Saturday, February 25, 2017

「ディープ・ステイト」のトランプに対する攻撃を応援するのは、民主主義崩壊への処方箋なのか? Greenwald: Empowering the "Deep State" to Undermine Trump is Prescription for Destroying Democracy 

米国における「ディープ・ステイト」とは
"Deep state" in the United States(Wikipedia)
米国の著名な人物たちは、何十年にもわたって、「ディープ・ステイト(deep state)」、「国家の内部の国家」といったものに対する懸念を表明してきた。彼らはそれが、民主的国家としての米国の政権を支配している政党に関わらず、公共政策に影響力や支配力を行使しているのではないか、と疑念を抱いてきた。 歴史上、「ディープ・ステイト(deep state)」という言葉は、しばしばトルコなどの国の例を引合いに語られる─その国では、影の政府が国の政策の重要な側面に影響力や支配力を行使している、とされている─米国では、トランプ政権が諜報部門からの情報のリークに直面して、官僚機構のコントロールに苦闘している状況から、この言葉が注目を浴びてきた。

フィリップ・ジラルディによれば─権力の中枢とは、軍産複合体と諜報部門、そして、ウォール街がその中心をなしているともいうが、ビル・モイヤーズはそこに金権政治家とオリガルキーの存在を挙げている。
さらに、ピーター・デール・スコット教授は、「巨大石油企業」やメディア産業などもキープレイヤーである、とする…。また、デヴィッド・タルボットは、国家安全局の官僚、特にアレン・デュレスなどの名前を挙げる。
ワシントンの元・政府職員のマイク・ロフグレンによって書かれた関連書籍(*)では、シリコンヴァレー企業や、「政府を構成する重要要素」、「ウォール街」などにも言及しながら、そこでは、「国家」の非・共犯的性格というものについても強調している。  (*Mike Lofgren "The Deep State: The Fall of the Constitution and the Rise of a Shadow Government", 2016.9)

政治家学者のマイケル・J・グレノンは、こうした傾向というものは、国家の政策が選挙によって選ばれた政府の高官ではなく、官僚組織によって形作られている─という状況の結果であると信じている。

トランプ政権における「ディープ・ステイト」
トランプ政権下で、「ディープ・ステイト」という言葉はメディアや幾人かの政治的人物に関して用いられている─特に、トランプの国家安全保障問題担当顧問に任命されたマイケル・フリン氏の辞任を招いた、ワシントン・ポストとニューヨークタイムズに対する諜報機関による情報のリークの後には─こうしたリークや、内部的離反などを通じて政策をコントロールする、諜報部門や行政執行官僚などを指して用いられている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Deep_state_in_the_United_States


グレン・グリーンウォルドが語る:「ディープ・ステイト」のトランプへの攻撃は、
民主主義崩壊への処方箋だ
Greenwald: Empowering the "Deep State" to Undermine Trump is Prescription for Destroying Democracy (Democracy Now! 2017/2/16)


  トランプが大統領補佐官の職に任命したマイケル・フリン中将が、大統領選挙期間中に、私人の立場でありながら、ロシアとの非公式の会話による交渉を行っていたという疑いで解任された。このことは、CIAとFBIがフリンとロシア側になされていた会話を傍受し、その機密情報をニューヨークタイムズとワシントン・ポストにリークしたことによって露わになった。

これに対してトランプは、こうした諜報機関の行為を極めて違法な行為だといって非難し、それを暴露したメディアをも攻撃した…。
我々は、トランプ政権が11月の選挙投票日の前後にロシアとの交渉の会話を交したとされ、拡大しつつあるスキャンダルに目を向けてみたい。

1月初旬に、民主党上院議員のチャック・シューマーは、The Rachel Maddow Showに出演して、諜報部門がドナルド・トランプに対する反撃を行っているのではないかと語った。

(ビデオの抜粋) 
チャック・シューマー上院議員:
たとえば、もしもあなたが諜報機関と対決したならば…彼らは、日曜日以降に6つの手段を用いてあなたに反撃を仕掛けてくる。…だから、彼(トランプ)が鼻っ柱の強い反抗的なビジネスマンであったにせよ、彼がそんなことをするのは…実に間抜けなことであるわけだ。

エイミー・グッドマン:
…これは、1月に上院の少数党院内総務・チャック・シューマーが述べた言葉であり─
…そして我々は、ピュリッツアー賞を受賞したジャーナリストで、The Interceptの共同設立者でもあるグレン・グリーンウォルドと語ってみたい、と思う。彼は、最近のツイッターでこう述べた、「The leakers who exposed Gen Flynn’s lie committed serious and wholly justified- felonies” 
(Gen.Flynnの嘘を露呈させた情報の漏洩者(リーカー)たちは、シリアスな─そして(しかし)完全に正当化される─重罪を犯したのだ)と。

