Sunday, November 9, 2014

コバニの謎掛けThe Kobani riddle- By Pepe Escobar


コバニの謎掛け The Kobani riddle By ペペ・エスコバル (10/24, Asia Times)
シリアのクルド人らがISIS/ISIL/Daesh (* Daeshはイスラム国のアラビア語名、al-Dawla al-Islamiya fi Iraq wa ash-Shamの略)との間で絶望的な戦いを展開している、コバニ(Kobani)の勇敢な女性たちは、「国際社会」によって裏切られようとしている。…こうした女性戦士たちとは、カリフ・イブラヒム(*ISISのリーダー・バグダディのこと)のごろつき集団との闘いの一方で、米国・トルコや、イラク領クルド族の地域の行政府がもくろんだ裏切りのアジェンダとも闘っているのだ…それなら、コバニでの本当の交換取引とは何なのだろうか? 

ロジャヴァのことから始めよう。ロジャヴァ(北部シリアの…クルド族の優勢な三つの県にまたがる地域)という地名の意味は、収監中の活動家、Kenan Kirkayaによる、このトルコ語メディアの(社説のなかでも伝えられている。彼は、ロジャヴァというのは、「資本家や国民国家の制度(capitalist, nation-state system)」による覇権に挑戦する、「革命的モデル」の本拠地以外の何物でもないといい─その地域のクルド人や、シリア人、あるいは、クルディスタン地域 にとっての意味というものをはるかに超越しているものだ、ともいう。

PKKのリーダー、Abdullah Ocalanを注意深く調べ上げた書物、Democratic Confederalismは、こうしたテロリストとスターリン主義者の同一視というものが、でっち上げ(虚偽)だと暴露した。(Ocalanは、1999年以来、イムラリ島の刑務所に服役している)

PKKPYDが獲得しようと苦闘しているのは、「リベタリアン主義による行政体制」なのだ。実際のところ、それはロジャヴァが 試みてきたものとも全く同じものだつまり、柱となる幾つかの評議会や、人民会議、労働者によって運営されるコオポラティブなどを通じた、直接民主主義 を求める自治的コミュニティであり、そこでは、防衛も人民軍が行う。それが、ワールド・ワイドなコオポラティブの経済、民主主義運動のヴァンガード(前衛)としての、ロジャヴァのポジショニングだ。その究極のターゲットとは、国民国家システムをバイパス(迂回)することなのだがこうした実験とは、北部シリアだけで起きているのではない軍事的なタームでいうなら─Mt.Siniar山で、ISIS/ISIL/Daeshに包囲された何千何万ものYazidiの人々を、どうにか救出したのはPKKPYDだったのであって、作為的な政治的言説(スピン)がそういったような米軍の爆弾ではない。そして、今やPYDの共同大統領、Asya Abdullahが(ここに)詳しく述べているように、必要なのはカリフ・イブラヒムのごろつき集団に包囲されたコバニの包囲を破るための「回廊(corridor)」なのだ。

スルタン・エルドアンのパワー・プレイ  
そんななかで、アンカラのトルコ政府は、まるで、「近隣地域とのあいだで、問題が山積する状態」という政策の継続を意図しているかのようにみえる。
トルコの防衛相、Ismet Yilmazにとっては、「ISISの〈運動の)主な動機とは、シリアの政権の問題なのだ」、という。そして、首相Ahmet Davutoglu(彼は、いまや機能しない「近隣地域との問題ゼロ(ゼロ・プロブレム)」のドクトリンを発明した人物だ)は繰り返し、アンカラの政府はもしも、米国が「アサド後のプラン」を提案したときにだけ、クルドを防衛すべくコバニに地上軍を送ると言っている >するとそこに、(実際よりも偉大な英雄のようにみえる)Tayyip Erdogan…またの名をスルタン・エルドアンが現れ出でてくる。

スルタン・エルドアンの指令とは、周知のものなのだ。シリアのクルド人たちは、その(質の悪いフィクションのごとく再構成された)自由シリア軍によ る指令のもとで、ダマスカスの政権と闘いあるいは、サウジアラビアじゅうの地域で訓練されねばならない彼らは、いかなる自治(の概念)も忘れねばならな い彼らは、トルコが米国政府に対して、シリア上空に飛行禁止地域を創り、さらにシリア国境の「安全確保」を図るよう、リクエストした事も、従順に受け入 れねばならない。PYDと米政権とが、共に、こうした要請を拒絶したことに疑いはない。
スルタン・エルドアンはPKKとの和平交渉の復活に目をすえてそして彼は、それを力のポジションでリードしたいと考えている。現在までの彼の唯一の譲歩とは、イラクのクルド族のペシュマルガを北部シリアに進軍させ、PYDPKKの私兵勢力のカウンター・バランスとすることでそれを通じ、反トルコのクルドの枢軸の強化を阻止する事なのだ。
同時にスルタン・エルドアンは、ISIS/ISIL/Daeshがすでに1000人に近いトルコのパスポート保持者をリクルートした事も知っているそして、それを頼みにしている。
彼にとって補足的な悪夢とは、「Syraq」に廃棄物をふり撒いている、有毒な醸造液が溢れだして、遅からず、トルコ国境の内側にも強力に浸透してくることなのだ


