Friday, April 8, 2011
「US -サウジ」のリビアに関する取引が露呈…反革命の甘い匂い The sweet smell of counter-revolution By Pepe Escobar
US─サウジのリビアに関する取引が露呈された Exposed: The US-Saudi Libya deal By ペペ・エスコバル (4/2, Asia Times Online)
お前はバーレーンに侵攻しろ。そうすれば我々は、リビアのムアマール・カダフィの政権を成敗しよう。これが、簡単にいえば、バラク・オバマ政権とサウード家の間に交わされた取引のエッセンスなのだ。国連外交筋の2つの情報ソースがそれぞれ証言したことなのだが、国連決議1973号の趣旨、リビア上空での飛行禁止区域の案にアラブ連盟が「イエス」を発することと引き換えに…ワシントンがヒラリー・クリントン国務長官を通じてサウジ・アラビアに、隣国であるバーレーンを侵攻して民主的な抗議運動を弾圧するようゴーサインを出したというのだ。
この件の暴露は異なる2人の、独立した外交官のソースからもたらされた─あるEUの外交官と、そしてBRICS諸国の外交官だ─それらは別々にあるアメリカの学者に対して、および当Asia Timesに対しても伝えられた。外交的な慣例によれば彼らの名前を明かすことはできない。片方の外交官がいうには、「これが我々が1973決議案を支持できないことの理由だ。我々はリビアとバーレーン、イエメンの状況は類似した状況とみなしている、そしてこの件に関し国連事実調査団のミッションの派遣を要請している。我々は、我々のオフィシャルな立場、つまりこの決議案の内容が不透明であり、おそらく好戦的な態度belligerent mannerによるものだったとの見方を続けている」
Asia Times Onlineが報じたように、飛行禁止区域に関してアラブ連盟が全面的に支持したのは不可解な謎だった。その22カ国のメンバー国のうち、11カ国だけが決議案の投票に参加した。そのうち6カ国は湾岸協力会議(GCC)のメンバー国─つまり米国に支援されたペルシャ湾岸の王国・首長国─サウジ・アラビアがそのトップの国である。シリアとアルジェリアは決議案に反対した。サウジアラビアは他の3カ国だけを決議に賛成票を投じるよう「誘惑」すればよかった。
翻訳すれば:アラブ連盟の22か国中、わずか9カ国だけが飛行禁止区域の決議案に賛成したのだ。採決は主にサウード家が、アミル・ムーサ議長(彼は次期エジプト大統領になるため、ワシントンにアピールする履歴書を磨くのに熱心だ)とともに率いた作戦であった。
かくして、当初は偉大な2011年のアラブの革命(叛乱)が存在した。そして、その後は否応なく、アメリカ─サウジによる反革命がやってきた。
利益享受者たちは喜ぶ Profiteers Rejoice
人道主義的な帝国主義者たち(Humanitarian imperialists*欧米勢力を指す)は大挙して、これは「陰謀である」という都合の良い解釈をとばすだろう─彼らはリビアで、ベンガジでの仮説に基づく虐殺を阻止したとして、きりもみ旋回しながら空爆をしてきたのだが。彼らはサウード家を弁護することだろう ─同家がペルシャ湾岸地域でのイランによる破壊工作(*バーレーンの反政府動乱)を押しつぶすことができたとして─ 明かにR2P("responsibility to protect"(*記事末尾参照)というものは、バーレーンの民衆には適用されなかった。彼らはポスト・カダフィのリビアを新たな…石油もたっぷりとある…人権のメッカ、として重々しくプロモートするだろう─アメリカの諜報機関の資産と、ブラックな軍事作戦と、特殊部隊と、危なっかしいコントラクター(民間警備会社)とによって、より一層完璧化されながら。
