デビッド・ヘッドリーが多重人格というのは本当なのか?
「米国育ちのテロリスト」の多くの顔 By ディネシュ・シャルマ The many faces of a homegrown terrorist By Dinesh Sharma (6/16, Asia Times Online)
(前記事の続き;冒頭略)
先週、米国生まれのテロリストについて懸念を感じていた人々は、このパキスタン系米国人テロリスト、David Coleman Headleyの心が、コンパートメントに細かく隔離された、複雑な、多重的な分裂状態にあったと知ってショックを受けた─彼は多くの文化的、国際的なボーダーをもまたいだ諜報機関へと入り込んで、彼らを騙していたのだ。(右:David Headleyの法廷でのスケッチ)
合衆国の司法当局は、最終的に2009年10月に彼を逮捕し、当局は彼とその共謀者とされるTahawwur Hussain Ranaが、デンマークの新聞社Jyllands-Posten(挑発的な漫画を掲載した)への攻撃を謀議した件で告訴した。
2009年12月には、連邦捜査局(FBI)もまたHeadleyを、2008年のムンバイの大規模な虐殺テロ(164人が殺害された)計画に加担し、テロ組織Lashkar-e-Tayyiba (LeT)への物資援助、そして米国市民の殺害幇助を行った容疑で告発した。
12件の容疑で告発されたHeadleyは、終身刑と莫大な罰金の支払いに直面していた。すると彼は…友人のRanaも、ムンバイ攻撃での役割を負っていたとして名指ししたのだ。Headleyはインド、デンマーク、あるいはパキスタンへの身柄引渡しを逃れ、死刑の宣告から免れるために、司法取引を結んだ。6月6日に結審を迎えた裁判において、Ranaはデンマークの新聞社へのテロ計画幇助とLeTへの援助の二つの罪状で有罪となったが、ムンバイへの攻撃計画における幇助の罪は問われなかった。
ムンバイ攻撃の計画において、今や盛んに報道されているパキスタン諜報部ISIの関与という事実を再度確認したことに加えて、Headleyの裁判は国内生まれのテロリストの「多重人格」、あるいは「解離性同一性障害」を、白日のもとにさらけだし─心理学者たちや、治安の専門家たちに現実的な実例を提供した。彼の複雑なストーリーに関しては、既にドキュメンタリーも生み出された─HBOのドキュドラマなら理想的でさえあるかも知れない。 (*左:Tahawwur Rana)
Headleyのプロフィールをさっと一見するなら、そこに彼の異なる人生のフェースにおける、人格上の深い亀裂や分裂、あるいは、全体性の欠如が見出される。Headleyが実際、1992年に多重人格性障害(MPD)と診断されていたことは、驚くには値しない…私は私の臨床的な仮説を検証しつつ、そのことを確認した。しかし、彼の病気とその診断を囲む状況は不透明なままに残されている。
彼は、ニューヨークとシカゴ、フィラデルフィアのパキスタン系米国人コミュニティで、また同時に彼の先祖の故郷パキスタンでも、Daood Sayed Gilaniとして知られていた。テロリストに転じる前、1980年代と90年代にはHeadleyは、主にバーやビデオレンタル・ストアを経営するスモール・ビジネスのオーナーだった。2001年には、パキスタンからのヘロイン密輸の複数の容疑を受けつつも無罪となり、その後彼は米国麻薬取締局Drug Enforcement Authority (DEA)の情報屋となった。
DEAに協力して覆面捜査を行いながらも、Headleyは2002年と2003年にかけて、LeTの組織の深層との接触を開始した。「彼は直ぐに手の平を返して…それが彼にとって好都合であるならば、すべての者たちを裏切ったのだ」と、あるテロリズム・アナリストは語る。
ISIの、より効果的な継っ子組織の一つであるLeTへの度重なる訪問の後に、彼は2008年のムンバイへの攻撃と他のテロ活動の実行の責任を負い始めた。他の治安アナリストによれば、「LeTにとっての夢が現実となった」、のだという。Headleyの中に、LeTは「完璧なテロリスト」を見出した─ 金のある米国人で…米国のパスポートを持ち、いかなる嫌いや尋問にもであうことなしに米国を自由に出入りできる人間、として。
2006年にHeadleyは彼のイスラム名を棄て米国人としてのアイデンティティを選択し、パキスタン系イスラム教徒たちとのコンタクトを隠蔽しながらインドへの旅を容易にするために、彼の母親の苗字を名乗り始めた。
その当時、彼の親しい友人らやビジネス仲間らも、彼が何を計画していたかは想像もつかなかった…「David Headleyは気狂いだ…脳みそのある人間にはこんなことは出来るはずがない」、とRanaの妻は語った。