戸口の野蛮人たちを見張れ Watch those barbarians at the gates 


カリフ・イブラヒムのごろつきたちはすでに、彼らがコバニの全市民を虐殺するか、奴隷にするという意図を発信した。そして、いまだに、コバニ自体はISIS/ISIL/Daeshにとって、何の戦略的価値も持たないのだ(それは、先週米国の国務長官、ジョン・ケリー自身が述べたことだ)。しかし…そのことで、彼は予想どおり─彼自身を露呈しもした。しかし、(この、酷く説得力のあるPYDの司令官This very persuasive PYD commander)とは、ISIS/ISIL/Daeshの脅威については非常によく理解している。


コバニとは、デイル・エッゾール(そこにはDeir ez-Zor・シリアのアラブ人軍隊の補給基地の空港がある)やハサカ(Hasakah・シリアのアラブ軍に支援されたクルド人らが統制支配する油田がある)に比べれば、あまり重要ではない。

一方、コバニの陥落とは、〈すでにとても滑らかに進展している〉カリフの事業Caliph enterpriseにとっては、さらなる、大いにポジティブなPR効果を発するものになる─それは、新たなEUのパスポートを所持する可能性のある志願応募者たちにとっては、「勝軍」という見方を拡大し、同時にトルコ国境への至近距離における、確固たる拠点の確立にも繋がる

本質的に、スルタン・エルドアンは(長期的には)ダマスカスの政府と、(中期的には)クルド族の双方の軍と闘いつつも、現実にはSIS/ISIL/Daeshへの〈短期的な〉フリーパスを与えている。トルコのジャーナリスト、Fehim Tastekinのいうことは正しい─つまり、存在しない「穏健な」シリアの反政府勢力non-existent "moderate" Syrian rebels というものに(おお、なんと民主的な)サウジアラビアという国で、軍事トレーニングを施すことは、トルコを未来のパキスタンにすることでしかない─すなわち、1980年代のアフガン・ジハードの時期に演じられたシナリオという素材の、リミックスにしかならない。


もしも、それがいまだに、ゲーム・チェンジャーの上で十分な混乱に至っていないというなら─そして、その「テロリスト」のドグマを裏返しにしている、というなら─ワシントンの政権は今や、PYDに対する英仏協商(entente cordiale維持している、といえる…そのことは、スルタン・エルドアンのさらなる頭痛の種ともなる。 この、ワシントンとPYDの間のギブ・アンド・テイクは、いまだに容易に手に入れられるものだ。しかし、地上でのいくつかの事実が、このことを詳しく物語る─つまり、米軍による一層の空爆や、一層の〈武器の〉空中投下(武装したてのほやほやの部隊 がカリフのごろつきになり果てて失敗に終わった地域での、大きな空中投下をも含めて)というものが。


カギとなる事実は看過されるべきではない。PYDが、多かれ少なかれ米政府に「認知され」たその時、PYDのリーダー、Saleh Muslimは直ちに、狡猾なクルドの地方政府(KRG)リーダーの、Masoud Barzaniに面会に行った。それが、PYDロジャヴァの運営に関して、「パワー・シェアリング(力の分担)をBarzaniのペシュマルガ軍と約束したときだった。 


コバニを放棄するよう強いられて、自らトルコに避難〈亡命)し(そしてPYDを支持した)シリアのクルド人たちは、シリアには戻れない─しかし、イラクのクルド人たちは〈郷里との間を〉行き来することができる。この怪しげな〈不確かな〉取引とは、KRGの諜報部長官、Lahur Talabaniによって仲介されたのだ。KRGは最終的に、アンカラ(のトルコ政府)とはとてもうまく付き合ったのだ。
そのことは、エルドアンのゲームに、さらに光を当てる─彼は、ペシュマルガ(PKKのどう猛なる敵)たちにISIS/ISIL/Daeshに対する(防波堤の)前衛となってほしいと考え、かくして、PYDPKKの間の同盟を損なっている。ここでまた、トルコは再び、クルドとクルドを敵対させているのだ。

ワシントン側が望むことは、コバニを、「人道的」な(“R2P“風の文脈で)完全に合法化〈正当化〉するべく、操作することだ─それが彼らの、ISIS/ISIL/Daeshに対する十字軍なのだ。こうしたことのすべては、ワシントンの嘘に充ちた(幽霊のように存在しない)スピン(偽の政治的言説)というものの、雨あられ…つまり、コラサン・グループが新たな911のテロを準備している、といった…)からはじまったことだ。コラサンの話題とは、予想通り、ニュース・サイクルからは完全に姿を消してしまった。


長期的には、米国のパワー・プレイとは、ロジャヴァの直接民主制の実験にとっての深刻な脅威となる─その実験は、ワシントンにとっては解釈しえないことだ─彼らは、それを〈神よ、許したまえ!〉共産主義の再来としか解釈できないのだ。
それゆえ、コバニとは今や…米国政府と、トルコ政府と、イルビルのクルド政府による非情のゲームというものの、決定的な駒として操作されている。こうしたアクターたちのいずれもが、コバニと、ロジャヴァで直接民主主義の実験が進展、拡大して、グローバル・サウスの全域で認知されるということを望んでいない。


コバニの女性たちとは─もしも奴隷化されないにせよ、酷い裏切りという死の恐怖に晒されている。

そして、コバニでの ISIS/ISIL/Daeshの劇というものが、本質的に陽動作戦であり、オバマ政権への罠である…とみられるときに、それは、一層不吉なものになる。カリフのごろつきたちが、本当に目指す目標とは、イラクのアンバール県(すでに、彼らが広汎に支配している)なのであり、そして究極的には、バグダッド・ベルト地帯なのだ。野蛮人たちは、戸口にいる…コバニだけでなく、バグダッドにおいても…。


;http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MID-01-241014.html