Thursday, November 12, 2009

ブルームバーグNY市長の3選と黒人教会/ Mayor Deprives Rival of Black Clergy’s Support

11/3の投票で、Thompson候補に対し現職ブルームバーグ市長が僅差で3選された…NY市長選挙の裏側で起きていたことは?
(パート1:選挙前)

ブルームバーグ市長、ライバル候補者の黒人聖職者層からの支持を奪う BY N.コンフェソーレ&M.バルバロ (10/29, NYタイムス)

 数週間前、NYハーレムのアビシニアン・バプティスト教会(Abyssinian Baptist Church)の有力な牧師、Rev. Calvin O. Butts 3世は、夏の間じゅう苦闘してきた難しい事がらに対する決断をくだした。

 彼は、NY市の監察官で彼の長年の友人、同盟者でもある市長選の候補、William C. Thompson Jr.への公式の支持表明を…彼との昨春の約束にも関わらず、おこなわないことにした…その代わり、彼は現市長Michael R. Bloombergへの支持を表明したのだ。

 Thompson氏はその裏切りに憤った。しかし彼が知らなかったことは、Bloomberg氏がその教会の開発会社に100万ドルの寄付(教会の年間予算のおよそ10%にのぼる)を、それ以上の更なる寄付の増額を暗に示唆しながら…行っていたということだ。
 
 “私が言えることは、これまで市長であった男が、私にとって重要な沢山のプログラム(事業計画)の支援をしてくれた、ということではないだろうか?”…とButts氏は、Bloomberg.氏への支持を公式に表明する前のインタビューで語った。

 Bloomberg氏は、市長としての3期目の当選をもくろんで、かつてはThompson氏のもつ生れながらの政治的権利だろう、と人々がみなしていた物を奪った:つまりThompson氏が毎週、教会に集まる何千何万人の会衆に対しともに説教をしている、NY市の最も有力な黒人聖職者たちから受ける祝福だ。そして、彼らの支持を得るために、Bloomberg氏はふつうでない組み合わせで、市の金と個人的な慈善行為、政治的な指名行為や、彼への人々の個人的な注目を駆使して…NY市での選挙で選ばれた白人行政官としてはこれまで耳にされなかったような、黒人聖職者メンバーによる結束網を作り上げたのだ。

 幾人かの有力教会の聖職者たちはBloomberg氏によって、影響力ある市の評議会や委員会メンバーに指名された。それ以外の人たちは、市の土地や資産を購入したり、(市長の)お手盛り事業での事業計画区域の線引き譲歩等を得るために、市側の助力を得た。最も大きな宗教機関のうち数少ないいくつか──アビシニアン教会と、クイーンズのジャマイカにあるGreater Allen A.M.E. Cathedral を含めて──がBloomberg氏の8年の任期中に、何百万ドルもの金を市のサービスを提供する契約と引き換えに受け取った。

 ここにぼんやりと立ち現れるのはBloomberg氏の目のくらむような財産だ──たとえそれが誰かに授与されていても(つまりButts氏の場合のように)…あるいは今後授与されると目されていても。

 “我々はこのようなしくみに、遅かれ早かれ到達する必要があった”と今年、現市長への支持を表明したブロンクスのChurch Alive Community Churchの牧師、Rev. Timothy Birkettはいう。“我々は彼が受容性の(感受性の高い、receptiveな)人物であることを望んでいる─”

 Bloomberg 氏を支持した人たちは、同市長が彼らの支持を得た理由とは、厳密に彼の任期中の功績によるもので、特にその教育政策や犯罪政策によるものだ、という。しかし彼への溢れるような支持のより多くは、フレンドリーな「聴く耳」をもつ市への黒人教会の依存によるものだろう、という批評家たちがいる。

 “こうした支持表明は、幾人かの我々の宗教的リーダーたちの信仰基準声明のなかでも示されている”、とButts氏の子分格でブルックリンのBrown Memorial Baptist Church の牧師、Rev. Clinton M. Millerはいう。“そうした声明というのは、私がどのようにして私のプロジェクトを実現できるかにおいて、どの人物を一層信頼すべきか、の問題なのだ”とMiller氏はいう。“Municipality(市当局/市政化)か神か…の選択の問題というわけだ”

 Bloomberg 氏の側近たちは、市長を聖職者たちと結びつけているものとは…金銭的な結びつきではなく、相互の信頼であるという…実際、そうした教会のいくつかはBloomberg 氏が市長の職につく以前からも、市との大きな契約を得ていたという。

