Sunday, April 4, 2010

タリバン指導者の逮捕と、パキスタンが求める「ストラテジック・デプス」/ 'Strategic depth' at heart of Taliban arrests By Shibil Siddiqi


*「Mullah Abdul Baradarだといわれる男」はトリックスターのような男の写真だ→ 

タリバン幹部の逮捕の"ストラテジック・デプス"(戦略的縦深性)とは? By Shibil Siddiqi (3/24, Asia Times、抄訳)

 パキスタンは最近、タリバンNo.2の司令官Abdul Ghani Baradar師と、クエッタ評議会 Quetta Shuraの多くのメンバーを含むタリバンの幹部たちを逮捕した。またパキスタン政府が攻撃対象とすることを嫌ってきたはずの、有力なHaqqani族ネットワークのリーダーMohammad Haqqaniを、無人偵察機の攻撃により殺害した。影響力のあるシンクタンク、Carnegie Endowmentなどの多くのコメンテーターたちはこれらの逮捕の裏にある動機の説明に苦闘しているが、しかし彼らはパキスタンがアフガンへの戦略を180度転換したのでは、と期待している。

 その逮捕とは、実際にはパキスタンの思惑のパラダイムの転換というにはほど遠いものだ。パキスタンのアフガニスタンへのアプローチは、2つの単語に集約される:"strategic depth”(戦略的縦深性)…それは20年以上にわたるこの国の戦略ポリシーの、聖なる目的だ。この"戦略的縦深性"は、パキスタンのアフガニスタンとの関係の中心の柱であり続ける。しかしながら、このコンセプトはパキスタンの治安組織からは、国内と海外の機会と脅威のバランスがスライドしたことに伴う成行きの帰結だと、再解釈されている。

戦略的縦深

 軍事的なコンセプトでの"ストラテジック・デプス(戦略的縦深)"とは、現状の、あるいは潜在的にある戦いの前線と、人口や物流活動、産業活動や軍事的活動の集中する、中心地域との間の距離に関係している。そのような深みをもつことは、その国が当初の攻撃に耐えて、攻撃に対抗する軍事力を再結集することを可能にする。

 パキスタンの地理的な狭さと、主な内陸地域やコミュニケーション・ネットワークの存在が宿敵インドとの国境線に近いという事実は、"ストラテジック・デプス(戦略的縦深)"の欠如として、この国の軍事プランナーたちを長年悩ましてきたことを意味する。それは1946年に独立国家パキスタンが帝国の計画ボード上にだけ描かれていた頃にも、インド軍の一般幕僚General Arthur F Smitが、深い憂慮として定義したことだ。友好的なあるいは、(より好ましい)柔軟性のあるアフガニスタンの可能性とは、インドとの関係のなかで一層誇示されるこの"戦略的縦深"という考えのもとに、パキスタンの防衛と外交戦略の方向性を長らく牛耳ってきた想像力に乏しい軍の幹部たちにとってのマントラ(お題目)だった。

 しかしパキスタンはその早い時期には恒常的な国内での危機や国際的な孤立、外交戦略の混乱と軍事的な弱体性などに苛まれて、そうしたことは夢物語〔幻想〕だった。1950年代の終わりから60年代に"common defense posture(共同防衛の姿勢)"という言葉が、戦略的・思想的・宗教民族的な意味で持ち出されはじめた。しかしアフガニスタンはインドと強い同盟を維持し続け、ソ連の影響力の範囲にもあり続けた。

 '79年にソビエトがアフガンに侵攻し、即座に80年代にムジャヒディーンが表面上の勝利を勝ち取るまで、友好的なカブール政府の設立とは捉えどころのない考えだった。その後は、カブールのクライアント政府を通じた"戦略的縦深"は軍のオフィシャルなドクトリンとして受け入れられた。これは90年代の激烈なアフガニスタン内戦に火をつけて、パキスタン政府をして1996年にはタリバンが政権を樹立することをほう助させた… (中略…)

