Wednesday, December 30, 2015

シリア北端の国境線を奪え The Race for Syria's Northern Border By Pepe Escobar

A NATO AWACS aircraft
シリア北端の国境線を奪えThe Race for Syria's Northern Border 
By ぺぺ・エスコバル (2015/12/21, RT


もしも、ダマスカスのシリア政府か、あるいはクルド人たちがシリアとトルコ国境の最後の一幅を奪ったなら…トルコ政府のシリアへの影響力のゲームとはもう、ゲーム・オーバーだ。

ロシアとトルコのドラマのなかで、最高の利益を得る者とは誰なのか?…言うまでもなく、それは「混沌の帝国(Empire of Chaos)」だ。自棄的になるアンカラのトルコ政府は、ますますNATOの抱擁にたよることになる。
「パイプライン-ニスタン(Pipelineistan)」のアリーナ席では、Turkish Stream(*))のプロジェクトが延期になったままだ─キャンセルはされていないが。ユーラシアの統合…つまり、中国とロシアにとっての21世紀のキー・プロジェクトは、酷く妨げられてしまった。そんななかで、オバマ政権の「戦略」としてまかり通るものとは、ぬるぬるした日本のウナギよりも一層、摑みどころがない。米国の多くのシンクタンクは、それを、「戦場での紛争を解く」ための「努力」だ、などと解釈する─シリアで活動するNATOの主なサポーターたち (すなわち米国、英国、フランス、ドイツ、そしてトルコ…)が、ISISに対する「大規模攻撃」とされるものに向けてギアをハイに入れているにも関わらず。
「…とされるもの」とそれを呼ぶ理由とは─なぜなら…すべての作戦が、最上級の影絵芝居(prime shadow play)を巻き込んでいるからなのだ。そして、「紛争を解く」ということはむしろ、「紛争を再開する」ことを意味する…。 (*Turkish Streamロシアが計画中の、ロシアから黒海経由でトルコ、シリアに通じる天然ガスパイプライン)

プーチン大統領が、「スルタン」エルドアンによるロシア軍機・スホーイ8Su-24の撃墜を最高にイロジカルな(非合理、筋の通らない)行為、とみているのは間違いない…その動機としてはもちろん、ロシア空軍によるトルクメン族への空爆も含まれる─ トルクメン族とは、トルコ政府が北シリアでコントロールしているフィフス・コラム(密かに外部に忠誠を誓う五列目の隊列)なのだ。…そしてまた、盗まれたシリアの石油密売事業へのロシアの容赦のない攻撃(*)も、航空機撃墜の一因なのだが─そこには、かなり著名なトルコ人たちとISISとの共謀関係がある。(*11月以降、ロシアはシリア・トルコ国境付近の空撮により、原油を運ぶISの1万台超のタンクローリー車両を発見し、以来空爆を強化している)
 
もしも主要なエネルギーの領域に眼をやるなら…それは一層、イロジカルにみえる。アンカラのトルコ政府は、エネルギーの27%を石油に、35%を天然ガスに依存している。昨年トルコは、その天然ガスの55%をロシアから購入して、18%をイランから購入していたのだ。

その多種多様なインフラ問題のせいで─イランは単純に、近い将来にトルコ(そして、ヨーロッパ)への天然ガス供給の分野では、ガスプロム(Gazprom)の強い競合にはなり得ない。その建設工事が将来、再開されると仮定すれば、ターキッシュ・ストリームとは、トルコと中欧・南欧諸国のいずれにとっても非常によい取引になる。




Spin me a coalition 有志連合についてスピン(政治的な誇張話)を唱え

(シリア北部への米軍特殊部隊の配備をも含め、)現在、演じられている影絵芝居とは─トルコ人とアメリカ人が、重要拠点であるジャラブルスJarabulus の十字路(交差点)から、ISを駆逐すべく攻撃準備している可能性も呼びさます。そのためのエルドアンの口実とは、よく知られている…つまりシリアのYPG(*)のクルド人たちが、彼らの北部シリアの3つの地域を統合しよう、とする企みを何としても阻止しようというものだ。この回廊地域においてエルドアンは、トルクメンの危なっかしくも曖昧な有象無象の一団(…すなわち不特定多数の…穏健なスンニ派叛乱勢力と混ざりあった勢力…それは、彼の代理勢力なのだが)を配備して…彼らがトルコとのあらゆるコミュニケーション(および、密輸)のルートを、オープンにし続けるよう望んでいる。(*YPG=People's Protection Units:クルド人民防衛隊)https://ja.wikipedia.org/wiki/クルド人民防衛隊)

