Tuesday, September 10, 2013

ヴラッド・ザ・ハマー(対)臆病オバマ Vlad the Hammer vs Obama the Wimp By ペペ・エスコバル


鉄槌のウラジミール V.S.臆病者オバマ By ペペ・エスコバル (8/9 Asia Times)   

「計画を立てよ、そして、また別の計画を立てよ。どちらも機能しないから」─(ベルトルト・ブレヒト)
Make a plan; then make another plan. Both won't work.
- Bertolt Brecht

これはもう、ばかげたレベルに達している。アメリカ大統領(POTUS=Pres.of the United States)は、彼のスパイ(エドワード・スノーデン)を返してもらいたいと、喚き叫んでいる。スノーデンはロシアの法に基づいて、暫定的な亡命を受け入れられた。…ホワイトハウスは「失望」した。
 
するとPOTUSは、9月初旬のサンクト・ペテルスブルクでのG20に伴って行われる予定だった、モスクワでのロシアのウラジミール・プーチン大統領との二国間サミットを冷たくあしらい(キャンセルした)。…そして、クレムリンも同様に、「失望した」。

プーチンはジョージ・"Dubya"・ブッシュに公電を送り、彼が心臓手術から素早く回復することを願っている…と表明した。POTUSはアメリカのトークショーに出演して、ロシアは、「冷戦期の思考と冷戦期のメンタリティーにスリップバックしがちだ」、と述べた。

ブレヒト風の冷ややかな言い方をすれば、「ばかげている」というのは、この状況を描写しはじめることにすらならない。冷戦期のメンタリティというものは、実際のところ、Beltway(ワシントンの中心部)の遺伝子というものにすっかり染み込んでいるのだ─連邦議会からペンタゴンに至るまで。POTUSに関しては、彼は、外交的なディレッタント〔素人芸術家〕として振る舞った、というのがせいぜいだろう。「Yes, We Can」のコピーは、「Yes, We Scan(我々はネットを>検閲する)」に変形し、そして今や、それは「Yes, We Scorn〔そうだ、我々は軽蔑する〕」になった。これは、ヨーロッパでブリーディングされたプードル犬の一団には適用されるだろうが…Vlad the Hammer(鉄槌のウラジミール…)には適用されないのだ。

ホワイトハウスはその決断に関して…ミサイル防衛から武器の規制、交易や商業問題、グローバル・セキュリティ問題、人権問題から市民社会などに至る…すべてを含んだ分野での、「進捗のなさ」をあげつらって正当化しのだた。ナンセンスだ─これはすべて、POTUSが彼の内部告発者との戦いの遂行を阻まれている、という無能性の問題なのだから…。プーチンの外交問題アドバイザー・Yury Ushakovが、「アメリカには、平等な立場で関係性を構築することへの準備がない」と述べたとき、彼は真実というものにより近いところにあった。
 
Vlad the Hammerはそこに…北極グマがアザラシを狩るように〔ジミー・〕カーター風な臆病さのプロポーションを感知しているか知れない。彼は、オバマ政権がその、既にぐらついた信頼を、二つの同時的問題の矢面で灰燼に帰させたことを、素早く評価した─彼(オバマ)の…オーウェル的な、パノプティコン(監視社会)の設置にこだわるコンプレックスの大きさが、スノーデンのリークによって詳述されたことや、また…スノーデンが情け容赦のない狩りの対象とされたことによって。
 
主流派〔メインストリーム〕メディアが打ち付けた棺の蓋の釘というものを、もうひと打ちするなら…New York Timesが掲載した社説は、こう述べていたのだ─ホワイトハウスは、(ほぼ間違いなく)…「プーチン氏は、彼の国民自身を軽蔑的に扱う、抑圧的で傲慢なリーダーだ」と「指摘して」…、サミット会議をキャンセルしたことを正当化したのだ、と。そのとおりだ─そして、白雪姫とは、ホワイトハウスに住んでいるのだ。

全員、トランス・シベリア(鉄道)に乗車せよ All aboard the Trans-Siberian

POTUSの青くさい不機嫌さとは、冷戦とは何の関係もない。入門者のために説明すれば、アメリカとロシアと、は様々な問題分野において相互依存的なのだ。最小限…理論的にみるなら、今週末にワシントンで討議をする大人たちが居るだろう…ロシアの外務大臣Sergei Lavrovと、防衛大臣のSergei Shoiguが、アメリカの国務長官John Kerryと、ペンタゴンの長官Chuck Hagelとの会談を行うに際して。

Vladは、アメリカとNATOがすでに行った、アフガニスタンからの屈辱的な撤退を…偽造のカラシニコフ銃を持ったパシュトゥーン族(*タリバン勢力)どもに、彼らの尻をどつかれたのだと言って…地殻変動レベルの災害へと転じることだろう。


