Saturday, August 8, 2009

ゲイツ教授「誤認逮捕」事件と憲法の人権条項・A Man's Home Is His Constitutional Castle - By Christopher Hitchens

ハーバード大学の著名な黒人学者で、オバマの旧友でもあるヘンリー・ゲイツ教授が、自宅の玄関前で、〔黒人であるがゆえに?〕「誤認逮捕」された…その後、大統領は、怒ったゲイツ教授と逮捕した警官を共にホワイトハウスの庭に招き、和解のビールパーティを催したのだが。

─この事件について、ヒッチンズがリベラルなコラムを書いていた

人にとって"自宅"とは、合衆国憲法によって権利を保証された自分の城だ
 
─ ヘンリー・ルイス・ゲイツJr.は「Bill of Rights (憲法の人権条項)」の立場に立つべきだ……だが、彼自身や、彼を逮捕した警官の「面目」の立場にたって、

主張をすべきではない ( 7月27日 By クリストファー・ヒッチンズ) 

 もしも、あなたが警官と対立したなら、あなたには幾つかの試せることがあるだろう──そしてまた、試せないこと…試さない方がいいこともある。先日メモリアルデーの日に、私がワシントンのベトナム戦没者記念式典に向け、タクシーを駆っていたときのこと…突然、警察の車が車の列を横切り、全ての車両を急に停止させたのだ─そこで、私は車の窓を開けて、何か問題がおこったのか、と周囲に尋ねて…そして、どのくらい止まり続ける可能性があるのかという質問を発した…私は、紐状のヘアスタイルをした、ネズミのような顔の獣のごときブロンド女から、「きい~っ」という叫びを浴びせられたのだ… 彼女はまるで、誰かを苛める瞬間というものを…その場所で一年もの間、待っていたかのようだったのだ(彼女は、私がその支払いを助けたはずの制服を身に着けていた)。

 …私はしばしば、口を閉じているのが困難になりそうな事態にも遭遇するが、それをひと目見たときに私は、そのダメージを受けた生き物がトラブルを起こしたいとウズウズし…彼女に関わって何か裏手にまわってお喋りなどしたが否や、私は1時間でなく何日をも費やすであろう、と察知した。 (…彼女がこう叫んだのは、まるで気狂いじみていたと思う─ 「"Because I can! だって私ならかまわないのだ」「 Because I say so! 私がそう言うのだから、そうなのだ」…)憎しみで余りに熱くなったこの女性に─私は、問いかけることも、彼女の名札やナンバーを見るために充分に近づくことすらもできなかったのだ。この全ての事件が…特に、私の卑しくも低劣で受動的なる性質というものが、後日…それを思い返している間にも、私を悩ませて苛んだ─ しかし私には、それはできなかったのだ…あなたが理解してくれるのならそれを言いたいのだが…私はその後、そのようないかなる屈辱的な民族的記憶というものも、想い出そうとはしなかったし、勿論私はそのことを、最近までは、ほとんど忘れてしまっていたのだ。

 ─すると、より最近になって私は、夏の間を過ごすカリフォルニア郊外の木立の中を歩きながら、これから書こうとするエッセイについて考えていた。すると不意に、警察のクルーザー(パトカー)が、唸りを上げて近づくと、静かに私の隣に滑りこんできてライトを閃かせた。「What are you doing?"お前は何をしている?」…はっきり言って私は、これに、どう答えるべきか分らなかった──私はその週に、空港のセキュリティにも足止めされてうんざりしていた──私は、そんな求めに応じる気がしないことに気づいたので、突如こう答えた。「そのことを知りたいのは誰なのか?Who wants to know?」、私が歩き続けると、その声は訊いた、「Where do you live? どこに住んでいる?」「None of your businessそれはお前の知ったことではない」、私が告げると、その声は尋ねた、「What's under your jacket? そのジャケットの下にある物は何か?」…私は尋ねた、「What's your probable cause for asking? お前がそのように尋ねることの…probable cause(*)とは何なのか?」、私の心はもはや、わずかながらも保持している私の憲法上の権利に陶酔しかけていたのだ。すると暫くの無言の瞬間を経たのちに、その警官は、ほとんど訴えるような口調で…彼が私が不法侵入者か泥棒であるか否かを、どうやったら知ることができたのか?と問うた──私は、「You can't know that君には知ることはできない」、「for me to know and for you to find out. I hope you can come up with probable cause.  そのprobable causeを─私にとっては知らねばならないし、君にとってはそれを見つけなねばならない。私は君が、それを見つけるよう望んでいる」…といった。するとその車はゴロゴロと音を立てつつ私の横を過ぎ去り、そして去って行った。その運転手は間違いなく、事実の何らかのチェックに走ったと思われたものの、その後、戻ってはこなかったのだ。(*probable cause=米国憲法修正第4条に基づいての執行者が逮捕または家宅捜索、逮捕状の取得等を行うときに根拠とされる基準─また犯罪の容疑者に対しては陪審が犯罪が犯されたとの根拠とする基…)