一方でまた、シリアのクルド人達は、そうした場に最初に到達したいと望んでいる。アメリカ人による空爆とロシア人による空爆の援護のもとで。これはオバマ・チームとクレムリンの両政府が、シリアについて達した数少ない合意のひとつなのだ─スルタン(エルドアン)にとってはまったく絶望すべきことだなのが。アンカラの発した内部的な言葉では…トルコはジャラブルスに向かって陸上部隊をプッシュする準備はあるものの─ただしそれはアメリカ軍の援護のもとで行うに限るのだという…これは、余りにも馬鹿げている…ワシントンとアンカラの両政府が、同じエンドゲームを望んでいるとはとても考えられないのに…。
そんななかで、モスクワでシリア問題を論じつつ、米国務長官ジョン・ケリーは(記録によれば)ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相から合意を強いられた、という─「シリアの人々」は選挙を通じて、彼ら自身でアサドの将来を決めなければならないと。…かくして今や、オバマ政権でさえも、「アサドは去るべきだ(Asad must go…)」という言葉が、もはや地下深く葬られたという印象を振りまいているようにみえる。
…否…そんなに素早くは行くわけはない。影絵芝居とは、均衡を維持するものの一部としてしぶとく残存し続けている。いずれにせよ(結局のところ、)すべてのプレーヤーが容認する有名な「トップ10のテロリストのリスト」というものは…今や(…砂漠の蛇たちによるいかなる振る舞いも武器にし続けられるような)トルコとサウジ・アラビアによっても、容認されねばならないのだ…そうした砂漠の蛇たちが、「アサドは去るべきだ─」などとうそぶき続ける限り。

この蛇の穴に這い入る者とはつまり─ホリデー・シーズンのジョークだ。…すなわちそれは、34カ国─リヤドのサウジ政権によって率いられた「すべてのイスラム世界諸国からなる」…反テロ同盟…と称するものだ。イエメンでの戦争の遂行者である王太子代理で、防衛大臣のモハメド・ビン・サルマンMohammed bin Salmanは 「テロリストへの資金の流れを停止するめ目的のた」、この、曖昧で判然としない新たなる秘密取引を行う…とすら誓ったのだ。たとえ、もしもサウード家が、彼らの地元の気の触れたイマームたちや、信仰心の厚くて裕福な、「資金援助者」たちの首を切ることがあろうとも。

この「有志連合」─つまり、既存の…アメリカ先導の…化け物じみた…非効果的な、「危ない日和見主義者たちの同盟(CDO= Coalition of the Dodgy Opportunists)」というものの内部に(ビルト・インされた〕同盟─ とは、生のままの(水で薄められていない)スピン(*政治的目的ためのの虚言・大言壮語に他ならない。サウジ・アラビアとアラブ首長国連邦(UAE)とはこの夏以来、ISに対してはまったく何の行いもしていない。彼らはむしろ、嬉々としてイエメンを空爆している。彼らの「軍隊」には、傭兵ばかりがはびこっている。傭兵がいなければ、サウジ軍は存在しない。パキスタンとエジプトは、確かに軍隊を持っているが…しかし彼らは、火急を要するローカルな問題に忙殺されて…たとえ山ほどのオイルダラーの賄賂を贈られようとも、その部隊、を「シラク(Syraqの泥沼」に派遣することなどできない。(*スピン=政治的操作を意図したぎまん的物言い・大言壮語 (*Syraq=Syria+Iraq)
彼らのうちの抜け目のないエデルマン(*)のロビイストたちが調合した…こうしたスピンを駆使して、リヤドの政権は…彼らがいかにシリアを崩壊〔分裂〕させよう、と強く試みていのるか─ということからテーマを逸らせ得ると信じている。(*世界最大の米系PR会社)
シリアの人口構成(その大量の難民を含めて)というものは、その14%内外をアラウィ派のシーア派が占め、5%をキリスト教徒、3%をドゥルーズ教徒、1%を12イマーム派(twelvers)のイスラム教徒が、そして10%をクルド人が占めている─およそ40%は、絶対的多数の左派であるスンニ派のイスラム教徒だ…その大半は世俗的な左派でありダマスカスやアレッポのビジネス・エリートとの快適な繋がりを持っていることは言うまでもなく…彼らは幾世代にもわたり、政府に寄り添われてきた。
リヤドの政府、そして、アンカラの政府の抱いている信念─つまり、少数のサラフィスト-ジハーディスト(Salafi-jihadist)たちのグループならどんな説得方法によってでも、こうした複雑な構成のバランスを崩せるだろう、(国家全体の支配も可能なだけでなく)という信念…とは、どんなロジカルな説明にも反するものだ。


