Sunday, August 30, 2009

“オバマケア”法案の危機と米国/Liberal Suicide March - By DAVID BROOKS

 
…「米国人に国民皆保険を!」…
オバマのヘルスケア法案の実現性に
保守派が日ごとに非難の声を高めているとか?

リベラルの自殺への行進 By デビッド・ブルックス(7/21、NYタイムス)

 共和党が、アメリカという国へのタッチ(実感)を失っていくのを見るのは興味深い。その党というのは、穏健派についても、スウィング・ディストリクト(支持党派未定、動きやすい選挙区)の代理人たちについても理解したり、共感したりすることのない、南部の保守派層によって率いられている。

 彼らは世論調査の調査員たちを彼らの党の集会に招いては、この国が彼らの後ろに熱狂的に付き従っているのだ、と納得させようとする。彼らは、彼らのインタレスト・グループ(利権受益団体や企業)によって支持され、そうしたグループの運動家たちや、党派主義のメディアからの喝采をうけている。彼らは国の資金を支持層の拡大のために費やし、その代わりにこの国を胸のむかつくような気分におちいらせる。

 民主党が、アメリカという国へのタッチ(実感)を失っていくのを見るのは、面白くない。なぜなら、そのプロットライン(あら筋)は全く同じだからだ。その党というのは、穏健派たちについて理解したり共感することのない、大都市や海岸地域の孤立した(狭量な)リベラル層に支えられている。彼らはお気に入りのcherry-picking な(何事にもいいとこ取りを好む)世論調査員たちを抱え、彼らの親しいメディアと運動家たちの繭に包まれ、支持票獲得のため借金を湯水のように使う計画に包まれている。

 このイデオロギー的な無謀なやり過ぎは、もはや、前回それが起きたときほどには成功していない。月曜日にWashington PostとABCニュースが発表した世論調査は、他の調査の結果と同じ結論をみいだしている──殆どのアメリカ人は、個人的にはバラク・オバマを愛しているが、民主党の政策への支持率はすでに急速にすべり落ちつつあるという。

 たとえば、オバマのヘルスケア(医療制度改革)政策の取り組みへの支持率は、4月の57%から49%へと急下降した。不支持率は、29%から44%へと上昇した。ごく最近の6月には、年収5万ドル以上の投票者たちがオバマの提案する医療制度改革案を、共和党のそれより21ポイントの差で支持していたが、いまや、それらの投票者たちは半々に分裂している。

 多くの無党派層は、今やオバマのヘルスケア戦略を認めていない。3月にはわずか32%の米国人が、オバマはオールドスタイルなtax-and-spend liberal(無闇な増税で財源を確保しようとするリベラル)だと思っていた。そして今や、43%の人がそう思っている。

 我々は、もはや、リベラルが自殺への行進(liberal suicide march)へと突き進む、初期段階にいる。しかし、そこには既に3つのフェーズがある──第1段階として、そこにはStimulus package(公的資金注入による経済刺激策のパッケージ)があった。あなたは、それは失業対策や不況下の経済への刺激のために構想されている、と思ったかもしれない。でも、民主党議員たちはそれを、7,870億ドルの借入金で彼らの愛玩するプログラムを行うための口実に利用した。その資金のわずか11%しか、本会計年度中には使われないだろう──プラグマティズム(実証主義)に対するイデオロギーの勝利、というわけだ。

 次に、そこには予算がある。財政赤字への穏健派の懸念を和らげる代わりに、その予算は、2009年から2019年にかけての政府による借金を11兆ドルに増大させると見積もられている。

 最後に、そこにはヘルスケア政策がある。Ann Coulter (極右派の有名女性コラムニスト)が民主党に投げつける陳腐な決まり文句はすべて、民主党のヘルスケア法案の件で壮麗に埋めつくされている。その法案は、ヘルスケア・インフレのコントロールには、ほとんど何の効果もない。彼らはマサチューセッツ州の医療制度改革法をモデルにしているが、同州のシステムは、詳しくいえば今やコストをコントロールできず縫い目からほころびつつある。彼らは(医療保険の)効果的な供給者には報酬を与えず、非効果的な供給者に対しての改革を行おうとしている。

 下院における法案では、連邦の財政赤字を最初の10年間に2,390億ドル増加させる、と連邦議会の予算事務所はいう。それはスモール・ビジネスに8%のペイロール・ペナルティを課すことによって墜落させる。それはアメリカの最高所得税率を、イタリアやフランス以上の高率へとつり上げる。ニューヨーク州とカリフォルニア州のトップ所得層は、所得の55%以上を政府の一つ二つの機関に支払わなければならなくなる。

 ナンシー・ペロシ(民主党・下院議長)への支持率はディック・チェイニーよりも低かったが、今やサラ・ペイリンよりもはるかに彼女への支持率は低い。それにも関わらず、民主党は彼女の政策の価値で日々を営もうとする──これは選挙民の景色が独立個人に支配される時代というべきだろう。

 この左がかった勢力の台頭を誰が止めるのだろう。1ヶ月前に、オバマは中道左派の連立を先導していくようにみえた。しかしその代わり、彼は首都キャピトル・ヒルの年老いた雄牛たちに対して、課題から課題へと譲歩を続けている。

 マキアベリは、リーダーは愛されると同時に畏れられるべきものだといっていた。オバマは民主党議長には気に入られているが、畏れられてはいない。ヘルスケア法案ではオバマはコスト・コントロールを主張した。しかし議長は彼の考えを無視した──彼らは、彼を畏れていないからだ。キャップ・アンド・トレード(Co2排出権の国際取引)では、オバマは大気汚染の排出権取引による相殺に反対した。議会は彼を畏れていないので、彼らによる法案をオバマに書きおくった。税制改革では、オバマはクリントン時代における最高税率よりも引き上げたりしない、と約束した。議長は彼を無視した──彼を畏れていないからである。

 そのことは先週、青色州の民主党議員たちへの課題を残した。彼ら、勇敢な穏健主義者たちは連邦財政の爆発をおし止めようとしている。しかし穏健派にはもともと、古参としての地位がない(彼らはSwingDistrictsからきたから)。彼らはつねに大抵、最後には古参リーダーの力に買収されてしまう。
 そして再び、我々はここにいる。新たなマジョリティ(多数派)はいつも、自分たちのもつ権限を過大視しがちだ…我々は前にもここに来た、そして我々はまたここにいる。 

http://www.nytimes.com/2009/07/21/opinion/21brooks.html?pagewanted=print