与えてはいけないのだ。

先週、トランプ陣営から起こったもっとも大きな叫び声とは、反モスリムのビザ発給禁止令に対する司法省の停止命令に触発されたものだ。もしも、進歩的勢力が運営する州や都市が彼らの憲法上の権利を駆使して、トランプに逆らい始めたならば、依然として、もっと大きな叫び声が引き起こされることだろう…サン・フランシスコ警察がFBIの対テロ作戦への協力を停止したように。

トランプに対する平和的な不服従行動の大衆的広がりはリアリティなのだ。司法による憲法の擁護と下院での決然たる抵抗とが結合したなら…それはホワイトハウスを、こうした空想家たちのためのPadded cell(衝突を緩和するクッション防護壁付の部屋)にすることができるだろう─南北戦争バージョン2.0の司令部の掩蔽壕(command bunker)ではなく。

https://www.theguardian.com/commentisfree/2017/feb/06/some-of-trumps-advisers-want-a-new-civil-war-we-must-not-let-them-have-it

サタデーナイトライブのパロディではBannon=死神に?
'SNL': Trump and Bannon call world leaders https://www.youtube.com/watch?v=8awCl0KMvwQ



Saturday, February 25, 2017

「ディープ・ステイト」のトランプに対する攻撃を応援するのは、民主主義崩壊への処方箋なのか? Greenwald: Empowering the "Deep State" to Undermine Trump is Prescription for Destroying Democracy 

米国における「ディープ・ステイト」とは
"Deep state" in the United States(Wikipedia)
米国の著名な人物たちは、何十年にもわたって、「ディープ・ステイト(deep state)」、「国家の内部の国家」といったものに対する懸念を表明してきた。彼らはそれが、民主的国家としての米国の政権を支配している政党に関わらず、公共政策に影響力や支配力を行使しているのではないか、と疑念を抱いてきた。 歴史上、「ディープ・ステイト(deep state)」という言葉は、しばしばトルコなどの国の例を引合いに語られる─その国では、影の政府が国の政策の重要な側面に影響力や支配力を行使している、とされている─米国では、トランプ政権が諜報部門からの情報のリークに直面して、官僚機構のコントロールに苦闘している状況から、この言葉が注目を浴びてきた。

フィリップ・ジラルディによれば─権力の中枢とは、軍産複合体と諜報部門、そして、ウォール街がその中心をなしているともいうが、ビル・モイヤーズはそこに金権政治家とオリガルキーの存在を挙げている。
さらに、ピーター・デール・スコット教授は、「巨大石油企業」やメディア産業などもキープレイヤーである、とする…。また、デヴィッド・タルボットは、国家安全局の官僚、特にアレン・デュレスなどの名前を挙げる。
ワシントンの元・政府職員のマイク・ロフグレンによって書かれた関連書籍(*)では、シリコンヴァレー企業や、「政府を構成する重要要素」、「ウォール街」などにも言及しながら、そこでは、「国家」の非・共犯的性格というものについても強調している。  (*Mike Lofgren "The Deep State: The Fall of the Constitution and the Rise of a Shadow Government", 2016.9)

政治家学者のマイケル・J・グレノンは、こうした傾向というものは、国家の政策が選挙によって選ばれた政府の高官ではなく、官僚組織によって形作られている─という状況の結果であると信じている。

トランプ政権における「ディープ・ステイト」
トランプ政権下で、「ディープ・ステイト」という言葉はメディアや幾人かの政治的人物に関して用いられている─特に、トランプの国家安全保障問題担当顧問に任命されたマイケル・フリン氏の辞任を招いた、ワシントン・ポストとニューヨークタイムズに対する諜報機関による情報のリークの後には─こうしたリークや、内部的離反などを通じて政策をコントロールする、諜報部門や行政執行官僚などを指して用いられている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Deep_state_in_the_United_States


グレン・グリーンウォルドが語る:「ディープ・ステイト」のトランプへの攻撃は、
民主主義崩壊への処方箋だ
Greenwald: Empowering the "Deep State" to Undermine Trump is Prescription for Destroying Democracy (Democracy Now! 2017/2/16)


  トランプが大統領補佐官の職に任命したマイケル・フリン中将が、大統領選挙期間中に、私人の立場でありながら、ロシアとの非公式の会話による交渉を行っていたという疑いで解任された。このことは、CIAとFBIがフリンとロシア側になされていた会話を傍受し、その機密情報をニューヨークタイムズとワシントン・ポストにリークしたことによって露わになった。

