Tuesday, October 6, 2009

ペトラエウス大将は何処に?/Voice of Bush’s Favored General Is Now Harder to Hear - By ELISABETH BUMILLER


アフガンついて兵力増派の議論が続き、なかなか答えが出ない今…
セレブリティな元司令官David Petraeus大将は、
このところどうしているのか?


[ミリタリー・メモ]:ブッシュのお気に入りの軍司令官の声を聴くのは一層困難になりつつある─(10月4日、NYタイムス)

 イラクでの「米軍増派戦略」の“顔”で、ブッシュ前・大統領のお気に入りでもあったDavid H. Petraeus大将は、先週ホワイトハウスの緊急対策室・Situation Roomでの大きなアフガン戦略会議の最中に、“数回にわたり”大声で話しだしたり、オバマ大統領から意見を求められたりもした…と会議のある参加者はいう─そして今週、彼はあと2つの会議にも参加する予定だという。

 しかし、大将の最も身近な側近によれば、表面的には良好な相互関係の裏で、このセレブリティ司令官はオバマ氏のホワイトハウスにおける新しい現実に直面しているという:彼はいまも会議のテーブルについてはいても、以前とはとても異なる席にいる。

 かつて、イラクとアフガニスタンの戦争を監督していたこの男は…ブッシュ前・大統領がその任期中に毎週1時間の定例会議中の20分間をさいて、バグダッドからのビデオ中継で彼に見解を述べさせていたのとは異なり…もはや、国防委員会の会議で最も大声で意見を述べる人間の一人ではない。ワシントンの報道エスタブリッシュメントでも、キャピトル・ヒルの重要連絡先やメール交換の網の目のなかで…もはや大佐は2007年の9月にメディアの爆発的な注目を浴びつつ行ったように議会での証言をしたり(註:2007年9月に彼がイラク情勢の動向と米軍増派の是非についての重要なPetraeus報告を行った…)、3日間で34本ものインタビューを受けたりする人物ではない。

 そうした変化はワシントンで、Petraeus大将が2012年の大統領選に出るか否か、についての憶測も焚きつけている…彼のアドバイザーは、それはばかげている、という──しかしごく間近な政策という意味では、それは現今のアフガニスタンに4万の増派兵力を送るかどうかの政権内での議論において、軍の立場をはっきり擁護できる人間が一人減ったことを意味する。

 Petraeus大将の側近たちは、今や彼をプライベートに“Dave the Dull”(うすのろデイブ)と呼んでいる…大将は今、ホワイトハウスとの対立をさけるため戦争に関してのパブリックな場での熾烈な議論から身を引いて沈黙を守っているのだ、といって─(ホワイトハウスは、彼ら軍のスーパースターたちからのプレッシャーを受けることを嫌っており、また特に大将の抱く野望については用心深くなっているのだ、とする─)

 大将の側近たちは、彼のホワイトハウスとの関係をより率直に語るには匿名で語らせてほしい、とリクエストした。
 「Petraeus大将は、政治家の人生に興味があるとは誰にも仄めかしたことはないし、実際に彼は多くの機会で、それには興味がない、といっている」と、オハイオ大学で軍史を教える退職陸軍大佐Peter Mansoorはいう(Mansoor氏はPetraeus大将がイラクにおいてトップ司令官だった際、彼のエグゼクティブオフィサーを務めていた)

 「彼の国民的な人気から、彼がよい大統領候補になるだろうという人々がいるが、そうした言い方をすることは、現政権が彼をやや疑いの目でみることを招くだろうと思う…」─ Petraeus大将のアドバイザーたちは、オバマ氏がみずから選んだ「アフガニスタンでの公的な顔」であるStanley A. McChrystal中将を任命した今日、Petraeus大将は一歩後ろに退いているのだという───McChrystal中将は、先週もCBSの番組“60 Minutes”のなかで、オバマ氏に大統領専用機エアフォース・ワンで会談し、彼がロンドンで行った”戦争の規模縮小については拒否する”という内容のスピーチの一部も使ったのだ─)

 ともあれ、McCrystal中将が公けの場で述べたコメントは、Petraeus大将がこの討論が続くあいだは慎重に後ろに退いている可能性がある──ことの証明なのかもしれない。日曜日には、CNNのJohn Kingが、ナショナル・セキュリティ・アドバイザーのJames L.Jones中将に、「制服姿の軍人が公の場で、オープンに兵力の増派を求める要請を行うことは適切なのだろうか?」とたずねたとき、James L.Jones中将は「…理想的には軍の命令系統に従ってなされることが、軍事的アドバイスとしてよりベターだろう」と述べていた。

 Petraeus大将の黙した声がどれほどオバマ氏の戦争への決断に影響を与えるかは不透明だが、彼と親しい人たちは、公けの場で声を上げないことが彼に、彼自身がディベートの内部から影響力をもつより大きな信頼性を与える可能性があるという。…別の人々たちはまた、彼の一層の影響力は単にミリタリー・アドバイザー・チーム(McChrystal中将と、Mike Mullen提督も所属する)の一員として行使するものになるという。

 これらの男たちは結束して、アフガニスタンでの米国の努力に必要なことが何か、を考えているが──しかしMcChrystal中将と近しい立場で仕事しているPetraeus大将が言うには、先週、McChrystal中将の行った兵力増派の要請への支持を彼はいまだに表明していないという。

 Petraeus大将とオバマ氏の関係について明白なことは、それが…昨秋Petraeus氏が、ワシントンの山々に一緒にサイクリングに出かけたブッシュ大統領との絆ほどのものではないということ、あるいは2008年の大統領選でオバマ氏と対立したMcCain候補(McCainの側近たちは一時期、Petraeus大将を、副大統領候補としてのランニングメイトに指名する可能性をもらしていた)との絆ほどではないということだ。

 ─その時期まではPetraeus大将は彼自身でも、自分が将来大統領候補として出る可能性について話していたのだ…そのことを未だに、ホワイトハウスの側近たちは心配している。

 しかしオバマ氏のトップアドバイザーたちによれば少なくとも、「大統領はそのようには考えていないし、副大統領もそうは考えていない」…ホワイトハウスの主任大統領補佐官、Rahm Emanuelはそういう。「大統領は、Petraeus氏が彼自身の洞察力で、8年目に入り看過されている戦争の状況を好転させてほしいと願っている」、のだと。

 Petraeus大将のアドバイザーたちは、軍事的に偏りのない視点を保つために彼は、2003年まで少なくとも(大統領選に)票を投じなかったのだという。そして彼は彼と彼の妻が所属するニューハンプシャー州の予備選挙に選挙人登録するかどうかも未だ決めていない。大将は昨年、New Yorker誌が掲載した長々しいプロフィールの記事でも共和党共和党員として描写されているが、彼と親しい軍の上級幹部は先週、彼の支持政党については特定できないとも語った。

 ところで、Petraeus大将は彼の自宅のあるTampaとワシントンのあいだを頻繁に往復していて、ワシントンで先週彼はアフガニスタンの外務大臣と会った。彼はまた現政権のアフガン・パキスタン戦略の特別代表Richard C. Holbrookeともディナーを共にした。また、大将はキャピトル・ヒルも訪問している。

 しかし、オバマ大統領が意思を決し、そしてPetraeus大将をそこに派遣するかどうかを決めるまでは、Petraeus司令官は頭を伏せていなければならない。「彼はこのような地雷原をどうやって渡るか、を知っている…」と軍の前副参謀のJack Keaneは言っている。
http://www.nytimes.com/2009/10/05/world/05military.html?_r=1&hp