Friday, July 5, 2013

カタールのシリアに対する想いとは?…Qatar's love affair with Syria - By Pepe Escobar



Qatari new Emir, Tamim Bin Hamad al-Thani and Obama
カタールのシリアに対する想いとは?…Qatar's love affair with Syria 
By ぺぺ・エスコバル (6/28, Asia Times)

 これは、まるで究極の「フレンド・オブ・シリア(シリアの友人)」であるかのようだ。しかし、それがいったい、カタールに何の関係があるのだろう?ドーハの会議で語られた言葉とは、カタールは30億米ドルもの金を「アサドを追い出す」…ために費やした可能性がある、ということだった。しかし、彼はまだ、どこにも出ては行っていない。カタールの首長Hamad bin Khalifa al-Thani自身は、先週、自ら退位して、かつて「明らかな後継者」とも呼ばれた彼の息子のTamim Bin Hamad al-Thani に便宜を図り、首長の位を譲った。しかし、バシャール・アル・アサドはそのまま留まっている。どういうことなのだろう?
(*"シリアの友人"Friend of Syria: 反体制派の支援国でつくる連携組織「シリアの友人」が、6/22にドーハで外相会合を開き反体制派に緊急の軍事支援に踏み切ることで合意した)

カタールは、無数のシリアの「反乱」武装勢力に、武器を供給すべく膨大な資金を費やした…リビアに秘蔵されていた武器や、クロアチアで製造したばかりの武器をも購入し…それらは貨物機で空輸され、トルコの諜報機関の手で配布されているのだ…(そこには…サウジと連繋するスンニ派のレバノン人を通じた武器の代替的流入ルートもある)…そうした武器の最も主要な供給者とは、カタール軍の将官たちなのだ…。
ドーハの政府は─リビアの時とも同様に─「彼らの」お気に入りの反乱勢力の一団に、助言を与えようとカタール軍の特殊部隊を地上に派遣した。究極的には、こうした特殊部隊とは…経験豊かなインストラクターたちである。彼らはカタール人ではなく、パキスタン人なのだ─この必読の書類.にも書かれているように。

こうしたパキスタン人たちとは、1980年代にムジャヒディーンを教育して…90年代にタリバンを教育した、その同じ伝統ゆえに、その地からやってきていることはいうまでもない。そこから何が起きたのかは我々の誰もが皆、知っていることだ。Asia Times Onlineは、シリアが新たなアフガニスタンになっていることを、大々的に報道してきた─しかしいまや、イラク戦争で拡大してきたジハードの暴力の特別ボーナスは…はずんでいる─自爆テロや、斬首や、臓物を食べるといったような残忍な暴力というものが。

反乱勢力の大半が傭兵であることは、秘密でも何もない…彼らには通常、カタール人たちから直接、月に1300ドルが支払われ、もしも特別な作戦を実行すれば、追加の1000ドルが支払われる。多くの者たちが、ユーチューブのビデオのアップローダーという第2のキャリアも積んでいる…すなわち、アサド政権がいかに「邪悪」なのかを証明すべくアラブのネットワークにおいて選び取られた武器として…(西欧でも行われているのはいうまでもないが)。

ワシントンの(米国政府の)傍らで、カタールの政府もまた、CIAの工作員がこうした反乱勢力の武装にお墨付きを与えて…そして軍最高評議会がすべての武器収集と組織的配布を行っているという…神話を恒久化させている。そのことを信じる者は誰もが、サダム・フセインの大量破壊兵器がeBayで売られているとも、信じるだろう。
しかも、ドーハのシリア大使館は、世界でもユニークな存在だ─その人員は完全に「反乱勢力」ばかりになっている。カタールの強硬なロビー活動が、アラブ連盟の22カ国(いまや実質的に湾岸協力会議の連盟だが)に、シリアの議席を反乱勢力側に明け渡させるように強いたのだ。シリア国民評議会(SNC)(それは反乱勢力の最新の…混乱した政治的な外見だ)とは、ほかでもない、ドーハで2012年11月に設立が発表されたものだ。そこでは…連盟に属するアラブ諸国の許容度しだいで、カタールのアジェンダはSNCを統合するとも、分裂させるとも評される。
カタールの外交政策において、維持されている唯一の安定的要素とは、ムスリム同胞団に関して何ら否認しないとの方針だ。たとえば、同政府はアレッポの数ケ所の郊外地域を(理論的には)支配しているともいえるal-Farouq旅団をも支持している。

