Monday, April 4, 2011

ザ・イラク・エフェクト The Iraq Effect - By Christopher Hitchens


The Iraq Effect ザ・イラク・エフェクト By クリストファー・ヒッチンズ (3/28, Slate.com)

If Saddam Hussein were still in power, this year's Arab uprisings could never have happened. ─もしもサダム・フセインが未だに権力の座にあれば、今年のアラブの反乱は、決して起こらなかった─
 先月もっとも心を鼓舞したひとつのイメージ…〔シリアとリビアの独裁政治にたちむかって戦う市民たちの勇敢さと尊厳すらも凌駕した…そのイメージ〕とは、ホシュヤル・ゼバリHoshyar Zebariが、ムアマール・カダフィMuammar Qaddafi大佐の堕落した政権に対する強硬策の行使を呼びかけようと、パリを訪問したことだった。ここに、イラクの外務大臣だった人物で、アラブ連盟の新しい首長でもある彼が、ローカル外交の軸をワンマンな独裁者による政治に立ち向かわせよう、との尽力を行ったのだ。5月にはイラクがアラブ連盟サミット会議をホストするが、どのアラブ諸国のリーダーが自らの国の首都を離れてこの会議に参加する勇気があるのかを、見届けるのはとても面白く、大変示唆に富むだろう。こうしたすべての光景は、ゼバリが10年前に…彼の寄る辺のない民衆をサダムフセインの化学兵器の影響から保護すべく…一途に奮闘する亡命軍人だったことを記憶している我々にとっては特に、喜ばしいものだ。

 この─ 豊富な石油資源をもち、厳重に武装し、近隣諸国の内政へのトラック一杯分もの介入歴をもち、自国民に対する全面的な大規模抑圧の歴史をもつアラブの要石の国家〔リビア〕が、今だにサディスティックな犯罪者ファミリーの私的な所有財産であったなら…アラブの春がいかに最後まで行動を貫徹するどうかを誰が想像できるだろう?しかし、それが今現在の状況であるなかで、イラクという国をもうひとつの物差として初めから持っていることがどんなメリットを持つのかは…伺い知れず認知もしがたいことで、その影響の及ぶ範囲の計算すらも、不可能なことだ。そしてリビアをイラクと重ね合わせることによる影響も…同様に、しばしば見過ごされがちではあるが、一様にポジティブな影響を有しているだろう。

 最初のポイントとして、私はエジプト人とチュニジア人、そして他の抗議デモの参加者たちは、イラクの旗を振りながらそれを模倣すべく街頭に出たわけではない…と認める。(しかし、エジプト民主化運動の知的なゴッドファーザー、サアド・エディン・イブラヒムSaad-Eddin Ibrahim(*)は公けに、サダム・フセインの失墜というものを霊感の源として賞賛し、そして…レバノンの「春」の多くの初期のリーダーたちもまた、同様な言葉を用いてオープンに語っていたものだ)こうした寡黙さとは、とても理解しやすい…なぜなら、ゼバリ外相が賞賛したイラクの北部クルディスタン地方のことはおいても、そうした国の解放はその国の民衆たちだけでは完全になし遂げられはしなかったものだからだ。(*Saad-Eddin Ibrahim http://tinyurl.com/3o5um59 ) しかしこの点は、アラブ連盟自身が(彼らの内に)外部からの支援を得ることなく、国の内部から政権転覆されることに対して鈍感な政権が、いくつか存在する…と認めて以来…より一層の論議の的になっている。カダフィの政権はそうした政権の、特に際立った例であり、そしてサダムの政権もまた、シーア派住民とクルド系住民を繰り返し爆撃して毒ガス兵器で攻撃したことでも十分に証明されるように、そのような政権として悪名高いものだった。しかしながら、イラクには既に…初歩的で僅かばかりのものとはいえ、フリー・プレス(自由な報道機関)と、明文化された国家憲法があり、アラブの市民社会として最低限度求められる議会選挙のシステムも備えている。イラクは既に、ビン・ラディン主義者がその揺籃期の民主主義に対して投げつけた…火の試練をもくぐり抜けて、それを広汎に打ち破り、それらに対する信頼を奪った。こうした試練や経験というものは、メソポタミアだけにとって有用なものではない。

 リビアにおけるイラク・エフェクト(イラクの効果)とは:ここに英国の外交官で、カダフィの備蓄していた大量破壊兵器の〔欧米への〕引き渡しの交渉を助けた人物から私が聞いた話がある。彼はどんな意味でもネオコンなどではあり得ない(女王陛下の外交及び英連邦の事務所にはそのような人物はまずまれにしか居ないが)…そして彼は3つのファクターを強調した。

 第1に、そして現況では最低限、欧米は特に優れた諜報能力を持っているため、カダフィを彼の秘密のプログラムについて認知している内容をもとに悪魔化することができた。これに時を経るとともに更に累積的に加わっていったのは スコットランドの裁判所のロッカビー事件(*パンナム航空機爆破事件)への頑固なこだわりだった。(これを、自らに「王の中の王」(king of kings)というようなスタイルを当てはめるような人々からは不完全に理解される金言のごときスコットランドの法律と混同しないでほしい) (*参考記事:http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2009/09/lockerbie-more-evidence-of-cynical.html パンナム航空機事件・2)

