Tuesday, February 21, 2012

9-11からアラブの春まで From 9/11 to the Arab spring By Christopher Hitchens

Tunisian protesters with a picture
of Mohamed Bouazizi 

クリストファー・ヒッチンズが、死を前にして、
いくつかのメディアの紙上でアラブの春と革命運動を回顧していた

「この10年間世界の出来事に対して戦闘的な姿勢をとってきたHitchensが執筆活動を回顧した」 

クリストファー・ヒッチンズ/ 9・11からアラブの春まで Christopher Hitchens: from 9/11 to the Arab spring By クリストファー・ヒッチンズ  (9/9/2011, The Guardian)

   3人の男たち: Mohamed Bouazizi、Abu-Abdel Monaam Hamedeh、Ali Mehdi Zeu… チュニジアの街頭の物売り、エジプトの料理店主、…そしてリビア人の夫にして父親だった男性─その最初の男は、2011年の春にSidi Bouzidの街で、卑劣な官僚主義の手によるひとつの余計な屈辱に抗議して、彼自身に火をつけた。2番目の男はちょうど、エジプト人たちが集団でムバラクのエジプトの停滞と無意味さに反抗運動を始めたときに、自らの生命を絶った。3番目の男も、彼自身の生命を絶つと同時にそれを捧げたといえるのかも知れないのだ─ つまり、彼の質素な車にガソリンとホームメイドの爆薬を満載して、ベンガジのKatiba兵舎のゲート…リビアでの嫌悪の的、気の触れたカダフィ政権のシンボルのバスティーユ…を突破しながら。

人類の長い争いのなかで、「殉教」という概念は、そのヤヌス神のような2つの顔とともに自らを現すペリクリーズの葬送の祈り(*1)から、ゲティスバーグ(リンカーンの、奴隷解放と人民平等をうったえた演説まで、自らの存在よりも大きな何かに突き動かされて、喜んで死を選ぶ者たちには栄誉が与えられてきた。より懐疑的な目でみるならば、死ぬことに対して熱情を抱く者たちには、過剰な熱心さや自己への正当化、そして狂信性さえも疑われた。

私がその昔、支持していた英国労働党の党歌(anthem)は、深い真紅の色の旗について情熱的に語っていたのだが、それは、「死んだ我らの殉教者の遺体を覆っていた」とも歌っていた。私の母校オックスフォードのカレッジの窓辺の下に立っていたのは…そして、今も立っているのは…オックスフォードの殉教者(Oxford Martyrs)らの記念碑なのだ。CranmerとLatimer、Ridleyといった主教たちがプロテスタントの異教徒として、カトリックのQueen Maryの手で1555年に火炙りにされた。1世紀の末に、カルタゴで教会の父 Tertullianは「殉教者らの血は、教会の種子だ」と書いた。そして盲目的な信仰を抱く殉教者たちとの連帯というものは、何世紀もの時代を下っても一貫して保たれ、火刑に処された宗派はやがて彼ら自身が火刑を執行する側となる日を待ち望んだ。私は、労働党は彼らに課された罪からは免じられるだろうと思う。それは1969年の1月に、ソビエトによる祖国の占領に抗議してWenceslas広場で焼身自殺をした若いチェコ人学生のJan Palachにとっても可能だろう。私は、オックスフォードで行われた彼の名誉をたたえる記念集会の開催にも助力したが、私はその20年後の1989年のベルベット革命に貢献して、反体制の亡命者たちや出版の中心となったPalach Press社との繋がりをも持った。この繋がりというのは完璧に世俗的、文明的なイニシアティブで、一滴の人間の血をも流す原因とはならなかったものだ。

  とりわけ過去10年間のあいだに、「殉教者」という言葉は冷血で愛のないゾンビのような──自爆殺人犯のMohammed Atta、すなわち、彼が想像しうる限りの膨大な罪のない人々の命を死の道連れにした男の、狼のようなイメージで完全に傷つけられた。Attaのような男を見いだして訓練した組織は、それ以降、英国からイラクに至るまでの多くの国や社会で犯した言いようのない犯罪の数々に責任があり─そこで彼らは、冷血で愛のないゾンビがノーム(社会的規範)となって、文化は死に絶えるようなシステムを作ろうと試みた。彼らは、彼らが生よりも死を愛するゆえに彼らは勝つのだ、と主張し、また生を愛するような者たちとは、か弱くて腐った堕落者なのだと主張した。実際に2001年以降に私が書いたすべての言葉は、我々の間にはそれを説明してみせるだけで終わる人々もいるなかで、明白にあるいは隠然と、こうした憎悪に満ちたニヒリスティックな命題に対しての拒絶や、反論を試みたものなのだ。

チュニジアとエジプト、そしてリビアの殉教者らは、AttaよりもPalachのように考えて行動していた。彼らは生命を奪おうなどとは考えなかった。彼らはむしろその生命を、瀕死の寡頭政治の体制から不都合な存在として扱われる農奴たちよりも、ハイレベルな状態で生かしたいと望んだ。彼らは汚れた言葉で自慢げに、彼らの殺人行為が彼らに死後の肉体的生命への気味の悪いファンタジーを抱かせる余地について、主張したりしなかった。彼らは、耳障りに叫びつつヒステリー状態の中で棺を担ぎ上げるような暴徒たちを、鼓舞しようとは考えなかった。Jan Palachは彼の身近な同僚たちに、彼の振る舞いの深い理由とは(故郷の)占領ではなく、その「春」が凍れる冬にその道を空けるような酷い無気力が、プラハ全体に根を下ろしたからだと告げた。生きながら死んでいるような状態でいるよりも、人生肯定的な死を好み、アラブの春の先駆者たちもまた同様に、彼らの後継となる者たちを刺激し、彼らが市民となるための途を熱望するよう願った。潮は引いて波も引き、風景は再び茶色がかって埃に覆われるのだが、しかし、アラブの心からTahrir広場の模範やエスプリを追い出すことは何者にもできない。ここに再び、人々が彼らを繋ぐ鎖や牢獄の看守を愛することはないことや、そして文明的な生活への望み…つまりソール・ベローの描いたAugie Marchが、不滅のフレーズで言い表わしたような「誰もが普遍的に有する高貴さへの適格性」というものが、すべての人にとって適切で、共通であることが示された。

  2009年2月にベイルート・アメリカン大学でのレクチャーを行うよう招かれて(「中東の真の革命家たちとは誰か?」とのタイトルを与えられて)、私は当時、おぼろげに見え隠れしていた数少ない火花に関して私のベストを尽くして語りまくった。私はイランで芽生えはじめていた市民のレジスタンスについても、例に挙げた。私は、エジプトの偉大な反体制者で政治科学者で(政治犯として収監されていた)Saad-Eddin Ibrahim…いまやTahrir広場の抵抗運動の知的な父の一人である…の言葉も引用した。私はレバノンの「Cedar Revolution(杉の木革命)」の運動自身─それは希望の季節をもたらし、その継続がレバノンの(シリアによる)長年の占領を終わらせたのだ─についても、賞賛した。私はイラクでSaddam Husseinのカリギュラのような専制政治に「終り」の幕を下ろすことに協力したクルド人の勢力を支持したが…彼らは同時に、その地域で最も抑圧された最大の少数民族として自治もはじめていた。私は Salam Fayyadの著作を称賛したが…彼は「パレスチナ自治政府」のバロック的な腐敗に「透明性」をもたらそうと試みていた。こうした人々はてんでばらばらで共通点はないが、しかし私が期待し信じかけているのは…彼らは新たな布を織り出すだろう存在として繋がりのない糸ではないだろう、ということだ。

  読者たちのかなり多くは(残念ながら、殆どのアメリカ人たちを含めてと私はいいたいが)、私のことをある種の喜劇のからかわれ役者とみているのは確かだ。彼らにとっては革命の正当性は、ハマスやヒズボラのようなグループに属している…彼らはグローバルな巨人(colossus)への決然たる反対者で、シオニズムに対抗する疲れを知らぬ戦士たちだ。私にとってはしかし、このことは、長い間歴史的に継続している議論のもう一つのラウンドである。端的に言うなら、この進行中の論争は、反・帝国主義的な左翼(anti-imperialist left)と、反・全体主義的な左翼(anti-totalitarian left)との間で起きている。そこに、様々な形で私は巻き込まれてきた─両側のサイドに─私の全人生にわたって。そして、いかなる紛争のケースでも私はますます、反・全体主義の側につくことを決意しつつあった(これは大したことのように見えないかもしれないのだが、何かが、経験というものを通じて見出さねばならないのだ…単に原理原則 principleといったものから導き出されるだけではなく)。多元的共存主義(pluralizm)を善だとみなすような勢力は、そのために彼ら自身の意見が「穏健的」(moderate)に響きがちだろうが、彼らははるかに根本的に革命論者でもある(そして、より長期的にみても、彼らがよりよい反・帝国主義者をもつくるだろうことは、とても確かだ)

  こうした視点のどれもを進化させ、研ぎ澄ましていくためには、米国という思想(idea of America)に関するコンスタントな議論が必須とされてきた。現状ではそこには、私の帰化した国(米国)に関して、その信頼性や資源(resource)の面での衰退についての、もっとイージーな議論が存在する。私は、この中傷に参加することを選ばない。そのことが認識されようとも、されまいとも…権力が分散化された世俗主義的共和国というものは未だに…発展の途上か、あるいは今すぐ起こりそうな、いくつかの民主的革命というものの近似的モデルにすぎないのだ。アメリカ合衆国は、時には、このような模倣というものに相応しい尊敬に値することもあり、そうでない時もある。それが相応しくない時とは、すなわち…すウォーター・ボーディング(*waterboarding:CIAによるテロ容疑者への水責め) に対する疑念のケースなどにおいてだと、私は言わんと試みたい。私が信じるに、この国の草創の時期からの文学や手紙は、なんらかの革命と解放の思想(revolutionary and emancipating idea)への忠誠を、その通りに提示している。