 …2001年9月11日の米国への攻撃に引き続く、米軍のアフガニスタン占領は、パキスタンによる第一の影響力喪失につながった。それはパキスタンのアフガニスタンとの関係に、多くの変化をもたらした。しかし、イスラム原理主義者のパシュトーン人〔=タリバン〕に支配された柔軟なアフガニスタンを放棄する、という考えは彼らにはなかった。米国の前線での同盟者の役割を再開しながら、パキスタンはタリバンといくつかの重要なつながりを維持し、NATO軍が撤退したときに彼らが最終的な勝者として残ることを見込んでいた。

 しかし、変化は醸成されていた。パキスタンの外務省はここ何週間かにわたり、カブールの「多元的な」政府の必要性について語っているのだ──パキスタンがアフガニスタンの政治の秩序についてそのような用語を用いて語るのは、これが初めてだ。しかし本当のプレーヤーたち──軍幹部の本部からそれが持ち出されたのはつい最近だ。
 2月1日に珍しく行われた記者会見で、パキスタン軍の総帥General Ashfaq Parvez Kiani(大将)は、刷新されたポリシーについてのヒントを提示した。「我々はアフガニスタンに"戦略的縦深"を求めるが、それをコントロールしたいとは思わない」、と彼は言った。「平和で友好的なアフガニスタンが、パキスタンに"戦略的縦深"をもたらすと考える」。

 タリバン化されたアフガニスタンを求めることを否定しつつ、彼は付け加えた、「我々はアフガニスタンに、我々自身がしてほしくないことを求めない」──その声明は、タカ派の軍部のチーフとしてのみならずパキスタンのリーダーとして前例のないものだ。大将はさらに、米国とタリバンの間を仲介する用意のあること(1月にNATO本部訪問の折にも同じ提案をしていたのだが)を繰り返した。

リアリティの転換

 少なくとも2つの関連した事項が、パキスタンの"戦略的縦深"への見方を転換させたのだといえる。一つ目は、タリバンがNATOよりも長くこの地で生き続けることは殆ど確実だが、彼らにとって、96年から2001年まで彼らがこの国を支配してきたときのような露骨な軍事的勝利は不可能になった、という遅まきながらの認識だ。

 それには多くの理由がある─ もっとも明瞭なことは、タリバンはもはや統一的な武装勢力ではなく、無名でもなく、前世代のタリバンたちのもっていた理想主義的な実体が再生した組織でもない。さらに、かつてのムジャヒディーンの司令官たちは多くのShades(警察関係の刑事、スパイなど)に自身の防衛のために実質的に投資してきた、その結果現状の体制(Status Quo)に現実的な権益を保持する状態になっている──ちょうど、アフガニスタンで非パシュトゥーンの少数民族(マイノリティ)のほうが今やより一層、政治的にも軍事的にも組織化されているのとも同様に。

 そしてタリバンが西欧やアフガンの近隣諸国に取り入ろう(入り込もう)としてきたこともありえない。彼らがパシュトーン・ベルト地域の外の非パシュトーン地域の中心や、北部アフガン地域に影響力を拡大しようという試みはすべて粉砕され行き詰まりに陥っているようだ──それはパキスタンを継続的に不安的化し、経済的にも血を流させるのだが。

 パキスタンのアフガン戦略の転換の原因としてもうひとつ見過ごされているのは、タリバンの勝利はパキスタンの治安勢力にとって、すでに望むべきものではないということだ。タリバンを権力の座に維持するための経済的、政治的、外交的なコストはあまりにも高価だ。またパキスタンは国内のイスラム原理主義反乱勢力と苦闘しながら、同時にアフガンでタリバンを自由にさせて、表面下に見え隠れするパシュトーンのナショナリストのスパイを放置するような余裕もない。

 「パキスタンにとって、国内で全開状態のイスラム原理主義勢力と直面しながら、アフガンの急進的イスラミストを支持するなどという戦略は意味をなさない」と、Stratforの中東・南アジアディレクターのKamran Bokhariはいう。「メロンを見つめていれば、カンタロープ〔マスクメロン〕でさえ色づいてきて見えるものだ」と、Bokhariは、タリバンがパキスタンの反政府勢力を危険を冒して物質的・思想的に支持していることを、ウルドゥー語の有名な格言で説明した。

