Friday, June 12, 2009

ヒズボラがハリリを暗殺したのか?/New Evidence Points to Hezbollah in Hariri Murder

4年前のレバノン元首相暗殺について、"シュピーゲル"(ドイツ紙)がのせた新たな暴露記事は、 レバノンの選挙をひかえた先日、わざとリークされたのではといわれたが…

国際法廷の捜査のブレークスルー: ハリリ暗殺へのヒズボラの関与をさし示す新しい証拠 (5月23日、シュピーゲル)


<冒頭略>…2005年末、ドイツの検察官デトレフ・メフリスに率いられた国連認可の捜査チームは7ヶ月の捜査の後、ハリリ殺害の背後にシリアの治安勢力とレバノンの政府高官がいると発表し、追って4人の容疑者が逮捕された。しかし最終的な具体的証拠はなかった。メフリスの後任のベルギー人、ブランメルツのもとで捜査は滞ってしまった。

国連の特別法廷は確かな事実を追求すべく、2009年の3月1日に開廷した。それはオランダの街Leidschendamに設置され、初年度だけで4千万ポンド(5600万ドル)の予算を与えられ、その51%を国連が、49%をレバノン政府が負担した。その法廷は最初の3年間で最初の判決を予定し、最高刑は終身刑となる。カナダ人のダニエル・ベルマーレ、57歳が主任裁判官に任命され、他の11人の判事はレバノン人。その人選は安全上秘密とされている。

同法廷は最初の公式の判決で4月に、メフリスにより逮捕されていた4人の容疑者の解放を命じた。それまでに彼らは既にレバノンの刑務所で3年以上服役していた。それ以降、Leidschendamの街は死んだように静かで、まるで捜査は今始まったばかりで、何も発表する事がないかのようだ。
しかし今や、捜査が新たに爆発的な新事実を得たらしい。シュピーゲルは同法廷に近い筋からこの情報を得て、その内部文書でも確認した。このハリリ事件はセンセーショナルな展開に発展しそうだ。レバノンでの集中捜査の示すのは新しい事実:つまりその恐るべき暗殺攻撃を計画、実行したのはシリア人ではなく、レバノンのシーア派の”神の党”ヒズボラの特殊部隊の仕業だったというのだ。
同法廷の主任判事ベルマーレと彼の判事達は明らかに、彼らが1ヶ月ほど前から発見していたこの情報の公表を差し控えている。彼らはいったい何を恐れているのだろうか?

シュピーゲルの得た情報によると、この事件の捜査が覆されたのは、サイバー刑事のもちいるシャーロック・ホームズばりの最新鋭テクノロジーを駆使した発見だという。何ヶ月もの苦難の捜査の中、ウィッサム・エイド隊長の率いるレバノンの治安部隊の秘密部隊が、ハリリの暗殺に至る日々、また当日彼をとりまいていた幾つもの携帯電話の番号を割り出した。捜査官達はこれらの携帯電話を"first circle of hell"(地獄の第一の輪)と呼んだ。

キャプテン・エイドの捜査チームは最終的に、8個の携帯電話を特定した…それらはすべて同じ日に北部レバノンの都市、トリポリで購入されていた。それらは暗殺の前6週間にわたり使用され、特に彼ら使用者同士の間でのコミュニケーションに使用された─ある一台だけを除いて…そしてそれらは暗殺の後は一度も使用されていない。
レバノンの主任捜査官、キャプテン・エイド、31歳はベイルート郊外のハスミヤで、2008年の1月25日にテロリストの攻撃によって殺害された。他の3人の人も殺されたこの事件は明らかに捜査の停滞を狙ったものだった。そして再び、ヒズボラの司令部が関わっている事の証拠を示す、レバノンの重要人物への攻撃が過去4年間に数十件も発生した。

ハリリの人気の拡大は、レバノンのシーア派のリーダー、ナスララにとっては茨の棘のようだった。2005年にその億万長者は、人気の面でその革命のリーダーを凌駕した。しかも彼は、その狂信的でスパルタ精神のヒズボラのリーダーが嫌う全てのものをもっていた: 西欧諸国との近い関係、国内の穏健なアラブ人のリーダーとしての顕著な立場、贅沢なライフスタイル、そしてシーア派に対抗するスンニ派の信仰者であるという点だ。ハリリは、ある意味でナスララを代替する人物といえた。

国連の前・調査委員会検察官のメフリスは、彼自身の懸念事項を抱いている。彼は彼自身の知識と信念に基づき、500人以上の証人を審問したが、いまや彼は初めからシリアが犯人との結論寄りで捜査をしすぎた、として批判されている。先日、解放された4人の容疑者のうちジャマル・アル・サイード(レバノンの元治安維持警察長官)は、捜査を誘導したとの容疑で彼を告訴、またメフリスの部下のゲルハルト・レーマンを脅迫の容疑で告訴したという。メフリスは告訴内容を否認、また現在、サウジアラビアに赴任中のレーマンはコメントを拒否している。
スポットライトを浴びているジャマル・アル・サイードは次期のレバノンの法務大臣への昇進が検討されている。
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,626412,00.html

