Monday, August 17, 2009
米国のアフガン戦略の大きな過ちとは?/Did We Take a Wrong Turn in Afghanistan?Absolutely. But it's far too early for despair.- By Christopher Hitchens
…選挙を前に、アフガニスタンの状況は刻々と変わっている?
オバマの新戦略の背後にあるものは?
我々はアフガニスタンで誤った方向転換をしたのか?絶対にそうだ、しかし絶望するにはまだ早すぎる ─ (7/16日、 By C・ヒッチンズ)
Rory Stewart *は、アフガニスタンの解放にもっとも知的に、情熱的に関わってきた人物の一人だが、彼がその7/9のエッセイ "The Irresistible Illusion" **で書いたことは注目に値する。我々のリーダーたちも共通に抱きがちな、この問題の描写を引用してみよう:
ポリシーメーカーたちは、アフガニスタンを 反テロや、反乱勢力との対決、国家建設や 経済発展、というカテゴリーでとらえるが、これらは相互に強く関係していて、どんな組み合わせで組み合わせることも可能だ──国家建設のためにはタリバンを撃退しなければならない…タリバン撃退の為には国家建設を進めねばならない。経済発展なくして治安はない…または治安の確保なくして経済発展はない。タリバンがいるなら、テロリストがいる…もしも国家発展がないならテロリストは居すわり続ける─そして、ニューヨーカー誌にオバマが語ったように、「もしも政府の支配の及ばぬ地域があるなら、そこはテロリストの天国になる」…
私はしばらくの間アフガニスタンを訪れていないが、しばらく前に、間違った方向転換がとられたという印象を逃れるのは困難だ。または…それがいかなる度合いだったにしても、幾たびか間違った転回があったのだろう… それは「麻薬戦争」における敗北、空爆への依存過多による一般市民への威嚇と被害拡大、国境地域の多くの地点をタリバンとそのパキスタンの支援者に譲ったこと、腐敗や汚職の検証や防止の失敗、そして今、誰もきわだった候補者のいない大統領の再選挙へとむかっているHamid Karzai の政府の無能力さ、などだろう…。
Stewartは、米軍の「増派」戦略がこの状況をくつがえせる可能性は不確かなものだ、と指摘する。アフガニスタンには、多大な数の公衆に支えられた政治的(政党)グループはなく、カブールという都市にもバグダッドのような相対的な強さや、法的正当性もない。アフガンの部族グループには、スンニ派のイラク人グループの様にたやすく接触はできないし、彼らはスンニ派のようなレベルのグループの団結性(首尾一貫とした集中性)や法的正当性ももたない。こうした状況のなかでこそタリバンは反・ソビエトのムジャヘディンたちと最低でもある程度は匹敵する成功をなし得たし、イスラム教的信念の擁護者、外国侵略軍の敵として振る舞い、そして幾つかの地方の県や町々では実質的な政府も打ち立ててきた。
しかしその展望はあなたが想像するかもしれないほど、完全に暗くもない。私がアフガンの内陸部を訪れた際の経験では、私はタリバンが、かつてのムジャヘディン達が経験しなかった大きく不利な点をもっていることに気づかされた──彼らはアフガンにおいてすでに政権を打ち立てたことがあるが、それによって余り愛されてはこなかった。数え切れない多くの人々、特に女性や都市住民たちには彼らの醜悪かつ残忍で愚かな支配の記憶がある。多くのアフガン人は彼らから逃れるために国を出て、そしてタリバンが放逐された後にようやく帰国することができた。いくつかの宗教的・民族的少数派のグループもひどい迫害を受けたため、タリバンの新たな支配には服するとは思われない。Rory Stewartはこうも書いている:
ハザラ、タジク、そしてウズベク族の人々は、1996年の当時よりもより裕福となり、社会的地位も固めてパワフルになったため、彼らの地域をタリバンが支配することに強く抵抗するだろう。アフガニスタンの国軍も効果的に力をつけている。パキスタンはかつてのように、タリバンを支持する立場にはもうない──こうした状況によって、タリバンが通常兵器による軍を結成して戦車や高射砲をカブールへの主要道路に設置していた96年当時のような活動を阻むにも、外国軍や外国機による支援は現在の我々の駐留規模よりもはるかに低レベルな数を要請すればすむだろう。
Stewartや他のアナリストたちのいうことを正しく読んでいるなら、彼らはアフガニスタンで我々が善なるものの敵をせいぜい最大に利用している、と警告しているのかもしれない。このことは私に、ウェールズの偉大なラディカリスト、Aneurin Bevan が1950年代末のキプロス紛争のさなかに、英国の保守党員たちに語ったことを思い出させる──彼は英国政府がキプロスの基地を維持したいのか、あるいは島全体を拠点(基地)として維持したいのかを政府自身、分っていなかったように見える、と指摘していた──その喩えを敷衍するなら、我々は…我々自身がアフガニスタンの国と社会全体の運営を遂行するという責任を負うことなしに、アフガンでの出来事を我々の心からの願望に近い出来事のようにとらえる(感ずる)ことができないというわけだろうか?