アラン・フィンケルクラウトAlain Finkielkraut が「野蛮さ(Barbarism)」というものについて書いたのは、さほど遠い昔ではない…「それは、我々の先史時代からの継承物などではない。それは我々が踏む一歩一歩にまとわりつく、安っぽい犬(コンパニオン・ドッグ)のようなものだった」。私は自分の書く文章の中で、過去の全体主義からの数多い教訓の例を挙げながらも、そうした野蛮性の亡霊を消し去りすぎないように努力してきた。そして、いつの世も変わらぬ古い敵…レイシズムや、指導者崇拝や迷信が…それと関連する姿をとって、(しばしば、新たな擁護者のボディーガードに護られて)我々の間に現れるのを認識するのはなんと、容易いことなのだろう。何年ものあいだ、私はこの陰惨なたたかいの仕事を和らげようと試みてきた…文化や文明に貢献した作家や、芸術家についても書くことを通じて─単に、抽象的に弁護され得るような言葉や、コンセプトだけではなく。その試みには私は何十年も要してきたのだが、最後に私はウラジミール・ナボコフVladimir Nabokovについても書いた…

権力というものを一度もその手に掌握すべきでない人々とは、ユーモアのない人々だ。彼らはあり得ないほどに確実に、公正に、退屈さや画一性と手を結ぶ。米国という思想の本質的な要素とはその多様性なのであり、それゆえに私はいつも、それ自らだけのために面白い物事や、ばかばかしいけれども暴露的なことや、あるいは、単純にそのこと自体が興味を引く物事…を祝福しようと試みてきた。そうしたことのすべては、たとえば私の blowjobにおける人文科学art and science of the blowjobを論じた短いエッセイのテーマにもあてはまる─しかしそれらの記事は、ユーモア欠乏症がジェンダーの違いによる、ということを論じた私のエッセイのような、最も即座に誤った解釈をされがちな私の記事から私を救ってくれる事はなかったのだが。しかしそれでもなお私は、こうしたちっぽけなスケールの冒険もまた、制限や禁忌事項(すなわち、それが社会の最必須要件sine qua nonであると、みなされるようなもの…それは荘厳さや、信心深さを追い詰める仕方を知っている)に支配されないような会話のために、幾らかは貢献したものと信じていたいのだ。*sine qua non=an essential element of conditionある状態を生み出す際、最も重要な条件となるような要素

"Arguably"(Hitchens' last
 anthology book)
   私の最初のエッセイ・コレクション、1988年のPrepared for the Worstの序文のなかで私は、ナディーン・ゴーディマーNadine Gordimerの考えのことを書き添えた…シリアスな人間は、死後においてものを書くべきだ、という旨のことを。私はつまり彼女が、人間にとって日常感じている抑圧、つまりファッション(服装)についての抑圧や、商取引(商売commerce)上の抑圧、また自己検閲や世論、特に、知識人らの意見から受ける抑圧などが何も作用を及ぼしていないような状況で文を書くべきだという意味だ、と受け取った。その通りに生きることはおそらく不可能なことだろうが、こうした忠告と野望は、かなりの筋力を備えている…その試みがどのように朽ち果てる可能性もあるかの、警告を含むという点においても。すると1年ほど前に私は医師から、私が残りわずか1年ほどしか生きられない可能性がある、と告げられた。結果として、私の最近の記事の幾つかは常に、私の本当に最後の記事になるかもしれないとの充分な意識のもとに書かれた。一方で覚醒したり、また活気を生みだすような刺激を受けながらも、この実践とは、明らかに完璧化されたことはなかった。しかしそれは私に、なぜ人生は生きるに値するか、そしてそれを弁護するに値するかのについての、より一層ヴィヴィッドな考えというものを与えてくれた。
 http://www.guardian.co.uk/books/2011/sep/09/christopher-hitchens-911-arab-spring

*註1:シェークスピアの「ペリクリーズ」。古の詩人ガワーが語る、タイアの領主ペリクリーズの波乱万丈の物語 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

*ヒッチンズはフランス革命の心をアメリカの独立建国に伝えたThomas Paineが気に入っていたようで、彼の伝記風の本を書き、自分自身もヨーロッパから米国に渡った。彼はかつては左翼的と目されていた作家だったがイラク戦争中に米国に帰化し、サダムの全体主義に抗議してイラク戦争を擁護すると表明して、米国の読者を爆発的に獲得したのだとか… 
ヒッチンズの亡くなった昨年12月15日は米軍のイラク完全撤退の日だった…
*この記事はガーディアンに載ったバージョン。チュニジアとエジプトの"革命"に触発されたアラブの春に関してはロング・バージョンの記事をVanity Fairに、ショートバージョンをSlate.comに載せていた─
関連記事:クリストファー・ヒッチンズ評伝 Christopher Hitchens Died: Legendary Writer Dies At 62 - By Jade Walker [In Retrospect...]

Friday, February 17, 2012

シリアと、アル・カイダに関する嘘?Syria and the Al Qaeda lie - By Tariq Alhomayed

アル・カイダのアル・ザワヒリは、シリアの反体制派を支援すると声明…
…サウジ紙のAsharq Alawsatの編集長は、「シリアのアル・カイダ」の怪しい噂についてのコラムを執筆。
また、レバノンのアル・カイダ関係者と疑われるイスラム過激派、オマール・バクリが、シリアのアル・カイダについて弁明…


シリアと、アル・カイダに関する嘘  
By タリク・アルホマイヤド (2/14, アッシャルク・アル・アウサット)

 今日、シリアの人々が直面している状況とは、悲しむべき状況だ。人々はいまや、専制的で殺人的な体制と、人々の起こした革命を色々な言い訳のもとで損ねようとする勢力との間の板挟みの状況にある…彼らが過去11ヶ月間に払ってきた全ての犠牲にもかかわらず。シリアの人々と、その反体制勢力が悩まされている数多くの迫害の最新の例といえば…アイマン・アル・ザワヒリがシリアに関して発した声明を都合よく利用して─アル・カイダがシリアの革命勢力(反体制派)を支援している、と主張するような試みだ。

 アル・カイダのリーダー、Ayman al-Zawahiriがシリアのジハードと称するものを呼びかける声明を発して間もなく、人々のあいだにはこの国をアル・カイダが支持しているとか、この声明がアル・カイダの活動がシリアに存在している証拠だ、などと急いで論じたがる者たちがいた。 しかし、それは単純化のしすぎだ─もしもそれが、非武装のシリアの民衆に対して共謀しようという露骨な願望の一部ではないのならば。

Syrian oppsition has no central leadership
 人は問うだろう:それはどうしてだ?と。その答えはシンプルだ─シリアに関するアル・ザワヒリのすべての声明をみてみれば…この種の彼の声明は、これがはじめてではないのだ─彼はこれとよく似たような、シリアの革命運動を称賛する声明を何ヶ月も前に、革命運動がピークに達する以前にも発していた。アル・ザワヒリはまた、アラブの春をも称賛していた─もちろん、シリアの革命に関する声明は、エジプトの革命やチュニジアの革命、無論、リビアの革命への彼の称賛にくらべれば血の気がなく、色褪せている─そこでは彼は、NATOの野望と対立するリビアの民衆に警告を与えていたのだ。

 アル・ザワヒリは、アルジェリアの民衆にさえも、彼らの支配体制に対して叛起するよう呼びかけていた。それなのに、彼のこうした声明に関してはなぜ、誰も懸念を示さないのだろう…そしてその代わりに人々は、シリアの革命がアル・カイダに支援されているなどと、言おうとしているのだろう?

 アル・ザワヒリはアラブの春を称えるだけでなく、彼はそれが米国に対する「破壊的な一撃」になるとも語っていた。アル・ザワヒリはさらに、アラブの春は「アメリカからの直接の命令により収監されていた何千人ものイスラム運動メンバーの受刑者たちを自由へと解放した」とも、さきに述べていた。これらのすべてにも関わらず、我々は誰もが─国家であろうと個人であろうと─アラブの春がアル・カイダによって支持されていたなどと言っているのは聞かれなかった。これと対照的に、当時の誰もがアル・ザワヒリの声明には注意など払わなかった。もちろん欧米はムバラクに政権を去るよう急いで呼びかけ、湾岸諸国がイエメンに対しイニシアチブを発し、サレフ(大統領)の政権委譲を確実にするよう圧力をかけた─アル・カイダが常に、サレフの持ち札の一枚だったという事実や…現在それをバシャール・アル・アサドが同様に持ち札として用いている事実にも関わらず!

 それゆえに、シリアでのアル・カイダ(*現在反体制側を応援している)に対する脅迫とは、同国の政権に非武装の民衆を保護する義務を放棄させる、新たな試みに他ならない…ダマスカスの専制君主による犯罪を正当化する試みとも同じく。これはアル・カイダがそれ自身で提示している脅し、というよりも、シリアとその民衆の統一に対するより大きな脅迫となる何かを表している。アル・アサド政権はシリアのセクタリアニズム(宗派主義)を固定化して、少数派を脅かし、彼らを現体制の下に戻らせようとしている─ この同じ政権が、過去10年間…イランの支援のもとで(イラクであろうと、あるいはその他の地域であろうと)、アル・カイダによるアドバンテージを得ようとはかっていたのとも同じように。これは秘密でもなんでもないが、この地域と…そして西欧の諜報機関全てが察知していることに関係していることだ。

 それゆえに、我々が察するべきなのは、ダマスカスの専制君主の退場が遅れているということだ、そしてシリアでの流血や死、テロのシーンが延長しているということであり─そのことが暴力や殺戮、事態の緊迫への責任がある…それは今日、誰かが主張したがっているように、アル・カイダに関して語ることではないのだ!これは誰もが知るべきことだ─特にシリアの統一や、その非武装の人々の安全に関わる人たちが知るべきことなのだ。
http://www.asharq-e.com/news.asp?section=2&id=28477

レバノンに居るイスラム過激派・宗教家オマール・バクリの最新インタビュー(2/17, Al Jazeera)
  …冒頭でAl Jazeeraのビデオhttp://www.youtube.com/v/HeD0DL2PsAc が伝えるのは、レバノンとシリア国境を多くの武装ゲリラや武器が行き来する状況。そして宗教家のOmar Bakriのインタビューが挿入される。*Bakriはロンドン地下鉄テロ直後に英国からイスラム過激派として永久国外追放になり、レバノンに送られた危ない人物。ロンドンでは"Tottenhamのアヤトラ"と呼ばれていた。 
 …現在シリア政府は、彼を"レバノンのアル・カイダのリーダー"とみているという。だがBakriはこのインタビューのなかでシリアの状況への関与を否定。またアル・ザワヒリがシリアの反体制派にジハードを呼びかけた最近の声明ビデオを見て明らかになるのは、「シリア国内にアル・カイダのメンバーが一人もいないことだ」、などといっている。
  