MPDの臨床的な診断というものは容易に、あるいは少しずつ入手できるものではない─そこには全人口のなかでも非常にまれな、精神病理学的条件が必要となる。しかしこの、1960年に首都から数歩の距離のワシントン・DCで生まれたパキスタン系米国人のジハーディストのケースには、それが当てはまるようだ。
1992年と、その他のストレスにみちた人生の変遷の時期において、Headleyは米国精神科協会(APA)の診断・統計マニュアルに示されたMPDの全面的な症状を示していた可能性がある。
・アイデンティティが分裂し、2つかそれ以上の顕著な別のパーソナリティによって特徴付けられる…ひとつはパキスタンに根を持ち、もう一つは米国に根を持つ。
・二つ以上の別の人生を送っているため、毎日の出来事に関する重要な個人的情報が分裂している。
・社会的機能、職業的機能または他の重要な分野で、顕著な失意の状態や障害を呈する。
・Headleyの異なる人格は、広く受け容れられる文化的な枠組において、「正常」とは見えない。
発達心理学的にみると、Headleyの分裂した人格は初めから始まっていたようである。彼はパキスタン人の外交官Sayed Salim Gilaniと、米国人の母親Serill Headleyの息子であり、この両親は共に彼の生まれた当時、ワシントンのパキスタン大使館に勤務していた。
Headleyは…彼の父が離婚し家族がパキスタンに帰国した後に、子供時代の一部をパンジャブ州の軍エリートの予科学校Cadet College Hasan Abdalで過ごした。熱烈なイスラム教徒として育てられ、学校で彼は過激派思想の強い影響を受けた可能性がある。彼は子供時代の友達で、後に明らさまな共犯者となるRanaに軍学校で出会い、二人は生涯の友人でビジネス上の協力者となった。
彼の父親のもつイスラム的な世界は、米国において彼の母親が彼に提供した世俗的なライフスタイルと真っ向から対立した。1977年に17歳の当時、パキスタンの政情変化のために、Headleyの米国人の母は彼を、彼女がKhyber Passという名のバーを経営するフィラデルフィアに移した。
波乱に富んだ十代の時期に米国の価値観を試したHeadleyは、母親のオープンな、あるいは「放蕩な」選択に対して反抗しながら、その狂信的思想の兆しを示しはじめて…非イスラム教徒全てが嫌いだと告白していた。 (*写真はHeadleyと米国のパスポート)
Headley自身は、彼の憎悪がそれほど深く、彼自身を結局ジハードの道に駆り立てる物だとは想像できなかった。彼はISIやLeT、DEAなどの組織内部への潜入に成功し、別人を装うことでインドの治安勢力を避けつつ、同時に米国とパキスタンで何人もの女性にいい寄ったり離婚を重ねていた。
「多くの人々はその人生のなかに矛盾を抱えているものの、人々はそれと折り合うことを学ぶものだ」、とHeadleyの叔父のWilliam Headleyは、記者に語った。「しかしDaoodhは決してそれをしなかった。彼の左半身は、右半身とは会話しないのだ」。
病気に起因するHeadleyの狂信思想は、彼の気の触れた心のコンパートメントに隠され、しまいこまれていた。 その低いレベルの変化形といえば─通常では国境線によって分たれた異なる文化の間で生活しつつ分裂した忠誠心(divided loyalties)の持つ人々において、より低周波数の、小さな波長で見出されるかも知れないものだ。
このような自国生まれの反米主義とは、我々の想像するよりもより激しく、米国の下院議員の個人的なブラックベリー端末から送られた猥褻なTwitter画像などよりもずっと危険だ。
http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/MF16Df06.html
「テロリスト」デビッド・ヘッドリーは、米国のスパイか? By スワラジ・チャウカン(12/17.2009 The Moderate Voice.com)
米国はなぜ、11/26のムンバイのテロ攻撃の容疑者、パキスタン出身のDavid Headleyの、インドの司法当局による尋問を許さないのか?それは、Headleyが米国のスパイでもあるからか?…そのことインドのメディアでホットな話題となっている。
Headleyとその共犯者Tahawwur Hussain Ranaは、インドでの公共スペースの爆破を共謀した容疑で10月にFBIによって逮捕された。
David Headleyは、ワシントンD.C.に生まれた─その地で彼の父Sayed Salim GilaniはVoice of Americaに勤務し、彼の母Serrill Headleyはその秘書だった。パキスタンの首相Yousaf Raza Gillaniのスポークスマン、Danyal GilaniはHeadleyの異母兄弟である。