 副市長の Dennis M. Walcott氏は、そうした関係とは“真に契約を超えたもの”で、そしてそれは“重要な選挙民(教区の)を抱えた重要な個人たちとの間の、現在進行中のコミュニケーションにもとづくもので…それをわれわれはとても誇りに思う”、と述べる。

 人種間の緊張の高まりが、他の白人市長の身にも押し寄せる可能性もある今、 Bloomberg 氏はそのような個人的な批判攻撃を、有力な黒人聖職者たちから受けたことは殆どない─Butts氏がかつて一度、公式にレイシストだときめつけたRudolph W. Giulianiなどの前任者たちは、そうした批判攻撃に傷つけられていたのだが。

 そのようなコントラストは先週、Bloomberg氏が、Giuliani氏と共に選挙キャンペーンのイベントに現れたときにも際立った──ブルックリンの殆ど白人ユダヤ人の多い聴衆たちに向かって、Giuliani氏は“間違った政治的リーダー”は、ニューヨーカーたちを“夜間に外に出て通りを歩くことを怖がる日々”に押し戻すことになるだろう、といったのだ。

 幾人かの黒人の市行政官たちは、即座にそのコメントが人種問題をあおっているといって非難した。しかしどの有力な黒人牧師たちも、市長がそのコメントを否定することを求めたりしなかった。

 “あなたは電話を取り上げ、彼と会話を交わすことができる”と…、ブルックリンで2001年にはBloomberg氏への支持を表明したが、今年は意志を決めかねているというRev. Conrad B. Tillardは語る── “なにも市庁舎への階段を上る途中に10,000人の聴衆の眼前で、彼と話す必要などない”

 Giuliani氏は時々、聖職者たちと反目していることを楽しんでいるかのように見えるが、Bloomberg氏は非常によく目に見える形で、彼らの心に到達している。私服警官が丸腰のSean Bellを殺したとき(*)、Bloomberg 氏はすぐに市のトップの(黒人)聖職者たちを市庁舎での会合にまねき、彼らに対しその銃撃は“説明のしがたい”ものであり、“受け容れがたい”と語った…。(*:2007年9月、クイーンズのジャマイカで結婚式当夜に黒人青年が職質しようとした警官の数十発の弾丸で射殺された)

 今年、30人以上の黒人聖職者たちがBloomberg氏への支持を公式に表明したが、彼らからの溢れるような賞賛とは、Thompson氏による、Bloomberg氏が労働者階級をほとんど省みない金権家だという攻撃へのくっきりとした回答だった。…それよりも多くの聖職者たちが立場を表明せず傍観していたが、彼らは市長にほとんど害を与えない立場にいた。

 Thompson 氏の選挙キャンペーン担当者たちは、Thompson氏がニューヨーク市中の教会の200人以上の聖職者たちからの非公式な支持を得ている、と主張する。しかし、印象的なことには、こうした聖職者達の多くが…公式に支持を表明をするリスクは冒せないと彼らに語ったという。

 聖職者たちの機嫌を害さないように匿名を条件に語りたいというあるキャンペーン担当者は、“幾人かの人たちは、もし公的に支持表明すると、彼らのプロジェクトへの資金援助、その他を失う可能性があるので用心しているのだ。彼らは彼らの同僚が、'ヘイ、俺はこれをもらった─お前も王様のテーブルに座らせてもらえるんぞ’、といっているのをみている…”

 …Bloomberg氏のテーブルに既に着いている一人とは、市内最大の会衆を擁するブルックリンのChristian Cultural CenterのRev. A. R. Bernardだ。就任以来、市長はBernard氏を市の経済開発公社(Economic Development Corporation)の委員会メンバーに指名した。2006年に市は、市の2本の道路の一部を地図上から消去し同センターに売却することに同意した。そのことはBernard氏が考えていた計画──教会の周囲の広大な敷地を一手に集め、市の援助のもとに住宅地・商業施設を混合的に開発するという野心的なプロジェクトを可能にした。

 “あなたがやりたいことをするには、市の出先機関の協力を得る必要がある”、とBernard氏はインタビューで言う。“私は通常的なプロセスでも実施されうる様なこと以外に、市に(特別な何かを)リクエストすることはないが─関係性をつくるというのはいいことだ…”

 市長は今年、Greater Allen A.M.E. CathedralのRev. Floyd H. Flakeからも支持を得た。住宅建設プロジェクトや路線バスの運行サービス、女性用のシェルター(簡易宿泊所)などの事業において、そのCathedralはクイーンズ南東部で職を提供する最大の雇用者のひとつだ。Bloomberg氏が市長になって以来、Allenは8百万ドル近くの市との契約を受注した。Bloomberg 氏はまた、Flake氏を貧困層援助をポリシーとする市の経済機会委員会のメンバーに指名した。Butts氏と同様、Flake氏は2001年にはBloomberg氏のライバルのMark Green氏を支持した。しかし、その年以来、彼は市長の最大の後援者で腹心の友となったのだ…“私がこれまでに要求したことはすべて、彼の支持者たちも私のすぐ後ろで支持してくれ、サポートしつづけてくれた”