国境線の破れ目を獲得するThe break for the border 

それゆえに、いまや全てが、国境線の破れ目(break)というものにかかっている。シリアのクルド人たちは、大声で何やら叫び続けている─「真のクルド人は、ジャラブルスに行く」─というようなことを。ジャラブルスとは…要するに、シリアにおけるトルコの最後の砦なのだ(ロシアの空軍は、ラタキアLatakiaの北部で、トルクメンの戦闘員の隊列以外のすべてを皆殺しにしたのだ…)

クルド人同士が統合する、回廊地帯というものを想像してほしい─AfrinからRojavaまでの地域の、残された地へと至るものを。このことはトルコが、シリアから切り離されたことを意味する…そして、究極的に、ジハーディスト・ハイウェイというものの終わりを意味し;…トルコのシークレットサービスによる、Daesh(IS)への、豪勢で気前の良い兵站支援の提供(…ビッグマックの差し入れからトルコでの休日に至るまでの…)の終わりを意味し; シリアの盗まれた石油を輸送するDaesh Highway〔ISのハイウェイ〕の終焉をも意味する。准・自治地域(県)を、州のプロトタイプというステータスのもとで支配するYPG…すなわちPKKクルド労働者党の同盟者…については触れるまでもないことだ。

どうか、間違えないでほしい─スルタン(エルドアン)は、それを防ぐために掴むべきホールド・バーを持っていない。ISとは、トルコ政府にとっての「実存的な脅威(existential threat」だったことは一度もない。これとは対照的に…それは常に役に立つ、間接的な「同盟者」だった。アンカラの政府は、Daeshの壊滅に至る道とは、アサド政権の交代を経なければならないという神話を信じ続けてきた。
ロシアはブラフ(bluff)、虚勢的な脅し)をも曝けだした。レームダック(死に体)と化しているオバマ政権には、未だに確実さを有していない; 我々はエルドアンを…無謀にもNATOをロシアに直接対峙させようとすら試みているエルドアンを…利用すべきなのか?あるいは、我々は彼を棄てるべきなのか?その答えとは─ 誰がどうやって国境線の破れ目(break)を獲得できるのかにある。

https://www.rt.com/op-edge/326536-turkey-isis-syria-erdogan/

*ターキッシュ・ストリームTurkish Stream

ロシアから黒海を経由し、トルコに達する天然ガス・パイプライン計画(先行のサウス・ストリーム計画の代替)として、201412月プーチン大統領がトルコ訪問を機に提案。201511月、トルコによるロシア空軍機の撃墜を受けて、両国が相次ぎ計画の凍結放棄を宣言。

当初、ロシアのRusskayaを起点にトルコ側進入地点は北西トルコのKıyıköy村と策定され、ガスプロム社は合意後直ちに工事開始することを予定していたが、年間の計画輸送容量630億平方メートル(うちトルコが140平方メートルを購入し、残りをヨーロッパに輸出)に対してギリシャ・トルコ国境以西の輸送可能量の不足〔買い手、及びインフラ不足〕が判明し、交渉は決着しなかった。

両国の最初の直結天然ガス・パイプライン計画は、2005年のブルー・ストリーム計画であり、その延長のサウス・ストリームも計画されたものの、実現されなかった。

2009年プーチンが黒海海底にブルー・ストリーム1と並行するパイプラインを提案(SamsunからCeyhan,、シリア、レバノン、イスラエル、キプロスを跨ぐ)。

201511月トルコによるロシアのスホーイ空軍機撃墜の後、ロシアの経済相がターキッシュ・ストリームの計画凍結を宣言、125日にトルコのエルドアン大統領は

同計画を「トルコの要求に対するロシアの不服従のため」停止すると発表。(wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Turkish_Stream

*2015年12月30日、ロシアが同計画の再開を仄めかしたと報じた記事。
Russia Ready to Increase Gas Supply to Turkey, Resume Turkish Stream
http://www.naturalgaseurope.com/russia-gas-supply-turkey-resume-turkish-stream
 