インド政府のオフィシャルな情報源によれば、David Headley(本名Daood Gilani)の、カシミール分離主義派Lashkar-e-Taiba (LeT) とのリンクを、米国CIAはムンバイへのテロ攻撃の1年前から察知していたが、彼がインドとの間を自由に旅行している間そのことをインド当局には伝えなかったと、The Times of Indiaは報じている。
ミステリアスなことに、HeadleyとRanaのビザに関する書類は、シカゴのインド領事館から紛失した。
そのような訴えはインド亜大陸で抱かれる疑念…テロリストのネットワークがこの地域で(米国の求める国益や秩序に従順ではない国々の)政府の不安定化をもくろむ活動に、米国の諜報機関自身が責任をもつのでは、との疑いに信憑性を与える。長らくカシミールは地政学的な理由から(宗教的理由からではなく)、遠隔地からのテロ攻撃を呼びやすかった。
ワシントンの不透明なパワー・ポリティックスや、LangleyのCIAにおいて、米国の政策立案者たちは多くの有名な人々を使ってきた─その中には、ダブル・エージェントだったLee Harvey Oswaldや、Saddam Husseinも含まれる。そして今現在の最大のお尋ね者、オサマ・ビン・ラディンを忘れてはならない*(この記事掲載当時OBLは逃走中)─彼は、アフガニスタンでのソ連の帝国建設の野望に対抗する、彼らのお気に入りの戦士だった。
The Times of India はこう続ける、「(インドの)捜査官たちは、米国の諜報機関がインド当局からその情報を遠ざけ続け、パキスタン生まれのHeadleyのことが、"露呈する"ことを決して許さなかったのだと信じている。」
「ムンバイ攻撃に関与した容疑でFBIが逮捕した49歳のテロ容疑者:Headleyは、2009年3月にインドを訪れていた─LeTによって実行されたムンバイ攻撃の4ヵ月後だ─しかしそれでも、FBIは依然としてインド当局に、HeadleyがLeTの工作員であることを伝えなかった…明らかに彼がインドで逮捕されることを怖れていた」
「同じ情報源によれば…もしもHeadleyがインドの法廷でより軽い罰をうけたなら、Headleyが米国のスパイであると同時にLeTのためにも働いていた…と信じられる道理に叶った根拠を、インド当局に与えるかもしれない…と彼らは心配していた」
「それはさらに、Headleyと米国諜報機関に司法取引があったとの考えに信憑性を与えた」
「彼のインドへの幾度もの訪問の間にHeadleyはクレジットカードを通じて、米国の銀行からの多くの金と、パキスタンから持ってきたらしきインドの偽造通貨を何十万ルピーもの金に換えていた…」
「インドの捜査官達は、そのクレジットカードの請求書を米国の銀行で誰が支払っていたか、の捜査を試みてはいない…」
ワシントン生まれの、パキスタンの元外交官と米国人の母との間の息子Headleyは、インドに幾度も旅行し、ムンバイを含む多くの場所を訪れ、ボリウッド・スターたちと交友関係を結んでいた、とThe Hindustan Timesはいう*中略…HeadleyがDEA(麻薬取締局)の情報屋だった件は推測としている。
別の記事によればHeadleyはユダヤ人を詐称していたという(Wikipedia
参照)それは何故か?FBIによれば、彼はユダヤ人を装う為、「How to Pray like a Jew」という本さえも所持していた… FBIは、彼がインド、パキスタン、湾岸諸国やヨーロッパを頻繁に往復していると知った後に彼を監視下においた。
インドの人々のなかには、もしもインド国籍の誰かが米国のどこかをテロ攻撃した容疑者とされ、そしてインド政府が米国当局による彼の捜査を拒否した場合、米軍はインドへの軍事作戦を行うだろうか?と問いかける人々がいる。もしそうなれば、今インド政府は一体どうするのだろうか?
その場合─インドの首相は、彼がついこの間…例のお騒がせ闖入カップルの眼前で…ホワイトハウスで親愛感を込めて握っていた米国大統領の、その手を噛むのだろうか?
http://themoderatevoice.com/56118/terrorist-david-headley-an-american-spy/
*写真:David Headley(2009年頃?)Headleyは今や、米国政府にとって「スター証言者」なのか?
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http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2011/05/new-spy-links-to-mumbai-carnage-by.html
ムンバイ攻撃を共謀?─テロ容疑者、ラナ&ヘッドリーの裁判のゆくえ
http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2011/06/chicago-businessman-tahawwur-rana-is.html