 彼は、「自分にはエキスパートとしてそのことは判る…そうでなければ、シリア国内の反体制派にザワヒリが呼びかけて、誰か作戦を実行する人間をつのるわけがない…呼びかける前に自分たちがやるだろうからだ。彼らはシリア国内の反体制派の誰かに仕事をやらせて、その後に出てきて『自分たちがやった』などと声明を出すのが常套手段だ…」などといっている。

 …ビデオ後半では他の専門家がシリアには既にリビアやイラク、レバノンから多くのイスラム戦士(アルカイダを含む)が海路や陸路にて送られ、数千人がいるのは疑いないといっている。http://www.aljazeera.com/video/middleeast/2012/02/201221782012316678.html 
Omar Bakri

 Omar Bakriはシリア出身だがバシャール・アサドの父ハフェズ・アサドが政権をとった際に、イスラム原理主義者として反政府活動を行ったために弾圧され、1980年代に英国への亡命を許されて亡命した。英国に在住していた20年間に、自身のイスラム過激派組織al-Muhajiroun やAl-Ghurabaaなどを設立した。911テロ犯のグループを賛美したり、デンマーク大使館前でデモを行って逮捕されるなどの活動により、2005年に英国国籍が剥奪されレバノンに送致された(*レバノンでは一度終身刑になっていたというが今では解放されたのだろうか?)(7/21/2006)http://www.guardian.co.uk/world/2006/jul/21/syria.immigrationpolicy

 Omar Bakriが、この1月下旬にアル・カイダを賛美した言動が各紙に掲載された。1/25にはDaily Telegraphに対して、彼の組織Al-Ghurabaaとアル・カイダを含む「強硬派のサラフィスト・グループが、シリアでの反アサド政権の作戦を助ける準備がある」と述べた。
  Bakriはシリアで、彼らには「ムスリムの兄弟ら」が自爆テロのキャンペーンを行うことを助ける用意があるとし、「2つ3つの作戦でバース党政権は吹っ飛ぶだろう。アル・カイダはとても賢く、無から多くの武器を作ることができる。彼らは多くのキッチンに入ってピザ爆弾を作り、それがフレッシュなうちに配達ができる…」、などと述べていた(1/27/2012) 
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9039437/Muslim-cleric-banned-from-Britain-claims-Al-Qaeda-poised-to-launch-sucide-attacks-in-Syria.html

スンニ派過激派が、シリアでのアル・カイダの野望を支援している可能性がある (2/15, NYタイムス) By Eric Schmitt and Thom Shanker

  最近のダマスカスでの2件の自爆テロ(12/23、及び1/6)、及び2/10のAleppoでの自爆テロは実際、スンニ派過激グループ、または「イラクのアル・カイダ」のフランチャイズが行った仕業である可能性が高い、と米政府関係者らはみている…(中略)

 それらの爆破テロは、「アル・カイダと"ゆるい連携にあるが、直接テロリスト・グループの管理下にはない"スンニ派の武装戦士たちが、アサド政権を民主主義的運動によって覆したいという、共通の動機のもとに起こしたもの…」であると、米国のRAND研究所などの専門家は見ている。
(中略)
 イラク戦争中にはイラクに赴き、"イラクのアル・カイダ"などのグループに参加して過激派テロを行ていった者たちがいま、シリア周辺に帰国して、これらのテロを起こしている可能性が存在する。「今、そうしたテロのノウハウを知る者たちはこの地域には溢れるほどいる」、と中東政策ワシントン研究所のAndrew Tabler氏はいう。「アサド政権はかつて車爆弾の発明に協力し、彼らはこれまで、自らの外交政策の目的の為にそれを見事に使ってきた。そして、最近のそうしたテロを実行したのはアル・カイダである可能性もあるし、単にこの地域で似た様なバックグラウンドを持つ者である可能性もある」と彼は述べている。

 「イラクのアルカイダ」は近年そのメンバー数が顕著に減少をみせていたが、シリアでの混乱に乗じて暴力的テロを行うことによってアドバンテージを獲得し、民衆に人気のある反政府運動をハイジャックしようと考えている可能性もある…と幾人かの米政府高官は述べている。

 アル・カイダは「アラブの春」の、主にソーシャル・メディアを通じて起こされた非暴力による革命の成功で、その(暴力的な過激派としての)運動の隙を突かれ、またオサマ・ビン・ラディンの殺害によってもさらなる大きな打撃を蒙った。彼らはそれ以来、新たな足場となるものを探してきた。

 「イラクのアル・カイダに同盟する者たちがそのシリアにおけるネットワークを用いて、アサド政権の後追いをするとしても、驚くには値しない。それはシンプルな、ある種のご都合主義、日和見主義とでもいうべきもの」だとある匿名の政府高官は言う。またもちろん、アル・ザワヒリもシリアでの混乱に乗じたビデオ声明を発している。

 米政府内におけるシリアでのアル・カイダの役割についての論議は、水曜日に─ アサド政権のいかなる後継政権に対しても、アサド政権が現在保持する化学兵器や携帯用対空砲ロケット弾などの通常兵器の備蓄品を安全に確保することに対して、米政府が助力すると申し出た後になされた。

…しかし、現在の混乱した状況のなかでは、テロリストがシリア政府の所有するそれらの備蓄兵器を獲得する機会を得る可能性もある。リビアにおいても同様のことがあり、カダフィ政権が崩壊後に米国が残された同政府所有の多くの武器をリビアの近隣住民との協力のもとに破壊し、または安全に確保するために確認し、リスト化したりしてきた。しかしシリアでは現在、シリア政府に対して未だにロシアとイランが武器を継続的に供給している状況にある。
http://www.nytimes.com/2012/02/16/world/middleeast/al-qaeda-influence-suspected-in-bombings-in-syria.html?_r=1&hp=&pagewanted=all

 *米当局関係者は、このシリアのアル・カイダのことを「イラクのMosulのスンニ派ラディカルたちがシリアにやって来た…」という言い方をしているようだ。

 (参考記事) .."US and Iraqi intelligence says that foreign Sunni radicals (“al-Qaeda”) based in Mosul in Iraq have now departed in some numbers for Syria"... http://www.juancole.com/2012/02/save-homs-with-humanitarian-airdrops-by-drones.html

 *Al Qaeda in Iraq…Now in Syria! http://spectator.org/blog/2012/02/22/al-qaeda-in-iraqnow-in-syria/print
 
  …イラク戦争中、2004年に米軍の行った、悪名高いファルージャでの「大虐殺」の後に、イラクの反乱勢力はニネヴェ地方のMosulとTal Afarにその拠点を移して、AQI(Al Qaeda of Iraq)も同様にその拠点を移した… この「イラクのアル・カイダ」http://en.wikipedia.org/wiki/Al-Qaeda_in_Iraqといえば勿論、かつて残虐なヨルダン人司令官 Abu Musab al-Zarqawihttp://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Musab_al-Zarqawiで知られていた…彼はシーア派巡礼者の大量虐殺などの、一般市民に対する恐ろしいテロを繰り返した。
  (ザルカウィは長らく米諜報部の最大のお尋ね者だったが、彼がイラクで行った一般市民への残虐テロの行き過ぎは、アラブ民衆のアル・カイダへの嫌悪をたかめ、「アル・ザワヒリからさえ、その残虐テロの行き過ぎを慎むように諌められていた」…)
 しかし、2006年米軍の無人機が500Pound爆弾を2発投下して首領ザルカウィを殺害した、そして、最近ではイラクのアル・カイダの力は徐々に弱まっていた筈なのだが?…

*シリアのアル・カイダとは、「ユルい連携の組織」であって、確たる管理系統もないのが実態ではないのだろうか?
 (アル・ホマイヤド氏が言うように、状況の混乱を狙う過激派には警戒すべきでは?)

Wednesday, February 15, 2012

クリストファー・ヒッチンズ評伝 Christopher Hitchens Died: Legendary Writer Dies At 62 - By Jade Walker [In Retrospect...]

[In Retrospect...] Christopher Hitchens Died: Legendary Writer Dies At 62

クリストファー・ヒッチンズ死す:伝説的なライター、62歳で死去 By ジェイド・ウォーカー (12/16, The Huffington Post) 

クリストファー・ヒッチンズは、木曜日*2011.12.15にヒューストンで62歳にて死去した。伝説的なライターは2010年、食道がんと診断されていた。彼の死は、Vanity Fair誌が報じた。

ヒッチンズは1949年に、EnglandのHampshere州Portmouthに生まれた。彼の父Ernestは英国海軍の司令官であり母のYvonnneは簿記係だったが、母は彼がCambridgeの私立学校Leys School に入学できるようにとコツコツ貯金をし、後には彼をOxfordのBalliol Collegeへと通わせた。彼ら夫婦は決意を固めて、息子が最上級の教育を受けて、上流階級にはいるようにと仕向けた…The Guardian は報じる。

大学時代においてはヒッチンズは哲学と政治学、経済学を学んだが、心中では学べば学ぶほどに怒りが高まった。ヒッチンズの人種差別への嫌悪とヴェトナム戦争への反戦意識が、彼を政治的左翼へと導いた。彼は結局反スターリン主義的な左翼であるInternational Socialistsのグループに加わり、政治的反戦運動に参加した。

1960年代にカレッジに在籍していたことは同時に、ヒッチンズにより快楽主義的な生活スタイルをももたらした。彼はドラッグの服用は控えたものの、ヘビー・スモーカーかつ、酒豪となった。彼はそのような習慣が彼の物書きの作業を助けたといっている。「書くことは自分にとって大切なことで、それを助けるものなら何でも…それを昂揚させ、長引かせ、深め、時には議論や会話の集中度を高めるものは…自分にとって価値があった。ゆえに自分はそれと知りながら、リスクをとった」と彼は語った。