Stewartを、再び引用しよう:「軍の兵力削減と国家再建からの撤退は、完全なる撤退と見られるべきではない、電力や水の供給、灌漑、国民の健康や教育、農業政策、地方の発展などの善いプロジェクトは、継続することができる」 軍事的な前線では、アル・カイダをアフガニスタンから遠ざけ続けることはできる──たとえ代わりにパキスタンに追い込んだとしても (…今現在の状況と同様に…特殊部隊と空軍偵察機の使用によって。) もしも、どこか別の地域のタリバン系地方軍閥によって、タリバンに新たなる安全な天地が与えられても、我々はそれを、隣国を拠点とした「地平線の彼方からの兵力("over the horizon" forces )」を使って掃討することは、躊躇しない。
問題となるのは…イラクにおけるぜい弱な失敗への批判をそらしたい、という懸念のなかで…(そして、アフガニスタン-パキスタン状勢が今現在より明るかった時点でそれを言い始めていたから) オバマは彼が今それを実現したい、と望めるよりも多くのことをアフガニスタンで行う、と約束していた可能性がある。そして我々は…NATO同盟軍がますます苛立つなかで…いまやアフガニスタンの治安維持のための巨大な、新たな軍事施策に、日々拡大するコストとともに身を投じているのだ。英国でさえも今、アフガンでの犠牲者の拡大と、常に後退し続ける政情の不安定さには、動揺を表明している。最後に、そしてイラクとは異なる点として、アフガニスタンには経済活動がない──(我々があまりに愚かに根絶やしにしようと頑張っている「インフォーマル(非公式)な経済活動」以外には)。それでも、絶望や無条件降伏にはまだ早い、多くのオプションがある…それについて語ることも考えることも可能であるべきだ…Stewartのエッセイはそれを語るよいスタートになる。 http://www.slate.com/id/2223056/
*:Rory Stewart (2003年、当時30歳のペルシャ語とアラビア語を少々話せる英国外交官だったStewartは、ヨルダンの英国公館に「職探し」に訪れ、突然イラク南部の地方官に任命され、イラン国境に近い湿地帯地方での赴任の経験を手記 "The Prince of the Marshes" http://www.slate.com/id/2146691/entry/2146692/ に描いた)
**:http://tinyurl.com/mkskkx
アフガニスタンの米軍司令官、アフガン市民を守るための戦略転換について語る (7.26 LAタイムス)
カブールからの報告。米国および同盟国軍は、アフガン市民の安全を守ることを焦点に、そのミッションを変更せねばならない─ たとえ、より人口の少ない離れた地域でタリバンが比較的自由に跳梁跋扈することを許したとしても、と米軍のトップ司令官。
…同国駐留米軍部隊の作戦の洗い直しのために派遣されたStanley A. McChrystal大佐は、緊張の高まる戦争の方向性を転換する、彼の新たな戦略について語った。
米国国民の、犠牲者の数の増加に対して高まる懸念のなかで、大佐は来年までに成果を見せなければならない。「人々の誰もが見ている。私がいうのは米国とかヨーロッパの国々の人々だけをいっているのではない。タリバンも見ている、アフガニスタンの人々が我々を見ている。」と先月、司令官に赴任した大佐はいう。「彼らは我々の新しい戦略へのコミットメントについて診断する、彼らは我々の新戦略の解決法や、いかにして成功するかについて判断を下すだろう。」大佐はより一層の兵力増派の必要性については言及せず、彼の戦略とは反乱勢力を非戦闘員から隔てること、そしてアフガン政府の信頼性を増すことだと語った…
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-afghan-interview26-2009jul26,0,5576419.story
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