Tuesday, July 19, 2011
ボート・ピープル:Gaza支援の船団に乗る"活動家"たちへの、幾つかの質問。Boat People- Some questions for the "activists" aboard the Gaza flotilla.-By C.Hitchens
ボート・ピープル: Gaza Flotilla(ガザ支援船団)の「活動家」たちへの幾つかの質問。- By クリストファー・ヒッチンズ (7/4, Slate.com)
"Gaza flotilla(ガザ支援船団)"の物語は、毎夏の恒例の特集となりはじめたようにみえる…時折り、アップデートされるその最新情報をまじえながら、メディアの中程のページで、それはハッピーな調子で揺れ動いている。ギリシャの財政危機に関連して、現状に内包された穏やかな緊張感を伝える記者たちにとっての、格好のサイドバー(補足記事)なのだ─
「彼らは本当にやるのか、やらないのか?(※EUやIMFはギリシャの財政危機に再度、救済策を講じるのか、否か?)」 そのことには、さして色鮮やかな特徴(個性)はないものの…我々は殆ど個人的にもそのことを知っていたような気さえしはじめている。「the audacity of hope果敢なる希望(*) 」とか、「free Gaza ガザを解放せよ」(*)といった朗らかで清々しいスローガンと、かくも単純で明快至極なストーリーラインは実際、それ自身を物語ってもいる。イスラエルがすでに、あまり遠くない未来には…(こうした人道支援運動に対して)何らかの回答を行うことを、ほぼ保証する態度を取りはじめたことや、前回に同船が出帆した際あれほど身震いするような暴力事件*が起きたことを考えても、これがこのシーズンに恒例の─人々のお気に入りの特集記事にならない理由など何もない。
しかし、贅沢なるこの瞬間に、その船に乗船している「活動家」らに幾つかの質問をするのは不可能な事なのだろうか?(活動家 activistとはずいぶんとニュートラルで、ほとんどポジティブなニュアンスを持つ言葉ではないか?flotillaという名前も、その安心感を与えつつディミヌエンド(デクレシェンド)していく様な音感は「Small is beautiful」といった雰囲気をたたえている。…これまでにこの件について書かれたほとんどの考察とは、その企みの手段や意図に関するものであり、平和的な戦術についての率直な許容を表明している心やさしげなカバー記事ばかりだったのだ。私はもう少し、そのことのもつ政治的な野望や、その事業の暗示する含意を知りたいものだ、と思う。
flotillaとその指導者らが…パレスチナのムスリム同胞団の支流組織を形成するハマスと密接で道理にかなった協調関係にあることを語るのは安全かつ、フェアなことにみえる。その組織の政治的な指導部とは主に、ガザ自体に本拠を置いている。しかし、その軍事的な連携(コーディネーション)はダマスカスから発せられる─そこでは現在、長い間抑圧されていたシリアの民衆のなかでますます、拡大している各セクションと、Bashar Assadとが戦争状態にある。緊急に人道物資援助を必要とする箇所も多いシリア人の難民キャンプは、シリアとトルコの国境の付近に出現しつつある(後者のトルコ政府は、flotillaの目的について何となく同情的でもある。)こうした状況の下で、「活動家」たちに、シリアの世襲のバース党政権に対する蜂起のなかでは、彼らがどこに立ち現れていたのかと尋ねる対話を開始するのは正しいことではないのか?
そして再び、この地域でのシリアのもうひとつの代理勢力とは、Hezbollahだ─彼らは「国家の中の国家」を形作り、レバノン領のなかで私兵を維持している。このグループの古参幹部らは最近、国連により、2005年2月の白昼のレバノン前首相Rafik Hariri の殺害にまつわる訴追においても名指しされたのだ。Hezbollahの指導部とその広報宣伝組織は、国連との協力をすべて拒みながら─Assad政権(イランの独裁政権からの、ますます強力な支持に頼る)との間の不朽の連帯を表明している。再びいえば、ハマスの指導部は、このテヘラン-ダマスカスのローカルな枢軸と、せいぜい危なげな妥協をしているかのように見える。確かに…ガザの封鎖を実行する人々(brockade-runners)らのなかの誰かがそのスポークスマンとして、この件への問いにどう思うのかを我々に語ってくれてもいい筈なのだが?この地域で民主的な、多元主義的な革命が広く拡大しているいま─ハマスは、彼ら自身のバージョンの神権主義によってガザを支配している…そしてむしろ、継続している深い変化への希望を横切って立つかのように見える勢力と、連携しているようにみえる。誰がいまこの外見をもっと見苦しからぬ体裁にするために、時間を割こうと申し出るだろう?ガザに関してメディアに出た記事の半分は、それが広大なオープン・エア(露天)の刑務所に似ているという、スタンダードな言い方を含んでいる(そして私が最後にイスラエル占領下にあるその地を見たとき、それは確かに、その喩えに値するものだった─)問題なのは、その思想や、その同盟相手の関係からすると、ハマスにはその地域の警護役としての能力に関しては、余りに過剰なぐらい適任過ぎる、ということだ。
たった数週間前には、ガザのハマスの政権は─私の数えたかぎりでは─オサマ・ビン・ラディンの死に対して憤激と悔やみを表した、世界で唯一の政府権力と化していた。ギリシャの港の数々を包む小さなさざ波が折り畳み、陽光が照りつける今… これらの「活動家」たちが、彼らのパートナーらの世界的展望のなかのそれらの要素を討論したのかどうか、知りたいジャーナリストは居ないのだろうか? Alice Walker*には本当に、このことに何のコメントもないのか?