彼にとって書くこととはまた、彼の感じる憤りと、そして啓蒙の完璧な捌け口だった。英国王室やHenry Kissinger、ローマ・カソリック教会は1970年代の彼のお気に入りのターゲットのほんの一部だった。美食家(bon vivant)でありながら、ヒッチンズは少なくとも年一回は「彼自身の国よりも不運な国」で過ごすことにしていた。そのようにして、彼の初期のキャリアは地球を彷徨することに費やされ、世界のトラブル・スポットでレポートを書き、彼が残酷だとか悪だと感じた物事に光を当てた。New York Times は報じた

1981年に米国に移住して以来、ヒッチンズはThe Nation誌に書き始めた。彼は後にVanity Fairやthe Atlantic Monthly、Slate、Harper’s、The Washington Post 、そしてThe Huffington Post等の多くの出版物のために寄稿し、あるいは編集者を務めた。西欧に対するラディカルなイスラム世界の分子たちがもたらす危険性への確信に触発された彼の驚くべきイラク戦争擁護により、ヒッチンズは広汎な読者層を獲得し、そして2005年9月に彼はForeign Policy誌 とProspect 誌による"Top 100 Public Intellectuals"の一人に数えられた。

Los Angeles Timesによれば、ヒッチンズは2ダースほどの本(*) を書いた─そのなかには "Letters To A Young Contrarian," "God Is Not Great: How Religion Poisons Everything" と、 "Hitch-22: A Memoir"が含まれる。彼はしばしばTVやラジオにも顔を出した。彼はまたUniversity of California, Berkeley、 University of Pittsburgh、the New School of Social Researchにおいて客員教授を務めた。
文化的な論客として、ヒッチンズはけんかを好んだ。彼は幅広いテーマにわたり…政治から宗教、そして彼自身の死すべき運命に関しても手厳しい洞察を行ったが、しかしおそらく彼の最もよく知られた批判とは、1994年のドキュメンタリー"Hell's Angel"と、Vanity Fairに掲載された、Mother Teresaに関するものだったろう。

「(マザー・テレサは)貧者の友ではなかった」、ヒッチンズはいった。「彼女は貧困の友だった。彼女は、苦しみは神からの贈り物であるといった。彼女は彼女の人生を貧困の唯一の治癒策として知られるものに反対して過ごした…それは、女性への権限付与(empowerment)であり、彼女らの家畜のごとき強制的な生殖活動からの解放だった」

彼の、多くの人々が聖人とみなす女性についてのネガティブな肖像のために、何百人もの読者が雑誌の購読契約をキャンセルした。しかしそれでも、彼の死に関するレポートが伝えられると、インドのチャリティー・ミッショナリーは、彼らのノーベル賞受賞者の創立者への攻撃的キャンペーンを行った人物にも関わらず、ヒッチンズの魂のために祈ると発表した。AFPは報じた

2008年には「強化された尋問テクニック(enhanced interrogation techniques)」が全米の論議の的となっていた只中で、ヒッチンズは彼自身waterboarding (水責め)による尋問が本当に拷問かどうかを知るべくそれを体験した。彼は16秒間もちこたえた。
「いまや、いつも…それが溺れるときの感覚を誘発するということが、メディアで─あるいは議会で─論議されているのを見るのは不快なことだ」と彼は述べた。「それは溺れる感覚を誘発するのではない。それによってあなたは実際に、ゆっくりと溺れていくのだ」

常にcontrarian(反骨家)として、ヒッチンズは米国が曝け出すその長所も欠点も全て含めて受け入れ、そして2007年の58歳の誕生日に米国市民となる宣誓をした。そのセレモニーは前大統領George W. Bushの国土安全局チーフ、Michael Chertoffが行った。

Hitchens and Carole Blue
無神論者を公言しながら─あるいは「an antitheist(反・有神論者)」と呼ばれることをより好みつつ、ヒッチンズは組織的宗教が世界の憎悪と暴政の主な源(ソース)であると描写し、多くの人々に理性的な思考をするようにと呼びかけた。彼は人生最後の時期に、宗教的・政治的な人物らと、信仰や神の存在について討論した。

「信仰(Faith)とは意志を明け渡すこと(surrender of mind)だ─それは理性の明け渡しであり、それは我々を他の哺乳動物から区別する、唯一のものを明け渡すことだ」とヒッチンズは述べた 「信じる事は我々にとって必要なことだ…そして我々には懐疑心や理性を明け渡すことも必要だ…あるいはそれらすべてを捨て去って、すべての信頼や信仰を誰か(もしくは何か)に与えたいと切望している…それは、私にとって不吉なことだ。我々の支持する全ての美徳や信仰は過大に評価されている」

"Hitchens with the Kurds on a destroyed Iraqi tank"
- 1st Gulf War period -

2010年に食道がんを宣告された以後でさえ、ヒッチンズは神々や組織的な宗教に安らぎを求めることを拒絶した。彼はもしも誰かが人生の最後に彼が改宗したという人があったなら、それは宗教コミュニティの喧伝する嘘か、あるいはがんとその治療による効果が彼に自分自身を失わせたからだろう、と明言した。
「そんな言葉を発する存在は、癌の脳への転移によって狂乱し、恐怖におびえた存在かもしれない。私はそのような存在になればそんなことを言わないという保証はできない、しかし私自身のように識別眼のある人間だったら、そんなことを言うことはありえない」と彼は言った。

「クリストファーのような人間は他にはありえない。彼は猛烈な知性の男、書物のページ上でも、まるでバーに居るときと同じように活気のある男だった」とVanity Fairの編集者  Graydon Carterは語った。彼の文章を読む者は彼を知っていたように思うし、そして彼を知っていた者たちは、奥深く幸運な魂たちなのだ。

 ヒッチンズには妻のライター、Carol Blueと3人の子供がある
http://www.huffingtonpost.com/2011/12/16/christopher-hitchens-dead_n_1152786.html

*2008年の7月のVanity Fair誌で太鼓腹の59歳のHitchensが自らウォーターボーディング(水責め)を「突撃体験」した記事は衝撃だった。当時、CIAが秘密収容所でテロ容疑者に行っていたことが暴かれ、それは拷問か、そうでないか?が曖昧とされ論議を呼んでいた
"Believe Me, It’s Torture"
http://www.vanityfair.com/politics/features/2008/08/hitchens200808
http://www.vanityfair.com/video/2010/08/594157164001(video "On the Waterboard")




*2007年10月のVanity Fairの企画”On the Limits of Self-Improvement”(コラムニストが健康改善のフィットネスや美顔エステを体験…)
http://www.vanityfair.com/culture/features/2007/10/hitchens200710 










*Slide Show: FROM THE LIFE OF CHRISTOPHER HITCHENS http://www.vanityfair.com/culture/features/2011/12/christopher-hitchens-slideshow-201112#slide=2



*HitchensによるColumn
 Fighting Words/Wartime Lexicon・戦争語彙録” シリーズ(勝手訳)…

マッドマンの死- オバマが次に何をするのかが、オサマ・ビン・ラディンの遺産(レガシー)を決めるhttp://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2011/05/death-of-madman-by-christopher-hitchens.html
ばかげた性急な回答─なぜ、こんなに多くの"エキスパート"たちが、オスロの攻撃はイスラム過激派の仕業だと宣言するのか?
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2011/08/ridiculous-rapid-response-why-did-so.html
パキスタンはなぜ、アメリカを憎むのか?──それは我々が頼りだからだ
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2010/01/why-does-pakistan-hate-united.html
インドを忘れるなかれ!
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2010/04/dont-forget-about-india-prime-minister.html
モスクを脅すマウマウ団?
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2010/09/mau-mauing-mosque-dispute-over-ground.html
"掘削の同盟国”を呼ぶがいい!-アフガニスタンの巨大な埋蔵資源のもたらす問題に、なぜそんなにこだわるのかhttp://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2010/07/bring-on-coalition-of-digging-why-are.html
カソリックの大いなる隠蔽:法王の全てのキャリアには、それ自身に邪悪の臭いがある  
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2010/04/great-catholic-cover-upthe-popes-entire.html
アフガンのアヘン戦争に勝つ方法
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2008/10/let-me-try-translate-hitchens-how-to.html
彼らは神を信ずる:保守主義者のアメリカ例外主義への信条は、いかに信仰心の問題となったかhttp://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2012/08/in-god-they-trust-how-conservative.html
クリストファー・ヒッチンズ/ 9-11からアラブの春まで(The Guardianより)
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2012/04/christopher-hitchens-from-911-to-arab.html
正しい一杯の紅茶の淹れ方とは?─ヨーコ・オノとジョン・レノンは無視して、ジョージ・オーウェルのティー・メイキングのアドバイスを心に留めよ
http://hummingwordiniraq.blogspot.jp/2011/01/how-to-make-decent-cup-of-tea-by.html

 

Sunday, February 12, 2012

怖れと嫌悪がうずまくアメリカ湾 Fear and loathing in the American Gulf - By Pepe Escobar


怖れと嫌悪がうずまくアメリカ湾 - By ペペ・エスコバル (2/3, Asia Times)

 ペルシャ湾?Khaleej-e-Farsf? 忘れたほうがいい─もうそれを、アメリカ湾と呼ぶべきときだ─戦争のハゲワシや、ジャッカルやハイエナたち、イスラエル人やアングロ・アメリカ人が喜ぶだろうから。サウード家だって、さほど喜ばないわけもないだろう。

 最近、米国のバラク・オバマ大統領が宣言した中東から東アジアへのペンタゴンの「転回」戦略 "Pivoting"strategyも、もはやこれまでだ─中国との対立は、南西アジアから始まっている…アメリカ湾において。それは、イランのシスタンーバルチスタン県のJundallahの、筋金入りのスンニ派主義の人殺しらを応援するワシントンの政権や、CIA工作員を装うイスラエルのMossadエージェントたち、イランの核科学者の連続的暗殺やコンピューター・ウィルス攻撃、テヘランがアル・カイダを援助しているとか援助されている、といったばかげた告発なども越えて、そのはるかに上を行っている。 (*最近、イランの核施設の遠心分離機を、"イスラエルが"サイバー攻撃で運転不能にしたという)

