Tuesday, July 13, 2010

アフガン─ひとつの脱出方法 /One Way Out -By ROSS DOUTHAT


元の記事タイトル
"The Only Way Out of Afghanistan”だったらしい?
筆者が「唯一の」…から「ひとつの」脱出方法に変更している…


ひとつの脱出方法 By ロス・ドウザット (6/27、NYタイムス) 

 ここに、米国のアフガニスタン介入の残酷なパラドックスがある:状勢がより暗くなって、我々にとって後退(セットバック)を蒙らされればされるほど、我々が半永久的にそこに留まることになる、という可能性も増大する。

 この国の舞台にいま9万の米軍部隊が駐留し、NATO諸国の軍を寄せ集めた部隊がその脇を固め戦っている現在の状況では、まだそうとはいえまい。しかしもしも、現今の対・反乱勢力の軍事作戦が失敗したなら、米国が何らかの軍事的な駐留を2020年まで、あるいはそれ以降も継続し、アフガニスタン国家を支え続けるだろうことがほぼ確実に保証される。失敗は確実に我々にとっての罠となる: 成功だけが我々の唯一の脱出へのチケットなのだ。

 なぜか?そこには3つの考察がある。一つ目は、9月11日の記憶というものが、どんな米国大統領にも、タリバンのカブールでの権力の回復というものを嫌悪させるからだ。二つ目は、パキスタンの北西国境の地域にアル・カイダのリーダーたちが居座り続けているということが、どんな米国大統領にも、アフガニスタンに設けうる対テロのための基地の放棄を、困難にさせるからだ。三つ目は、より広汎にみたこの地域の情勢の不安定さだ: そこは世界のなかで、核兵器で武装したテロリストという悪夢が現実になる可能性が最も高い地域なのだ、そのためどんな米国大統領も安全保障上の真空状態を残してここから退却し、地域情勢のバランスを不安定にすることなどできない。

 このことは、オバマ政権が、そのすべての内部的な議論と戦略のレビューを尽くしても、この国に残るか、この地での戦いから撤退するか未だに選択していないことを説明する。同政権は、二つの策によるアフガンへの継続駐留のどちらかを、選んできただけだ。

 その一つめの策とは、我々が現在進めている作戦だ:つまりペトラエウス大将がその作戦を支持していた(そして今や、彼が引きつづき見とどけるよう任命された)作戦で、他国の支えなしに生き延びられるアフガニスタン国家の土台の建設の途を探ろうとするものだ。 

 二番目の策とは、「対テロ・プラス(counterterrorism-plus)」の戦略、つまり政府高官たちの中でも特にジョー・バイデン副大統領が昨秋、最もロー・コストな代替戦略として提案したものだ。(http://www.newsweek.com/2009/10/09/an-inconvenient-truth-teller.html#)
 即時撤退を主張する者たちはバイデン大統領を彼らの同盟者のように見がちなのだが、ある意味でそれは本当だ。彼のプランではアフガンにおける米国の足跡を減らし、そしておそらく、米国人の犠牲者の数も減らすことになるだろう。

 しかし米国のアフガン関与の延々と長引いている状況、そして我々の排除してきた敵対勢力との武力衝突の多大さからいって、そうした戦略は現実にはより流血の多い、より一層長引くこう着状態を導く可能性がある。

 ひとつには、それは現実的に米軍の駐留を削減させることはないだろう、ということだ。その代わり、そのようなプランでは我々の兵力をアフガンの首都の周辺に集中させ、反乱勢力の各派との取引交渉の途を探りながら、現存の政府を守ろうとさせることになるだろう。歴史的には、そうした交渉は米軍がこの国に居残っている限り可能なことに過ぎない…つまり我々の兵士たちは首尾よく罠に捕らわれることになる─それは、実質的にはカブールの市長程度の力しかないその国のリーダー(Hamid Karzaiだろうが、それよりも少しは腐敗をしていない後継者だろうが)が、アフガニスタンの大統領であるかのように振るまう、ポチョムキン村のような国(見掛けだけの、こけおどしの国)を防護するべく、我々がそこにずっと足止めされ続けるということだ。

 …それと同時に、もしもアフガンの人々の安全を保障するための努力を放棄し、その代わりに無人偵察機による空爆と特殊部隊による敵勢力の急襲だけに頼る、といったアプローチをとるのなら、おそらく、この地での米国の声価をすでに翳らせている一般市民の犠牲者数のようなものをも一層、飛躍的に高めることになるだろう。

 このぞっとする様な可能性は先週、Stanley McChrystal将軍の解任をもたらしたRolling Stone誌上の(彼の)プロフィール記事のなかでも、暗に示されていた。表面上は左翼的で、対・反乱勢力作戦を反戦論者として批判するMichael Hastingsによるこの記事は、現状における戦略が… 罪のないアフガン市民の命の価値に「奇妙な仕方で」過剰な重きをおきすぎている、との不平不満に大きく論拠をおいている。Center for a New American Security(米国新安全保障センター)のAndrew Exumが指摘するように、Hastingsは終いには対反乱勢力戦略というものを「それがわが兵力に、充分な数の人間を殺すことを許さないから」、との理由で批判している。

 そのようなアイロニーは、もしも現状の戦略が効果的に立ち行かない場合に、オバマ政権が立ち戻る代替戦略というものが、反戦的なものはにほど遠いだろうことを指し示す。その代わりに、その戦略は依然として一層のアフガニスタン人の犠牲と、半永久的な米軍駐留へと向かうレシピとなるだろう。そして長期的には、それはタイムズ・スクエアでのテロ未遂犯、Faisal Shahzad(彼はアフガニスタンの一般人の犠牲が、テロへと向かった動機なのだと供述した)のような敵が、より一層増えることを意味するだろう。

 そして、このプランBのそのような侘しさとは、それが我々の兵力に、反乱勢力に成功を収めさせるよう試みるのに必要な時間を与えるのでは、といった論議を喚起する。我々は現状の方向性を無期限に守り続けることはできない、そして我々はそうはしない: オバマ大統領が、米軍の駐留にパブリックな期限を設定しよう、とした決断は間違いだった… しかし誰もが、軍が兵力増派を続けるにはリミットがあることを知っている。しかしこの、ホワイト・ハウスが考えたいとしているらしいオプションとは、アフガニスタンからの真の撤退を可能にしたいという希望を抱き続けるオプションであるようだ。

 そしてそれはペトラエウス将軍が今年から来年にかけて、さらにその後にかけてもそのために戦うもの─ つまり我々は永久的には滞在しないこと、脱出のための最後のチャンスなのかも知れぬものを掴みたい、ということであるようなのだ。
http://www.nytimes.com/2010/06/28/opinion/28douthat.html?_r=1&sq=ROssDouthat&st=cse&scp=3&pagewanted=print

*昨年4月新たに登場したNYT史上最年少、29歳のレギュラーコラムニスト、ロス・ドウザット。

一応、ビル・クリストルの後任で、「保守派」だが、本人は憧れのNYTに移ってからリベラル色を強めて書いているとか。
彼がNYTの前に属していた組織は、1857年創刊のボストンの有名紙"The Atlantic"だとか。 



*ロス・ドウザットの紹介記事:
Douthat enters new Times zone http://www.politico.com/news/stories/0309/20679_Page2.html
Times Hires New Conservative Columnist
http://www.nytimes.com/2009/03/12/business/media/12douthat.html