Pepe Escobar: How Russia is shattering the Turkish game in Syria (著者による本記事の前記事)    ロシア諜報機関,トルコ-イラク国境・シリア国境付近の空撮で12000台の「ISのタンクローリー」の車列を発見Russian intel spots 12,000 oil tankers & trucks on Turkey-Iraq border - General Staff (12/25, RT) https://www.rt.com/news/327063-russian-intelligence-oil-tankers-turkey/



いま、真実が現れる─アメリカは、いかにシリアとイラクでISISの台頭を煽ったのか Now the truth emerges: how the US fuelled the rise of Isis in Syria and Iraq By ソーマス・ミルン (2015/6/3, The Guardian
─宗派的なテロリスト集団を、それらを生みだした欧米諸国がうち負かすことはできない



テロとの戦い─14年前にジョージ・ブッシュが放ったの終わりのない作戦とは、自らをこれまでになくグロテスクな歪みに結びつけようとしている。この月曜日、ロンドンでは、シリアでテロリズムに加担したとの容疑でスウェーデン人Bherlin Gildoの裁判が行われていたが─そこでは、被告の男がそれを支援したという容疑を問われていた、同じ叛乱勢力に対し英国の諜報部も武器援助をし続けていた、という件が明るみに出て裁判は破綻した 

検察側は告訴を棄却した─明らかに諜報機関の顔を潰さないよう配慮して。弁護側は英国という国家自らが、シリアの反体制派に「多大なサポート」を行っていることの十分な証拠をよそに、それが裁判にもかけられずにまかり通るのは「正義に対する侮辱だ」と論じあった。

そこには政府が豪語している、単なる「致命的でない支援」の実施(たとえば、防弾チョッキや軍用車両の供給など)だけでなく、訓練やロジスティクス(兵站)の支援、秘密裏の「大規模な武器支援」なども含まれていた。報告書によれば、M16CIAは協力して─カダフィ政権が失墜した後の2012年に、リビアの武器貯蔵庫からシリアの叛乱勢力に対して、ラットライン(*)で武器を輸送していた。(*禁止地域における人員や軍事物資の秘密輸送)  

明らかに、閣僚や治安担当者たち自身にとっても馴染みの深い行為を理由に、誰かを刑務所送りにすることは愚劣にすぎた。しかしそれは、数多くのよく似た出来事の単なる最新の事例に過ぎなかった。もっと不運な例では─ロンドンのタクシー運転手、Anis Saardarの一件がある─彼は2007年に英米のイラク占領に抵抗する叛乱勢力に加担したとの理由で、二週間前に終身刑を宣告されて
いた。通常の言葉の定義でいうなら(ジュネーブ条約による定義も含めて)、違法な侵略や占領に武力で抵抗することはテロリズムや殺人といった定義には当てはまらない筈なのだ。

しかし、テロリズムというものはいまや、それを観る者の眼に応じて杓子定規に捉えられる。そして、中東では特にそうなりやすい─そこでは、今日のテロリストが明日は専制独裁に抵抗する武装戦士となるのだ(today’s terrorists are tomorrow’s fighters against tyranny)─そして、欧米の政策立案者からの相談の電話に混乱するあまりに、気紛れな行動に走るような同盟者も敵なのだ。

過去一年間、米英をはじめとした欧米勢力がイラクに立ち戻っていた─おそらく、高度に宗派的なテロ・グループであるイスラム国Islamic State、(以前は イラクのアルカイダとして知られた)を破壊するという大義のために。これは、ISISがイラクとシリアの領土の広大な塊を制圧し、独自流のIslamic caliphate(イスラム・カリフ国)の建国を宣言して以降のことだ。
その作戦は不首尾に終わっていた。先月、ISISはイラクの都市ラマディに突入したが、その時には、今や存在していない国境線の反対側で、彼らの勢力がシリアの街パルミラを制圧していた。アル・カイダのオフィシャルなフランチャイズ、ヌスラ前線もまたシリアで戦果を得ていた。

イラク人のなかには、こうした出来事が起こりつつあった際に、米国にはやる気がなかったと苦言を漏らす者もいる。米国人たちは彼らが市民の巻き添えによる死を避けようとしていたのだと主張し、そして彼らは大いに勝利をあげたとも主張する。米政府の人間たちは個人的には─宗派紛争におけるスンニ派の拠点を弾圧するようにみられることでペルシャ湾の彼らのスンニ派の同盟者らを憤らせたくなかった、とも主張する。