グレン・グリーンウォルド:
フリンの、ロシアの大使及び他のロシア外交官たちとの会話の内容を誰がリークしたとしても、それは、法的には極めてシリアスな犯罪とみなされる─それは、民主党のオバマ政権の最後の日々においても、重要機密をリークしたチェルシー(ブラッドレイ)・マニングやエドワード・スノーデン、(トーマス)・ドレイクなどの人々が重罪として処罰を受けたのとも同様の状況なのだ。 そして、リークされたその機密情報を掲載し、公表したニューヨークタイムズや、ワシントンポスト、NBS などのメディアも同じく重罪とされている。私自身の見方では、8年間のオバマ時代やブッシュ時代もそうだったが、政府内部の人間が、公共の役に立つ情報を暴露したという場合には、たとえそれが違法であっても…それは、正義の行為…英雄的な行為として称賛されるべきものだ、と思う。民主主義の透明性を維持する為のものとして。

今回、トランプの周囲の者たちは、漏洩者をローライフ(下等なやから)といって激しくこきおろしたが、そのことは、民主党政権が行った行為と同じものでもある。NSAの盗聴能力も、このフリンの一件で証明されたわけだが、彼らは(はたして)この盗聴行為を違法に行っていたのだろうか?それとも彼らはルーティンのなかでやっていたのか…あるいはその会話をアクシデントとしてキャッチしたのか?…といったことは我々には分らない。彼らは、フリン中将をターゲットに据えて盗聴してはいなかったが、ロシア側の政府上層部の会話をターゲティングして盗聴していた、とも述べている…その真偽のほどは分らないが…)

エイミー・グッドマン:
「Breitbart News」など(のメディア)を含むトランプ支持者のなかには、米国の諜報機関が、大統領に対する”ディープ・ステイト”によるクーデターを画策した─といって非難する者たちがいる。一方で、トランプに批判的な者のなかには、そうした活動を公然と支持する者たちが存在する。
The Weekly Standard誌の創業者で、著名な共和党アナリストであるビル・クリストルも、こんなツイッターを発した…、「明らかに、(この件では自分は)ノーマルで、民主主義的で、憲法に基づく政治というものを強く志向している。しかし、もしもそれがそういうポイントに達したなら、自分はトランプの国に対抗する”ディープ・ステイト“の方を贔屓したい」、と。

グレン・グリーンウォルド:
「ディープ・ステイト」という言葉には…詳細な、あるいは、科学的な定義などありはしないが、一般的にはワシントンの恒久的な権力の中枢の党派的勢力(faction)たちを指している。彼らは、たとえ選挙で選ばれる大統領が交代しても、変わることなくそこで権力を行使し続ける。彼らは、権力というものを概して闇のなかで秘密に行使しているがために、彼らの存在というものに民主主義制度上の信頼性が問われることは…もしもあったとしても、非常に稀なのだ。

それは、CIAとかNSA、その他の諜報機関のようなものを指しているが…それは、実質的に虚偽の情報を発する…詐欺やプロパガンダのための機関としてもくろまれた長い歴史を有する、というだけでなく、世界で最悪の戦争犯罪や、残虐行為、暗殺部隊などをもくろんだ長い歴史を持つものだ。こうした存在である彼らが、政治的にはそれに従属している筈の政権上層部から分離して力を行使するということや…実際にそうした存在に反抗する形で力を行使していくことには…ビル・クリストルなどの人物だけでなく、多くの民主党員も、彼らの信義の念を吐露して協力を誓いながら…喝采を送っている。
そして、あなたにとってこれは、単なるロシアに関する問題というわけではないのだ…。これは大統領選のキャンペーンの初期の頃にまで、ずっと戻って見直さねばならない事だが、そこには、諜報機関を率いるメンバーたちがいた─例えば、Mike Morellのような人物…彼はオバマ大統領の元でのCIAの現職長官だった。そして、Michael Hayden─彼は、ジョージ・ブッシュ政権下でCIAとNSAの両方に勤めていたが、ヒラリー・クリントンへの支持を非常にはっきりと公言していた。実際、選挙期間中にMike Morell はニューヨークタイムズ紙に、Michael Haydenはワシントン・ポストにヒラリーへの賛辞を投稿して、ドナルド・トランプはロシアに雇われた、とも述べていた。CIAと諜報機関は、最初からクリントンを熱烈に支持しており、トランプに熱烈には反対していた。そしてその理由とは、彼らがヒラリー・クリントンのポリシーを、トランプのそれよりは好んでいたからだった。