MOPで消し去れ MOP it all up

 これらの証拠を再度、確認すべきときだ。約1ヶ月にわたって3隻を下らない米国の空母とその攻撃グループがアメリカ湾とオマーン湾、アラビア海でバチャバチャと跳ねまわることだろう─米戦艦エイブラハム・リンカーン、カール・ヴィンソン、エンタープライズ、それに古き良きフランスの原子力戦艦空母シャルル・ド・ゴールが。そしていまひとつの、太平洋拠点の米戦艦空母も速やかに派遣されることだろう。

 この海上の米空母グループによるhajj(巡礼)のほかに、築40年の古き米国戦艦ポンセも、アメリカ湾に派遣されるため新たな水陸両用特殊作戦用のハブ装置を設置されつつある。ペンタゴンのCENTCOM(米軍の中東・北アフリカ・中央アジア方面の中央司令部)は、理論的にはイランの地下核施設の破壊が可能な…1万4千KgのMOP(Massive Ordinance Penetrator)と呼ばれるオーウェルのSF風の怪物的バンカー・バスター爆弾を急きょ、アプグレードしている。

 ある超党派の政策センターによる合衆国防衛プロジェクトは─それはワシントンで政治家たちや軍産複合体系の人間を混ぜあわせている無数の回転ドアの一つなのだが─イスラエルにさらに200個のMOP爆弾と、3隻のKC-135 空母給油タンカーを供与したいと考えている─イランに対する「軍事攻撃への信用性を高めるために」。

 DEBKA-Netといえば、イスラエルのプロパガンダ/偽情報のデジタル・フロントだ─故に、それは基本的に信憑性がない。しかし、その最新の大言壮語は精査するに値するものだ。DEBKAはペンタゴンが戦略的な2つの島に関して猛烈な勢いのモードを呈しているという─パラダイスのようなSocotra島(Yemenの南東380キロにあり、そこではペンタゴンが2010年以来巨大な基地を建設中だ)、そしてMasirahのCampJustice島(Hormuz海峡の70キロ南のオマーン領内にある)に関して。

 Socotra島は、かくしてアメリカ湾の米国の基地帝国の結び目(node)に加わる─UAEにおけるJebel Aliと-Dahfra や、 Qatarのal-Udeid 、KuwaitのArifjan のように。わずか数週間前に、1万5千名の追加米軍部隊がKuwaitに派兵されたことは記憶しておいたほうがいい。ペンタゴンはSocotra島とMasirah島での建設については途方もないほどに無言を保つことが予想され、そしてYemenとOmanの官僚たちも話をしたがらない。

 DEBKAは、2週間で3千キロ離れたDiego Garcia島から、既にアメリカ湾に駐留する5万名の米兵に加えて約5万名の米軍が空路で両島に集結するだろうという。この空・海軍に加えて、英国・フランスからの特殊部隊がサウジ・アラビアとUAEにコンスタントに注入されている。イランに陸路侵攻するには充分ではない、しかし「"no options off the table"他にまだ提案されていないオプションはない(その言葉のcopyrightは オバマにある…)」というシナリオの主なロジスティック・サポートをするには充分すぎる。

陣営を整え、戦さのために祈れ Build up, and pray for war

 DEBKAはこうした展開をすべて勝手に解釈して、予想しまくっている─それぞれ、確証のない事柄だが─そして、オバマが「イランの核開発施設への攻撃を2012年中に決定する」というが、それは完全にナンセンスだ。それはイスラエルのネタニヤフの政府の(ヒステリックな)ウィッシュフル・シンキングを反映するのかも知れないが、オバマ政権の戦略とは何の関係もない(…オバマの戦略は、イランを「放置しておいて…死ぬのを待つ」型の外交戦略だ─経済制裁・石油禁輸+(プラス)ペンタゴンがアメリカ湾に陣容をととのえて、それによりイランを核開発の事件書類における降伏を引き出す方策として)。

 ウィッシュフル・シンキング(希望的観測)とは、New York Timesの本日流行りの武器でもある─それはいまや、仲介人(ミドルマン)としての米国の立場を排除すべく、イスラエルのライターたちによるイランについての事件書類の作成を下請け作業しているかのようだ。

 この、武器を投入するすべての乱痴気パーティーのなかで唯一の良い点は テヘランとワシントンが未だに─何らかの意味で、対話を続けていることだ…所謂ブラック・チャネルを通じて…つまりバグダッド(の大使たち)や、トルコを通じて(Recep Tayyip Erdogan首相を仲介役に)、またウィーン(IAEAの本部があり、そこに外交官たちがいる)を通じて。ここでは7月1日までは、5ヶ月間の良い意志のための窓が開いている…EUと米国の対イランの石油制裁が発動されるまで。

 そしてそうなったら、そこには「Austere Challenge 12」(*) ─大がかりな米国・イスラエル合同の戦争ゲームが、そして何千もの米兵たちと、いくつもの米国・イスラエルのミサイル防衛システムのテストが再浮上することになる。

 「Austere Challange 12」はいまや、米国大統領中間選挙の直前1ヶ月以内の10月に再スケジュールされた─そのときにはMitt Romney…ネオ・コン・ギャングと気のふれたエヴァンジェリカル(キリスト教保守の福音主義者)がノンストップでイラン空爆をCATV放映するかもしれない。そのときまでは、Percy Bysshe Shelleyの「The Mask of Anarchy」のなかの言葉…「ライオンたちのごとくまどろみから目覚めて、立ち上がる…打ち負かされがたい数をもって("rise like lions, after slumber, in unvanquishable number"」(恐怖と嫌悪を、アメリカ湾から追い払すために)…を引用するかどうかは国際社会の世論に委ねられる。
"http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/NB03Ak04.html
 
(*)"Austere Challene 12": このところ「Austare Challenge 12」の名のもとに米軍とイスラエルが過去最大規模の合同軍事演習を行っている。Hormuz海峡近辺での昨今の米軍部隊の増派や周辺諸国の軍備の強化に加えて、それは演習ではなく実戦に備えた「何か」である…とイスラエルはみている。アメリカは、同時にイスラエルのTHAADミサイル防衛システムを強化、サウジには300億ドル分のF-15戦闘機を配備、UAEに最新の「バンカー・バスター」爆弾の供与を約束…米軍は新たにイスラエルに基地をも設置し、イスラエルはIDF(国防軍)がドイツにある基地から作戦に対応するという..
http://my.firedoglake.com/ctuttle/2012/01/05/austere-challenge-2012/


 ペンタゴンが、対イランのさらなる強力な爆弾を追求 Pentagon Seeks Mightier Bomb vs. Iran By ADAM ENTOUS And JULIAN E. BARNES (1/28, Wall Street Journal)

  (抜粋)
 ペンタゴンの戦争プランナーたちは、史上最大の爆弾が未だにイランの要塞堅固な地下施設を破壊するには能力が不足しており、さらにそれを強化するための努力をすることを発表した。
 3万パウンドの"bunker-buster"爆弾、MOP(Massive Ordnance Penetrator)は、イランと北朝鮮のさらに堅固に要塞化された核開発プラグラムを破るべく設計された。しかし最初のテストは、現在の爆弾がイランの施設を破壊できないことを示した。それは、その施設の深度のためでもあり、あるいはテヘランが、さらに堅固な要塞設備を追加したからでもある。

 …このためペンタゴンは今月、下院議会に密かに爆弾をより深く岩盤に喰いこませための開発予算の要求を行った。MOPのパワーアップは対イラン攻撃における非常事態プランのためだという。大統領の新防衛予算には他にも興味深いニューアイテムがある:無人偵察機のための浮遊基地は、コマンド部隊の輸送機発射台としても使える。

 国防省は3億3千万ドルをMOP爆弾20個の開発に費やし、その爆弾はBoeing社によって製造された。ペンタゴンはさらに8千200万ドルを投じて同爆弾のさらなる強化をはかるという …ペンタゴンは特にイランのシーア派イスラムの聖都Qom近郊のFordowのサイトのような山岳地帯の地下施設破壊能力についての懸念を抱いている。もしもそれを破壊したいならば、山そのものを吹き飛ばさねばならないという。ペンタゴン担当者は、MOPはNatanzのウラン精製施設の破壊に対してはより効果的だと推測しているが、それもあくまで推測であるという。

 パネッタ国防長官と前国防長官のロバート・ゲイツは、軍事攻撃は最大でもイランの核開発を数週間遅らせるだけだろう、という。攻撃賛成論者たちは、そうした遅滞を生めば彼らのプログラムを阻む他の手段を講じる時間を稼ぐのに決定的な効果があるはずだという …空軍関係者によれば、全長20.5フィートのMOPは5千3百パウンドの爆破薬を充填でき、爆発前に地下200フィートまで到達できるという。Fordowのウラン精製施設には少なくとも200フィートの高さがある…(後略)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203363504577187420287098692.html

イラン側の武装についての分析
Iran's Deterrence Strategy in the Strait of Hormuz
http://www.stratfor.com/analysis/irans-deterrence-strategy-strait-hormuz

Iran nuclear facilities map




Natanz uranium enrichment plant (from BBC)
  

Saturday, February 11, 2012

シリア国民評議会(SNC)とは何か?- SLICES OF SYRIA....


シリア国民評議会(SNC)とは何か?

