Friday, December 10, 2010

ジュリアン・アサンジは、自首すべきだ Turn Yourself In, Julian Assange-The WikiLeaks founder is an unscrupulous megalomaniac with a political agenda


自首せよ、ジュリアン・アサンジ
ウィキリークスの創立者は政治的なアジェンダをもつ,
節操のない誇大妄想狂だ
By クリストファー・ヒッチンズ(12/6、Slate.com)
 

私は、私の最新刊の自伝のなかで、1976年にバグダッドの英国大使館から英国外務省に送られたケーブルのなかの言葉を幾つかとりあげている。それはイラクの新しいリーダー(*サダム・フセイン)に関するものだった。そこには、彼の行った静かなるクーデターを再確認するように「1958年以来、初めてのスムーズな権力の移行がなされた」、と描写されていた。公的文書のオフィシャルな文面らしく、スタイリッシュな控えめな表現が求められたとはいえ、そこには「軍事的な強化策というものが、船をより堅固にするために必要になるかもしれない、サダムがひるんだりすることはなかろうから」、とも付け加えられていた。…もちろん、こうした公電の言葉では、「スムーズな移行」なる言葉が、(当時)バース党メンバーの半数を処刑させていたようなサダムのパーソナリティーをも視野にいれて拡大されるよりも以前に、用いられていたに過ぎない。しかしサダムはその時にはすでに、暴力の行使や抑圧にふけっていたのだ。

  私は数年前にこのケーブルが公開された後にこれに出会い、それを再度公表した… なぜならそれが、私がその当時イラクを訪れた際に英国の外交官たちから聞いていた事実を非常に精確に反映していたからだ。…私は自分自身に問いかけてみた:もし、それらが最初に書かれたその時点で、それを手にする事ができていたなら、自分は一体どうしていたか?と。私自身の名前で特ダネにしたかも知れないだけでなく、私は英国外務省が…専制君主を陳腐な決まり文句や婉曲表現で覆って描写する、その政治的なメンタリティは歴史上初めてではない事を露呈している、などと論じたかもしれないのだ。

 しかし、そのような高潔なる野心(あるいは、野心的な高潔さ)はさておいて、私はそんな事をもくろむべきだったのだろうか?民主的に選出された英国議会は、Official Secrets Act(公的機密条例…私はそれを破ったとみなされたかも知れない)というものを制定していた。私は、私の信条のために、告訴を受けるべく、勇敢にも出頭すべきだったのだろうか?(私はその後、この抑圧的な条例に別件で抵触したために、収監される恐れにさらされたことがあった…それは私がファースト・アメンドメント[合衆国憲法修正第1条・言論の自由、信教の自由…] を有している国に移住しようと決意した理由の一つでもあった)「市民としての秩序の遵守」civil disobedienceというものの道徳的な「もう片方の半分」とは、そうした事柄での歴史的な英雄たちが示すとおり、その行動の結果として起こる事をストイックに受けいれる、ということでもある。すると、そこに外交政策というものが存在しうる。市民文明というものの最古で最良の考えの一つとは、全ての国々がお互いの首都のなかに主権をもつ小さな飛び領を設立して、平和的な決議に基づいた、それらの特別な外交特権を有する領土に投資をする、という事だ。そうしたものの必要性には、高度なプライバシーが含まれるべきなのは言うまでもない。こうした古典的な伝統へのたった一度の侵害すら、好ましからぬ、意図せぬ結果を生む可能性があるものだし、そして我々はその深刻な侵害というものを、適切な怖れを持って眺めているわけだ。我々は、アヤトラ・ホメイニと彼のイデオロギーについて我々が知るべき事柄を、彼が外交官達を人質にとったその時には、すべて発見していたわけだ。