地上における事実は変えられない、と彼らが何を言おうと─アメリカとサウジのダーティー・ダンシングの結果は目の当たりにみることができる。Asia Times Onlineは、既にリビアでの外国勢力による介入で誰が利益を得るかを報じている(参考: http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MC30Ak01.html)そのプレーヤーに含まれるのはペンタゴン…Africomを通じて…、そして北大西洋条約機構(NATO)、サウジ・アラビア、アラブ連盟のアミル・ムーサ、そして、カタールだ。このリストにバーレーンのアル・カリファ王家、また選任された武器契約業者、そしていつもどおりのネオ・リベラルの容疑者たち(彼らは新たなリビアでの資源ビジネス…水資源までも寡占化したいと熱心に狙っている)が加わる。そして我々は、リビアの石油・ガス産業の上を飛びまわる西欧のハゲタカたちに関してすら語っていない。 ここに露呈されたのは、オバマ政権の驚くべき偽善だ─人道的な作戦といいつつ北アフリカとペルシャ湾岸を巻き込む、粗野な、地政学的なクーデターを売りつける彼らの。ムスリム諸国でのもうひとつのアメリカの戦争の例として、それはまさに「動力的(kinetic)な軍事作戦」だ。 …(後略)
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MD02Ak01.html
反革命(カウンター・レボリューション)の甘い匂い The sweet smell of counter-revolution By ペペ・エスコバル (4/8, Asia Times Online)
アメリカ国防省のロバート・ゲイツ長官は(今日)サウジのアブドラ国王と話すためにリヤドにいる。AP通信は世界のメディアに対し、彼らは「アラブの叛乱」について討議することだろうと報じた。そこにはその他の陳腐な言葉も浮かび上がってくる─「政治的改革」、石油生産、「イランの脅威」など…。しかし、ペンタゴンがこのタイミングでサウード家に会うことが示す言葉は、唯一つ、これしかない:「私は、朝の反革命(counter-revolution)の匂いが大好きだ…」とでも。
そう、それはナパーム弾よりも偉大なる匂いだ。まるで勝利のような匂いがする。US─サウジによる反革命は、2011の偉大なるアラブの叛乱に対抗して楽々と勝利しつつあるのだ─ 。サウード家はエジプトのホスニ・ムバラクに対しても、最後まで権力の座に踏みとどまるよう望んでいた─それは、ワシントンにとっても同様だった…彼らは動乱勃発の当初、ムバラクの政権は「安泰」だという声明を出し、その後はオマール・スレイマン(拷問名人のシーク)に「秩序ある権力移譲」をさせることに賭けたが、その後、政権の崩壊が明白になって漸く、タハリール広場の民衆に唱和したのだ。
ワシントンが歴史の正しい側に踏み出すことを再び阻むかのように、サウード王家はそれ自身のプランで、King Fahd causeway(ファハド国王舗装道路)を通じて隣国に侵攻し、バーレーンの平和的な抗議の民衆の弾圧をおこなった。これはワシントンとの決定的なやりとりによる釘がしっかりと打たれたからこそ可能だったのだ;「我々(サウジ)は、リビアでの飛行禁止区域実施の決議にアラブ連盟の一票を入れさせよう;これと引き換えに、我々にバーレーンの始末をつけさせてほしい」(4/2の記事参照 http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MD02Ak01.html)
ゲイツとアブドラが今、複雑なる「US outreach(アメリカの手の及ぶ範囲)」(つまりこうしたアラブの独裁者が、市民を虐殺しつつ平気で立場を維持できること)や「政権交代」(つまり彼ら独裁者が、犬にくれてやりたいような他の国の為政者を陥れること)に関して討議をしているとを知るにつれ─ 時局の連結点というものが、ワシントン/サウード家が今や全ての前線(フロントライン)にあって─歴史の誤った展開面と、そして全てを操作する位置にあるのだということを、説き明かしてくれる。
サウード家とカタールは今や、リビアの「transition(政情の推移)」を微妙に支配している。こうしたカタール─サウジの同盟は今や、イスラエル─サウジの同盟の鏡像(ミラー)でもある。サウード家はまた、イエメンの政情の推移も支配している─今や、バラク・オバマ政権は、アリ・アブドラ・サレハ大統領を犬の餌のように捨て去る決断をした(なぜなら彼が、彼の民衆を十分に殺害し、その平和的な革命運動を弾圧できなかったからだ)。かくしてサレハは今や、アメリカの「アラビア半島のアル・カイダ(AQAP)」との戦争においては、価値のない「ろくでなしの男」になってしまった。イエメンの抗議運動(彼らは、サウジ人を信頼をしていない)が、腐敗した・親アル・カイダのAli Mohsen大佐(*)からの支持を受けていようと。アメリカCIAは、サレハの後継者を嬉々として受けいれようとしている。 (* Ali Mohsen大佐:Yemen軍の幹部で、政権の軍事アドバイザー。サレハ大統領の異母兄弟。3/21に他の将校らとともに反政府勢力を支持すると発言、大統領に叱責された。80年代のソビエト・アフガン戦争でイスラム過激派のリクルーティングに協力した)
