Wednesday, September 2, 2009
ソトマイヨール最高裁判事の指名/Sotomayor Confirmed by Senate, 68-31 By CHARLIE SAVAGE
初のヒスパニック系最高裁判事として、来週には初仕事のソトマイヨール!!
…彼女の指名公聴会に保守派共和党が必死に反対した理由とは、いったい何だったのか?
上院、ソトマイヨールの最高裁判事指名を68:31で可決 (8/7、NYタイムス)
合衆国上院はこの木曜日に──10週間にわたる指名承認公聴会での苦闘の末に──ソニア・ソトマイヨールを我が国初のヒスパニック系・最高裁判事として承認し、そしてこれは彼女を指名したホワイト・ハウスにとってのめざましい勝利となった。
党派によって大きく票の分かれた上院での68対31の投票結果は、ソトマイヨール判事(55歳)を米国で最も名声ある機関のひとつの敷居へと誘った──これは、Bronxの公共住宅施設(housing project )において、離婚した母親の手で育てられたこのプエルトリコ系の少女の驚くべき物語風の半生の結末を、完璧に飾るものとなった。
ホワイトハウスでの短いコメントで、オバマ大統領は彼女の承認を、「さらなる社会のバリアを打ち破り、我々を完璧なユニオン(統合)へとむかう次なる一歩へと進ませてくれた」、「この歴史的な承認投票において、上院はソトマイヨール判事がその知性と、ふさわしい気質と、歴史と、一貫性、そして独立したマインドをもって我国の最高裁判所に仕えることができる、と確言した」としてたたえた。
上院議会における3日間のディベートのなかで共和党議員らはソトマイヨール判事が“judicial activist(司法アクティビスト)”だ、というレッテルを貼り、彼女の外国の法律に対する態度や、その種々雑多な司法判断について批判を展開した──そのなかでは、今や有名となった彼女の「賢いラテン系女性判事(“wise Latina” judge )…」を賞賛した言葉の件や、Second Amendment rights(個人の武器所有の権利)に対する彼女の判断、財産法への判断、また、ニューヘイブン市の白人消防士たちの訴えた人種差別事件への判断などの件が取りざたされた。
「ソトマイヨール判事は確かに印象的なストーリー、そして優れたバックグラウンドをもつ素晴らしい人物だ」、と今週上院の共和党リーダーであるケンタッキー州のMitch McConnell議員は言った。「しかし、判事というものは法廷のドアを入る際に、その裁判官としての誓いが求めるものとして、個人的、政治的なアジェンダを自らチェックし、正義を平等につらぬかねばならない。これは最も根本的なテストなのだ。これはソトマイヨール判事がパスしていない面だ。」
民主党の議員たちは、ソトマイヨール判事を資質に満ちた判事だと認めた──彼女の、裕福でない生い立ちから始まり、二つのアイビーリーグ大学で優秀な成績を修め、検察官と企業弁護士の仕事に服し、17年間にわたり地方判事と控訴院の判事を務めたその半世紀は、古典的なアメリカン・サクセス・ストーリーであり──彼らは彼女の裁判での実績は穏健でそして主流派のものである、と。
「ソトマイヨール判事のキャリアそして司法上の実績は、彼女が常に法の定めるところに従っていたことを示すものだ」と、木曜日にバーモント州の上院議員で上院司法委員会の議長、Patrick J. Leahyは述べた。「彼女の民族的出自などを指摘することでその実績を捻じ曲げようという企みは、最高裁における彼女の判断が、女性やすべての有色人種コミュニティの品位を落としめるためになされるものだと訴えるのと同じだ」
多くの政治戦略の専門家たちは、共和党員らが最高裁判事に指名された最初のヒスパニックに反対していることは同党の将来の選挙での状況を危機にさらすかも知れないと警告し、幾人かの民主党員は共和党の反対がヒスパニックに対する侮辱だと描写した。