Caught in a trap 罠にとらわれた

Tamim王子が新たな首長となった今、カギとなる問いは、この武器やトラック一杯の資金の供与や、強硬なロビー活動や外交的な仮面などのらんちきパーティーが…この首長国にとって何らかの、触知可能な便益というものを意味したのか、あるいは…それを意味しうるのか?という問いだ。

ドーハの政府が振りまいていた単純な、オフィシャルな説明とは、つまり…首長とその息子がアサドに対して…2011年にシリアで最初の民衆の抵抗デモが起きた際には、人々を抑圧しないようにと助言していた、との説明だ。しかし、その説明とも同様に…その後アサドは、「人々を殺せ、と決断した」…のだと説明された─それはブルッキングス研究所の懇談会において、カタール前首相(*兼・前外相)の「HBJ」ことHamad bin Jassimが…都合よく喋った言葉のなかで説明されたことだ。
(*HBJはワシントンの同研究所の会合で、アサド政権が化学兵器を使っていると演説していた) http://blog.foreignpolicy.com/posts/2013/04/24/qatari_prime_minister_bashar_used_chemical_weapons 

…その際に認められなかったこととは、つまり…カタールがそのとき、シリアを一気に新たなリビアにする機会として飛びつくようなことは…出来なかったということだ─リビアの動乱の起きた際には、実質的に、カタールがNATO軍の空域作戦の端緒をひらいていたにもかかわらず。
  〈*2011年のNATOによるリビア空爆の際にはカタールがアラブ諸国で最初にNATO軍に参加、リビアの空域で戦闘機による偵察飛行の口火をきっていた… http://www.jpost.com/Middle-East/Qatar-becomes-1st-Arab-state-to-join-Libya-no-fly-zone

欧米とアラブのコーポレート・メディアの報道を追うなら、Tamimが新たなる救世主なのだ、との考えを抱くことも許される。彼は、「アラブの春の君主」として、絶え間なく賞賛されている…とても、「若くて」、「モダンな」、ジョギングランナーで、車とスポーツに熱心で、二人の誇るべき、「優れた」妻をもつ人物として…。
しかし、彼は、「ムスリム同胞団の春の君主」といったほうが、より適切なのだ…。彼の、アル・ジャジーラの宗派的なスーパースターである…TV評論家のシーク、ユースフ・アル・カラダウィYusuf al-Qaradawiとの密接な繋がりを考えるならば(彼は、シリアのアラウィ派とシーア派に対するジハードを呼びかけるすべての現実的な目的を支持しているのだが…そのシークとはTamimのトップの相談役の一人である。)

カタールの外交とは実質的に、ワシントンからの指令に従っていることも秘密の事項ではない。もちろん、カタールが彼らの外交政策をムスリム同胞団に同調させる件を、オバマ政権に納得させたという可能性や、あるいはオバマ政権自身が無謀な決断をしたのかも知れない…というニュアンスも存在する。Tamimは彼自身がタリバンに対してドーハにオフィスを構えるように説得したか、あるいはオバマ政権からの、そうした「示唆」に従った…という可能性もある。事実は…Tamimが、たえず国務省とペンタゴンの強面の高官らに会っていた、ということだ。そして彼は、米国とフランスとの間の、そうした価値ある武器契約にも携わっていた。
すると、そこには、サウード家との関係の綻びが存在する。ドーハの会議での言葉とは、Tamimが2010年のサウジ人たちとの戦略的討議のイニシアチブをとったことの責任に関するものだった。彼はかつて、カタール-サウジ間の高級評議会の議長でもあったのだ。このことは彼が、常にサウジ諜報部の最高権威者であるMuqrin bin Abdul Aziz王子と連絡を維持していたことを意味し…そしtて王子は明らかに、このカタールの政権委譲というものの大ファンだった。…この権力交代の背後にある本当の権力者とは、Tamimの母親のSheikha Mozahであることも秘密ではない。

王子とのコネクションは、サウジ王家がやや、けばけばしいHBJのことを完全に嫌っていたことでも理解される…彼はもちろん、前首長には極端な疑念を抱いてもいた。HBJのギャングは、ドーハの会議ではなにげなく脇役に徹していた。Tamimは、シークAbdullah bin Khalifa bin Nasser al-Thani を新たな首相に指名した(*http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2013/06/20136266416284632.html〉今後、HBJは一生、ロンドンの超億万長者Qatar Investment Authorityの経営を引き継ぐ近道に入った。悪い取引ではない。
 