Syrian National Council (SNC) は、シリア国内に分散する反体制勢力をまとめて、2011年春頃より組織化され、11月半ばにイスタンブールで正式に結成を宣言した傘組織(unbrela organization)、異なる民族・宗派の混在するこの国で、アサド政権に代わる体制を模索する「7つの反政府勢力が結成した同盟」(BBC等による)だという。

SNCに参加するグループとは…

• The Damascus Declaration for Democratic Change grouping - (2000-2001年の民主化運動「ダマスカスの春」の際に生まれた組織の亡命支部だが、アサド政権によって弾圧されていた)
• The Syrian Muslim Brotherhood -シリアのムスリム同胞団(シリア国内では違法組織なので、トルコに亡命支部がある)
• Local Coordination Committees - (全国的なデモを先導した各地のローカルな草の根運動
• Assyrian Democratic Organization(アッシリア系シリア人の組織)
• Syrian Revolution General Commission (SRGC) - (シリアの40の野党勢力の合同ブロック)
• Kurdish factions, tribal leaders and independent figures make up the rest of the council.(クルド人勢力各派と部族リーダーら、及び、他の評議会に属する独立的人物たち)

SNCは、カダフィ体制に代わって政権を握ったリビアの国家評議会にも似ており現在評議会のメンバーは190人ほど。
シリアの新しい代理政府とか、トルコにおけるシリア亡命政府といった位置づけは未だ曖昧…(しかし1月21日現在で、米国・フランス・スペイン等を含む12の国連加盟国は、既にSNCを国連の加盟メンバーとして承認しているという。いかにも欧米寄りだからなのか)*SNCを承認している国のmap=Wikipediaのリンクを参照


SNCの最も著名な人物は、フランスを拠点とするシリア人亡命学者Burhan Ghalioun… 11月に議長に就任した。アラブ諸国に対し、継続的に民主的改革を呼びかけてきた人物だとか… (彼は1945年Homs生まれでダマスカス大哲学科卒、ソルボンヌ大にてヒューマニティーと哲学博士号取得。ジャーナリストのPepe Escobarは、Burhan Ghaliounを「欧米の代理人であり、シリアの民衆には未だ受け容れられていない」、などと書いているのだが…。) SNCの大半は亡命シリア人勢力だが「シリアの反政府勢力全体の6割を代表している」、と称する。国内からの支持拡大を求めつつも、シリア国内での支持者(勢力)の名前は伏せたい、としているという。SNCにはシリア国内の別の主な反体制勢力「National Coordination Committee for Democratic Change」から賛否両論の反応(mixed reaction)があるという。


SNCのChairman, Burhan Ghalion
 (ソース):http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-15155804
http://en.wikipedia.org/wiki/Syrian_National_Council


バシャール・アサド大統領と一族の相関図…

<Slate.comがシリアのアサド大統領一族の「家系・相関図」を掲載>
 アサド一族の亡き族長ハフェスは、1946年から1970年までにシリアの政権が18回も転覆された後、元国防相として'70年にクーデターで政権を奪って安定させた。アラウィ派で世俗主義者のハフェスは国内の多数派・スンニ派への支配を確立し'82年にはシリアのムスリム同胞団を弾圧、大規模なHamaの虐殺を実施(Hamaの屠殺人とよばれたのは、ハフェスの兄弟で右腕のリファートだった)
   現大統領、バシャールは、(2人の兄弟が父を継ぎ軍に入ったなかで)ロンドンで眼科医を目指して勉強しており、亡き父のハフェス・アサドの後継候補とはみなされなかった。しかし'94年、族長ハフェスが65歳の折に、最愛の息子で後継候補のバシャールの兄バシールがドイツのアウトバーンで、スポーツカーの横転する自動車事故で33歳で死亡、バシャールは後継者として呼び戻されたとか…。
 帰国後は軍に入り異例の速さで昇進…2000年に父ハフェスが死去して、バシャールはなかば「アクシデントで」シリア大統領になり 「unlikely autocratic opthalmologist ありそうにない、眼科医の専制君主」となった。
 …彼の弟で残忍で不安定な性格ゆえ父ハフェスが後継者にするのを危ぶんだマヘールは、今では巨大なシリア軍を統率するバシャールの参謀。叔父リファートから国防産業を受け継いだ。非正規民兵のシャビーハをも率いて、昨年の多くの政府側の残虐事件に責任があるとみられている…





*アサド大統領Interview: "An hour with Syrian president Bashar al-Assad" Charlie Rose Show  (3/27/2006)
http://www.charlierose.com/view/interview/484


Maher al-Assad


    Hafez al-Assad                                                   Bassel al-Assad

Tuesday, February 7, 2012

シリア:メール・オーダーの虐殺?Syria: Mail-Order Massacre?


2月4日に、国連でのシリア非難決議案にロシアと中国が拒否権行使
これと同時にシリアのHomsで起こった約300名の市民の虐殺は…
政府側と反体制側どちらの仕業? 欧米メディアと異なる、Pravdaのいい分は? 

シリア:メール・オーダーの虐殺 Syria: Mail-Order Massacre 2.4.2012 - By Timothy Bancroft-Hinchey (2/4、English Pravda)

 誰か、リビアのことを覚えているか?リビアでNATOが、ロシアと中国にこういって約束したときのことを…リビアの市民らを守るためには飛行禁止区域を設けるしかない…そしてそこを埋めに後からNATOが防御のためにやってくるから、といって。 そして2月4日は、NATOが後援するシリア反体制派による残虐テロが頂点をきわめ、偽のフラグを立てた出来事を起こしてX-Dayを宣言した日だった…NATOの軍を送りつけ、第3次世界大戦をスタートさせようとして…。

 NATO、またの名をFUKUS枢軸国〔France、UK、UKそしてIsrael〕が、国連決議1970及び1973を作成し…リビアの空軍機と、「都市や町々を爆撃する政府軍の航空機」がおこなった「酷い虐殺の数々」にもとづいて…リビアに飛行禁止区域を作ったときのことを覚えているか?リビアの当局が外国の報道機関に自由を与え、何時間か前にそれらの攻撃があったばかりの場所へと彼らを連れて行くからと告げたときに、何が起こったのかを覚えているか? (*FUKUS-Axis...筆者が前回の同じコラム欄http://english.pravda.ru/opinion/columnists/06-01-2012/120164-iran_hormuz-0/でFUKUS threeと呼んだジョーク)

 FUKUS枢軸国が、ロシアと中国に詳細を語るのに失敗したとき…そして、ミッション・クリープ(mission creep*末尾註としての飛行禁止区域戦術が、NATOの特殊部隊によるフルスケールの侵攻に転じたことを覚えているか(…そしてそれが、リビアで街の黒人たちの喉元を切り裂き、女性をレイプし、金属釘で子供らを突き刺し、人々や建物を焼き払い、泥棒や殺人、拷問、テロを働いたテロリストたちに与える全面支援へと転じたことを?)…どの国の政府が、そうした惨劇をバックで支援していたのかを覚えているだろうか?

 紳士淑女の皆さん、サーカスが街に帰ってきた…今回はシリアに。同じFUKUS枢軸国が企んで、シリアで虐殺をはたらいたテロリストらを武装させ、訓練している─そして、シリアの政府軍がそれに反撃したときには、彼らはヒラリー・クリントンとウィリアム・ヘイグ、アラン・ジュッペたちや…意志盛んな西欧メディアの批判の嵐によって嘲笑された…虐殺と、理性を欠いた軍隊と、人々への弾圧を告発されて。

 シリアの反政府勢力とは、シリアの民衆ではない。反政府勢力の言うこととは異なり、シリアの政府は人々に大いに人気がある…そして反政府勢力の言うこととは異なり、そのシリア国民評議会(Syrian National Council)という(反政府派の)組織は、リビアの暫定国民評議会のミラー(鏡像)なのだ…レイプ犯や、レイシスト、拷問者、放火犯、盗っ人や、殺人者らだ。そしてシリアの国民評議会SNCとは何なのか、それは、トルコを本拠としたSuriye Ulusal Geçiş Konseyiというグループだ。地政学的地図によれば、オスマン朝時代の…オスマン帝国がその地域全体を支配していた時代へとさかのぼる。親西欧の中央アジアと中東のパワーブローカーである、トルコとカタールの台頭を、称賛したいのか?

 一部では…もう一つのFUKUS枢軸国もまたこの地域を支配するために、そして来るべき戦争…まずはイラン・イスラム共和国との、そして次にロシア・中国との戦いへの足がかりとしてそれを用いようとしている。

2月4日:シリアの反体制派によって放たれたXデー
 シリア大使館の外でのシリアのはみだし者や亡命者らの反対デモと、今日の「Homsの虐殺」と呼ばれるものの偶然の一致に、誰か気づいた者はいるだろうか?西欧諸国の報道機関は─FUKUSに支援された反体制勢力の売るストーリーを従順に受け入れ、「我々には証拠はないが、我々にはそれを信じない理由もない」、などと書いている。実際には反体制勢力とFUKUS枢軸国は同じ存在であり、FUKUS枢軸国の軍備で暴虐を振るうために用いている。これは、アフガニスタンやコソボ、イラク、リビアにおきたのと同様のテロリズムと呼ばれるものだ。FUKUSの枢軸国は、その帝国主義的野望を受け容れる者なら、どんなテロリストとでもためらいなくはしゃぎ回るのだ。

メール・オーダーの虐殺 Mail-Order Massacre
 その虐殺、国連での決議投票のちょうど直前のいま(2月4日に)Homsで起こっていると思われる「虐殺」とは…ちょうどPravda紙が(1週間前に)シリアの敵によるトルコ国境への化学兵器の密輸の策略について暴露したためにその攻撃が実行されなかった、その1週間後に起きているのだ。

 その問題の「虐殺」とは─国連で進行中の決議投票の直接の影響をうけて起こったと思われるのだが─ いったい誰が行っているというのか?治安勢力が罪のない市民らを虐殺した、という証拠を誰か持っているのだろうか?武装したテロリストのギャングが近隣を包囲したときに、あなたは何をすると思うのか?シリア人たちはこうした傭兵やテロリストたちと、1年近くも戦ってきている。それとも、その「虐殺」はシリアの敵(Enemies of Syria)によって行われ、そのあとに政府軍からの報復の攻撃をうけたというのか?

 西欧メディアは105名から217名の人々が殺されたと報じて、西欧の人権団体組織も虐殺が行われた、と主張したが、BBC、SKY、Al Arabiya、Al Jazeera、AFPにはいかなる信憑性があるのか?リビアでも「反政府勢力」がテロリストやレイプ犯、レイシストと殺人者で構成されていることを我々は余りにも明白にみてきたが、シリアの敵Enemy of Syriaらとはいったい何者なのか?

 Homsの虐殺とは、政府による虐殺なのか、それとも国連決議投票の前夜に、シリアの敵Enemy of Syriaによってなされた、メール・オーダーによる虐殺なのか?それは余りにも、明白ではないか?もし国連安保理が投票しようとしていたなら、なぜシリア政府は彼らにモスクワと北京において巨大なプレッシャーをかけ少なくとも棄権させる理由を与えつつ、FUKUSの枢軸国による介入には拒否票を投じなかったのか(それは、いずれにせよ、もしもシリア非難の決議が通ったなら…リビアで起こったように…彼らのサインした紙切れなどは何の意味もなさないものになる)

 PravdaのHomsでの情報源によればその「虐殺テロ」では、テロリストらがアサド大統領の属するアラウィの少数派の人々の家から家をまわって虐殺を行ったのだという。メインフォト http://pravda-team.ru/eng/image/article/5/3/5/46535.jpeg )
をみるがいい。 矢印が示しているのは、それらの遺体の腕が縛られていることだ。すると、もしもシリアの政府勢力がコミュニティを銃撃したのなら、彼らはまず家々に踏み込んで人々の手を縛り上げ、その後に彼らを銃撃したというわけなのか?