 タリバンは依然、パキスタンにとってはアフガンに影響を及ぼすための主要な媒介物だ。しかしBokhariによれば、「パキスタンはもはや彼らに舞台で演じてほしくない」、彼によれば、パキスタンは初めて、アフガニスタンの非パシュトゥーン系勢力にチャネルを開いたのだという。そして彼らは同時にワシントンを通じて、タジク人主導のアフガン国軍(ANA)の訓練に関与を強め、これにますます成功裏に投資しているという─そこには、パシュトゥーン系のタリバンがアフガン国内で最大の政治的、軍事的組織だという事実がある─パキスタンはソビエト撤退後に模索した状況は達成できなかったとはいえ、指揮命令者のポジションを得られるかもしれない。

パキスタンによる逮捕を再考する

 パキスタン政府による最近のタリバン幹部の逮捕を考えよう:逮捕されたリーダー、Mullah Baradarは特に、パキスタンでは彼らの独立したアジェンダを持つと疑われていた。彼らはパキスタンの存在を迂回して、バックチャネルを通じ米国やカブールのカルザイ大統領、国連とも対話を持つと信じられていた。
 パキスタンによる逮捕はこうしたチャネルを突如、閉ざしてしまった。彼らは同時にパキスタンに、将来タリバンとの対話においてタリバンの代表者となりうる上層部リーダーたちをコントロールする能力を与え──あるいは必要な際には(パキスタンの求めに応じて)彼らを借り集めることができた。しかしこの逮捕は、米国とアフガン政府、そしてタリバンにとっての明確なサインなのだ──パキスタンは、自らの出席する場のない交渉のテーブルというものと共に在ることはできないことを、彼らに示した。

 Kianiの言葉によれば、「〔パキスタンの〕戦略的パラダイムは充分に実感すべきだ。」─米国人とKarzaiは共にパキスタンの影響力の最小化に努めてきた。しかしその関与する範囲の広さと深さ、そしてNATOによる占領と撤退への計画になくてはならないこと(不可欠性)から考えて、その努力は成功しそうにない。
 彼らによる〔タリバンの〕逮捕はまたタリバンに対して、アフガニスタンでの彼らによる反乱勢力の組織を(白紙委任し)自由に任せたりしないとの、シグナルも送った。そして彼らは、パキスタンの利益やリスクの完全な分断化を図る必要があった。タリバンに交渉を強要し、パキスタンはタリバンのもつ最大の財産…時間というものを取り崩しにかかっている。どんなゲリラ勢力もそうであるように、タリバンは短期的勝利よりも長期的な消耗戦を好む嗜好を示している。これがすなわち、最も成功する反乱勢力というものが恒常的には敗北を喫しながらも、最後には戦に勝つ…ということの理由だ。

 タリバンと米国の間の仲介者の役割を自身に強制しつつ、パキスタンは"戦略的縦深”の要請に応じた、ある種の交渉結果を形づくることを試みている。アフガンの他の民族グループとの共存を図ることは、アフガンのタリバンにバランスをすっかり喪失させて─彼らが〔パキスタンのタリバンや他の過激派たちとの連携を通じて〕パキスタンに侵入することを防ぐだろう。これによってパキスタンのタリバンを彼らのアフガニスタンの同輩から孤立させる。パキスタンの反乱勢力はこれまでより国境線を超えた活動ができなくなり、そして彼らは反乱勢力にも類似した状況の受け入れを強要させるだろうし、その他の勢力をも決定的に弱体化させ、また排除する結末を得られるだろう。

もう沢山だし、もう遅すぎる?

