アル・カイダのアル・ザワヒリは、シリアの反体制派を支援すると声明…
…サウジ紙のAsharq Alawsatの編集長は、「シリアのアル・カイダ」の怪しい噂についてのコラムを執筆。
また、レバノンのアル・カイダ関係者と疑われるイスラム過激派、オマール・バクリが、シリアのアル・カイダについて弁明…
シリアと、アル・カイダに関する嘘
By タリク・アルホマイヤド (2/14, アッシャルク・アル・アウサット)
今日、シリアの人々が直面している状況とは、悲しむべき状況だ。人々はいまや、専制的で殺人的な体制と、人々の起こした革命を色々な言い訳のもとで損ねようとする勢力との間の板挟みの状況にある…彼らが過去11ヶ月間に払ってきた全ての犠牲にもかかわらず。シリアの人々と、その反体制勢力が悩まされている数多くの迫害の最新の例といえば…アイマン・アル・ザワヒリがシリアに関して発した声明を都合よく利用して─アル・カイダがシリアの革命勢力(反体制派)を支援している、と主張するような試みだ。
アル・カイダのリーダー、Ayman al-Zawahiriがシリアのジハードと称するものを呼びかける声明を発して間もなく、人々のあいだにはこの国をアル・カイダが支持しているとか、この声明がアル・カイダの活動がシリアに存在している証拠だ、などと急いで論じたがる者たちがいた。 しかし、それは単純化のしすぎだ─もしもそれが、非武装のシリアの民衆に対して共謀しようという露骨な願望の一部ではないのならば。
Syrian oppsition has no central leadership |
アル・ザワヒリは、アルジェリアの民衆にさえも、彼らの支配体制に対して叛起するよう呼びかけていた。それなのに、彼のこうした声明に関してはなぜ、誰も懸念を示さないのだろう…そしてその代わりに人々は、シリアの革命がアル・カイダに支援されているなどと、言おうとしているのだろう?
アル・ザワヒリはアラブの春を称えるだけでなく、彼はそれが米国に対する「破壊的な一撃」になるとも語っていた。アル・ザワヒリはさらに、アラブの春は「アメリカからの直接の命令により収監されていた何千人ものイスラム運動メンバーの受刑者たちを自由へと解放した」とも、さきに述べていた。これらのすべてにも関わらず、我々は誰もが─国家であろうと個人であろうと─アラブの春がアル・カイダによって支持されていたなどと言っているのは聞かれなかった。これと対照的に、当時の誰もがアル・ザワヒリの声明には注意など払わなかった。もちろん欧米はムバラクに政権を去るよう急いで呼びかけ、湾岸諸国がイエメンに対しイニシアチブを発し、サレフ(大統領)の政権委譲を確実にするよう圧力をかけた─アル・カイダが常に、サレフの持ち札の一枚だったという事実や…現在それをバシャール・アル・アサドが同様に持ち札として用いている事実にも関わらず!
それゆえに、シリアでのアル・カイダ(*現在反体制側を応援している)に対する脅迫とは、同国の政権に非武装の民衆を保護する義務を放棄させる、新たな試みに他ならない…ダマスカスの専制君主による犯罪を正当化する試みとも同じく。これはアル・カイダがそれ自身で提示している脅し、というよりも、シリアとその民衆の統一に対するより大きな脅迫となる何かを表している。アル・アサド政権はシリアのセクタリアニズム(宗派主義)を固定化して、少数派を脅かし、彼らを現体制の下に戻らせようとしている─ この同じ政権が、過去10年間…イランの支援のもとで(イラクであろうと、あるいはその他の地域であろうと)、アル・カイダによるアドバンテージを得ようとはかっていたのとも同じように。これは秘密でもなんでもないが、この地域と…そして西欧の諜報機関全てが察知していることに関係していることだ。
それゆえに、我々が察するべきなのは、ダマスカスの専制君主の退場が遅れているということだ、そしてシリアでの流血や死、テロのシーンが延長しているということであり─そのことが暴力や殺戮、事態の緊迫への責任がある…それは今日、誰かが主張したがっているように、アル・カイダに関して語ることではないのだ!これは誰もが知るべきことだ─特にシリアの統一や、その非武装の人々の安全に関わる人たちが知るべきことなのだ。
http://www.asharq-e.com/news.asp?section=2&id=28477
レバノンに居るイスラム過激派・宗教家オマール・バクリの最新インタビュー(2/17, Al Jazeera)