 第3番目に、そしてこのタイミングでとても重要なことは、カダフィがサダム・フセインの運命を打ち眺めて絶望的な恐怖に陥った…ということだ。このことはビン・ラディンの多くの将官らに対して、私の多くの友人らが行った聴取尋問でも広く再確認されている。彼〔カダフィ〕は、結局のところ─国連ではなく─ ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアとにアプローチした。かくして今、カダフィの備蓄していた兵器は、テネシー州Oak Ridgeの、鍵と錠に閉ざされた内にあるのだ (*http://www.msnbc.msn.com/id/4078175/ns/world_news/ )─その痕跡の要素によって、パキスタンのA.Q. Khan(A.Q.カーン博士…核兵器学者の「死の商人」http://www.globalsecurity.org/wmd/world/libya/khan-libya.htmを犯罪者と定義することに成功しながら─。しかし想定のし得る限り…彼(カダフィ)がそうなることを望んでいなかったと誰が言えるだろうか?

 しかし…彼の毒牙は抜かれても、カダフィは、薄汚れた迷惑者であり続けた。New York Timesが先週、brilliant dispatch(* http://www.nytimes.com/2011/03/24/world/africa/24qaddafi.html?pagewanted=all )でレポートしていたように、彼は西欧の石油企業に、彼自身がロッカビー事件に関して課せられていた150億ドルの弁償金の支払いを強いた、というわけだ。彼は彼の国民を搾取し続けた ─TVに写る民衆が皆、いかに貧しくみすぼらしいかを見てみるがいい─リビアの巨大な富を、個人的な名声を打ち立てるプロジェクトのために浪費しながら。彼のリベリア、ダルフール、チャドへの流血の介入では、もう1機の商用旅客機が爆破されて…今回のそれとは、フランス航空機だった(*http://en.wikipedia.org/wiki/UTA_Flight_772 )─もっと、ずっと以前に彼を戦争犯罪と人道に対する罪で告訴できていたならどんなによかったことか。サダム・フセインと同様に彼は、彼自身を言語道断で、かつヒステリックに「問題」として定義し、リビアの悲惨と地域の苦しみのfons et origo(本源)であると主張し続けた。それならなぜ我々は、恥ずかしそうに、我々は「彼の勢力を」標的にしてはいるが、彼自身を標的にしていないなどと装った主張をし続けているのか?

 英国では、例えば、この論議はこっけいで笑劇じみたプロポーションへと達した。先日、カダフィのバブ・アル・アジズヤの「コンパウンド(複合本部基地)」Bab-al-Azizya "compound" に到達して大損害を与えたのものが英国の巡航ミサイルであることは、誰も疑ってはいないが、しかしDavid Cameron首相は、いくつかの攻撃段階において、おそらく標的とされていたのは独裁者である可能性がある、と述べているのにも関わらず、彼の防衛参謀長Gen. Sir David Richardは「絶対にそれはない」と述べている、なぜなら国連決議がそのような非常時作戦を認めていないからだ。

 ワシントンでは、バラク・オバマ大統領が正当にもカダフィは「去るべきだ」と述べたが、しかしそのミッション自体は、市民を虐殺から守る…という目標の1つだと描写されている。ストレートな語り方、あるいは殆どテクニカルな軍事的説明においてさえもそうなのだ。もしも、指揮統制command and controlという言葉に意味があるのなら、彼らはリビア人たちを余りに長きにわたって指揮し統制してきた、泣き言を言う君主を確かに特定する。

 ホシュヤル・ゼバリは、長期にわたり北部および南部イラクをサダム・フセインの攻撃用ヘリコプターから守った「飛行禁止区域」の先例に関して嬉しそうに語った。しかし彼は、このことにおけるロジックが無情なものであることも完全に知っている。日々、サダムの地上勢力は、それらの航空機を銃撃した。日々、クウェイトとの停戦後合意はより一層すり切れ侵害されていった。日々、イラクは1人の専制君主の気まぐれの惨めな人質となっていることがより明白になっていった。

 現在直ぐにもなすべき仕事は、こうしたレッスンに習うこと、得られた知識を適用できるまでの時間を短縮すること、悪をその正しい名前で呼ぶこと、そしてカダフィに対し、彼自身の死か、あるいは彼の(亡命への)桟橋にたち現れるかの厳しい選択肢を示しつつ面と向かうことだ。彼がこのようなエピソード(状況)から、彼自身の権威の切れはしを維持して立ち現れることは、道義的にも考えられない、そして、そのことを大声で言わないことは、道義的にみても意志薄弱すぎる。ミッション・クリープ Mission creep(*)という、醜悪で不恰好な言葉が突然、それ自身の酷い意味を帯びてくる。アラブ連盟が5月に会合を持つ際には、彼らは自由なイラクの地において、リビアの新しい暫定政府を歓迎しなければならないのだ。そして我々は円を閉じる─そしてこうしたすべての勇敢な人々、旧体制ancien regimeの最も悪しき要塞を打ち崩そうとして倒れた人々の汚名を注ぎ、正しさを立証せねばならない。

*ミッション・クリープ、終わりの見えない展開◆本来は米軍事用語で任務を遂行する上で目標設定が明確でなく当初対象としていた範囲を拡大したり、いつ終わるか見通しが立たないまま人や物の投入を続けていかなくてはならなくなった政策を意味し批判的に使われる言葉.
http://www.slate.com/id/2289587/pagenum/all/#p2

Hitchens poses with Kurdish Peshmerga fighters