Friday, February 10, 2017

トランプの点と点を繋ぐ Connecting Trump's dots By Thomas L. Friedman

 
トランプの点と点を繋ぐ Connecting Trump’s Dots
By Thomas L. Friedman (2017/2/8, NYタイムス)


大統領の振る舞いは、日に日にうれうべきものになっている。彼は、ある日は彼に挑戦した連邦判事を卑しめたかと思えば、その翌日には…証拠もなしに、メディアが不正投票のあった事や、テロ事件のあった事を隠蔽している、などといって告発する。彼が社会的な制度機構や真実に対する尊敬の念をもっていない、という事実が、瞬く間に吐き出される。あなたは、彼のこういった行為が、大人の誰にとってもいかにクレージーなことであるのか─もちろん、それが大統領だったにしても─を、忘れ始める。かくして、本当の危機が我々に訪れるその時には、物事の醜悪さが増していく。そして、トランプ大統領の支離滅裂な世界観のために、危機はこのようなストーリーと化していく。

いったいどのように?─つまり、今や世界は、かつてないほど相互依存しあった状態にあるのだ。市場のグローバリゼーションや、携帯電話の普及、テクノロジーやバイオロジーの加速的な発展、新たな大量移民の動きや、気候の崩壊というものが…互いに絡み合って相互に影響を及ぼしあっているのだ。その結果として我々は、そうした多くの点と点を繋いでそれらから得られるものを最大化しつつ、最悪の影響にはクッションを敷いて我々の行くべき航路を示してくれるような大統領を必要としている。

でも、トランプは点と点を悪用する人間であって、それらを繋ぐ人間ではない。彼は幾つもの無謀な、相互にきちんとした繋がりを持っていない約束をしたのだ…ツィート以上の長さをほとんどもたないようなものを…それを利用することで、大統領に選ばれようとして─そして、今や彼はそれらの一つ一つを照合チェックしている所だ…それら同士の繋がりを真に考える事もなしに、そして、それらが引き起こす二次的影響についての心配すらもせずに。

これは、アメリカを弱体化へと向かわせる…そして、過剰な背伸び(overstretched)へと向かわせる偉大なる道なのだ。

どこから話を始めよう?トランプは、貿易と安全保障に関しては、中国に対する強硬策を講じようとしている…それは、クレージーな考え方ではない。だが、彼はそれをどうやってやるというのか?私は、太平洋沿岸で中国を取り囲む交易国による同盟を組んで、それらの国々を─米国スタイルの法の秩序を守りながら、米国の知的所有権と製品市場にもより多くのアクセスを持って、米国流の価値観(すなわち、反中国的な価値観)を推進するような国々による貿易協定へと、加盟させたいと思っている。私はすなわちそれを、環太平洋貿易協定、略してTPPと称したい。

おお、ちょっと待ってほしい。バラク・オバマ大統領はそれをやった…しかしトランプが、就任第1日目にTPPをスクラップにしたのだ─彼はそれを、(私は、そう確信しているが)全く読みもせずに。今や、我々のアジア太平洋地域の同盟国経済が、中国の経済的支配とその貿易上の「ルール」の下で、さらに一層、凋落するだろうと信じられるすべての理由がある。それが果たして、賢明なことなのだろうか?

…ところでまた、メキシコの労働力というものは、なぜ米国のそれより安いのだろうか?その一つの理由とは、メキシコでは労働者の持つ権利が弱体で、そして環境基準も緩い、ということがある。…ちょっと一瞥してみよう、TPPがメキシコや他の署名国に対して、要求するだろうものとは何か?…それはつまり、それらの国々でも我々のそれと同様の、労働者の権利と、環境基準を導入させるということだろう。

