Thursday, April 22, 2010

カソリックの大いなる隠蔽:法王の全てのキャリアには、それ自身に邪悪の臭いがある/ The Great Catholic Cover-Up-The pope's entire career has the stench of evil about it-By C.Hitchens

カソリックの大いなる隠蔽 ─ 法王の全てのキャリアには、それ自身に邪悪の臭いがある─ By クリストファー・ヒッチンズ (3/15、Slate.com)

 3月10日、バチカンの祓魔師のチーフ(chief exorcist)のGabriele Amorth司祭(彼は、この困難な職務を25年間務めている)はこのように述べたという─ 「悪魔がバチカン内部で活動している」、「聖なる部屋々々の内に漂う "サタンの煙"について語るとき、それはすべて真実なのだ──最近、報告のなされている暴力と小児性愛のストーリーを含めて」─ これはおそらく、この聖なる教皇区のなかで、何か恐ろしいことが…勿論、進行中であることを追認したものと解釈されている──ほとんど取調べの審問に対しても、完全に物的証拠による説明がなされている。

 子供のレイプ事件に関する現在進行中の──まさに際限のないスキャンダルへのバチカンの継続的関与についてごく最近暴露された事項に関しては、数日後にHoly See(使徒座〔教皇庁〕)のスポークスマンが否定を装いながらも譲歩を示した。Federico Lombardi司祭(スポークスマン)は「それは明らかなことなのだが…」、「聖なる父、法王自身が性的虐待事件に関与していた要素が、あったのか否か、を見出すための試みがなされつつある」と語った…そして彼は愚かにもこう続けた、「それらの試みは失敗した」と。

 彼は二度、過ちを犯している。第一に、誰もそのような証拠を発見するための努力などする必要はなかった:そしてそれは表面化した…なぜなら、それは表面化せざるを得なかったからだ。そして第二に、このローマ・カソリック教会の最高位のレベルを巻き込んだ最悪なスキャンダルの拡大のプロセスは今、始まったばかりなのだ。だがそれは、枢機卿団が主キリストの地上の代理人としてその男を選任したときに、彼に、その当初の(オリジナルな)隠蔽作業への主なる責任が生じたことは、ある意味で避けがたいことなのだ。この"選挙"に票を投じた聖なる投票者たちの一人は、ボストンのBernard Law枢機卿──すなわち
〔児童を虐待した聖職者を再度任命していたにも関わらず〕、マサチューセッツの裁判所が彼の趣味に余りに寛大すぎる事が判明した人物だ‥

 ここには二つの…
別々だが、互いに関連しあっている事柄がある: その一つ目は、このモラル的な悪夢の一つ一つの事例に、法王の個人的な責任が問われるということであり、二つ目は、それらに伴うより拡大した違法行為や、恥辱や、不面目にも、彼のより全般的な制度上の責任が伴う点ということだ。この最初の事実とは、簡単に説明されることで、誰にもそれを否定できない。1979年に、11歳のWilfried F.という名のドイツ人少年が司祭に連れられ、山岳地に休暇旅行に行った。その後彼は、アルコールを与えられ、彼のベッドルームに監禁され、服を脱がされ、彼の告解をきく聖職者の性器を○えさせられた(なぜ我々は、我々自身がこうしたことを“虐待”と呼ぶことを制限するのだろうか?)この加害者の司祭は、当時の大司教(Archbishop)だったJoseph Ratzingerの決断により、「テラピーをうけるため」エッセンからミュンヘンへと転任させられ、そして、彼には二度と子供のケアはさせないとの保証がなされた。しかし、Ratzingerの代理人だった司教代理、Gerhard Gruberが、彼を「司祭の仕事」に戻させるのに時間を要することはなく、そこで彼はまもなく、再び彼の児童虐待のキャリアを再開した。

 これには無論、ふたたび告訴がなされたが、まぎれもなく…後にその申し立ての一部は取り下げられた──Ratzinger自身は、この2度目の事件の再発を知らなかったのだ、として──私はここに、ワシントンの前のバチカン大使館員で、子供のレイプ事件に関する申し立てへのカソリック教会の対応の怠惰さを早くから批判していたThomas Doyle司祭の言葉を引用したい…「ナンセンスだ」、と彼は言った。「法王ベネディクトはマイクロ・マネージャー〔最高経営者でありながら細かいことまで管理して、部下に裁量権を与えないタイプ〕だ。彼はオールドスタイルなのだ。その手の出来事については彼は必ず、すべてに関心を持ってきた。司教代理には、もっとましな言い訳を考えさせたほうがいい、明らかに彼は法王を守ろうとしているだけなのだ」