これに対してトランプは、こうした諜報機関の行為を極めて違法な行為だといって非難し、それを暴露したメディアをも攻撃した…。
我々は、トランプ政権が11月の選挙投票日の前後にロシアとの交渉の会話を交したとされ、拡大しつつあるスキャンダルに目を向けてみたい。

1月初旬に、民主党上院議員のチャック・シューマーは、The Rachel Maddow Showに出演して、諜報部門がドナルド・トランプに対する反撃を行っているのではないかと語った。

(ビデオの抜粋) 
チャック・シューマー上院議員:
たとえば、もしもあなたが諜報機関と対決したならば…彼らは、日曜日以降に6つの手段を用いてあなたに反撃を仕掛けてくる。…だから、彼(トランプ)が鼻っ柱の強い反抗的なビジネスマンであったにせよ、彼がそんなことをするのは…実に間抜けなことであるわけだ。

エイミー・グッドマン:
…これは、1月に上院の少数党院内総務・チャック・シューマーが述べた言葉であり─
…そして我々は、ピュリッツアー賞を受賞したジャーナリストで、The Interceptの共同設立者でもあるグレン・グリーンウォルドと語ってみたい、と思う。彼は、最近のツイッターでこう述べた、「The leakers who exposed Gen Flynn’s lie committed serious and wholly justified- felonies” 
(Gen.Flynnの嘘を露呈させた情報の漏洩者(リーカー)たちは、シリアスな─そして(しかし)完全に正当化される─重罪を犯したのだ)と。

グレン・グリーンウォルド:
フリンの、ロシアの大使及び他のロシア外交官たちとの会話の内容を誰がリークしたとしても、それは、法的には極めてシリアスな犯罪とみなされる─それは、民主党のオバマ政権の最後の日々においても、重要機密をリークしたチェルシー(ブラッドレイ)・マニングやエドワード・スノーデン、(トーマス)・ドレイクなどの人々が重罪として処罰を受けたのとも同様の状況なのだ。 そして、リークされたその機密情報を掲載し、公表したニューヨークタイムズや、ワシントンポスト、NBS などのメディアも同じく重罪とされている。私自身の見方では、8年間のオバマ時代やブッシュ時代もそうだったが、政府内部の人間が、公共の役に立つ情報を暴露したという場合には、たとえそれが違法であっても…それは、正義の行為…英雄的な行為として称賛されるべきものだ、と思う。民主主義の透明性を維持する為のものとして。

今回、トランプの周囲の者たちは、漏洩者をローライフ(下等なやから)といって激しくこきおろしたが、そのことは、民主党政権が行った行為と同じものでもある。NSAの盗聴能力も、このフリンの一件で証明されたわけだが、彼らは(はたして)この盗聴行為を違法に行っていたのだろうか?それとも彼らはルーティンのなかでやっていたのか…あるいはその会話をアクシデントとしてキャッチしたのか?…といったことは我々には分らない。彼らは、フリン中将をターゲットに据えて盗聴してはいなかったが、ロシア側の政府上層部の会話をターゲティングして盗聴していた、とも述べている…その真偽のほどは分らないが…)

エイミー・グッドマン:
「Breitbart News」など(のメディア)を含むトランプ支持者のなかには、米国の諜報機関が、大統領に対する”ディープ・ステイト”によるクーデターを画策した─といって非難する者たちがいる。一方で、トランプに批判的な者のなかには、そうした活動を公然と支持する者たちが存在する。
The Weekly Standard誌の創業者で、著名な共和党アナリストであるビル・クリストルも、こんなツイッターを発した…、「明らかに、(この件では自分は)ノーマルで、民主主義的で、憲法に基づく政治というものを強く志向している。しかし、もしもそれがそういうポイントに達したなら、自分はトランプの国に対抗する”ディープ・ステイト“の方を贔屓したい」、と。

グレン・グリーンウォルド:
「ディープ・ステイト」という言葉には…詳細な、あるいは、科学的な定義などありはしないが、一般的にはワシントンの恒久的な権力の中枢の党派的勢力(faction)たちを指している。彼らは、たとえ選挙で選ばれる大統領が交代しても、変わることなくそこで権力を行使し続ける。彼らは、権力というものを概して闇のなかで秘密に行使しているがために、彼らの存在というものに民主主義制度上の信頼性が問われることは…もしもあったとしても、非常に稀なのだ。