 Flake氏はBloomberg 氏から教会に個人的な資金貢献をうけたことは一度もないといい、教会が市の行政官からの援助を必要とすることが、市長選への彼の支持表明を左右したのではないか?との指摘を否定した。

 就任以来、市長は少なくともFlake氏に16回面会し、Bernard氏とは14回会った。しかしButts氏以上に精力的に支持を求められたニューヨーカーは少ない─市長は彼に20回も会っていた。市長は2008年にButts氏のアビシニアン教会開発会社に100万ドル以上の資金援助をしたあと、今年更に数十万ドルを贈与した、と直接事情を知る人はいうが、その人はその贈与が匿名によるものと思われるため自分の氏名は明かしたくない、という。

 Bloomberg氏が市長職に就いて以来、教会とその非営利の連携グループは、少なくとも700万ドルを市との契約上で受託した。Butts氏は、そのなかのどれも彼がThompson氏に公的支持の意思変更を告げることを容易にはしなかったという。

 しかし彼は、市長の慈善事業が、彼にその決断を下させたのではない、と語る。“もしもGiuliani氏がBloomberg氏のように資金を持ち、それを周囲にばらまいていたとしても、彼は未だに支持は得られていなかっただろう”とButts氏はいう。“…これはBloomberg氏の金の話などではないんだ…”
http://www.nytimes.com/2009/10/29/nyregion/29ministers.html?hp=&pagewanted=all

*写真はBloomberg市長と、クイーンズのGreaterAllen A.M.E. CathedralのRev. Floyd H. Flake牧師

*NYタイムスはこの記事でGiulianiの時と同様、反Bloombergの政治的な大キャンペーンを繰り広げるかのようにみえたが、投票日のわずか4日前で、時すでに遅かったようだ?

*投票では予想外の「5%の僅差」で、Bloomberg氏が辛勝、NYの各地域の投票地図では富裕層地域と非富裕層地域とで露骨に両候補への支持が顕著に分かれていた(投票地図)http://www.nytimes.com/interactive/2009/11/04/nyregion/mayor-vote.html

ブルームバーグの札束は、ブルックリンでは「山羊のふん(bupkis*)」でしかない
*Yiddish語で山羊のふん、絶対的に意味の無いもの(“Bloomberg bucks mean bupkis in Brooklyn” 11/4, The New York Post/The Brooklyn Paper)

 …Bloomberg市長は火曜日の投票で3期目の任期に転がり込んだものの、ブルックリンでの多数票はとれなかった。挑戦者のBill Thompsonがブルックリンのボロー(区)住民の過半数票を獲得、49.8%対46%で… 再選のために9千万ドルの金をかけたBloomberg氏をやぶった。
 

…この得票数の接戦は──共和党から立候補して…Bay RidgeからBorough Park,、Park Slope、Windsor Terrace、Carroll Gardens、Cobbleといった地域の多数派白人住民層に強い…現職市長に対する、ブルックリンの選挙民の間の深い分裂を暴きだした…ちなみに黒人やラティーノ住民の多いブルックリン中央部やSunset Parkでは、Thompsonが勝利した。

 予備的開票結果では、Park SlopeとWindsor Terraceを擁するAssembly districtでは55–40%で Bloombergが優勢、Carroll Gardens、Cobble HillとBrooklyn Heightsを含む周辺地区でも、53–40%で現市長が優勢となった。
しかし、Fort Greeneの 57th Assembly Districtでは、73%の票がThompsonに投じられた。そして最終結果ではブルックリンの169,071票がThompsonに、157,296票がBloombergに投じられた。もちろん市全体では、市長がThompsonを50.6%対46%で下した。

 この接戦の結果は、ブルックリン区の政治エリートたちが予測した投票結果予測
を裏切った。 たとえば、区のPresident Markowitzは、The Brooklyn Paperに対して、Bloombergが「8%から10%の差で」勝つだろうと述べていたが、Patersonニューヨーク州知事の方は、Thompsonが勝つだろうと語っていた。
 

 …しかしその夜、ブルックリンでは市長選挙だけが接戦を呈し、市評議会の他のポストの選挙では民主党が圧勝した…
http://www.nypost.com/p/news/local/brooklyn/bloomberg_bucks_mean_bupkis_in_brooklyn_ss7yiOzgMmbQvjHxFCUrtI