 そんなことを信じるのが、いかに愚かなことか?事実はこれらの人々は、Homsで活動していたイスタンブールの親・FUKUS枢軸国のテロ部隊によって捉われたのだ─彼らは手を縛られて処刑され、そして当局が踏み込んだときに、カメラが人々のためにすべてを写すようにとカメラに向けられたのだ。西欧のくそ報道機関が、国連の決議投票とちょうど同時に、いまひとつの素敵な、気の利いたストーリーを我々のために拵えた。そして、ヒラリー・クリントン、ウィリアム・ヘイグ、アラン・ジュッペが彼らの主張をした。せいぜい、彼らのいうこととは完全に効力を持たず、最悪でも何かもっとずっと邪悪なことなのだ。
 彼らはロシアと中国が愚かだとでも思っているのか、それとも?

終わりに─ ライターのNajah Ibrahimは、この国がかつて歴史上一度も分裂やレイシズムや宗派主義(セクタリアニズム)に陥らなかったことを確信し、知識人たちに対して外国から押しつけられる危機に対抗するようにと呼びかけた。

更なる証拠─ これこれはHomsで、今日2月4日に誘拐された人々の書類〔死者の名前のリスト〕だ。彼らはすべて親政府側のシンパサイザーだ。今日、西欧に提示され、明日国連に提示される死者らの写真のなかにその多くが見られる↓
https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0AgcBgBbbRTCcdFZGNjNNdkM2bWpubmJCOWhKLXJVbHc&hl=de&pli=1#gid=0

 面白い。政府軍による「犠牲者たち」は銃撃によって処刑されたようだ… http://www.youtube.com/watch?v=5ito83NnXKc&feature=share

化学兵器による虐殺も、Homsの虐殺ももはやこれまでだ…
お次は何なのだろうか?

Timothy Bancroft-Hinchey  Pravda.ru
http://english.pravda.ru/hotspots/terror/04-02-2012/120420-nato_homs_terrorists-0/


victims of shelling by the Syrian army in the Khalidiya 2.4

拒否権の力 Veto Powers By Daniel Politi (2/6, International Herald Tribune・NYTimes) 

  ロシアと中国の政府は、シリアの暴力を終わらせるための国連安保理での決議に拒否権を用いたことで、批判の嵐を浴びた…しかしそこには、他の見方もある。

 各国のメディアによる意見やコメンタリーをざっとまとめると:

 中国の「Global Times」は北京の強固な位置を、中国の外交の新時代を開くとして称賛した。中国はついに、それが必要としていた「口を開くことによる報復を果たした。その本当の考えを隠すことは問題を避ける助けにはならない」。

 「China Daily」にとっては、拒否権の行使は「グッド・ポリシー」の問題だった、なぜなら「国際社会は、シリアの危機解決を助けるいかなる試みにおいても、主権と独立、領土の統一性を尊重せねばならない」からだ。マレーシアの「New Strait Times」もこれに同意し、暴力を終わらせたいとの願いは尊いゴールだが、「シリアの国内問題は他国の割り込むべきことではない」とした。

 「Pravda」のLisa Kaprovaは、より一層好戦的だ。彼女は米国の国連大使、Susan Riceによるロシアと中国への激しい非難について、彼女は「豚の頭をしており」「邪悪だ」と呼んだ。「シリアとリビアのテロリストに、まさに武器を供給しているのは一体誰なのか?米国とその精神病質の同盟者たちだ」といって。その一日前に、「Pravda」は、Homsの虐殺が「テロリスト」によってなされた「メール・オーダーの虐殺」だとも主張した…

 「Dar Al Hayat」では、Mostafa Zeinが西欧諸国の動機について、問いを発する─彼らは本当にただ、「シリアとイランの同盟に一撃を与えること」だけを望んでいるのだと。そうして、国連が民主主義を広めようとしているとは、「もはや誰も納得させられない」という。

 スウェーデン本拠の「Asian Tribune」のS.H. Moulanaもまた懐疑的だ─もしも米国と他の西欧諸国が本当に「中東の問題の解決に関心があるのなら、なぜ彼らはイスラエルにはっきり主張し、パレスチナ人に正当な祖国を与えないのか?」、と…

 さらにまた、「the Hindu」は論じている─NATOがバックで支援したリビアでの、承認なしに(un-authorizedで)行われたMuammar Qaddafiの排除と、ワシントンによる「アサドへの執拗な退陣要求」のあとに、「西欧諸国はこの酷い、延々と続く危機の只中にあってこれまで力と影響力のある同盟国であった国々を疎外していることに関しては、自らを責めるほかは責めるものがない(the West has only itself to blame for alienating what could have been powerful and influential allies in this terrible and protracted crisis)」、と。
http://latitude.blogs.nytimes.com/2012/02/06/russia-and-china-vote-against-u-n-resolution-on-syria/?scp=2&sq=Syria%20Russia%20China%20Veto&st=cse

Government Is Said to Kill 200 in Attack in Syrian CityBy JOAN NASSIVERA
http://www.nytimes.com/2012/02/04/world/middleeast/syrian-government-said-to-kill-200-in-attack-in-homs.html

*〔註〕ミッション・クリープ:終わりの見えない展開◆本来は米軍事用語で任務を遂行する上で目標設定が明確でなく当初対象としていた範囲を拡大したり、いつ終わるか見通しが立たないまま人や物の投入を続けていかなくてはならなくなった政策を意味し批判的に使われる言葉.

Saturday, February 4, 2012

やってはだめだ、Bibi / Don’t Do It, Bibi - By ROGER COHEN


Assassination spot of a nuclear scientist in Tehran,
Iran, last month
 ワシントン・ポストのコラムに呼応して、「イスラエルのイラン攻撃間近?」という報道が…その真相とは?

イスラエルは、イランへの攻撃を準備しているのか?  - By デビッド・イグネイシャス Is Israel Preparing to Attack Iran? By David Ignatius(2/3, Washington Post)

(ブリュッセルにて)レオン・パネッタ国防長官はこのところ、あれこれ考えをめぐらせている様だ─ 国防予算のカットから、アフガニスタンでの兵力削減にいたるまで。しかし彼の最大の心配事とは、数ヶ月以内にイスラエルがイランを攻撃するのではとの可能性が拡大していることだ。

 パネッタは、4月か5月、6月にイスラエルがイラン攻撃を行うのではと強く信じている─イスラエル人らの描写によれば…イランが核爆弾製造の開始を(既成の事実と化して)「免疫ゾーン」を作る前に。それは非常に間近な事だろう、とイスラエル人らは怖れている─イラン人らは充分に精錬したウランを地下深い施設に貯蔵して武器を製造するだろうと─そうなったら、米国だけがそれを軍事的に阻止できるだろうと。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが米国が行動に出ること(それはイランが爆弾を製造しているとの諜報情報により誘発されるが、それは未だ起きていない)に運命を任せることを望んでいない。

 イスラエルの Ehud Barak国防大臣は、先月計画されていた米・イスラエルの軍事演習を延期するかときかれた際に、イスラエルの攻撃は間近になるだろうとの展望のシグナルを送っていた(それが、5月に実戦の局面へと高まる可能性があるとして)。Barakはイスラエルがこの春、毎年の恒例の軍事演習を行うためのリソースを投入できないとして、陳謝していた。

 オバマ大統領とパネッタ長官はイスラエルに対して、米国が攻撃に反対していること、そしてそれがますます成功しつつあるイランへの経済制裁や、イランに敷居を跨がせぬよう阻止している他の非軍事的努力を軌道から逸らしてしまうだろうと警告した。しかしホワイトハウスは未だに、もしもイスラエルが攻撃を行った際の米国の詳しい対応策を決めかねている。

 オバマ政権は、イスラエルによる攻撃が米国にとって何を意味するのか、を集中討議している─イランはその地域の米国の戦艦を攻撃するのか、あるいはホルムズ海峡を閉鎖するのか?その紛争はどのような影響を生じ、考えられる石油価格の暴騰は、脆弱な世界経済にどんな影響を及ぼすのか?について。

 米政権はイランが米国の資産を攻撃しない限りは(その場合は米国の強い反撃を招きうるが)、対立から距離を置くという方針を好んでいるようにみえる。米国のポリシーとは…イスラエルが単独で行動するようシグナルを送っているのだが─それは1956年に、Dwight Eisenhower大統領がイスラエルとヨーロッパ諸国の行ったスエズ運河への攻撃を非難したときに生じた不和のような状況を生じるかもしれない。現在状況を複雑にしているのは、2012年の米国大統領の中間選挙であり、そこで共和党候補らは米国のイスラエルへのより強い支持を訴えている。

 米政権の官僚たちは、テヘランがこれを誤解しないようにと警告している─米国はイスラエルへの安全保障に60年間もコミットし続けており、もしもイスラエルの人口の中心地が攻撃されたならば、米国はイスラエルの防御に回る義務を感じる可能性があるのだ、と。

 イスラエル人たちは、軍事攻撃は限定的で、抑制されたものになると信じている、と言われる。彼らはNatanzのウラン精製施設とその他のターゲットを空爆するだろう─Qomでの地下ウラン精製施設への攻撃は空からでは困難になる。イラン人たちは反撃するだろうが、イスラエルはそれが強力な一斉攻撃として…レバノンのヒズボラ軍からのロケット攻撃などを伴うことには疑念を抱いている。あるイスラエル人は(その場合)イスラエルには500人程度の犠牲者が出るのだろう、との予測を述べている。