それは、CIAとかNSA、その他の諜報機関のようなものを指しているが…それは、実質的に虚偽の情報を発する…詐欺やプロパガンダのための機関としてもくろまれた長い歴史を有する、というだけでなく、世界で最悪の戦争犯罪や、残虐行為、暗殺部隊などをもくろんだ長い歴史を持つものだ。こうした存在である彼らが、政治的にはそれに従属している筈の政権上層部から分離して力を行使するということや…実際にそうした存在に反抗する形で力を行使していくことには…ビル・クリストルなどの人物だけでなく、多くの民主党員も、彼らの信義の念を吐露して協力を誓いながら…喝采を送っている。
そして、あなたにとってこれは、単なるロシアに関する問題というわけではないのだ…。これは大統領選のキャンペーンの初期の頃にまで、ずっと戻って見直さねばならない事だが、そこには、諜報機関を率いるメンバーたちがいた─例えば、Mike Morellのような人物…彼はオバマ大統領の元でのCIAの現職長官だった。そして、Michael Hayden─彼は、ジョージ・ブッシュ政権下でCIAとNSAの両方に勤めていたが、ヒラリー・クリントンへの支持を非常にはっきりと公言していた。実際、選挙期間中にMike Morell はニューヨークタイムズ紙に、Michael Haydenはワシントン・ポストにヒラリーへの賛辞を投稿して、ドナルド・トランプはロシアに雇われた、とも述べていた。CIAと諜報機関は、最初からクリントンを熱烈に支持しており、トランプに熱烈には反対していた。そしてその理由とは、彼らがヒラリー・クリントンのポリシーを、トランプのそれよりは好んでいたからだった。

過去5年間におけるCIAの主要なポリシーの一つとは、シリアにおいて、アサド政権を政権交代させるために行う代理戦争だった。ヒラリー・クリントンは、単にそれだけでなく、オバマがシリアの戦争への米国の深入りを許さなかったことへの批判的立場に立ち、飛行禁止区域を設定して、ロシアにも対抗するよう主張した。ドナルド・トランプは、これとはまさに正反対の見解だった。彼は、我々はシリアの政権を誰がとろうとも、関知すべきではないともいった─我々はロシア人のやることを許すべきであり、そしてISISやアルカイダ、その他の敵を殲滅するために彼らへの助力さえ行うべきだ、と表明した。それゆえに、トランプのアジェンダとは、CIAが望むこととは完璧に正反対といえた。

クリントンのそれは、まさにCIAの望むものだった、それだから彼らは彼女を支援した。そしてそれゆえに、彼らは選挙期間中を通じて、何か月にもわたりトランプを弱体化させようとした。そして今、彼が選挙に勝利すると、彼らは、彼の弱体化を情報リークによって陰から狙うというよりも、アクティブに、彼の転覆を狙い始めた。彼らは彼に情報を渡さないようにしている、という訴えがある─彼らは、彼がそうした情報を手にするには値しない人物で、信頼にも値しない、と考えているからなのだ。彼らはその政策を実行するために彼ら自身を強化しているというわけだ。
今や私は、トランプが大統領の地位にある事は極度に危険だ、との考えを抱き始めている。あなたはニュースを見て─ニュース放送のなかで、その主要なトピックをみては、その事の理由を幾つも目にしているというわけだ。彼らは、環境を破壊しようとしている。彼らはセーフティ・ネットを解体しようとしている。彼らは億万長者たちを力づけようとしている。彼らはモスリムや、移民や、大勢の人間に対して頑迷なポリシーを実行したがっている。それに抵抗することは重要だ。そして、そこには多くの偉大な抵抗の手段もある…例えば彼らを抑え込むために、法廷に訴えるということだ、市民の抵抗運動などに…そして、最も重要なこととしては…民主党に、大統領選のすべてのレベルで彼らが崩壊してしまったそのあとで、彼らに自己批判を行わせて、いかに米国のもっと効果的な政治勢力となるべきなのかを自らに問いかけさせる、ということがある。それは現在、抵抗勢力がやっていることではない。その代わりに彼らがやっていることというのは、ドナルド・トランプよりもたちの悪い唯一の勢力の一派と、敵対しようとしていることだ…それが、つまりディープ・ステイト、CIAであり…その残虐行為の歴史だ…そして彼ら(ディープ・ステイト)というものは、殆ど、ソフト・クーデターを手掛けているのも同然な存在だ、という…そこでは、彼らは選挙で選ばれた大統領たちがその政策を実行することを阻んでいる、と。