過去5年間におけるCIAの主要なポリシーの一つとは、シリアにおいて、アサド政権を政権交代させるために行う代理戦争だった。ヒラリー・クリントンは、単にそれだけでなく、オバマがシリアの戦争への米国の深入りを許さなかったことへの批判的立場に立ち、飛行禁止区域を設定して、ロシアにも対抗するよう主張した。ドナルド・トランプは、これとはまさに正反対の見解だった。彼は、我々はシリアの政権を誰がとろうとも、関知すべきではないともいった─我々はロシア人のやることを許すべきであり、そしてISISやアルカイダ、その他の敵を殲滅するために彼らへの助力さえ行うべきだ、と表明した。それゆえに、トランプのアジェンダとは、CIAが望むこととは完璧に正反対といえた。

クリントンのそれは、まさにCIAの望むものだった、それだから彼らは彼女を支援した。そしてそれゆえに、彼らは選挙期間中を通じて、何か月にもわたりトランプを弱体化させようとした。そして今、彼が選挙に勝利すると、彼らは、彼の弱体化を情報リークによって陰から狙うというよりも、アクティブに、彼の転覆を狙い始めた。彼らは彼に情報を渡さないようにしている、という訴えがある─彼らは、彼がそうした情報を手にするには値しない人物で、信頼にも値しない、と考えているからなのだ。彼らはその政策を実行するために彼ら自身を強化しているというわけだ。
今や私は、トランプが大統領の地位にある事は極度に危険だ、との考えを抱き始めている。あなたはニュースを見て─ニュース放送のなかで、その主要なトピックをみては、その事の理由を幾つも目にしているというわけだ。彼らは、環境を破壊しようとしている。彼らはセーフティ・ネットを解体しようとしている。彼らは億万長者たちを力づけようとしている。彼らはモスリムや、移民や、大勢の人間に対して頑迷なポリシーを実行したがっている。それに抵抗することは重要だ。そして、そこには多くの偉大な抵抗の手段もある…例えば彼らを抑え込むために、法廷に訴えるということだ、市民の抵抗運動などに…そして、最も重要なこととしては…民主党に、大統領選のすべてのレベルで彼らが崩壊してしまったそのあとで、彼らに自己批判を行わせて、いかに米国のもっと効果的な政治勢力となるべきなのかを自らに問いかけさせる、ということがある。それは現在、抵抗勢力がやっていることではない。その代わりに彼らがやっていることというのは、ドナルド・トランプよりもたちの悪い唯一の勢力の一派と、敵対しようとしていることだ…それが、つまりディープ・ステイト、CIAであり…その残虐行為の歴史だ…そして彼ら(ディープ・ステイト)というものは、殆ど、ソフト・クーデターを手掛けているのも同然な存在だ、という…そこでは、彼らは選挙で選ばれた大統領たちがその政策を実行することを阻んでいる、と。

そして自分が思うには、それをやることは非常に危険なことだ。もしもあなたが、一方でCIAとディープ・ステイトの両方が危険な存在だと信じて、その一方でトランプ政権というものも危険な存在だと、(私もそう信じているように)信じていようと、その両者には大きな違いが存在する…つまり、トランプは民主的に選ばれた者であり、(しょせん、)民主主義による統制支配の下にある(ちょうど司法機関もその事実をデモンストレーションして、メディアもそれを示し、市民たちもそれを示しているように)。しかしその一方で、CIAとは、人々によって選ばれた存在ではない。彼らは民主的なコントロールの対象では殆どありえないのだ。

そしてそれゆえに、CIAや諜報機関が自らを強化して、選挙で選ばれた政府の部門の弱体化を企むということは、狂気じみた行為だ。それは民主主義を、それを守るという口実のもとに、一夜にして破壊する処方箋なのだ。そして…それでもそれは…それがネオコンではなくても、民主党内の多くのネオコンの同盟者たちというものが、今や要求し、喝采していることだ。そして、彼らがそんなことをするのを見ていることは、信じがたいほどワープ(飛躍)した、危険なことだ。

エミー・グッドマン:
そして、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、今や諜報機関の担当者らは、トランプ大統領に情報を全て渡すことを避けている、何故ならば、彼らは、彼が何をするのかを心配しているからだと…他の国々の諜報機関もまた、トランプが情報を手にしたら何をするかわからない、とも懸念している─特にまた彼が、ロシアにいかなる情報を共有させるかを懸念している…のは勿論のことなのだ、という。

グレン・グリーンウォルド:
…ああそうだ、そもそも、まず最初に、ここにはメディアの問題がある─もしも、あなたがウォール・ストリート・ジャーナルの記事をみたなら、それは過去6か月間に、他の色々な目立ったロシアに関する記事というものと、ほとんど同じようなものだといえて…それらの多くは、完全に嘘だったことが証明されたわけだ。そうした記事というものは、匿名の政府職員たちが極端に曖昧な事を述べたことに基づいた記事だった。ウォール・ストリート・ジャーナルは、このようにさえ述べているのだ─「我々は誰がこれを行っているのかを知らない、情報を抑えているという事を。我々はどれほどの情報開示が抑えられていたかを知らない」。

