Sunday, March 18, 2012

「アラブの春」は忘却の縁にある? The Arab Spring on the verge of oblivion- By Hussein Shobokshi


「アラブの春」は忘却の縁にある  By フセイン・ショボクシ (2/23、Asharq Al-Awsat)

 アラブの春、として知られるようになったその現象─次々と起こされる革命と、それにひき続く余波…アラブ世界でのそれらの出来事に関心を抱く、多くのオブザーバーたちの間では今や、評価のし直しや懸念が優勢になりつつある。アラブの春は本来の高貴な目的から逸れてしまい…かつてない方法でイマジネーションを喚起し、世界を幻惑した若い世代の手からハイジャックされたのだ…と考えている者たちもいる。

 我々は、こうした革命を宗教的強硬派の流れがハイジャックして、人々に対し時には警告的に、彼らの「異邦人」的な視点を強制して…また時には軽蔑的な感情も鼓舞しようと図るのをみた。また別の場所では、人々に対して、自分たちの個人的権益だけにしか関心を抱かないような部族やクラン(一族郎党)による視点が強制されて…そのため、洞察といものは全般的に限定されたものに限定され、扇動を誘発する危険性へと繋がって憤怒の地獄の未来にも至りかねなくなっている。いつものことだが、ほんの小さな火花すらも、大きな火の海を誘いかねないのだ。そしてそこでは、大きな損失感を抱いたアナキスト主義者らが復讐の念を抱きつつ、現今のカオスと混乱の機会を捉え…彼らが「勝った」と信じている者たち(すなわち、革命とその余波から政治的なアドバンテージを得る者たち)の間に、恐怖感を掻き立てている。

 一方でその他の者たちは、人々や国家や地域が経験するに至った巨大な叛乱の間に、自然に発生した状況とは何だったのか、を眺めている。こうした叛乱は人々の心理状態に影響を与え、彼らの自信を喪失させ、未知のものへの恐怖感を抱かせる。こうして、彼らの最初のリアクションとは暴力的で、混乱したものとなる。しかし、やがて彼らは再び安定状態を獲得し、彼らのそうした新たなる状況にも適応するようになる。市民たちは自然な方法で変化を受け入れ始めるとともに物の生産も再度向上し、以前のごとく共存する状態となる。しかしもちろん最大の問題とは、混乱や心配、怖れや疑念の信じ難いほどの肥大…また理性や洞察力、決断を下すことを阻む圧倒的な感情である。結果的に、我々は今現在おきているような多くの失敗や混乱状態を目にすることになる。
 
 いかなる新しい状況でも、それがどんな性質の物かに関わらず…その状況下での勝者と敗者を招くものだ。彼らは両者ともに、自らの享受する便益を最大にし、そして損失を最小にするために力を尽くしている。

  そして多くの勢力分子や、異なるやり方があり、それらがなお一層の紛争状態や、いざこざを喚起する。おそらく、そのなかでも二つの最も顕著で効果的、かつ最も危険な勢力といえば、一つはメディアであり、いま一つは経済だろう。今日、メディアとは力や悪意によって用いられ、特定の人物にハイライトを当てて、公衆にその影響力を及ぼし…時には真実を埋没さるために…そしてまたあるときには、政治的・経済的な理由で特定の勢力に都合のいいストーリーが世間で注意を集めるように仕向けさせる。経済的影響に関しては、金は未だに最もパワフルな要素として、「決定権」を有するポジションを掌握させ、公衆の良心を買収し、立場や基本方針、スローガンをも変えさせるものとなる。

  もしも私が、アラブの春のオリジナルな熱狂者たちが現今の状況に対して下す評価を描写するなら、最新の進展状況に対する遺憾の念と、古き良き日への懐古の念だといっても誇張ではなかろう─物事がどんな状況だったのか、そして今それがどうなったかを比較すれば明らかなように。しかしそれこそが、幾つかの勢力の望んだことなのだ。彼らはアラブの春の「完璧な」勝利を怖れ、中東の状況を悪化させた破壊的な原則の全体的、かつ包括的な改革を怖れている。このようにして、こうした勢力にとっては、アラブの春の完全な失敗を保障する形で、現今の出来事に対処することが至上命題となり、最初は美しい物にみえたその状況に対して、人々に憎悪や恐れを抱くように仕向ける。彼らはそれをとても野蛮で、醜悪で、誤った物へと転じようとしている。アラブの春の「完全な」成功を怖れる者たちは、革命家たちの意志や目的に疑問を投げかけ始め、徐々に彼らを敵や裏切り者や、逸脱者たち、外部の代理勢力などと協力する者たちだ、とみなし始める。これはある状況を完全に異なる状況へと変えさせる、メディアと金の力である。

  アラブの春は、自由を抑圧し、尊厳を損ない、希望を押しつぶそうと試みる偽装を纏った全体主義的勢力による脅威を受けている─なぜなら、彼らはこれまで専制政治と独裁的暴政、絶対的権力の原則の下で生きており、今も行き続けているからだ。彼らは多くの方法や異なる名前を受け入れたが、こうした勢力らは最終的にはすべて、同じ目的を抱いている。

  アラブの春はまだ失われてはいない、しかしそれは、隠された、悪意のある戦争に晒されつつある。かくして、それに対して身を守り、そうした企みに対抗することが重要となる。アラブ世界の人々は、他の世界の人々と同じように尊厳と自由に値する人々なのだ。
http://www.asharq-e.com/news.asp?section=2&id=28581
 
*筆者のHussein Shobokshi:
A Businessman and prominent columnist. Mr. Shobokshi hosts the weekly current affairs program Al Takreer on Al Arabiya, and in 1995, he was chosen as one of the "Global Leaders for Tomorrow" by the World Economic Forum. He received his B.A. in Political Science and Management from the University of Tulsa.