Thursday, June 23, 2011

ムンバイ攻撃を共謀?─テロ容疑者、ラナ&ヘッドリーの裁判のゆくえ

「ムンバイのテロ事件」への共謀を問われ…シカゴで行われた容疑者たちの裁判は複雑怪奇に?…

シカゴのビジネスマン、タハウール・ラナはデンマークでのテロ未遂計画幇助で有罪、ムンバイの攻撃計画では無罪との判決下る
Chicago businessman Tahawwur Rana is guilty of Denmark plot but not guilty of aiding the Mumbai attacks (6/9, Chicago Tribune)

 これまでにシカゴで開かれた最も顕著なテロ裁判の場で、木曜日にシカゴのビジネスマンは有罪判決を受けたが…陪審員団は彼を最大の罪─すなわち、2008年のMumbaiテロ事件での共謀罪からは無罪の評決を下した。 (*右図:Ranaの法廷でのイラスト)

 Tahawwur Rana 50歳は、幼なじみの友達David Coleman Headleyをテロ計画において助けたこと…シカゴのノースサイドからパキスタンの部族エリアへと足取りを拡げ、Mumbaiでのテロ攻撃へと及び、またDenmarkの新聞社も襲撃してスタッフを斬首しようとしたテロ未遂の計画も幇助した、との容疑で訴追された。

 HeadleyとRanaは、2009年にシカゴで逮捕されている。

 2日間の審議の後に陪審団はパキスタン出身のRanaに対して、Denmarkのテロ計画でHeadleyを幇助したとの罪で有罪判決を下した。しかし陪審団は、米国人6人を含む170名を殺害したMumbaiのテロ計画では彼は無罪だと認めた。Ranaはまた、パキスタンのテロリスト・グループ、Lashkar-e-Taibaを支援した件で有罪とされた。

 陪審団がRanaに対し…彼がインドのカシミールの分離統治に反対しているパキスタン本拠の過激派グループ、Lashkarの支援で有罪…との決断を下したのは、Rana自身がFBI捜査官に対する逮捕後の供述で、Headleyが同グループのために働いていたと知っていた、と話したことに基づいている。
 RanaはMumbaiのテロ幇助容疑から赦免されたことで終身刑を免れた。しかし彼は依然として懲役30年の宣告に直面し、弁護団は失望を表している。

 「我々は、この件に関する(陪審員らの)熟考に立ち戻ることは出来ない、そのため彼らがどうしてこの判断に至ったのか、よくわからない」とRanaの弁護団の一人Patrick Blegenはいう。「明らかに、我々は甚だしく失望している。我々はRana氏を信じており、そして我々は彼が無罪だった事を信じている。しかし、陪審は異なる判決に達した。我々は彼らの決断を尊重するが、しかし彼らは間違っていたと考える」(後略…)
http://www.chicagotribune.com/news/local/ct-met-rana-terrorism-trial-0610-20110609,0,141351.story

*Terror trial evidence
デビッド・ヘッドリーが、インドで撮影した「テロ攻撃のターゲット候補地」の写真の数々(法廷での証拠)http://www.chicagotribune.com/news/local/breaking/chi-110524-terror-trial-evidence-pictures,0,7248341.photogallery?index=chi-terror24subtah20110524111114


ラナのテロ裁判の終幕…州検察側が数多の証拠を示唆するなかで、ラナの弁護団は"スター証言者"(ヘッドリー)を罵った…
In close of Rana terror trial, defense rips star witness as government points to evidence
By Annie Sweeney, Tribune reporter (6/7, Chicago Tribune)
 

 テロ幇助の容疑で訴追されたシカゴのビジネスマンの弁護人は、彼に対するこの告発が…自らがテロリストであることを認めた人物が死刑を免れるべく試みた、絶望的でっちあげだと訴えた。

 「David Headleyに関しては、何事も単純に済む様な問題はない」、とTahawwur Ranaの弁護人Patrick Blegenは、州政府側のスター証言者に関していう。「彼は、自分にはすべての人々が騙せるものと思っているのだ」。

 最終弁論の場でBlegenはHeadleyの信憑性をひどく非難し、彼がいかにしてヘロイン密輸で2度も告発されたか、家族や当局に対して度々嘘を繰り返しついてきたか、そしてFBIによる抑留中にさえ、大胆にも彼の妻に電話をかけて彼の兄弟に警告するように頼んだか…等々を陳述した。

 「彼は彼のオフィスから、正義を妨害すべくはかったのだ」とBlegenは言った。
だが、裁判官が彼を紹介した直後に、検察側のテーブルから最後の言葉を放った米国の連邦副検事は、強い声で…陪審団に対しHeadlayのバックグラウンド(病気を含め)を超えたその向こう側に注目するように、と求めた。

 「皆さん、一秒たりとも…(このようなことで)この男が(車中の会話において)言っていたことを変えさせてはならない」、とCollinsは政府が残したRanaに関する盗聴録音について語った。「それはあなた方が今、行うべき眼前の仕事から、あなたがたの方向性を逸らしてしまう」

 検察当局はHeadleayには人格障害(人間性欠陥)があると即座に認め、彼のことを酷い、軽蔑すべき(awful and despicable)人間だと呼んだ。しかし彼らは、Ranaを陰謀の内側に据えた長い証拠のリストをも読み上げた─それは、HeadleyとRanaが2009年に、自動車での長時間の走行中に録音された秘密録音を含むものだった。

 シカゴにおける最も顕著なテロ裁判で、50歳のRanaは、彼がHeadleyを支援し─2006年から2008年にかけて5回にわたり彼を、シカゴを本拠に彼の経営する移民ビジネス会社の代理人として旅行させ…インドのムンバイへのテロ攻撃(2008年に170人程の人々を殺害した)のターゲットの候補地探しをさせた…という犯罪の容疑者とみなされた。