…冒頭でAl Jazeeraのビデオhttp://www.youtube.com/v/HeD0DL2PsAc が伝えるのは、レバノンとシリア国境を多くの武装ゲリラや武器が行き来する状況。そして宗教家のOmar Bakriのインタビューが挿入される。*Bakriはロンドン地下鉄テロ直後に英国からイスラム過激派として永久国外追放になり、レバノンに送られた危ない人物。ロンドンでは"Tottenhamのアヤトラ"と呼ばれていた。
…現在シリア政府は、彼を"レバノンのアル・カイダのリーダー"とみているという。だがBakriはこのインタビューのなかでシリアの状況への関与を否定。またアル・ザワヒリがシリアの反体制派にジハードを呼びかけた最近の声明ビデオを見て明らかになるのは、「シリア国内にアル・カイダのメンバーが一人もいないことだ」、などといっている。
彼は、「自分にはエキスパートとしてそのことは判る…そうでなければ、シリア国内の反体制派にザワヒリが呼びかけて、誰か作戦を実行する人間をつのるわけがない…呼びかける前に自分たちがやるだろうからだ。彼らはシリア国内の反体制派の誰かに仕事をやらせて、その後に出てきて『自分たちがやった』などと声明を出すのが常套手段だ…」などといっている。
…ビデオ後半では他の専門家がシリアには既にリビアやイラク、レバノンから多くのイスラム戦士(アルカイダを含む)が海路や陸路にて送られ、数千人がいるのは疑いないといっている。http://www.aljazeera.com/video/middleeast/2012/02/201221782012316678.html
Omar Bakri |
Omar Bakriはシリア出身だがバシャール・アサドの父ハフェズ・アサドが政権をとった際に、イスラム原理主義者として反政府活動を行ったために弾圧され、1980年代に英国への亡命を許されて亡命した。英国に在住していた20年間に、自身のイスラム過激派組織al-Muhajiroun やAl-Ghurabaaなどを設立した。911テロ犯のグループを賛美したり、デンマーク大使館前でデモを行って逮捕されるなどの活動により、2005年に英国国籍が剥奪されレバノンに送致された(*レバノンでは一度終身刑になっていたというが今では解放されたのだろうか?)(7/21/2006)http://www.guardian.co.uk/world/2006/jul/21/syria.immigrationpolicy
Omar Bakriが、この1月下旬にアル・カイダを賛美した言動が各紙に掲載された。1/25にはDaily Telegraphに対して、彼の組織Al-Ghurabaaとアル・カイダを含む「強硬派のサラフィスト・グループが、シリアでの反アサド政権の作戦を助ける準備がある」と述べた。
Bakriはシリアで、彼らには「ムスリムの兄弟ら」が自爆テロのキャンペーンを行うことを助ける用意があるとし、「2つ3つの作戦でバース党政権は吹っ飛ぶだろう。アル・カイダはとても賢く、無から多くの武器を作ることができる。彼らは多くのキッチンに入ってピザ爆弾を作り、それがフレッシュなうちに配達ができる…」、などと述べていた(1/27/2012)
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9039437/Muslim-cleric-banned-from-Britain-claims-Al-Qaeda-poised-to-launch-sucide-attacks-in-Syria.html
スンニ派過激派が、シリアでのアル・カイダの野望を支援している可能性がある (2/15, NYタイムス) By Eric Schmitt and Thom Shanker
最近のダマスカスでの2件の自爆テロ(12/23、及び1/6)、及び2/10のAleppoでの自爆テロは実際、スンニ派過激グループ、または「イラクのアル・カイダ」のフランチャイズが行った仕業である可能性が高い、と米政府関係者らはみている…(中略)
それらの爆破テロは、「アル・カイダと"ゆるい連携にあるが、直接テロリスト・グループの管理下にはない"スンニ派の武装戦士たちが、アサド政権を民主主義的運動によって覆したいという、共通の動機のもとに起こしたもの…」であると、米国のRAND研究所などの専門家は見ている。
(中略)
イラク戦争中にはイラクに赴き、"イラクのアル・カイダ"などのグループに参加して過激派テロを行ていった者たちがいま、シリア周辺に帰国して、これらのテロを起こしている可能性が存在する。「今、そうしたテロのノウハウを知る者たちはこの地域には溢れるほどいる」、と中東政策ワシントン研究所のAndrew Tabler氏はいう。「アサド政権はかつて車爆弾の発明に協力し、彼らはこれまで、自らの外交政策の目的の為にそれを見事に使ってきた。そして、最近のそうしたテロを実行したのはアル・カイダである可能性もあるし、単にこの地域で似た様なバックグラウンドを持つ者である可能性もある」と彼は述べている。