7月には、歴史的にも裁判所判事の指名に口を挟むことのなかった全米ライフル協会が、ソトマイヨール判事への反対を表明し─彼らは上院での彼女の指名承認(への逆風の)件を…保守党寄りの州から民主党勢力に対して発する政治的対策として…2010年の議会選挙の際の銃器規正法案対策へのスコアカードのひとつに用いるだろう、と言明していた。そしてこの指名承認投票は「いくつかのインタレスト・グループ(特殊権益グループ、企業)による政治がこの件には大きな影響を及ぼす、と予測されていたことへの、党の結束の勝利だ」、と保守系団体Committee for Justiceのエグゼクティブ・ディレクターCurt Leveyは述べた。これら多くの共和党員たちは、彼らによるソトマイヨール判事への反対投票がアンチ・ヒスパニックであると強調された結果、(今や)骨折り損をしたといえる。
http://www.nytimes.com/2009/08/07/us/politics/07confirm.html?hp
Sotomayor’s Notable Court Opinions and Articles
ソトマイヨール判事の法廷裁判での主な見解 <*承認公聴会の開始に先立ち、新聞紙上で紹介された彼女の過去の裁判事例> (7/10、NYタイムス)
Racial Discrimination
人種差別
ソトマイヨール判事がもっとも明確な態度を示した訴訟(high-profile case)は、リッチ対デ・ステファーノのケースだ。 これは、昇進試験で合格点を得たニューヘイブン市の白人の消防士たちが、昇進を許可されなかったことを告訴した事件だった(*同僚の黒人消防士らが一人も昇進対象となる得点を獲得しなかったにも関わらず、人種ごとに一定枠の昇進を義務的とみなしがちな、米国企業の慣行が適用されたという。)控訴審において、ソトマイヨール判事は3人の裁判官による無署名の合同意見書に賛同し、白人消防士たちによる異議申立ての却下を支持した(白人消防士たちの1人、ヒスパニック系のRicciが人種差別を訴えたが、控訴審でソトマイヤー判事は彼への再度のヒヤリングを拒絶した──最高裁の判事たちはこの下級審での判決を、5対4で覆した)
ソトマイヨール判事は、それ以前のGant 対Wallingford Board of Educationの訴訟でも、小学1年生の黒人児童が幼稚園にさし戻された事件で、人種差別があったと認め、多数派の判事の意見への異議を表明した。
Lawsuits Against Federal Contractors
連邦機関の契約請負業者への訴訟
ソトマイヨール判事への反論メモによれば、同判事は州の契約する請負業者に対して、「憲法上の権利を記載以上に拡大解釈しようとした」、という。これは、セキュリティー上の詐欺の行為で州刑務所の5階に収監されていた男性による訴訟だった。彼には心臓の充血性疾患があり、上の階に登る際にエレベーターの使用を許されていたが、警備員に階段を使って5階まで登るようにと命じられたために心臓発作を起こし、階段から落ちて怪我を負った。彼は州刑務所内の社会復帰訓練所の運営会社を相手に、訴えをおこした。この申立てによる控訴審のなかで、ソトマイヨール判事は、州政府の機能を代行する契約業者への申立て内容を受け容れた、過去の判例について強調した──最高裁はソトマイヤー判事の判決を5対4の賛成票で覆し、そのような規則違反でも個人のみしか告訴できず、法人に対しては告訴できないとの判決を下した。しかしこの最高裁の判決には、Stevens判事とSouter、Ginsburg、そしてBreyerの3判事が反対票を投じた。
Environment
環境問題
環境保護団体の最高裁での敗訴例として、Environmental Protection Agency が営利目的の(計算による)もくろみで、水棲有機生物保護のため発電所の設備の改造を要求できるかどうかが、焦点となっていた。この件は主にClean Water Act(水質浄化に関する条例)の条文に、発電所の冷却設備について「環境への負荷を最小限に低減するために、活用し得る最善の技術を反映すべきである」─と書かれている点の解釈が問題となった。ソトマイヤー判事は、有機生物の価値に反する目的で設備の改造のコストを推しはかることは違法だ、と判断したが──とはいえEPAは、単に、発電所で「どのようなコストが道理上、発生するか」のみしか考察することはできない、とした。この判決が最高裁で覆されたとき、John Paul Stevens判事にはRuth Bader Ginsburg判事、David H. Souter判事が賛成し、コスト・ベネフィット分析は(非営利団体では)法的に禁じられており、致命的な誤りだとした。