その代わり─トランプはメキシコ移民を排除するために壁を作り、(メキシコに展開する)企業に向かって、米国に戻るように強いる。思い出してほしい…9/11の事件の後に、安全の確保のためにメキシコとカナダの国境の通過が厳しく制限されたことを?それは、米国内のいくつかの工場の組立ラインをシャットダウンさせた…たとえば、フォードなどの企業を…なぜなら、同社のサプライ・チェーンはメキシコとカナダに広がっているからだ。メキシコで、より一層、低コストの仕事が行われ、そして米国でそれが、より高付加価値の労働によって統合されて…それによってヨーロッパや日本、中国における、我々の自動車メーカーの価格競争が可能になるのだ。

それならば、9/11の後に米国とカナダ,メキシコは何をしたのか?セス・スタッダー(オバマ政権の国家安全保障省の副長官)はいう─彼らは北米地域の包括的な安全保障体制(emvelope)を創り上げたと。それゆえに、もしも、あなたが中東からメキシコか、トロントに飛んだなら、我々の国家安全保障局は多分、もうその事を知っているだろう、ということだ。

「9月11日以降、我々と我々のメキシコとカナダのパートナーたちは、北米圏での安全保障のために協力して、人とモノの我が国への流入に関する情報を共有し、互いのテロリスト・データベースによる情報の照合を行い、北米に入ろうとするバッド・アクター(テロリスト予備軍)を発見するために協働してきた」、とスタッダーは言った。もしも我々が壁を建設し、メキシコにその費用を払うように強いるならば、そのことは、我々に対する協力的な効果を、どれほどのあいだ維持してくれるのだろう?

そしてもしも、トランプが、こうした米国を本拠とする多国籍企業に対して、メキシコでの操業を米国に戻すよう強制したら、それはどんなことをもたらすのだろうか?それは、メキシコの経済的暴落をもたらして、より多くのメキシコ人に北へ向かうよう試みさせるかもしれず、米国の製造業者にとっての、コストを膨らませるだろう。彼らはどうするのか?工場を米国に移しても、コスト削減のために可能な限りのロボットを雇って人間の仕事を代替させるかもしれない。

国連はいま、6千5百万人という記録的な数の、家を追われた移民や難民たちが存在し、米国やヨーロッパのような安全な場所に入ろうと試みており、その多くは発展途上国から来た人であるのだ、という。なぜなのか?それは、内戦と国家の破綻、気候変動による圧迫(ストレス)や人口爆発といったもののミックスにその原因がある。トランプは、就任後の第一週に何をしたのか?気候温暖化の否定論者を重要ポストに指名して、家族計画のオプションとしての堕胎手術を行う健康関連グループへの米国政府補助金を禁じたのだ。

トランプは、ウラジミール・プーチンとパートナーとなって、シリアのISISを打倒したがっている─それは、価値のあるゴールだ。しかし、プーチンはISISの打倒を望んだことすらない。彼は、シリアの権力の座で虐殺を行う親ロシアの独裁者のために、シリアの民主主義の打倒を試み続けている。
それが、我々にとってのゴールでもあるというのか?そして、プーチンのシリアでの同盟者とは誰だろうか?イランと、ヒズボラ、そしてパキスタンやアフガニスタンから来たシーア派の民兵勢力だ。彼らは、我々の同盟者にもなるだろうか?─否だ。我々はイラクとシリアのスンニ派勢力を味方につける、とトランプは言う。本当か?しかし、彼はたった今、彼らの米国への入国を禁じたのだ。彼らはどうやって、我々に協力できるというのか?

そして、この入国禁止令は、それ以外の誰を排除し続けるのだろう?スティーブ・ジョブスを覚えているだろうか?彼の生物学的な父親はアブドルファタハ "ジョン" ジャンダリだ。彼は1950年代にアメリカに学生として渡ってきて、ウィスコンシン大学で学んだ─そして、彼の出身地とは…シリアのホムス(Homs)だった。

設問の(マスに)チェックだけを入れて、それらの繋がりをチェックしなければ、どんなに酷い混乱を生じさせうるのか…そのことを目にすると、実に驚くばかりだ。
https://www.nytimes.com/2017/02/08/opinion/connecting-trumps-dots.html

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