「イラクのアルカイダ」は近年そのメンバー数が顕著に減少をみせていたが、シリアでの混乱に乗じて暴力的テロを行うことによってアドバンテージを獲得し、民衆に人気のある反政府運動をハイジャックしようと考えている可能性もある…と幾人かの米政府高官は述べている。
アル・カイダは「アラブの春」の、主にソーシャル・メディアを通じて起こされた非暴力による革命の成功で、その(暴力的な過激派としての)運動の隙を突かれ、またオサマ・ビン・ラディンの殺害によってもさらなる大きな打撃を蒙った。彼らはそれ以来、新たな足場となるものを探してきた。
「イラクのアル・カイダに同盟する者たちがそのシリアにおけるネットワークを用いて、アサド政権の後追いをするとしても、驚くには値しない。それはシンプルな、ある種のご都合主義、日和見主義とでもいうべきもの」だとある匿名の政府高官は言う。またもちろん、アル・ザワヒリもシリアでの混乱に乗じたビデオ声明を発している。
米政府内におけるシリアでのアル・カイダの役割についての論議は、水曜日に─ アサド政権のいかなる後継政権に対しても、アサド政権が現在保持する化学兵器や携帯用対空砲ロケット弾などの通常兵器の備蓄品を安全に確保することに対して、米政府が助力すると申し出た後になされた。
…しかし、現在の混乱した状況のなかでは、テロリストがシリア政府の所有するそれらの備蓄兵器を獲得する機会を得る可能性もある。リビアにおいても同様のことがあり、カダフィ政権が崩壊後に米国が残された同政府所有の多くの武器をリビアの近隣住民との協力のもとに破壊し、または安全に確保するために確認し、リスト化したりしてきた。しかしシリアでは現在、シリア政府に対して未だにロシアとイランが武器を継続的に供給している状況にある。
http://www.nytimes.com/2012/02/16/world/middleeast/al-qaeda-influence-suspected-in-bombings-in-syria.html?_r=1&hp=&pagewanted=all
*米当局関係者は、このシリアのアル・カイダのことを「イラクのMosulのスンニ派ラディカルたちがシリアにやって来た…」という言い方をしているようだ。
(参考記事) .."US and Iraqi intelligence says that foreign Sunni radicals (“al-Qaeda”) based in Mosul in Iraq have now departed in some numbers for Syria"... http://www.juancole.com/2012/02/save-homs-with-humanitarian-airdrops-by-drones.html
*Al Qaeda in Iraq…Now in Syria! http://spectator.org/blog/2012/02/22/al-qaeda-in-iraqnow-in-syria/print
…イラク戦争中、2004年に米軍の行った、悪名高いファルージャでの「大虐殺」の後に、イラクの反乱勢力はニネヴェ地方のMosulとTal Afarにその拠点を移して、AQI(Al Qaeda of Iraq)も同様にその拠点を移した… この「イラクのアル・カイダ」http://en.wikipedia.org/wiki/Al-Qaeda_in_Iraqといえば勿論、かつて残虐なヨルダン人司令官 Abu Musab al-Zarqawihttp://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Musab_al-Zarqawiで知られていた…彼はシーア派巡礼者の大量虐殺などの、一般市民に対する恐ろしいテロを繰り返した。
(ザルカウィは長らく米諜報部の最大のお尋ね者だったが、彼がイラクで行った一般市民への残虐テロの行き過ぎは、アラブ民衆のアル・カイダへの嫌悪をたかめ、「アル・ザワヒリからさえ、その残虐テロの行き過ぎを慎むように諌められていた」…)
しかし、2006年米軍の無人機が500Pound爆弾を2発投下して首領ザルカウィを殺害した、そして、最近ではイラクのアル・カイダの力は徐々に弱まっていた筈なのだが?…
*シリアのアル・カイダとは、「ユルい連携の組織」であって、確たる管理系統もないのが実態ではないのだろうか?
(アル・ホマイヤド氏が言うように、状況の混乱を狙う過激派には警戒すべきでは?)