今回の選挙では、ハリリの息子率いる親米派の「3月14日連合」が勝利をおさめたが…選挙前、ヒズボラの勝利の可能性を予測していたイスラエル紙がドイツ紙の記事にこのようにコメントした…

★ヒズボラがハリリ事件の検証への世間の注意を逸らすため、イスラエルを攻撃する?(5月26日、ハーレツ)


今回の6/7のレバノンの選挙でヒズボラと北部イスラエルの国境地域の緊張は高まっているが、イスラエルの諜報部では、今回ヒズボラが緊張をエスカレートさせる恐れはないという予測をもとに、状況を注視している。

中東の情勢はしばしば夏にホットになる。第2次レバノン戦争は2006年の夏に勃発し、’07年の夏の緊張の時期にはイスラエルがシリアの核施設を空爆した…それはシリアからの何ら返答を引き出さなかったけれども。今年、国際社会はイランの核開発をめぐって高まるイスラエルとイランの間の緊張を心配していた。

しかし、北部国境地帯の前哨地域では、イランとの間におけるよりもすばやく緊張状態が発火する恐れがあった。イランとの問題は新聞の見出しとなっていたがワシントンがテヘランと対話を試みている今後数ヶ月の間に何か起こるだろうとの予測はない。(それが起こるときだけイスラエルのイランへの軍事攻撃はありうるが。)

レバノンでは、これと対照的に目くるめく速さで事態が進展し、過去2週間だけでもレバノンでの「スパイ活動の連鎖」が発覚したと報道された。ドイツの新聞シュピーゲルは、国連による前首相ハリリの暗殺に関する特別調査委員会が、暗殺の影にはシリアでなくヒズボラがいた、との結論を出したむね報じた:ヒズボラの上官はイスラエルが同組織のリーダー、ハッサン・ナスララの暗殺を画策していたとし、それは地域の紛争を誘発することだと述べたという。
エジプトは同国内でのヒズボラの活動員の存在を報じ、イスラエルの国防軍は北部地域の緊張に対処するためにGOC の北部指令官Gadi Eizenkotの任期の一年間延長を考慮しているという。
イスラエル国防軍は来週、全土にわたる軍事演習を予定しており、これは幾つかの前哨地域からのイスラエルの都市へのロケット弾攻撃やミサイル攻撃を誘発する恐れがある。

ドイツ紙の報道は、イスラエルにとって完全な驚きとはいえなかっただろう。イスラエル諜報部は国連による当初の推測、つまりシリアが前首相の暗殺の背後にいるという予測を共有していたものの、別の見方もあった。暗殺の3年以上前、2001年末に軍事諜報部に提出されたレポートではハリリがヒズボラに暗殺されるとの予測をだしている。そして暗殺のすぐ後には、MIの高官が少数派の意見として、シリアはでなくヒズボラを疑えという意見書を提出している。

ハリリは日本からの盗難車のトラックに積まれた爆薬により暗殺され、そしてMIの高官の見方では地球規模のテロリスト組織をもつヒズボラだけが、ハリリの動静に関する精密な把握を含めてそのような高性能で金のかかる攻撃を遂行できたという。その高官は、その攻撃がイランの利益にも適い、ヒズボラはシリアに対してトラブルの原因を作ることにも利益を有するとの意見を述べている。

国連の上層部が事実を断定するまで、その報道が選挙の結果に大きな影響を及ぼす事はないだろう。ヒズボラはその話を、選挙の結果を左右するための「捏造だ」と呼び、そして永年のヒズボラの敵でもあるドゥルーズ派のリーダーWalid Jumblatt でさえも、これは外国機関が選挙の操作を狙った干渉行為に過ぎない、との説に同意している。

ヒズボラはこの選挙で議席を得るだろう、そして次期の連合政権を先導するかもしれない。しかし国連の公式声明が出された場合、その結果の構図は塗りかえられるかもしれない。シーア派の一部有権者やライバルのシーア派の党、Amal,そして無党派スンニ派層、ドゥルーズ派やクリスチャンの有権者層も、Saad Hariri率いる反シリア連合に支持を転じ、投票する可能性がある…。

もしそうなれば、ヒズボラは、暗殺の件に関する人々の注意をそらすべく、イスラエルとの争いを激化させるかもしれない。それには前例もある:2006年に国内の武装解除への圧力のもと、ヒズボラは7月に国境をまたいだ侵攻作戦を行い、2人のイスラエル兵を誘拐拘束しそして第2次レバノン戦争を誘発した。

国防機関はヒズボラの勝利の余波として起こりうる現象に関し、さらに論議を続けている。しかし一方で、これはイランがもくろんで達成したことだともいえて、それゆえこれはネガティブな事態だともいえる。
また一方、もしもそんな作戦が必要になるなら、それはイスラエル国防軍のレバノンでの作戦に対する国際社会の圧力を軽減するかもしれない。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1087985.html

(★関連記事
http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2009/03/lebanese-split-over-hariri-tribunal-by.html

「ハリリ暗殺事件の特別法廷をめぐるレバノン人の分裂」)