 これはよくある、菜園の野菜類のようなものなのだ… 米国の、オーストラリアの、そしてアイルランドのカソリック信者達がその子供達に対するレイプ、拷問、またそのことへの隠蔽──レイプ犯・虐待犯たちを教会区から教会区へ異動させることによる事実の隠蔽を──骨折り労苦のすえに包括的に暴露してきた、こうした人達にとってはお馴染みなことだ。これは最近になって、法王の実兄Georg Ratzinger司祭が行なった遅すぎた事実の承認のようなレベル…つまり1964年から1994年にかけて彼が経営していた聖歌隊学校における性的暴行事件について、彼は何も知らなかったが故に──今や彼は当時を想起し、そこで少年たちが手荒く扱われたことを遺憾に思う、と述べたというようなレベルの承認に過ぎない。

 さらにひどく深刻なのは、教会がJoseph Ratzingerを最高位に任ずる前に、彼がより大きなスケールで、正義の遂行の妨害に果たした役割だ。彼は枢機卿に昇進した後、「教理省(かつては宗教裁判として知られていた)」の担当者に任命された。2001年には法王ヨハネ・パウロ2世が、カソリック聖職者による子供のレイプ・拷問事件への調査を担当する自身の部門を設置していた。同年の5月にRatzinger は、全ての司教(bishop)たちに秘密の手紙を送り、そのなかで彼は司教たちに対し、ある犯罪の極端な重大性への認識を喚起した──しかしその犯罪とは、レイプと拷問を報告すること──であったそのような告発は…とRatzingerは詠唱するように語っていた…教会自身の排他的な司法権によってのみ対処すべきものだ、と。事件の証拠を法律機関や報道機関によって共有させることは絶対的に禁止される。そうした容疑は、最高度に秘密の方法によってのみ捜査され──永久的な沈黙によって抑制され──それらの厳重なる秘密は誰もが、聖なるオフィス(教皇庁)の機密とみなすべきで──「(違反者には)、破門の懲罰が課される…(斜体は筆者による)。未だに、子供のレイプや虐待に関与したとして破門された者はいないが、加害行為について暴露した者は深刻なトラブルにみまわれるかもしれない、という。そしてこれが、我々にモラルの相対性について警告を発する、教会のやっていることなのだ! (このLondon ObserverのJamie Dowardによる、2005年4月24日付のより驚くべき2つのレポートを見てほしい─)  http://www.guardian.co.uk/world/2005/apr/24/children.childprotection 
 聖職者たちを法から遮蔽するのみでは飽き足らず、Ratzingerのオフィスは自らによる私的な制限規則をもうけた。教会の司法権は…とRatzingerは書いた、「未成年者が18歳になった日から発効しはじめる」、そしてその後さらに10年間も(制限の期間が)継続する──と。Ratzingerとテキサスの教会を告訴した2人の犠牲者の弁護人であるDaniel Sheaは正確にも、この後者の規則が正義の遂行を妨げる、と描写した。「もし貴方が、事件の事実を知ることができないなら、貴方はそれを調査することはできない。もしもその事実を18年プラス10年間にわたり秘密にし続けることができたなら、聖職者たちはそれ(訴追)から逃れることができる」。

 この身の毛もよだつような訴訟一覧表の次のアイテムは、Marcial Maciel司祭──性的虐待は殆どキリスト教の典礼の一部だ、とすら唱えた過激な反動的団体「Legion of Christ」の創設者──に対する、長期的な訴追申し立てのリバイバルだ。この秘密教団の元上級メンバーたちは、彼ら申し立て人たちの主張がRatzingerによって90年代に黙殺され、無効にされたことを発見したのだ──まるでそれが、当時の法王ヨハネ・パウロ2世により、Maciel神父が「若者に効果のある指導者」と賞賛されていたお陰、だけでなされたかのように。そして今、この長期にわたる暗黒化(不明化)運動の成果をみるがいい。ローマ・カソリック教会は、最も不潔なる不正の隠蔽をかつてその任務としていた、ババリア出身の凡庸な官僚によって率いられているのだ…その男のその職務上の愚劣さとは、いまや彼が汚れた犯罪の波(連鎖)に個人的な責任、そして職務上の責任がある、ということを示している。Ratzinger自身は平凡な人物かもしれない、しかし彼のキャリアのすべてには邪悪のにおいがある──悪魔祓いの力では追い払えずにまとわりつく、システマチックな邪悪だ。今、必要とされるのは中世のまじないの呪文ではなく、正義の適用なのだ──それも、スピーディーな対応で。
http://www.slate.com/id/2247861/

Hitchens, Dawkins try for Pope's arrest
http://www.nationalpost.com/news/story.html?id=2790684&p=1

科学者のリチャード・ドーキンズと作家のヒッチンズは、今年9月に予定されている法王のロンドン、グラスゴー、コベントリー訪問中に英当局は法王を逮捕すべきだと主張、かつてサルマン・ラシュディやシェラレオネの国連法廷を弁護した敏腕弁護士 Geoffrey Robertsonに依頼していると発表──

*"God is not great"のヒッチンズと共に、司法当局にローマ法王の訴追を訴えたドーキンズは、英国の動物行動学者、進化論者──天地創造説やインテリジェントデザイン説などを強く批判している。
The pope should stand trial- By Richard Dawkins
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/belief/2010/apr/13/pope-prosecution-dawkins