Workplace Discrimination: Disabilities
職場の差別:身体障害者
差別問題におけるソトマイヨール判事のより顕著な見解とは、身障者についての判断だ。ある訴訟事件でソトマイヨール判事は、読み書きをする上で身体的な障害のある法学部の卒業生は、司法試験の場で他の受験生より余分な回答時間を与えられる資格がある、との判断を下した。その後、最高裁が「米国人が、眼鏡をかけたり、薬剤を処方したり、あるいはその他の補完手段で通常的な身体機能を維持できる場合、米国の身体障害者条例では保護されない」との判断を決した後に、この訴訟は第2審にまわされた。ソトマイヤー判事は原告の女性に身体的障害があり、記述式テストの点数だけでは障害のある事実を認知するには不十分であり、特別な配慮が必要とされていた、と認めた。その他のこれに関連した訴訟では、トラック会社(Hunt社)が、幾つかの薬を処方しながら求人応募していた人物の応募受付を拒否したケースがある。ソトマイヨール判事は法廷判事の過半数が、「Hunt社がその応募者が主な生活上の活動や労働で、身体機能を実質的に制限されていることを知っていて」、「同社の40トン積トラックの長距離の運転や、不規則でストレスフルな労働には適さないとした」、という見解を支持した事に対し異議を唱えた。
International Law
国際法
ソトマイヨール判事の最も特筆すべき判断は、子供の養育権にまつわる複雑な取引に関するものだ。ある訴訟事件では、香港に住む離婚した両親とその子供の件で、その子供にはその母親だけが養育権をもち、父親は「道理に適ったアクセス権(reasonable access)」を有していた。母親が子供をニューヨークに連れてきた際に、父親が、その子供を香港に返すように、との訴えを起こした。養育権に関する規定では、その子供は香港に住む父親、または香港の裁判所の同意なしに別の土地に連れ出してはならなかった。そしてこの件は、それが「子供の誘拐に関するハーグの国際条例」の「rights of custody 養育権」の規定に反するかどうかで、争われた。もしそうならば、この件では子供は香港に戻さねばならない。この訴訟申立ての場合、法廷は父親が養育権を持たない以上、子供の連れ去りは罪ではないと判断された。しかし、ソトマイヨール判事はこれに反論し、「養育権」のより広義の解釈は、ハーグ条例の「目標と目的」により一層沿うべきものであり、そして外国の司法機関もこの件をそのように考えなければならない、とした。今現在最高裁で争われている同様なケースAbbott v. Abbott.の訴訟は、前記のCroll v. Crollのケースを継いで、係争中だ。またこれ以外の訴訟にも、外国人への司法権の問題が関連している。連邦法廷では「米国の市民 VS 外国に帰属する市民または臣民(subjects)」の訴訟を審議できるものと規定している。"英国の法律では、バーミューダの「市民(citizens)」とはバーミューダの「国民(nationals)」だが「国民(臣民)subjects」ではない─ 法廷の判事たちは、それゆえ米国の連邦裁判所の司法権はこの件には適用されない、" と判断を下した。ソトマイヤー判事は。これに異議を唱え、合衆国憲法においては「市民citizens」の語と「国民(臣民)subjects」の語の両方が、ある一定のレンジ(幅)をもつ関係性を意味するものとして用いられているとした。
Second Amendment
憲法上の個人の武器所有の自由
ソトマイヨール判事は、ニューヨーク州が武術用の武器(ヌンチャクnunchuka)の所有を規制したことはSecond Amendment rights(個人の武器所有の自由を認める合衆国憲法の条項)に反する、という訴えを却下し、その条項は連邦政府にのみ適用される、とした。このMaloney 対 Cuomoのケースでは、最高裁の判決は、ワシントンDC対Hellerの判決事例(*ワシントンDCの銃規制法が、憲法上の個人の権利を侵害するとして一部くつがえされた'08年の例)がこの件の原則を無効にすることはない、というものだった。最高裁は、「Hellerの判例の有効性に問いが発し続けられるかぎりの範囲で」その過去の判例は想起されるものにすぎないとした。
