Sunday, June 12, 2011

米国-パキスタンの十年来のパートナーシップに入る罅(ひび) Cracks in decade-old US-Pakistan partnership-BY TARIQ A. AL-MAEENA

イスラム過激派に手を貸した米国諜報部員?ビン・ラディン逮捕より前の今年1月の怪しい事件の回顧

Cracks in decade-old US-Pakistan partnership
米国-パキスタンの十年来のパートナーシップに入る罅(ひび)  By タリク・A.アル・マエーナ (2/26 Arab News)

 去る2001年、パキスタンのペルベズ・ムシャラフ大統領が、米国の「テロとの戦い」におけるパートナーシップ推進のためにジョージ・ブッシュ大統領と握手を交わしたその時、ほとんどのパキスタン人は、そのパートナーの手でテロが彼らの国に輸入されるなどとは、思いもよらなかった─

 多くのパキスタン人たちが米国―パキスタン関係を眺めるとき、心の底に横たわる怒りは否定できない─彼らの国とは、米国に苛められてばかり居ながら、その施しに頼る不承不承の同盟国なのだと。この十年間に両国政府がたどった変遷の許でもこうした感情は改善しなかった。今日、この二国間の悪名高き同盟のなかの亀裂は深まりつつある。

 パキスタンにおける疑念を高めた最近の出来事とは、Lahoreの路上で2人のパキスタン人を冷血にも射殺した米国政府関係者、Raymond Davisの逮捕だった。憤怒に駆られたパキスタンの大衆の抗議は、危機をはらんだ両国のきわどい縁を更に緊張させた。群衆の怒りは…Davisが二人のオートバイの男たち(治安勢力の銃器を所持して彼に窃盗を働こうとした、と彼が主張する)を殺害したLahoreの現場の付近を、彼が一人で車で走行していたときに逮捕された事実によっても鎮まらなかった。

 36歳のDavisは元米軍特殊部隊の隊員で、民間警備会社XE Service(旧名Blackwater)に雇われていた。Davisは4年近く前からCIAのために働き始め、そして2009年末にパキスタンに来た。彼は射撃事件の前までは、警備会社の他のメンバーらと共にラホールの安全な家に住んでいた。米国人らはすぐさま、Davisがその外交上のステイタスにより、パキスタンでの起訴を免れるべきだと要求した。毎日が過ぎ行くなかで、Barack Obama大統領の主張のレトリックのレベルは高まり、Davisは外交特権により免罪されるというオフィシャルな主張へと飛躍し、そして彼はそのメッセージを伝えるべくイスラマバードにJohn Kerry 上院議員を派遣した。

 そんな中、パキスタンの匿名の外務省員が、同国政府がすでにDavisには全面的な免罪権はないと決断したと述べた。

 米国上院の外交委員会議長であるKerryは同国の訪問中に、彼の目的が「…レトリックをトーンダウンさせ、米国のパキスタンとのパートナーシップを再度、確認すること」であると、Davisに対する抑留騒ぎの余波のなかで表明した。しかしDavisとCIAとの関係について暴露された新たな事実が、何か一層邪悪なものを示唆していた。
 いくつかの新聞報道が、Davisと「テロリスト活動」及び、パキスタンのタリバンとを結びつける匿名の情報を掲載した。それらによれば、Davisはテロリストの活動を活発に助けて、そそのかしていたという。

 The Express Tribune 紙は、ヘッドラインでこのように喧伝した、「CIAエージェントのDavisは、ローカルな民兵組織との繋がりがあった」。同紙は匿名の「警察幹部」からの情報として、Davisにはテロ活動を首謀した容疑がかけられていたと書いた。

 「捜査によって、彼とTTP (パキスタンのTaleban)とは密接な繋がりがあり、そして、彼は反政府活動を鼓舞するためにパンジャブから若者たちをタリバンに勧誘するための道具だったことが暴露された」。その警察幹部は、Davisがパキスタンの不穏な状況を掻き立てるべく、パキスタンのタリバンと手を取り合っており、同国の核兵器は安全な者たちの手にはない、との論議を主張した。警察のソースによれば、Davisの携帯電話の会話記録はすでに…彼と27人のパキスタンの武装分子たちや、Lashkar-e-Jhangviとして知られるセクト組織との繋がりを証明していたとされる。

 南アジアのニュース・エージェンシー、ANI はこう報じた─ロシアの外国諜報部によれば、Davisは核兵器と生物兵器の材料をアル・カイダに渡していた、と。またDavisはCIAの最高機密文書を所持しているところを発見され、またその地域で活動し、怖れられる米軍のAmerican Task Force 373 (TF373) との繋がりも見出された。

 ANIはSVRが、36歳のDavisの逮捕がこの危機を煽ったと伝えた。彼の逮捕の後に押収された証拠書類は、彼が現在、アフガンの戦争地域とパキスタンの部族地域で非合法な活動をするTF373 のユニットのメンバーであることを示している。

 同紙によれば、その(殺された)二人組とは─Davisの携帯電話がアフガニスタンと国境を接するワジリスタンの部族地域に入ったことが追跡され、そして彼が(その地で)アル・カイダと継続的にコンタクトを取っている状況が見出された後に、彼を追跡すべく送られたISIのエージェントだったと─パキスタン当局が述べたという。

 このSVRのレポート中の最も不吉な点とは、「パキスタンのISIが─Davisの所持していたCIAの最高機密文書が…彼、またはTF373(あるいはこの両者)が、アル・カイダのテロリストに”核分裂性の物質”と”生物剤(生物化学兵器)”を供給していると指し示している点」であり…(ISIによれば)それらは、崩壊寸前の世界経済における覇権をふたたび確立すべく、全面戦争をひき起こそうとする米国自身に対抗するために使われる─と、同紙は付け加えているのだ。

 Lahoreの地方裁判所は、それ以来パキスタン政府に対し、二人のパキスタン人殺害の容疑で抑留中の米国政府関係者が、彼らの主張する外交特権を有するかどうかの審理に3週間の猶予を与えているが…その遅れは米国を失望させ、両国の間にわずかに残る信頼関係の痕跡さえも蝕む可能性がある。

 多くのパキスタン人は、彼らの国内第二の都市で武装した米国人が暴れ回っていることに対して激怒し、もしもDavisが解放された場合には大規模な抗議行動を起こす、と警告した。その最終結果がどうあれ、これが十年来のパートナーシップにとってよい前兆であることはありえない。
http://arabnews.com/opinion/columns/article285164.ece

参考記事