そして自分が思うには、それをやることは非常に危険なことだ。もしもあなたが、一方でCIAとディープ・ステイトの両方が危険な存在だと信じて、その一方でトランプ政権というものも危険な存在だと、(私もそう信じているように)信じていようと、その両者には大きな違いが存在する…つまり、トランプは民主的に選ばれた者であり、(しょせん、)民主主義による統制支配の下にある(ちょうど司法機関もその事実をデモンストレーションして、メディアもそれを示し、市民たちもそれを示しているように)。しかしその一方で、CIAとは、人々によって選ばれた存在ではない。彼らは民主的なコントロールの対象では殆どありえないのだ。

そしてそれゆえに、CIAや諜報機関が自らを強化して、選挙で選ばれた政府の部門の弱体化を企むということは、狂気じみた行為だ。それは民主主義を、それを守るという口実のもとに、一夜にして破壊する処方箋なのだ。そして…それでもそれは…それがネオコンではなくても、民主党内の多くのネオコンの同盟者たちというものが、今や要求し、喝采していることだ。そして、彼らがそんなことをするのを見ていることは、信じがたいほどワープ(飛躍)した、危険なことだ。

エミー・グッドマン:
そして、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、今や諜報機関の担当者らは、トランプ大統領に情報を全て渡すことを避けている、何故ならば、彼らは、彼が何をするのかを心配しているからだと…他の国々の諜報機関もまた、トランプが情報を手にしたら何をするかわからない、とも懸念している─特にまた彼が、ロシアにいかなる情報を共有させるかを懸念している…のは勿論のことなのだ、という。

グレン・グリーンウォルド:
…ああそうだ、そもそも、まず最初に、ここにはメディアの問題がある─もしも、あなたがウォール・ストリート・ジャーナルの記事をみたなら、それは過去6か月間に、他の色々な目立ったロシアに関する記事というものと、ほとんど同じようなものだといえて…それらの多くは、完全に嘘だったことが証明されたわけだ。そうした記事というものは、匿名の政府職員たちが極端に曖昧な事を述べたことに基づいた記事だった。ウォール・ストリート・ジャーナルは、このようにさえ述べているのだ─「我々は誰がこれを行っているのかを知らない、情報を抑えているという事を。我々はどれほどの情報開示が抑えられていたかを知らない」。

2番目に、ドラルド・トランプがロシアの何らかのエージェントかスパイである、といった説…あるいは、彼がロシアに脅迫されていて機密情報をクレムリンに渡し、米国のエージェントを故意に危険にさらしている、といった考えというものは、考えられないほどにクレージーな言い分で─そんなことが真実であったと証明されたことは、一度もない。それは、私にグレン・ベック(*註・かつてのFOXの扇動的な看板キャスターだが今は引退している…)が、オバマに関してよく言っていた事を思い出させる…彼が黒板の前に立って、そうした不安定なチャートを…こうした、証拠のないワイルドな陰謀説のチャートというものを、しばしば描いていたようなことを。

我々はロシアが、民主党大会とジョン・ポデスタのEメールをハッキングしたとか、ドナルド・トランプとロシアとの間に不適切な繋がりがある、といった訴えについては─シリアスかつ、冷静に、しっかりした構成の捜査を行わねばならない。そして、それは公表されるべきであり、それによって我々が情報を知ることができなければならないのだ。しかし、メディアのもっているこのオブセッション(強迫観念)─それが誰であったにしても、誰かがドナルド・トランプとロシアについて彼らに囁いたなら、その情報をリークする、というオブセッション (なぜならば、彼らはそれが、彼らの記者たちに膨大な数のリツイートを発させて、それが、さらにまた…自分がまさに聞きたいと思っていた事を聞いたと思った人々による膨大なリツイートのトラフィックを発生させる…ことを知っているが故に)─というのは、まさに最悪のヒステリーに火を注ぐようなもので…そしてメディアは「彼らがそれと戦うつもりだと称している…」などといった偽ニュースさえも、生じさせている。こうしたことは、シリアスな捜査にだけ値するものであり、それは我々にとってまさに今、できていないことなのだ。

ナーミーン・シェイク:
ああ、あなたの同僚たちは、The Interceptに最近の記事を書いている、「実際に、こうした全ての「ナンセンス」な事柄に対して…、トランプが、大統領としての権力を用いて、それを直ちに明らかにしてくれたならば、良いだろうに…政府が傍受した、ロシアと彼の周囲の人間たちとの間のすべてのコミュニケーションに関する機密情報を開示させてくれたなら…」と。

そう…グレンさん、あなたはトランプはそれをすべきだと思うのか?
 グレン・グリーンウォルド: 