今や、北大西洋条約機構(NATO)よりもタカ派の強硬論者となったカタールは、それに応じた報償をも得ている。あるカタールの外交官は、アラブ連盟の楽観主義者の議長アミル・ムーサ(ムーサはエジプトの次期大統領などにグレードアップしたいと欲している)の後を継ぐはずだ。それなら次は何だ?カタール人がNATOの議長になるべきなのか?ううむ、彼らは2022年のワールドカップを買収するに十分な金ぐらいは持っていた。
ゲイツとアブドラはまた、ペンタゴンのAfricom(*)の目を見張るような成功についても討議するかもしれない─それは2008年末に任務を始めたに過ぎないが、しかしすでにアフリカにおける、最初の大きな戦争に巻き込まれている。Africomの司令官Gen. Carter Hamが今やその戦争に関して、アフリカ連合(AU)の数十カ国のメンバー国に対し(彼らは当初、Hamが彼らの領土で指揮権をとることを決して望まなかったが)説明する必要があるなどと、誰が構ったりするだろう?ゲイツでさえも、リビアにおける戦争など、アメリカの外交戦略にとって優先事項とはいえないと認めていたのだ。(*United States Africa Command:米軍の、エジプト以外のアフリカ53カ国における軍事戦略の総司令部。本部はドイツ・シュツットガルドにある)
サウジの新聞「Arab News」によるとサウード家の閣僚会議は、バーレーンのal-Khalifa王家によるサウジ人への謝意の表明 ─ サウジ人が賢明さとリーダーシップをもってバーレーンの内政に干渉し…バーレーンに侵攻し「バーレーンに平和と安定を取り戻してくれた」と彼らに謝意を表した感傷的な声明─ そのことに対する「返礼としての謝意を」表したのだという。そしてその後に、誰もがイランに対して非難を叫んだという。(*イランのシーア派がバーレーンのシーア派住民の抗議運動を誘導したとされる)
包括的になるべき時だTime to be inclusive
バーレーンのカリファ王家は、彼ら自身の民衆を覆すことに絶対的に成功する。彼らがもしその国民の70%をペルシャ湾に投げ捨てて、そうして支配者の安泰を維持するならばの話だ。彼らは同国唯一の反体制的新聞- al-Wasat -を閉鎖して、王家支持派の新しいエディターのもとにそれを再開させた。
人権運動家やジャーナリスト、ブロガーたちは姿を消した─あるいは、姿を消された。ビジネスマンと政権幹部たちは、ストライキを実施した労働者たちを銃撃しなかったとして脅迫された。もはや誰も、ツイッターやFacebookをやっている者はいない。混合的な居住地域に住んでいたシーア派の家族らは、検問所でとめられるたびに脅迫を受けるので、引越しをし始めた。人々は、暗号を使って電話口で話している。オバマ政権に関する限りバーレーンは、もはや存在すらしていない。
バーレーンの7世紀の先祖にさかのぼれば、それはドバイの獲得物だった。ドバイは今年、4%の経済成長をした─アラブ世界の「動乱」に利益を得て。そしてアラブ首長国連邦(UAE)の人口は826万人に達しつつある─外国人労働者が流入しているが、その多くはバーレーンからだ。
カタールとUAEは、リビアでのNATOの飛行禁止区域という信用詐欺における「有志同盟」の小さな、代表的でない国々だ。いまや英国人らはこうしたアラブの二つの模範的民主国家に、東部リビアの「反乱勢力」─有象無象の群集─を訓練するようにと「要請して」いる…そのため彼らは、何らかの停戦が交渉で達成されるまでの間は、この砂漠地帯に隣接する場所で、砂漠の砂粒にしがみついていられるだろう。
翻訳すれば:「民間警備会社」は英国にとっての、いいビジネスだ─傭兵という形で…その中には特殊部隊の経験者もいる。彼らのサラリーはまもなく、カタールとUAE、ヨルダンによって支払われる…プレイステーションの王様 King Playstationに支配された国の、「治安軍のオフィサー」たちで溢れかえった国土で。このことは再度証明する─そこにはたった一つの…非国連決議1973…が承認した市街地でのゲーム:つまり政権交代 だけがあるのだと。