我々がここに至るまでの道のりを照らし出す光とは─最近、その機密が密かに公開された20128月の米国諜報部の報告書が放っている。それは不気味にそれを予言しながらも、事実上それを歓迎している─シリア東部での「サラフィストの小国家」の建国、そしてシリアとイラクでの、アル・カイダによって統制支配されたイスラム国家の設立というものを。当時の欧米による主張とは鮮明なコントラストをなしつつ、国防情報局(DIA)の書類は─イラクのアルカイダ(=ISの前身)と、その友人(同盟者)のサラフィ主義者たちが「シリアの叛乱勢力を動かす大きな原動力」であると認めている─そして、「欧米諸国とペルシャ湾岸諸国、そしてトルコ」が、シリア東部の支配権の奪取を狙う反体制派の運動を支援していた、とも述べている。

「建国宣言のなされる(あるいは宣言されない)サラフィスト小国家の可能性」を挙げるペンタゴンの報告書は、さらにこう続く。「これは、まさに反体制勢力を支援する者たちの望むものだ…シリアの政権を孤立させるために。それはシーア派勢力〔=イラクとイラン〕の拡大に対しての、戦略的な縦深を生むことでもあるのだが。」

米軍は叛乱勢力の一翼を空爆する傍らでシリアでは他の叛乱勢力も支援している。それは、その2年後に起きた出来事と寸分違わぬ出来事だった。その報告書とは政策に関する書類ではない。そこには、かなり編集が施されており、その文言も曖昧である。しかし、それが示唆するものとは明白だ─米国と他の同盟国は単に、シリアの叛乱勢力に向けてそれが非常に過激な宗派勢力に率いられていると知りつつ、武器援助を行っていただけではなく…彼らは、何らかの形での「イスラム国家」の創設を容認する準備があった─(それがイラクの統一に対する「深刻な危機」になるという可能性にも関わらず)つまり、シリアを弱体化するためのスンニ派の緩衝地帯、として。


そのことは米国がISを創造したということは勿論、意味しない─湾岸の同盟諸国は確かに、そこに何らかの役割を果たしたのだが(米国副大統領ジョー・バイデンが昨年、そう認めたように)。しかし米国と英国がイラクを侵攻する前には、イラクにはアル・カイダはいなかった。そして、米国は確かにISの存在をその地域の他の勢力への対抗勢力として利用していた─それが西欧による支配というものの維持の、より大きな原動力の一部となるように。

そうした計算とは…ISが欧米人の斬首を行いはじめて、オンラインで残虐な行為を喧伝しはじめたときに変化を遂げた…そして湾岸諸国もいまや、シリアの戦争ではヌスラ戦線などの他の勢力を支持している。しかし、米国や欧米諸国がジハード主義者の勢力と共闘する習癖というものは(そうした勢力はその後に舞い戻っては、彼らの手を噛むものなのだが)、少なくとも1980年代の、アフガンにおける反ソ連の戦いにまで遡るものだ─それがCIAの後見の下に、アル・カイダを培ったのだ。



その事はイラクが占領されているあいだに再度、調整された─米軍がペトラエウス将軍の許で…イラクの叛乱勢力を弱体化するために、宗派勢力の暗殺部隊を用いてエル・サルバドル式の汚い戦争を主導していた際に。そしてそれは、2011年にNATOのもくろんだリビアの戦争で再現された─そのリビアではISが、先週、カダフィの生まれた町Sirteを制圧したのだが。


現実には─いまや中東で大災害に見舞われている米国と欧米の政策は「分割して支配せよ(divide-and-rule」」という帝国主義者の古びた鋳型によるものだ。米軍は叛乱勢力の一翼を空爆する間に、シリアでは他の勢力を支援して─そしてイラクではISに対抗するべく、イランとも実質的に同盟して共同軍事作戦を展開し…その間に、イランの支援するイエメンのフーシ勢力と戦うサウジの軍事作戦も支援している。だが、米国の混乱した政策とはしばしば、そうしたアプローチに完璧にフィット〔適合〕するような…弱体で細分化されたイラクとシリアになってあらわれる。

明らかなのは、ISとその怪物性は、イラクとシリアにそれを最初にもたらした同じ勢力によっては壊滅させられないということだ─あるいは、そのオープンで転向的な(支持勢力をしばしば変えるような)戦いの方法が、それ以降もずっと幾年も隆盛しているということだ。中東への欧米の終わりのない軍事介入とは、ただ破壊と分裂を生んだだけだった。その病を治癒させられる者とはその地域の人々だけであって…そのウィルスを培養した者たちではない。
http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/jun/03/us-isis-syria-iraq