 彼は、50歳のHeadleyに同じビジネスの隠れ蓑を着せた上でデンマーク旅行をさせ、コペンハーゲンの新聞社を標的とした2度目のテロ計画の未遂(ムスリム世界の大半を激怒させたモハメッドの漫画掲載への報復を目的としていた)のために偵察を行わせたとの件でも告発を受けた。

 陪審団は水曜の朝からこの件に関する審議を始めた。
BlegenはRanaを合法的なビジネスマンであるとみなしており、Headleyがパキスタンのテロリストから何千ドルもの資金を集めつつ、同時にRanaには金銭を支払って詐欺的に(彼を利用し)ムンバイのオフィスを運営させた、との見地に立とうとしている。

 Blegenは、Ranaがいかなるテロ計画にも真に関わってはいなかった、と主張した。秘密の録音でさえもHeadleyの、信憑性の薄い、その解釈にもとづいたものにすぎないと彼は言う。そしてBlegenは、Ranaが6時間の審問の間に当局の放ったすべての質問にも答えたと指摘した。

 しかし、検察官らはRanaが、虐殺テロで死亡した若いMumbaiのガンマンを祝福し、またテロの計画者の一人(当局に告発されている事件の共謀者)のことをパキスタン軍の名誉に値すると述べている…車内での会話の録音のことを証拠に挙げている。

 また別のやり取りでは、HeadleyはRanaと、インドとデンマークのスポットを含む彼のテロ攻撃のトップ・ターゲットの地について話しているとしている。Collinsは陪審員団に対し、Ranaがそのことを論じ合っている会話中で笑っていると話した。

 州検察側は、その証拠に関する裁判に陪審員団が注目し続けるようにはかるとみえる。多くの証拠の提示と審査の後にも、共同訴追者であるVictoria Petersは陪審員らに対して、彼女が提出した15件に上る証拠を審議するように再度求めている。

 その証拠の一つとは、Ranaが─"Major Iqbal"(イクバル大佐)としてのみ知られる、告発を受けたもう一人の共同謀議者からのeメール内容を…彼がHeadleyに送ったメールの中に貼付けている、との訴えである。しかし、そのもう一人の共謀者もまた、Mumbaiテロ攻撃の1ヵ月後の2008年12月にHeadleyにメールを送り、彼にRanaがどう感じているのか、彼は「怖がっているのか」と質問しているという。

 Headleyが「酷い男(an awful man)」であった、と認めつつPetersは、陪審員団にこう尋ねた、「あなたがたは、政府(検察側)に対して何をして欲しいのか?”II'm sorry、お前たちは軽蔑に値する…我々は、あなたがたの提示する情報(Ranaに関する証拠)になど興味はない”、などと言って欲しいのか?」と。
http://www.chicagotribune.com/news/local/ct-met-rana-terrorism-trial-0608-20110607,0,4532268.story


テロの容疑者に対し、評決は分かれた(要約)(6/ 10, NYtimes)
Split Verdicts for Man Accused of Terrorism

…「テロリストを幇助しようとするすべての者に対する、この評決のメッセージは明白だ」と、政府側の検事Patrick J. Fitzgeraldは声明で述べた。「我々は暴力を容易にする者たちすべてに正義の裁きを下す」

 有罪、無罪のミックスした判決は、30年の懲役刑となるRanaと、政府側の双方に打撃を与えた…検察側の陳述は、死刑の宣告とインドへの身柄引渡しを免れるため、Mumbaiのテロ計画での重要な役割を担ったことを告白した、David Headleyの証言に大きく基づいている…

 Headleyの証言は…彼がRanaだけでなくパキスタン諜報部の幹部らもムンバイのテロ攻撃を幇助したと訴えた際に世界のメディアのヘッドラインを飾った。その告発は米国とパキスタン、インドの関係を悪化させる脅威を与えた─特に、パキスタンの軍事都市に隠れていたオサマ・ビン・ラディンを米特殊部隊が発見した後には─

.....Ranaの弁護団は、Headleyの成人して以降の大方の人生での詐欺行為を列挙し、彼の信頼性を切り捨てることで弁護を行った。Headley氏─パキスタンの外交官とフィラデルフィアの社交家との間の50歳の息子は、テロリストになる以前に多くの実質的な逮捕記録があり、麻薬密輸でも逮捕され、その後は長期の懲役宣告を逃れるため麻薬取締局の情報屋となっていた。

…Rana氏…パキスタン系カナダ人で3児の父親は、デンマークの新聞社の襲撃計画でも類似の幇助をし、告発されている。しかしその計画は実行されなかった。

 Rana氏の家族たちは判決の宣告を聞いて泣いたが、Rana氏は目に見える感情を示さなかった。彼の弁護士の一人は、「彼はショックを感じているのだろう」と語った。もう一人の弁護士Patrick Blegenは陪審員らについて語った、「明らかに我々は失望している。我々は彼らが、解釈を誤ったものと思う」

 Fitzgerald判事は、Headleyに対する判決に関して「それは、まだ当分先のことになる」と語った…
http://www.nytimes.com/2011/06/10/world/asia/10headley.html?ref=davidcheadley

*関連記事:



「米国育ちのテロリスト」デビッド・ヘッドリーの多くの顔http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2011/06/many-faces-of-homegrown-terroristby.html





ムンバイのテロへと繋がる、新たなスパイのリンクhttp://hummingwordiniraq.blogspot.com/2011/05/new-spy-links-to-mumbai-carnage-by.html