私が思うには、それは面白いポイントだろうという事だ─なぜなら、たとえばそこには色々な説があるのだ…フリン中将とロシアの外交官との会話や、こうした会話の記録(トランスクリプト)が何を反映しているようにみえるのか、といった事に関しては、しかし、未だに誰もその記録を見たものはいない。我々はその小さな断片の数々を目にしてはきたけれども。我々は全体の記録は、見ていないのだ。

そしてその記事を書いた私の同僚のJon Schwarzが、そうした機密を直ちに開示する力がトランプ大統領自身にある、といっていることは、絶対的に正しい。でも、そこにはそうした決断や、それが公表される可能性への見直しなどもまったく行われていない。

その一方で、過去4年間に私自身が(*エドワード・.スノーデンによる)機密情報のリークをめぐる論議の中心人物でもあった記者として、人々が、「大統領は今や、政府が行うことの可能な、最もセンシティブな情報の傍受を実行すべきだ」…などと言うことを聞いていると、それは、本当に異様なことに聞こえる…クレムリンの内部にいるロシア政府職員の会話を、どうやって盗聴するべきか、そして、それをすることが何の問題もないかのように、その盗聴で得た情報を公共の場にポンと投げ上げよう…といったような事を、人々が言うのを聞くのは。

私は、あなたは今やここでこの酷く不快な、ダブルスタンダードを目にしていると思う、つまり、対テロ戦争以来、機密情報とは聖なるもののように扱われて、それを漏洩する者は誰であろうが、裏切者(反逆者)、悪魔的な存在とみなされ、ごく長期にわたって収監されるべきであった、というなかで…今や、そうした機密情報がおもちゃのようなものに過ぎなくなったということ…もしもそれが何らかのアジェンダに役立つのならば、我々が面白がってそれを宙空に投げ上げたりしても何らの問題もないものになっているとは。そして、私が思うには、それがこの議論が進展するに伴って私をうんざりさせていることの一つなのだ…。
https://www.democracynow.org/2017/2/16/greenwald_empowering_the_deep_state_to


Friday, February 10, 2017

トランプの点と点を繋ぐ Connecting Trump's dots By Thomas L. Friedman

 
トランプの点と点を繋ぐ Connecting Trump’s Dots
By Thomas L. Friedman (2017/2/8, NYタイムス)


大統領の振る舞いは、日に日にうれうべきものになっている。彼は、ある日は彼に挑戦した連邦判事を卑しめたかと思えば、その翌日には…証拠もなしに、メディアが不正投票のあった事や、テロ事件のあった事を隠蔽している、などといって告発する。彼が社会的な制度機構や真実に対する尊敬の念をもっていない、という事実が、瞬く間に吐き出される。あなたは、彼のこういった行為が、大人の誰にとってもいかにクレージーなことであるのか─もちろん、それが大統領だったにしても─を、忘れ始める。かくして、本当の危機が我々に訪れるその時には、物事の醜悪さが増していく。そして、トランプ大統領の支離滅裂な世界観のために、危機はこのようなストーリーと化していく。

いったいどのように?─つまり、今や世界は、かつてないほど相互依存しあった状態にあるのだ。市場のグローバリゼーションや、携帯電話の普及、テクノロジーやバイオロジーの加速的な発展、新たな大量移民の動きや、気候の崩壊というものが…互いに絡み合って相互に影響を及ぼしあっているのだ。その結果として我々は、そうした多くの点と点を繋いでそれらから得られるものを最大化しつつ、最悪の影響にはクッションを敷いて我々の行くべき航路を示してくれるような大統領を必要としている。

でも、トランプは点と点を悪用する人間であって、それらを繋ぐ人間ではない。彼は幾つもの無謀な、相互にきちんとした繋がりを持っていない約束をしたのだ…ツィート以上の長さをほとんどもたないようなものを…それを利用することで、大統領に選ばれようとして─そして、今や彼はそれらの一つ一つを照合チェックしている所だ…それら同士の繋がりを真に考える事もなしに、そして、それらが引き起こす二次的影響についての心配すらもせずに。

これは、アメリカを弱体化へと向かわせる…そして、過剰な背伸び(overstretched)へと向かわせる偉大なる道なのだ。

どこから話を始めよう?トランプは、貿易と安全保障に関しては、中国に対する強硬策を講じようとしている…それは、クレージーな考え方ではない。だが、彼はそれをどうやってやるというのか?私は、太平洋沿岸で中国を取り囲む交易国による同盟を組んで、それらの国々を─米国スタイルの法の秩序を守りながら、米国の知的所有権と製品市場にもより多くのアクセスを持って、米国流の価値観(すなわち、反中国的な価値観)を推進するような国々による貿易協定へと、加盟させたいと思っている。私はすなわちそれを、環太平洋貿易協定、略してTPPと称したい。

