Tuesday, August 18, 2009

タリバンとの和解への戦略とは?/Peace Talks With Taliban Are a Top Issue in Afghan Vote - By CARLOTTA GALL

大統領選を前にタリバンの脅迫テロが激化…
アフガンの政治家や米国は、タリバンとの和解戦略をどう描くのか?

タリバンとの和解の討議、アフガン選挙のトップ・イッシューに─ By カルロッタ・ゴール (8/17、NYタイムス)

 アフガニスタンの大統領選の候補者が立場を表明する際には、タリバンとの和解の討議をいかに行うかは、避けては通れない。この戦いは終結させねばならない、という大ざっぱな合意はあるものの、Karzai政府がタリバンの反乱を鎮めるべく効果的に動いているかについては、議論が渦巻いている。Karzai大統領はこれまでしばしばタリバンとの交渉を口にしてきたが、具体的成果は少なかった。政府のタリバン武装勢力との和解プログラムはほとんど機能せず、サウジアラビアによる仲介も滞った。選挙実施のためのタリバンとの契約への努力はいまだ検証されない。そんな中で、オバマ政権は今、タリバンが拡大した勢力圏を取りもどすために、何千もの追加兵力をアフガンに派兵したところだ。

 世論調査では依然、首位候補とされているKarzai氏は、タリバンとの交渉を最も声高に叫ぶが…彼はもしも再選されたなら、伝統的な部族の会合を開いて、タリバンと、もう1人の反対勢力のリーダーのGulbuddin Hekmatyarを招待することを公約した。この2, 3週間の間に彼の政府は、タリバンの地方司令官たちに、部族の長老たちを通じてアプローチする、という政策のイニシアチブをとった。政府はまた、こうした部族に属する何千人もの若者を、政府の地方の警護部隊の一部として(選挙の安全な実施を第一の目的に)雇うことで部族社会を統御しようという働きかけを始めた。しかし Karzai氏の3大ライバル候補者たちは、彼はこうした公約を実行した実績がないと批判的だ。

 Abdullah Abdullah、 Ashraf Ghani、そしてRamazan Bashardostの3大候補もともにタリバンに反対するが、彼らもまた、もしも選出された場合には彼らとの和平実現を第一の課題とすることを約束している。候補者たちが提案する解決法は異なる:タリバンの上層部リーダーたちと包括的な和平交渉を行うか、またはミドルレベルのタリバン司令官たちや下級兵士たちとの交渉──それは過去7年間試みられたが、タリバン組織の武装人員数が膨れ上がり、殆ど成功しなかった戦術だが…──を引き離して実施するか、だ。

 最大の反対勢力、the National Frontの候補Abdullah氏と、前財務大臣のGhanil氏は、地域コミュニティや部族評議会を通じた草の根的なアプローチによって、政府に対し武器をとった人々の嘆きに語りかけることが第1のステップだ、という。「人々の支持を失えば、戦争には負けるのだ。」とAbdullah氏はインタビューで語る。Ghani 氏は、次のステップとしてまずは停戦し、その後に政治的なネゴシエーションをすべきだ、と主張する。彼は「これは簡単なことではない」、彼は報道陣へのブリーフィングで語る。「これはとても複雑で、困難なことだが、我々は相互信頼のための条件を設定する必要があるのだ。」

 国連のアフガン・ミッションの主任、Kai Eide氏は、ワイドレンジの働きかけによる政治的な解決策を主張するうちの1人だ。和平プロセス、または和解策と彼が好んで呼ぶのは、アフガンがタリバンを長年、支援していたパキスタンとの関係を改善したように、いかなる新たな政府であっても最重要課題とすべきことなのだ、と彼はいう。彼は、こうしたプロセスのグラウンド・ワーク(基本設計)は、来春に新たな戦いのシーズンが到来する前にその機先を制すべく、冬の間を通して実施されるべきだと述べる。彼はまた、この努力は米軍が思い描いているタリバンのローカルな司令官達との和解と再統合よりも、広範なプロセスであるべきだと述べる。「あなた方(米国人)は異なる見方をしている…あなた方は地方の県から県へ、地域から地域へ、ローカル・レベルでそれをやれると信じている。…私はそれができるとは思えない。もっと包括的なプロセスでそれを実行することが必要だ。」

 しかし、米国とNATOが望んでいるのは力による立場からの交渉だ、と外交官や米軍幹部はいう。「和解は重要だが、それは今、やることではない。」、カブールのある西側外交官は匿名を条件にこういった。「反乱勢力がもっと弱体化し、政府がもっと強くならない限りそれを起こすのは無理だろう。」

 独立系の政策研究グループ、Afghanistan Analysts Networkの共同ディレクター、Thomas Ruttigは最近のレポートのなかで、反乱勢力の多くの異なる小グループに対し、マルチ・レイヤーで(多層的な)コンタクトをとることを提案している。彼はアフガンの国内全域での長期的な和解プロセスを通じて、政府勢力から疎外されタリバンに合流した多くのグループに訴求し、30年にわたる戦乱の傷を癒すべきだ、と提案する。

 オバマ政権はこの件を進めるために小さな公の努力として穏健派タリバンとの対話を提案したが、アル・カイダと関係のあるグループとは一線を画すとした。「我々と我々のアフガンの同盟者たちは、アル・カイダを非難し、武器をすてるタリバンの支持者たちを、そしてアフガンの憲法を奉じながら自由で開かれた社会に進んで参加する人たちを歓迎する用意がある。」とヒラリー・クリントン国務長官は先月のスピーチで述べた。

 しかし批評家達は、タリバンに降伏を求めることは、本質的に何の結果ももたらさないという。政府を訪れたタリバンの少数の上級幹部たちは、政府と外国勢力に対しての大きな不信感を抱いており、それはタリバンの下級のメンバーたちの気持ちすらも阻んでいるという。それは彼らが、政府と外国勢力による部族リーダーたちや長老たちへの粗末な扱いを見てきた為だという。

 2005年に、和解プロセスのもとで政府を訪れたHelmand 県の主要な部族リーダー、Abdul Wahid Baghraniは、2001年に Karzai氏との間でタリバンの降伏についての討議をした。彼は今はカブール西部の家に住むが、その絶大な影響力にも関わらず政府から全く無視されているという。3ヶ月前に、彼の32才の長男Zia ul-Haqは、妻と運転手と共にHelmand県を旅行していた際に車の上に襲来した英国軍のヘリコプターによって殺害された。2人の西側政府関係者が銃撃について証言したものの、それは誤射であり、英軍はタリバンの上級ターゲットを捕える積もりだった、といった。「私の息子は武装したタリバンではない、彼は宗教的タリバン(神学生)だった、」と彼は言う。Talibとは宗教学校の学生の意味なのだ。「いかなる法的立場からいっても、市民の車を銃撃する事は許されないことだ。」

 息子の死にもかかわらず彼はカブールに残り、和解への討議を擁護しようとしている。彼は、タリバンのリーダーのMuhammad Omar師が和解不能の人物だ、と考えるのはまちがいだ、という。「それは、彼を知っている人々、彼とともに働いている人々の意見ではない。」 「もちろん、タリバンと和平を打ちたてるというのは不可能だ─彼らはアフガン人なのだ。」と彼は言う、「彼らが戦っている理由というのは、彼らには、和平を結ぶための機会を得ることができないからなのだ。」
http://www.nytimes.com/2009/08/18/world/asia/18taliban.html?hp