Abortion
避妊の権利
巡回裁判所においてソトマイヨール判事は、避妊に関する訴訟を一つ二つ扱った。ある訴訟案件で同判事は、避妊の権利を主張するグループが、ブッシュ政権の「避妊を支持する目的で外国からの資金提供を受ける外国企業団体を禁ずる」ポリシーに対決姿勢を示したことに対して、彼らの主張を却下した。
…また別件では、「難民refugee」の語の定義について、それが「強要された家族計画の犠牲者」も含むか否かが争われ、(第2巡回法廷では)その定義は避妊を強要された未婚女性とそのパートナーには適用できないと判断された。ソトマイヨール判事は、法廷判事の一致した意見、すなわち難民の定義が法的な配偶者にまで適用されるかどうかを考える必要はない、という見解に同意した──なぜならその案件は、中国人男性と彼の複数のガールフレンドに関するもので、彼の妻との間に関するものではなかったためだという。
Rules of Evidence
証拠についての判断
1999年にソトマイヨール判事は、17ヶ月前に失効した逮捕状(それ以後1度も執行されなかったが、警察のデータベースからは削除されなかった物)を所持した警官たちが発見したクラック・コカインの規制の要求を却下した。同判事は、そのようなエラーはその麻薬の規制の理由にならないとした。10年が経過した今年1月にも最高裁が同じ判断をした。
Strip Searches
公権力等による脱衣捜査
2004年にソトマイヨール判事は、Ruth Bader Ginsburg裁判官がUSAトゥデイ紙に述べたことに同意し、女性裁判官は若い女性に対するstrip searches(公権力等による脱衣捜査)が甚だしく(人権)侵害的であることに、センシティブになるべきだとした。2004年のケースでは、2人の男性判事がコネチカット州の年少者矯正施設での少女達への脱衣捜査が合法だと支持していた。ソトマイヨール判事はそれに対し異議を述べ、多数派の判事が「エモーショナルなトラブル状態に陥っている子供たち(虐待又は無視の犠牲者として、他の同年齢の若者よりもより心理的・感情的に傷つきやすい可能性のある)のプライバシー上の権益」に、充分な配慮を怠っているとした。
それはまた、Ginsburg裁判官が発した(Safford Unified School District対Reddingのケースでの)疑問意見、すなわち13歳のミドルスクールの女子生徒に対しアリゾナの学校当局がおこなった「屈辱的な」脱衣捜査への疑問、と同調していた。その異議においてソトマイヨール判事はさらに、コネチカットの矯正施設での少女たちへの捜査が、「混乱させ屈辱を与える」ものだったと強調した。「その施設の担当官たちは、女の子たちを裸にして体を前と後ろから検査し、そして彼女らの胸を持ち上げ、脂肪の襞を拡げてみたりした」と彼女は記した。
http://www.nytimes.com/interactive/2009/05/26/us/0526-scotus.html?scp=1&sq=Sotomayor%E2%80%99s%20Notable%20Court%20Opinions%20and%20Articles%20&st=cse
Milestones: Sonia Sotomayor http://tinyurl.com/npab87
*ソトマイヨール判事は公聴会の結果、共和党議員の執拗でヒステリックな追及をかわし、判事としての公明正大な資質や実績のみを印象づけて終わったようだ。
*子供の養育権に関する訴訟では、彼女はハーグ条例の本来の理念を強調、このことでハーグ国際司法裁判所の判事たちからの喝采をうけたという──彼女がより広範な父親の権利を認めようとしたのは、9歳で父親を亡くし母親に育てられたという彼女自身の生い立ちが影響していたのだろうか?
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