おお、ちょっと待ってほしい。バラク・オバマ大統領はそれをやった…しかしトランプが、就任第1日目にTPPをスクラップにしたのだ─彼はそれを、(私は、そう確信しているが)全く読みもせずに。今や、我々のアジア太平洋地域の同盟国経済が、中国の経済的支配とその貿易上の「ルール」の下で、さらに一層、凋落するだろうと信じられるすべての理由がある。それが果たして、賢明なことなのだろうか?

…ところでまた、メキシコの労働力というものは、なぜ米国のそれより安いのだろうか?その一つの理由とは、メキシコでは労働者の持つ権利が弱体で、そして環境基準も緩い、ということがある。…ちょっと一瞥してみよう、TPPがメキシコや他の署名国に対して、要求するだろうものとは何か?…それはつまり、それらの国々でも我々のそれと同様の、労働者の権利と、環境基準を導入させるということだろう。

その代わり─トランプはメキシコ移民を排除するために壁を作り、(メキシコに展開する)企業に向かって、米国に戻るように強いる。思い出してほしい…9/11の事件の後に、安全の確保のためにメキシコとカナダの国境の通過が厳しく制限されたことを?それは、米国内のいくつかの工場の組立ラインをシャットダウンさせた…たとえば、フォードなどの企業を…なぜなら、同社のサプライ・チェーンはメキシコとカナダに広がっているからだ。メキシコで、より一層、低コストの仕事が行われ、そして米国でそれが、より高付加価値の労働によって統合されて…それによってヨーロッパや日本、中国における、我々の自動車メーカーの価格競争が可能になるのだ。

それならば、9/11の後に米国とカナダ,メキシコは何をしたのか?セス・スタッダー(オバマ政権の国家安全保障省の副長官)はいう─彼らは北米地域の包括的な安全保障体制(emvelope)を創り上げたと。それゆえに、もしも、あなたが中東からメキシコか、トロントに飛んだなら、我々の国家安全保障局は多分、もうその事を知っているだろう、ということだ。

「9月11日以降、我々と我々のメキシコとカナダのパートナーたちは、北米圏での安全保障のために協力して、人とモノの我が国への流入に関する情報を共有し、互いのテロリスト・データベースによる情報の照合を行い、北米に入ろうとするバッド・アクター(テロリスト予備軍)を発見するために協働してきた」、とスタッダーは言った。もしも我々が壁を建設し、メキシコにその費用を払うように強いるならば、そのことは、我々に対する協力的な効果を、どれほどのあいだ維持してくれるのだろう?

そしてもしも、トランプが、こうした米国を本拠とする多国籍企業に対して、メキシコでの操業を米国に戻すよう強制したら、それはどんなことをもたらすのだろうか?それは、メキシコの経済的暴落をもたらして、より多くのメキシコ人に北へ向かうよう試みさせるかもしれず、米国の製造業者にとっての、コストを膨らませるだろう。彼らはどうするのか?工場を米国に移しても、コスト削減のために可能な限りのロボットを雇って人間の仕事を代替させるかもしれない。

国連はいま、6千5百万人という記録的な数の、家を追われた移民や難民たちが存在し、米国やヨーロッパのような安全な場所に入ろうと試みており、その多くは発展途上国から来た人であるのだ、という。なぜなのか?それは、内戦と国家の破綻、気候変動による圧迫(ストレス)や人口爆発といったもののミックスにその原因がある。トランプは、就任後の第一週に何をしたのか?気候温暖化の否定論者を重要ポストに指名して、家族計画のオプションとしての堕胎手術を行う健康関連グループへの米国政府補助金を禁じたのだ。

トランプは、ウラジミール・プーチンとパートナーとなって、シリアのISISを打倒したがっている─それは、価値のあるゴールだ。しかし、プーチンはISISの打倒を望んだことすらない。彼は、シリアの権力の座で虐殺を行う親ロシアの独裁者のために、シリアの民主主義の打倒を試み続けている。
それが、我々にとってのゴールでもあるというのか?そして、プーチンのシリアでの同盟者とは誰だろうか?イランと、ヒズボラ、そしてパキスタンやアフガニスタンから来たシーア派の民兵勢力だ。彼らは、我々の同盟者にもなるだろうか?─否だ。我々はイラクとシリアのスンニ派勢力を味方につける、とトランプは言う。本当か?しかし、彼はたった今、彼らの米国への入国を禁じたのだ。彼らはどうやって、我々に協力できるというのか?