2011年の偉大なアラブの反乱の行く末が、石油生産や、移民の流出、イスラエルとの関係性、政治的モデルとしてのトルコの引力、そして未来のアル・カイダのフランチャイズ、といったことに繋がるとは誰も予測できないだろう。しかしワシントンの国家防衛ポリシーがいまだに、オリエンタリストが抱く阿片への夢のごとく見えたり感じられる中では、我々はアラブ世界に対して、ローカルな買弁的な独裁者・専制君主を通じて関わることしかできないだろう。そんな阿片よりもずっとす早く、我々はもうそれに夢中になっているのだ。
それなら何故、すべてを我々に併合しないのだろう?アメリカは、石油の豊富な51番目の州にも上手く対処できるだろう。経済刺激策の話をすればいい。米国市民たちは、彼らの税金の徴収のごとく、石油を入手できるだろう。いまや、仲介業者をカットすべき時だ。アラブ世界では、あの哀れっぽいアブドラやカリファ王家といった者たちよりも、オバマに対して答えることを誰が愛さないだろう?
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MD08Ak01.html
*R2P:responsibility to protect
「独立国家の主権は必ずしも特権ではないが責任であり、国家はその国民を、民族虐殺、戦争犯罪、人道に対する犯罪、エスニック・クレンジング(これらをMass Atrocity Crimes─大規模残虐犯罪と総称する─)から守る責任がある」との見地の元に…独立国家がこれを守れない場合、国際社会がその遂行を援助しなければならないとする考え。そのRtoPとは、国際社会にとってのノーム(規範)であって法ではない。国際社会は経済的、政治的、社会的手段によって現状の危機に対処し、外交的または強硬な手段、あるいは軍事介入をその最後の手段とし、犠牲となった人々の安全と正義の再建、大規模犯罪の起因の解明をはからねばならない…とする。
…ルワンダ虐殺が阻止できななかった際、当時のコフィ・アナン国連事務総長が嫌疑を唱えたのが端緒。2000年には、カナダ政府がInternational Commission on Intervention and State Sovereignty(介入と国家主権に関する国際委員会、ICISS)を設立、翌年に報告書「The Responsibility to Protect」をリリース。アフリカ連合(AU)は、これを組織理念にもりこんでいる。2006年には国連安保理が国連決議1674の一部として採択。2009年に国連事務総長藩基文が新たな報告書を発表し、これを更に推進させている。(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Responsibility_to_protect)
ウェブサイト:http://www.responsibilitytoprotect.org/
*3/7The IndependentのRobert Fiskによる記事
…「アメリカはリビアへの武力介入長期化を必死に避ける代わりに、サウジにリビア反政府勢力への武器供給を求めてきた。もしもサウジが行えば、その武器がたとえ米国製であっても、ワシントンは武器供給の責任を問われない、唯一のアメリカのアラブ同盟国である。サウジもバーレーン同様に東部に反体制派のシーア派住民を抱えるが…バーレーンでの動乱とも呼応してQatif県には治安勢力が派遣され、全土で民衆のデモが禁止された。それでもシーア派は2万人のデモを計画、軍の発砲を防ぐため最前列に女性を並ばせるという… もしもサウジが、リビアに銃やミサイルを送れとのアメリカの要請に従ったなら、オバマ大統領はサウジ政権によるサウジ北東部シーア派住民の弾圧への暴力行使に、とても口を出せなくなるという…」 http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/americas-secret-plan-to-arm-libyas-rebels-2234227.html
バーレーンに侵攻したSaudi軍の戦車
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