 最初の事例において、私はそこに──誰もがみな気づくことだが、警察の力に加わることをどうにか許された…沢山の、ゆがんだ不適格者たちを発見したのだ。2つ目の事例では、私はよい警官が真夜中も更けてからでさえも彼の判断を行使できて、それを行おうとすること──たとえ”容疑者”の尻に喝を入れてでも?…を発見していた。しかし真面目に言って、もしも私が黒人だった場合、この2番目のような行動はできたのだろうか、あるいはそれを試みられただろうか、そんなことをする機会が与えられたのだろうか?"Skip"〔*ニックネーム〕こと、ゲイツ教授の問いとは、通常、そこに起こることはどんなことで、それ故に実際起こったことのうち何は不可能で、何は起こりえないか、という問いがあった。(ワシントン・ポストの黒人コラムニスト、コルバート・キングColbert I. Kingはかつて、両親から、几帳面に行動を律することが必要だといった考え〔need for punctuality〕を教え込まれた…という示唆的なコラムを書いていた。彼らの毎日のレッスンとはこうである─ もしもあなたが帰りが遅くなったら、あなたは走り出すかもしれないが…黒人の若い男が通りを走ったりすれば、目的地に達するよりも前に合法的に拘束される可能性が大きいことを忘れるな、というのだ。)

 私には、ヘンリー・ゲイツJr.教授が、自宅の玄関ドアを押し開けた場合に近隣の黒人の住民によって警察に通報される可能性というものがはっきりと想像できる。同様に、暴漢のような、あるいはは神経過敏な黒人警官が、その通報に応じる光景というものも容易く想い浮かぶ。そして私はその場合に、両者の間の誤解を解くのにいかに長時間を費やすかも予測できる。しかし、ゲイツ教授とはその子供時代のニックネーム("Skip")が部分的に表わすように、片足に障害をもち、細身で、物腰も穏やかなのだ。さらにまた、彼が警官に何を言おうが、それは彼自身の家のプライバシーのなかでの出来事だった。彼が、自分がその家の住人であることを明白に証明した後に、その家の中で手錠をかけられ、ダウンタウンへと連行されたのは、モンスター的な出来事の極みだ。大統領はこのすべての件について、口を噤んでいるべきだったのだが(彼は司法上の公平性の維持をその任務とする上級官僚で、我々の家庭の揉めごとを監督するマイクロ・マネジャーではないのだから)──しかし彼が、一度でも警察のやり方が「Stupid(愚か)だった」と述べたのなら、彼はその言葉に拘り続けなければならない…ケンブリッジ警察が痛ましくも、ご都合主義的な反応によって、虹色の陰影を拡げたことなどはものともせずに。それは合衆国の憲法であって、競合しあうコミュニティや、選挙区の塊りだけでの憲法であってはならず、それは市民が、自分の家とプライバシーの主権者であると規定するものだ。そうした自らの権利を守るために、人が礼儀正しく振舞わねばならない法的な必要性というものは、絶対、どこにもない。その権利は、ビールを交えた交渉で奪い去られるような権利でもない。

 人種や肌の色は、もしも考察されることがあっても、ここでは二次的な考察事項なのだ。私はかつて一度、ニューヨークのローワー・イーストサイドで、白人男性の強盗に出逢ったことがある。…私の証言にもとづいて地元の警察署がわざわざ見せてくれたのは、全て黒人ばかりからなる"前科者たち"のフォト・アルバムだった。そのようなやり方の馬鹿ばかしさは、中途半端に訓練された、文化的でない(警察官の)集団が、私が彼らに言ったことをどう信じるか…への無能力さを表すだけでなく、確実に、彼らの愚かしさ(stupidity )というものが、実際に罪のある人間たちが逃亡することを助けているのだ。ゲイツ教授はその主張を、Bill of Rights (合衆国憲法の人権条項)の立場によって発するべきであり、彼自身や、彼を逮捕した警官の「面目」の立場から発するべきではない。そして、もしも彼にそのような気持ちがなかったのなら、残りの我々自身もそういう態度をもって行動すべきではない。
http://www.slate.com/id/2223673/