そして、この入国禁止令は、それ以外の誰を排除し続けるのだろう?スティーブ・ジョブスを覚えているだろうか?彼の生物学的な父親はアブドルファタハ "ジョン" ジャンダリだ。彼は1950年代にアメリカに学生として渡ってきて、ウィスコンシン大学で学んだ─そして、彼の出身地とは…シリアのホムス(Homs)だった。

設問の(マスに)チェックだけを入れて、それらの繋がりをチェックしなければ、どんなに酷い混乱を生じさせうるのか…そのことを目にすると、実に驚くばかりだ。
https://www.nytimes.com/2017/02/08/opinion/connecting-trumps-dots.html

Sunday, February 5, 2017

保守派がぶつかった知的なクライシス The conservative intellectual crisis By David Brooks

保守派の知的なクライシス The conservative intellectual crisis
  By David Brooks (2016/10/29, NYタイムス)

振り返ってみれば、私にとって、1980年代と1990年代に自分が保守派の運動に加わったことは、とてもラッキーなことだったと思う。私は、National Review誌とワシントン・タイムス、そしてウォールストリート・ジャーナルの社説ページ担当として働いていた。我々の眼前にあるロール・モデルといえば、Bill Buckleyや Irving Kristol、James Q. Wilson、Russell Kirk、そして、Midge Decterといった人たちだった。

こうした人々は政治についての論評を書く以外に、その他の多くのことについても書いた─歴史や、文学、社会学、神学、人生(生活)全般に関しても。その時代には、保守派であること(それは、尊敬される事だった)と、共和党支持者であること(それは一種の安っぽくてちゃち[cheesy]なことのように見做された)の間には、くっきりした違いがあった。

William F.Buckley in his NYC office in 1980
こうした文筆家たちは、しばしば都会のリベラル主義者たちの間に住みながら、リベラルな思想や、リベラル主義の偏狭さに対する疑念を保ち続けていた。Buckleyのような人々は、あらゆる思想的傾向の友人らと付き合いながら、敵対的な雰囲気のなかで一層、シャープに研ぎ澄まされていた。彼らとは、一種のエスタブリッシュメントの裏と表であり、その両者の言葉を使って話すことが出来た。

彼らの多くは貧困のなかで育ち、そのことが彼らに、反・エリート主義のポーズをとる悪癖(今日の多くの保守派の人物がとるような)を手控えさせていた…とりわけ、彼らがもしもプリンストン大出身者(Ted Cruzもそうだが)だったり、コーネル大(Ann Coulterもそうだが)やダートマス大(Laura Ingraham や Dinesh D'Souzaもそうだが)出身者などだった場合に…。年かさの文筆家たちは、文化的・都会的な教養を持つことは、エリート主義の徴しではないことを知っていた。彼らは、文化的な教養というものを社会階層的上昇のツールとして用いた。T.S.エリオットはチープな存在であり、ソフィスティケート(洗練)された会話というものは無料で手に入った。

Bucklyの時代のエスタブリッシュ層というものは、自負心をもって知的・道徳的な行動基準を実践した。それは…新右翼(New right)と共に急に現れ出て、終末論的な論争をしたJohn Birch Societyのようなネイティヴィスト(Nativist)たちをはねつけたし、また、彼らはJoe Sobran(彼は正当にもNational Reviewを解雇された)のような陰謀論好きの反ユダヤ主義者たちなども追放した。 それ以来、保守派の知的な勢力図は、三つの重要な面において変化して行ったのだ…共和党の崩壊に向かう道筋を整えながら。

まず第一に、ラジオのトーク番組やケーブルTV、インターネットなどが、保守派の意見を大衆市場むけの事業へと変貌させていった。小規模な雑誌は、Rush Limbaughや、Bill O'Reilly、 Breitbartといった存在によって圧倒されてしまった。 今日の支配的な保守派の声は、何百万もの人々に向かってアピールしようとしている。あなたはマス・メディアを通じて、社会的な憤り(鬱憤)を利用し、永久的にヒステリーな、単細胞な論客たちによって注目を集めることができる。そうした、右翼がかった聴衆(例えばAnn Coulterが獲得しているような聴衆ら)を捜し求めて、保守主義は…教育に価値を置いたり、TV向けに作られた怒りなどを軽蔑する人々に対して攻撃的な姿勢をとることで、自らを最大限に活用しようとする。