 パキスタンの極大化主義者の立場からの撤退は、歓迎すべきことだ。しかし彼らはその戦略的機構の沢山の動的パーツを動き出させようとしている。今日のアフガニスタンの民族グループ同士の不信頼は、彼らのパキスタンへの信頼のなさのみに匹敵する。パキスタンの最近の動きはただ──非パシュトゥーン系がずっと不審の目で眺めていたなかにおいて──パキスタンを、タリバンやパシュトゥーン族一般からもさらに孤立化させる。
 
 こうした要素は最終的には彼らによる、パキスタンの影響力を制限するという立場に基づいた充分な反抗として具体化するかもしれない。1980年代にもパキスタンが、将来のアフガン政府との交渉を拒否して過剰な手に出すぎたことも想起すべきだ。パキスタンは赤軍ゲリラの苦境も長引かせつつ、西欧諸国からの援助も延長させて可能な限りの最善の条件を引き出そうとしたが、ソ連の撤退とそれによる西欧諸国の(この地域での)利害喪失のスピードを予測し得なかった。彼らが今や、米国のこの地域の占領に対して同じミスを犯す可能性も懸念されている。

 イランやインド、そしてロシアが抱く、パキスタン及びタリバンに対する不信は…これら2者がアフガンに対する共通のプラットフォームを見出して出会ったときから拡大した。しかし米国、パキスタン、サウジアラビア、トルコの同盟が結託した脅しによる合意を結ばせ、米国は安定化の図られた国を後に残しアフガンから撤退するかのごとく装えるかもしれない。
結局、アフガンの安定とパキスタンの捉え所のない"戦略的縦深"性は引き続き、一方にはアフガンの多くの民族グループの、一方にはその手の負えない近隣諸国の存在するナイフのエッジの上に在り続けることだろう。それは困難な注文だ─
http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/LC24Df03.html


パキスタンの態度に変化はない、最近の逮捕は単なる些細な戦略だ (3/25、rediff.com)
 …最近のパキスタンのタリバン上層部の逮捕は、彼らの戦略的転換を表しはしない。現実には、パキスタンは米国の撤退後により友好的な近隣諸国との関係を確保する交渉の主導権を握るためにこれを行った、とカーネギー財団平和研究所のAshley J Tellisは語る。そのドラマチックな逮捕は当初、思われたほどの目醒ましい出来事ではなかった─

 …そしてそれはアフガンの最終ゲームでの最大の敵が、アフガンのタリバンではなくインドであること、これをニュートラルにする必要性──への断固とした確信がその動機となっている。 

 そしてまたこれら一連の逮捕が米国の諜報部の動きに促された、という指摘は完全に偶然の一致に過ぎず(*註: CIAは昨今、無人偵察機でのワジリスタン地域の未曾有の空爆をおこなった)、パキスタンとの間で前もって熟慮計画された逮捕などではなかった、とTellisは指摘した─

 結果として、パキスタンでのタリバンのリーダー層の壊滅も起きてはおらず、パキスタンがその態度を「大転換」させたこともありえない、と指摘した。
http://news.rediff.com/report/2010/mar/25/arrest-of-taliban-leaders-just-pakistans-tact.htm
国連、ベナジル・ブット暗殺の調査報告書のリリースを延期(3/31, Dawn.com)

 …国連が任命した独立調査委員会は昨年7月に、2007年12月のブット暗殺についての調査を開始したが──彼らはこの水曜日に、国連の藩基文事務総長あてにその報告書を提出する期限となっていた。担当者のNesirkyによれば、その報告書は「今や完成して配布を待っており、公けに発表される予定がある」──しかし、藩基文事務総長も未だこれを読んでいない。また、この報告書をパキスタン政府に対するリリースを延期するようザルダリ大統領が要請したため、パキスタン政府には4月15 日以前に見せることはできない、という。イスラマバードの国連スポークスマンは、報告書リリースに伴う安全対策上の予防措置として、水曜日からパキスタン国内の全ての国連施設を3日間に亘り閉鎖することを国連が決定した、と発表した。
http://www.dawn.com/wps/wcm/connect/dawn-content-library/dawn/news/world/12-un+delays+release+of+bhutto+slaying+report--bi-05