カタールの、シリアでのこの顕著な影響力が残り続けるのか、どうかは不透明だ。いまや、CIAがヨルダンで膨大に集めた貯蔵武器を(その、「入念な」システムを通じて…)何百名もの「米国によって訓練された」…「よき」…シリアの反乱勢力だけに、渡そうとしていることは、誰もが知っている。ヨルダンとアラブ首長国連邦は、サウジによる大量の携帯用の対空兵器の供給を受けて、特権的な戦力の前線の勢いを加速させているところだ。カタールは一握りの、道理に合わない傭兵たちを武装させ続けるのかもしれない。このことは8月に…既に盛んに喧伝されたダマスカスでの反乱勢力の攻撃のなかで見られるのかもしれない。
代理戦争は、より一層恐ろしいものになる…という定めがある。そしてそこには、アサドが去る、という保証はない。「若くて、モダンな」、"ムスリム同胞団の春"…のエミール(首長)は、じきに、彼と彼の父親の作った罠に陥っている、という結論を見出すのかもしれない。
 http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MID-01-280613.html 

(参考記事)

反体制派に「あらゆる装備」 シリア友人会合声明、緊急供与で合意

リア反体制派を支援する米欧やアラブ各国による「シリアの友人会合」の閣僚級会合が22日、カタールの首都ドーハで開かれ、「反体制派が必要とするあらゆ る装備を緊急に供与する」との声明を発表した。フランス通信(AFP)などが伝えた。戦局がアサド政権側の優位に傾く中、反体制派へのテコ入れを強めるこ とを鮮明にした形だ。

 ケリー米国務長官は反体制派への支援強化は、米国がロシアとともにシリア問題の「政治的解決」に向けて開催を模索している国際会議を実現するため、「戦力の不均衡を是正する」のが目的だと強調した。
 ヒズボラはシリアに数千人の戦闘員を派遣し、レバノン国境に近い西部や北部アレッポ周辺などの要衝で、反体制派との戦闘に加わっているとされる。
 他方、スンニ派中心の反体制派に武器や資金供与を続けているカタールなどのスンニ派アラブ諸国では、シリア反体制派に参加する義勇兵が増えており、域内の宗派間抗争が先鋭化する危険性も指摘されている。http://sankei.jp.msn.com/world/news/130623/amr13062308470003-n1.htm

シリア反体制派、アラブ連盟首脳会議に出席 シリア政府は反発 (3/27, AFP) 

アラブ連盟は26日、カタールの首都ドーハで首脳会議を開き、2011年11月に加盟資格が停止されたシリア政府に代わりシリア反体制派の統一組織「シリア国民連合(Syrian National Coalition)」にシリアを代表する資格を与えた。

 シリア国民連合のアフマド・ムアズ・ハティーブ(Ahmed Moaz al-Khatib) 議長が率いる代表団は大きな拍手で会場に迎えられた。ハティーブ議長は24日に辞任の意向を表明したがこれについて触れることはなく、今もシリア国民連合 の実権を握っていることを示した。ハティーブ議長は首脳会議に先だち、自身の辞任問題は首脳会議終了後に処理すると述べていた。

 首脳会議では「いかなる国も、シリア国民と自由シリア軍(Free Syrian Army)の抵抗運動を支援するため、軍事的なものも含めたあらゆる形の自衛手段を提供する権利を持つ」ことが確認されたが、「シリア危機の政治的な解決を目指す努力が優先事項である」ことも付け加えられた。

 シリア政府は、アラブ連盟がシリア国民連合を迎えたことに強く反発している。国営紙ティシュリーン(Tishreen)は、「アラブの兄弟たちよ、恥を知れ。カタールおよびその他のアラブの裏切り国家がシリア政府の加盟資格を盗んで、カタールが支援している国民連合に与えたことは、法的、政治的、道徳的な犯罪だ」と非難した。

http://www.afpbb.com/article/politics/2936008/10505165  

*Brookings研究所での4月24日のカタール前首相HBJのスピーチ(video)
http://www.brookings.edu/events/2013/04/24-qatar-prime-minister

*カタールの政権委譲と新首相の指名(video)
Qatar set to get new prime minister(6/26、Al Jazeera)                               http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2013/06/20136266416284632.html 

*エジプトのムルシ大統領放逐と同時に軍当局がアル・ジャジーラのカイロ支局を閉鎖、
ジャーナリストを拘禁
Egyptian authorities target Al Jazeera(7/4、Al Jazeera)    
http://www.aljazeera.com/pressoffice/2013/07/2013741443251972.html