ハマスは多くの政府と国際的組織によって、テロリスト・グループのリストに列せられている。私は、その(テロリストという)特定の言葉が過去に勝手な用法で使われてきたことは認めてもいい。しかし、私にとってもっとも懸念されるのは、ハマスがオフィシャルな関連方針として採択している『ユダヤの議定書(The Protocols of the Elders of Zion)』というものだ。この胸のむかつくような偽書は、20世紀の人種差別思想と全体主義のキーポイントとなる基礎的書物で、その理論や実施方法において、ヒトラーの政権との繋がりも消しがたいものだ。人権への忠誠を宣言する「活動家」が、そのような邪悪な素材の宣伝に色々なレベルで協力しかねないとは、私には異様なことのようにみえる。しかし、この件についてコメントするために彼らが招かれた所を、私はまったく見たことがない。
その小さなボートひとつでは、いずれの方法でも、ガザ地区の生活の福祉には大きな違いを生み出せないだろう、なぜなら、送られた物資はあまりにも取るに足りない分量だからだ。それ故に、この事業のもっとも顕著な点とはシンボリックなものに過ぎない。そしてシンボリズムは、それが急ぎ足で審査されたときでさえ、あまり魅力的なものではない。その大胆な事業が意図している便益の享受者たちとは…それぞれ、昨今自らの市民たちの血によって眉を吊り上げさせた…中東のもっとも時間逆行的な独裁者らと密接な繋がりをもつ支配的グループなのだ。そのグループははまた、Hezbollahとal-Qaidaの双方との間に、どうにか温かな関係を保ち続けているか、あるいは少なくともそれらに礼儀を尽くした言葉を発している。そんな中で、一度は「民族虐殺を認める令状(warrant for genocide)」だと精確に描写された書類(ユダヤの議定書)が、前述のグループの宣言する政治的プラットフォームの一部を形作っているのだ。そこには、臭いのテスト(smell test)にも合格しないような何かがある。私はこのシーンを伝える記者たちの中に、私をこの件に押し上げてくれる者がいないのかどうか、と不思議に思う。
http://www.slate.com/id/2298332/
* Gaza Flotillaは、Free Gaza Movement および、トルコの財団 Foundation for Human Rights and Freedoms and Humanitarian Relief (İHH)が主催しているとされる(Wiki)
*2008年から幾度かにわたって実施された支援船団は実際に欧米のいくつかの活動家団体の協力で行われた
(参考)
*Gaza Freedom Flotilla: http://en.wikipedia.org/wiki/Gaza_Freedom_Flotilla
* Free Gaza Movement(BBC) http://www.bbc.co.uk/news/10202678
*下写真:2010年5月、Flotillaをイスラエル軍兵士らが急襲、親パレスチナの活動家9人(主にトルコ国籍)を殺害した
*"The Audacity of Hope":
American Activists Plan Gaza Flotilla Ship Named for Obama Book
→米国の活動家グループ[UStoGaza.org]は、独自に資金を集め、バラク・オバマ大統領の自伝書タイトルに因む「Audacity of Hope」号に乗った50人ほどの米国人たちが、Flotillaの船団の2010年9、10月の8度目の航海に参加した
http://thelede.blogs.nytimes.com/2010/07/20/american-activists-plan-gaza-flotilla-ship-named-for-obama-book/
*"Free Gaza Movement":http://topics.nytimes.com/top/reference/timestopics/organizations/f/free_gaza_movement/index.html
*前回flotillaが出帆した折に発生した暴力事件
Israeli troops raid aid flotilla headed for Gaza, killing nine
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/05/31/AR2010053101209.html?hpid=topnews
What's To Investigate?http://www.slate.com/id/2298332/
*1988年のHamas綱領:32条でユダヤの議定書に言及?
http://avalon.law.yale.edu/20th_century/hamas.asp
*Alice Walker:アメリカの黒人差別を語る女性小説家、スパイク・リーの映画化した小説の原作「カラー・パープル」ではPuritzer賞を受賞
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