Vladは、シリアのBashar al-Assadに対するロシアのサポートというものの、微妙な照準をつけることもできる─特に、サウジの諜報長官Bandar "Bush" bin Sultan王子が、既にモスクワで彼を訪問して…ロシアが手を出さない限りは、彼らが大量のロシア製武器を購入しようと、提案して以来…。[*]プーチンは、それには余り、興味を示さなかった。そしてBandar王子は、未だに、それをアメリカの主人たちに「相談なしに」、実行してはいないのだ。
 

Vladは、イランのRouhani大統領の新政権に対しても、いくらでも、追加的な〔エクストラの〕外交的サポートを提供できるのだ…究極的には…テヘランがワシントンに対して可能な交渉のポジションを強化できるような、新型武器のセールスをも含めて。

 

コーカサスでは、Vladは活躍の場に立っている。グルジアは、モスクワに対する敵対性は、かなり低いのだ。そして〝パイプライニスタン"(天然ガス/石油パイプラインの通る国々)においては、ロシアはアゼルバイジャンがトランス-アドリアン横断パイプライン(TAP)での優越性を得ること…〔多年にわたるNabucco West社の衰勢を挽回すべく…〕への決断を下すことに影響力を及ぼし、そして即座に…アゼルバイジャンのSOCARと、ロシアのRosneftとのエネルギー分野での協力をも固めた。グルジア、アゼルバイジャンの両国は共に、アメリカの「盤石な」同盟国として知られていたのだが。

 

ヨーロッパでは…ライン川のクルーズ船の船長なら誰もが知っているのが、ロシアのドイツとの戦略的パートナーシップというものだ。たとえば…イタリアやフランス、ポーランドとの間の天然ガス取引交渉では、ロシアのプレイするゲームの名前とは、価格破壊や税金対策を織り込んだ長期契約を確実にすることなのだ。


中央アジアと東欧においては、Vladはさらに…他でもなく…活躍の場にある。そこではロシアが、何十もの戦略的な…製造関連、化学関連、運輸交通関連の資産を購入している。

 
するとそこに、トランス-シベリアの重大な策略が展開される。私は、トランス-シベリアには、2回ほど旅行したことがある(1990年代初頭と、1990年代末期に)が─それは最悪な旅だった。その当時には、そこでは殆ど─貧困なロシア人が中国で目に入るすべてのものを買い込んでおり、狡猾な中国人たちが何でも売れる物をすべて、ロシアで売っていた…今や、それも、すべて重量貨物列車の積荷となったのだ。トランス-シベリアの動きとは、年間1億2千万トンを下らぬ貨物の輸送であり…そして、それはヨーロッパ-アジア間のコンテナ貿易の13%を占める計算だ。ロシアは、170億米ドルをその拡大に対して投資し、貨物輸送の許容量を、さらに55百万トン増加させようとしている。
 
それに加えて、サンクト・ペテルスブルグの港の拡大によって、ロシアの太平洋岸のターミナルのキャパシティを2020年までに3倍にすることも計画している─シーメンス社は32億ドルの契約の一部として、675台の貨物車両を追加供給している。

ここでのロシアのゲームの名前とは、あらゆる手段を用いた原材料商品の輸出拡大だ。最低、125万バレルの…そしてそれは、ロシアからアジアへの動きともみなされる。アップグレードされたトランス-シベリアとは、欧州アジア間の貿易の驚異となるだろう。トランス・シベリアを通して、アジアの製品がヨーロッパに10日以内で届く。韓国か日本からドイツまでは、海上輸送では少なくとも28日かかる。日本と韓国が、大いなるトランス-シベリア・ファンであることは驚くに値しない。そして、ヨーロッパ人の視点からすれば、より安くて速いトランス-シベリアのアジアへのルートというものは、何者にも負けないものだ。

解決のヒントがない
 Ain't got a clue

冷戦?…そんなものは、ノスタルジーのビジネスの一種なのだ。昏睡状態のヨーロッパや、ヨーロッパとアメリカの多重摩擦、北京が国内を見つめて、その発展のモデルを調整してパズルを解こうとしていることや、麻痺に陥ったオバマ政権…などとともに、モスクワは完璧なるオープニングを見出し、その無制限なる商業的拡大の戦略へと乗り出そうとしているのだ。

オバマ政権の愚鈍さ─〔アメリカのシンクタンク王国は言わずもがな〕─とは、誇張しようがないものだ。Beltwayでは誰も、健全なロシアの政策というものを明言したことがなかった…プーチンを悪魔化する以外には。それはVlad the Hammerにとっては、ちょうど、好都合だった…彼は忙しく、ヨーロッパの周縁においてのみならず、その中心における新たな戦略的リアリティをも入念に、構築しているところだ。ロシアは帰ってきた─大音響と共に。
 
こうしたより大きな物事のスキーム(枠組み)のなかでの、ポスト冷戦時代の環境に彷徨いながら、スノーデン事件とはちょうどパズルの一片に過ぎないのだ。そして、ここに、政治を完璧に映し出す個人がいる。Vlad the Hammerは、彼が何をしているのかを、はっきり理解している-臆病者のオバマが、トランス-シベリアの貨物列車のヘッドライトに囚われた鹿のごとく、見えているというなかで。