2番目に、ドラルド・トランプがロシアの何らかのエージェントかスパイである、といった説…あるいは、彼がロシアに脅迫されていて機密情報をクレムリンに渡し、米国のエージェントを故意に危険にさらしている、といった考えというものは、考えられないほどにクレージーな言い分で─そんなことが真実であったと証明されたことは、一度もない。それは、私にグレン・ベック(*註・かつてのFOXの扇動的な看板キャスターだが今は引退している…)が、オバマに関してよく言っていた事を思い出させる…彼が黒板の前に立って、そうした不安定なチャートを…こうした、証拠のないワイルドな陰謀説のチャートというものを、しばしば描いていたようなことを。

我々はロシアが、民主党大会とジョン・ポデスタのEメールをハッキングしたとか、ドナルド・トランプとロシアとの間に不適切な繋がりがある、といった訴えについては─シリアスかつ、冷静に、しっかりした構成の捜査を行わねばならない。そして、それは公表されるべきであり、それによって我々が情報を知ることができなければならないのだ。しかし、メディアのもっているこのオブセッション(強迫観念)─それが誰であったにしても、誰かがドナルド・トランプとロシアについて彼らに囁いたなら、その情報をリークする、というオブセッション (なぜならば、彼らはそれが、彼らの記者たちに膨大な数のリツイートを発させて、それが、さらにまた…自分がまさに聞きたいと思っていた事を聞いたと思った人々による膨大なリツイートのトラフィックを発生させる…ことを知っているが故に)─というのは、まさに最悪のヒステリーに火を注ぐようなもので…そしてメディアは「彼らがそれと戦うつもりだと称している…」などといった偽ニュースさえも、生じさせている。こうしたことは、シリアスな捜査にだけ値するものであり、それは我々にとってまさに今、できていないことなのだ。

ナーミーン・シェイク:
ああ、あなたの同僚たちは、The Interceptに最近の記事を書いている、「実際に、こうした全ての「ナンセンス」な事柄に対して…、トランプが、大統領としての権力を用いて、それを直ちに明らかにしてくれたならば、良いだろうに…政府が傍受した、ロシアと彼の周囲の人間たちとの間のすべてのコミュニケーションに関する機密情報を開示させてくれたなら…」と。

そう…グレンさん、あなたはトランプはそれをすべきだと思うのか?
 グレン・グリーンウォルド: 

私が思うには、それは面白いポイントだろうという事だ─なぜなら、たとえばそこには色々な説があるのだ…フリン中将とロシアの外交官との会話や、こうした会話の記録(トランスクリプト)が何を反映しているようにみえるのか、といった事に関しては、しかし、未だに誰もその記録を見たものはいない。我々はその小さな断片の数々を目にしてはきたけれども。我々は全体の記録は、見ていないのだ。

そしてその記事を書いた私の同僚のJon Schwarzが、そうした機密を直ちに開示する力がトランプ大統領自身にある、といっていることは、絶対的に正しい。でも、そこにはそうした決断や、それが公表される可能性への見直しなどもまったく行われていない。

その一方で、過去4年間に私自身が(*エドワード・.スノーデンによる)機密情報のリークをめぐる論議の中心人物でもあった記者として、人々が、「大統領は今や、政府が行うことの可能な、最もセンシティブな情報の傍受を実行すべきだ」…などと言うことを聞いていると、それは、本当に異様なことに聞こえる…クレムリンの内部にいるロシア政府職員の会話を、どうやって盗聴するべきか、そして、それをすることが何の問題もないかのように、その盗聴で得た情報を公共の場にポンと投げ上げよう…といったような事を、人々が言うのを聞くのは。

私は、あなたは今やここでこの酷く不快な、ダブルスタンダードを目にしていると思う、つまり、対テロ戦争以来、機密情報とは聖なるもののように扱われて、それを漏洩する者は誰であろうが、裏切者(反逆者)、悪魔的な存在とみなされ、ごく長期にわたって収監されるべきであった、というなかで…今や、そうした機密情報がおもちゃのようなものに過ぎなくなったということ…もしもそれが何らかのアジェンダに役立つのならば、我々が面白がってそれを宙空に投げ上げたりしても何らの問題もないものになっているとは。そして、私が思うには、それがこの議論が進展するに伴って私をうんざりさせていることの一つなのだ…。
https://www.democracynow.org/2017/2/16/greenwald_empowering_the_deep_state_to