 ジュリアン・アサンジの狡猾な戦略とは、彼が全ての者を米国の外交政策の破壊工作を試みるという彼自身の個人的な決断の共犯者に仕立てていることだ。あなたがあなた自身を─ 連邦政府で働く全ての者にウィキリークスの文書のダウンロードまたは閲覧を禁じた─ オバマ政権のヒステリックで愚かな決断に捉われていると思わない限り、あなたはごく最低でも、ある程度は罪悪感のある楽しみに耽ることができるだろう。二つほどの大きな暴露に関しては、この情報公開は我々のなかの筋金入りの「政権交代マニア」にとって、偉大な価値があるだろう。より多くのアラブ諸国政権が、ワシントンがイランのアフマディネジャド大統領を受けて立つことを、誰もが想像する以上に、緊急に望むだろう。私は20年後よりもむしろ、今、このことを知りたい。イランは北朝鮮から幾らかのミサイル軍備能力を獲得するということが可能だったし、それは我々がサダムをその地位(彼が「Boxの中に」と呼んでいた地位)に残した場合には、サダムにとっても同様だった。我々はすでに今や、サダムの代理人たちが…北朝鮮のミサイル商人とダマスカスで会っていた、という事も知っている。同盟国による(イラクへの)介入がそうした武器商人たちを、慌ててピョンヤンに帰国させる前のことだ─最近のリークの内容は、そうしたある重要なケースの重要なパートを完璧化した。

 一般大衆が知る権利と、我々の秘密諜報機関の信頼性に関していうなら、全米のリベラル派がこぞって、不細工で実りのない例の告発(アサンジも恥じ入るほどのモンスター並みの自惚れ性の人物と結婚した、比較的マイナーなCIA職員に関する、救いようのないほど大袈裟なドラマ仕立ての暴露事件…)をコンセンサスをもって賞賛してから、まだ間もないという状況だ。ロバート・ノバク及びリチャード・アーミテージによって、バレリー・プライム(CIA職員)の職務の内容が明らかにされたとき、彼らはまたアサンジと同様に米政権のイラク戦略に対して反対を唱えていた。それ以来、すべてが暴露されてきたのに伴い、左派と右派の分子がまるでその立場を入れ替えているかのようだ。

 アサンジへの訴追の試みは、私の予想では、軽すぎるかまたは遅すぎるか、その両方か、あるいはそれよりも悪くなるに違いなかろう。1917年のスパイ法がこれほど錆び付いて、使われていない響きがある事には十分な理由がある。それはウィルソン主義者が戦争に対してヒステリーになっていた時期のパニック対策として成立した法律だったし、その条文には、サイバーワールドで効力を発するものは一つもない。それにしても、法曹界ではインターポールという言葉は何十年にも亘って笑いの種だったし、そして私にはアサンジは信奉者たちに囲まれたカルト的リーダーである事もよくみてとれ、彼への性犯罪容疑も彼らにとってはレイプに該当せず、でっち上げと捉えられているように見える。彼らはアサンジが人々の共感を求めたり、自首するよりは姿を晦ますように勧めているのだ。

 そしてもちろん、訴追の有無が、彼のなすべき最も重要なところだ。もしも私が1976年に英国当局の恥をさらそうと決意していたら、私は裁判所で彼らに対面するという挑戦か、さもなくばその事がもたらす結果に直面する事を受け入れていたろう。私は私自身が秘密書類を幇助したり、外交政策の私的な調停役になったり、その進行の最中に姿を消したり、リタイアしていたとは想像しがたい。アサンジについて知るべき事は全て、John F. Burnsによる彼のプロフィールのなかに、そしてそれに対する彼のショッキングなほど悪漢めいた返答のなかにあるのだ。この男が、少しばかりの几帳面さ(があるとすれば)と隠しきれないアジェンダ(政治的信条)を抱いた小っぽけな誇大妄想狂であることは、一目瞭然だ。私は以前にも書いたが、彼が、彼の目的を、「二つの戦争を終わらせること」だというとき、彼の言う「終わらせる」とはどういう意味なのかを、一時に知る事になる。彼は彼のファンタジーのなかではある種のゲリラ戦士なのだろうが、現実の世界では彼は、彼を育てた市民社会を怒らせるミドルマン(仲買人、仲介業者)、行商人に過ぎない。この月曜日に、New York Timesは2つの別々のニュース記事のなかで、彼の小さな陰謀を、「反秘密(anti-secrecy)」 「内部告発whistle-blowing」の装いがあると呼んだ。そうした間抜けな是認をするのは…最低でも─たとえ我々が皆、彼が不正手段で得た品物の市場を我々自身で助けてしまうにせよ─ 愉快犯のジュリアンには控えられるべきだ…。

http://www.slate.com/id/2276857/