自由市場を擁護・支持するような知的な傾向が、商業主義の力によって崩壊させられたのは皮肉なことだが…しかしそれは、本質的な真実なのだ。保守思想は金銭的な収入の増大を求めた挙句に、低所得者(大衆)向けの安物になってしまった。それは、それ自身の反知性主義的な、利己的なメディア政治家たちの複合体によって飲み込まれた─Glen BeckからSarah Palin…Trumpに至るような。それ故に、現在ではHillary Clintonは大学卒の白人層の間で52%対36%(註:このコラムの書かれた2016年10月の時点の世論調査)という数字で支持されている。

2番目に、保守派のご意見番たちは、何よりもまして政治に重点的価値を置き始めた。保守思想の真の本質とは、政治を限定的な活動とみる事なのだ、そしてその最も重要な領域とは、政治以前のもの─すなわち、良心や信仰、文化、家族やコミュニティといったものだ。しかし、最近の保守思想というものは…ますます、より一層、共和党の発言部門の如きものになっている。

上流社会の保守層のあいだでは─例えば、信仰の重要性というものも、しばしば、政治の次に回されて、聖書の記述の重要性も投票ガイドの記述に劣るものとなっている。今日では多くの白人エヴァンジェリカル(キリスト教原理主義者)たちが、トランプの政治的勝利によってキリスト教的な謙譲の美徳や、慈善の精神・嗜みといったものを進んで脇に押しのけがちになっている。Public Religion Research Instituteによる世論調査では、白人エヴァンジェリカルの72%が、プライベートな生活では非道徳的であっても、効果的な国のリーダーになれると信じている、という─それは、マタイによる教えよりも一層、マキアベリズム(功利主義)的なことだ。

保守思想が、一層プロパガンダ(宣伝)的になるにつれ、パルチザン的な運動はより一層その勢いを失い、創造力や影響力も失っていく。 そのことが、3つ目の大きな変化に繋がる。共和党の硬直的な、アンチ・政府主義的なレトリックによって目を覆われ、保守派たちは我々の時代にとっての中心的な社会問題を認識することが遅れ、それに関して主張を発することにはもっと出遅れていく。

長年にわたって、ミドルクラスやワーキング・クラスの米国人は、賃金の停滞や機会の欠乏、社会的孤立や、家庭制度の断片化に苦しめられてきた。レーガン時代の古びた考え方に隠蔽され、保守思想はこうした人々に提示できるものを、何一つ持たなくなった…なぜならそれは政府というものを、社会の利益(善)のために利用する、という考え方を信じなかったからだ。そして、トランプのデマゴーグがその空隙を埋めた。

これは、悲しい筋書きといえる。しかし私は告白する…私は保守思想のリバウンド(回復)には気の触れるぐらいに楽観的なのだ。それはなぜなら、かつて文筆家Yuval Levingが書いたことのせいだ─「殆どの気の触れた進歩主義者たちというものは若く、殆どの気の触れた保守主義者たちというのは、年寄りだ。」保守思想とは今や、その老人たちによって、あるべき道から逸れている、しかし、その若者層とは、かなり偉大な存在だ。若いエヴァンジェリカルたちの間でドナルド・トランプが好きな者を見つけるのは難しい。殆どの若い保守層は民族的な多様性を好み、Fox Newsのメディア政治家の複合体には懐疑的だ。保守派たちの最良のアイディアといえば、(トランプからは全く無視されたような)野心的な政府のアジェンダの案を創造する、若々しい改革主義者のアイコンたち(youngish reformicons)たちからくるものだ。

トランプの敗退は多くの悪しき構造を洗い流して、新たな成長への立脚点を開くことだろう。私がかつての時代に若い保守派だったことは素晴らしい事だった。そして、たった今その一人になることは、偉大な事だ。

https://www.nytimes.com/2016/10/28/opinion/the-conservative-intellectual-crisis.html



*NYタイムズでは’73年以来、Watergate事件の頃から筆を振るった花形の保守派コラムニストWIlliam Saffireが、保守派が推進しイラク戦争の開戦を招いた誤情報などへの懐疑の高まった2005年に引退 ─Saffireに代わり、同紙のEditorial Boardが「主力のリベラルの読者層にも受け入れられる」保守派ライターとして抜擢したというDavid brooksは、元々、ネオコンのWeekly Standardなどにもいたが、政治、社会学、心理学、教育や文化など幅広いコラムで人気のコラムニストになっている