 イスラエル人たちは、彼らが2007年にシリアの核反射炉を攻撃した際のシリア人たちの反応が鈍かったことを指摘する。イラン人たちもそのような抑制を示すかもしれない、なぜなら全面戦争になれば、彼らの政権を危険に晒すからだ。幾人かのイスラエル人もまた、イランへの攻撃を1976年のウガンダ・エンテベ(空港)での人質救出のための突入攻撃にたとえる─その攻撃は同国での政権の交代を招いたのだ。

 イスラエルの指導者らは(米国を伴わずに)彼ら単独で行動することを─そして、彼らの防衛が「アラブの春」によって脅かされている今、彼らの決意を(イラン攻撃によって)デモンストレーションすることを受け入れ、歓迎さえしていると言われる。

 「米国は我々の横に控えて、そして我々にそれをやらせてほしい」と、あるイスラエル官僚は米国にアドバイスした。「短期の戦争」というシナリオではイスラエルの限定的な5日間程度の攻撃を想定しており、それに米国の仲介による停戦が続くものと想定している。イスラエル人らは、それによる核開発プログラムへのダメージは穏やかなもので、数年以内には再度の攻撃が必要だと認識しているという。

 米政府官僚らは、イスラエルをそのような攻撃から思いとどまらせるための2つの可能性ある方法を考えている─テヘランが遂に、その核開発プログラムを平和利用のみに限定することを確実に保証する方法のシリアスな交渉にはいるか、あるいはイスラエルが軍事行動の必要性はないと決断できるよう、米国がイランの核プログラムのグレードを低下させる隠密活動をステップアップさせるか、だ。

 米政府担当者らはネタニヤフが攻撃の最終決断をしたとは考えておらず、イスラエル諜報部のトップ官僚らはその計画について未だ疑念を抱いている、と指摘している。しかし米政府のシニア官僚らはイスラエル人たちがブラフ(虚言)をいっているのではないかとも疑っている。彼らは、春頃の攻撃を恐れている─そしてそれが意図しない結果を招くことを。
http://www.washingtonpost.com/opinions/is-israel-preparing-to-attack-iran/2012/02/02/gIQANjfTkQ_story.html?tid=pm_pop

やってはだめだ、Bibi / Don't Do it, Bibi-By ロジャー・コーヘン (1/16, NYタイムス) 

(パリにて) 最近、ある在ヨーロッパの米国大使がBenjamin "Bibi" Netanyahu首相とオバマ大統領のうんざりするような関係を改善するためには何ができるだろうかと、イスラエルの大使から質問された─彼は答えた、「いつでも何かあるたびに、ありがとう、と言うことだ」

 その米国大使は、さらにいくつかの考えを付け足した。「おそらく、彼のためにあなたに何かできることがあるか、と首相に時々たずねることだ。そして何よりも、我々の中間選挙の年の政治からは距離をもつことだ」。

 その辛辣な切り返しは、いくつかの事柄にたいするオバマの怒りを反映していた─ネタニヤフがオバマの頭ごしに、共和党の牛耳る下院議会(ネタニヤフはその最愛の人だ)に対して行った振るまい、また米国が昨年、国連でのユダヤ入植地反対決議に拒否権を用い、パレスチナの一方的国家樹立の試みにも反対しイスラエルを支持したことにネタニヤフの感謝の気持ちがないこと、オバマが一期のみの大統領であると確信したネタニヤフの戦略の遅れ、そして彼が和平交渉進捗のための入植地建設の凍結も2度にわたって拒否したこと、などだ。

  私はネタニヤフに、さらにひとつのアドバイスをつけ足したい─彼がもし、機能不全にあるオバマとの関係を懸念するのなら…そして彼はそれを懸念すべきだ、なぜならイスラエル人たちは、米国は重要だと知っており、またワシントンとの関係を損ねた者を選挙で再選させることには乗り気ではない。そのアドバイスとはこうだ─この春、あるいは夏に、イランを攻撃してはならない。

 ネタニヤフは来る数ヶ月の間に、イランの不透明な核開発プログラムを後退させるため同国を攻撃したがっている─そして、先週木曜日のオバマからの電話と国防長官レオン・パネッタからのメッセージにもかかわらず、彼はイランは攻撃しないと米国に保証をすることを断った。イランと米国におけるいくつかのファクターが、ネタニヤフに近々行動にでたいと思わせている。

 最初のファクターは、イスラエルが色々な要素で「後戻りできない」状態に近づいていることだ─ウランの精製から、核弾頭に必要なメカニズムを作動させるに至るまで。石油制裁に対するイランの回答が好戦的なトーンを強めるなかで、Qum近郊のFordow地下施設でのウラン精製の開始もこれらの懸念を加速させる。

 そしてそこには米国の政治に対する計算もある。11月の米国の中間選挙の数ヶ月前にイスラエルが軍事攻撃をしたら、それはオバマを窮境におちいらせる。彼は親イスラエル・ロビーの影響力…フロリダでのユダヤ票による支持と、イスラエルによる攻撃が共和党候補(おそらくMitt Romney)からたっぷり支持票を奪うことに対して怒りを表明することはできなくなる。

 これとは対照的に、もしオバマが2期目の大統領として再選されたなら、彼はイスラエルが単独で攻撃に出たことへの不快感を表明する余地を得るだろう。なぜなら、オバマは勿論勝つだろうとの認識が拡大して、こうした考えがエルサレムでも重要性を持ってくるからだ。

 ネタニヤフはいつも、彼自身をイランと空爆の間に思い描いてきた。彼は強硬派としてドラマチックな物事が好きだ。イスラエルはそうしたことでは常に、単独行動に出てきた…2007年にシリアの核施設を爆撃したときにも。現段階で米国とイスラエルが考えているトリガー(攻撃への誘因)とは顕著なものだ…パネッタ長官は「我々がイランに引く一線とは、核兵器を開発するな、ということだ」というが、イスラエルはたとえ核兵器が製造されていなくとも後戻り不能な核開発能力保有は受け容れられない、と考えている…その落差は、危険をはらんでいる。

 イスラエルが夢見るのは、米国が空爆を彼らのために、あるいは彼らと連動して行うことだ─それはイスラエルが彼らの意図を明確にするのを拒む理由でもある。しかしイランが、ホルムズ海峡を封鎖するなどの極端な挑発を行わない限り、それは11月より前には起こりえない。

 中間選挙の年にあって米国の諜報部はイランが核兵器を製造していないと納得しており、オバマは石油価格を急騰させたりイスラム世界をさらなる反米的な怒りの発作に送り込んだりはしないだろう。彼の大統領としての地位の大半は、詳細にいうなら、戦争の回避とイスラム世界との敵対緩和によってもたらされてきたのだから。

 ネタニヤフは先週末に、彼が「初めて」イランが制裁によって少し「よろめいた」のをみたといった。しかし彼は、もしも制裁が失敗したなら米国が「軍事行動に出る」という、「明確な宣言」を求めた。そんななかで、「警官がしばしば犯罪者尋問で脅迫と同情を代わるがわるちらつかせる(*) 」ように、彼の政権の副首相は米国の制裁には失望するとの文句を述べた。 (*a good-cop-bad-cop routine)

 ここに結論がある─イスラエルが一度でも攻撃すれば、イランは怒りによって団結し、イスラム共和国を一世代にわたって外部から閉ざし、シリアの政権(に影響を及ぼし)を固定化し、微妙な変遷時期にあるアラブ世界をラディカル化させ、レバノン国境ではヒズボラに火をつけ、ハマスを炊きつけ、その地域に居る米軍を危険にさらし、テロリズムの口火を切らせ、石油価格を急騰させ、地域的に起こりうる戦争を誘発し、今ヨーロッパ諸国が石油輸入を停止しようとしているイランにライフラインを提供し、イスラエルへのアラブの復讐劇にイランをも参加させ、そしてせいぜい、イランの核開発の野望を2年ほど前の状態に戻させるだろう。

このことに、期待できると思うのか?

 米国の参謀総長のGen. Martin Dempseyは、まもなくイスラエルを訪問するだろう。ネタニヤフは彼に耳を傾けて、その指をイランにむけた引鉄からおろすべきだ─そしてイスラエルの運命はテヘランよりも、ラマラ(のパレスチナ政府)との関係に依存している、と知るべきだ。
http://www.nytimes.com/2012/01/17/opinion/cohen-dont-do-it-bibi.html?src=recg

イランが、「科学者暗殺への報復に、イスラエルのターゲットを攻撃しようとしている」とシン・ベトの長官(2/3, ザ・ガーディアン)

 イランのエージェントが、イラン人核科学者の暗殺を含む秘密作戦への報復に、世界中のイスラエル人ターゲットを攻撃しようとしている─とイスラエルの治安機関シン・ベトの長官が警告した。
Shin Bet長官Yoran Cohen
 「イスラエルが核科学者を排除したということが、真実かそうでないかはどちらでも構わない。イランのような大きな、シリアスな国がこのようなことを出来るはずがないのだ。彼らはイスラエルを阻んで、イスラエルの意志決定者がイランの科学者への攻撃命令を出す前に、それがもたらす代価を示して、再度考え直すよう迫っているのだ」─とYoran Cohenがそのレクチャーのなかで語ったと、 Haaretzはレポートした。昨年1年間に少なくとも、トルコ、アゼルバイジャン、そしてタイでの3つの攻撃(*)が、その最後の瞬間に阻止された、と彼は語った。 (*IstanbulのIsrael領事館、AzerbaijanのBaku、及びThailand 

 過去2年間にイランの4人の核科学者が暗殺されたが─イランと他の多くの国際社会の国々はそれがイスラエルのシークレットサービス、あるいはその代理機関による秘密の戦争の一環だと信じている。イスラエルは通常その治安機関シン・ベト、及びモサドの行為について沈黙のコードを守る。しかしシモン・ペレス大統領は、「私の知る限り、最近1ヶ月以内の暗殺には、わが国は関与していない」と述べた…
http://www.guardian.co.uk/world/2012/feb/03/iran-israeli-targets-retaliation-scientists?INTCMP=SRCH

*中道リベラル紙Ha'aretzのコラムニストの論調も、イランとの戦争の可能性を憂えている…
(Gideon Levyは コラム"Israelis should be afraid of their leaders, not Iran" で述べる、)"イスラエルは…この国をさらなる危険で無目的な、新たな冒険に躊躇なくさらすようなリーダーたちによって、ずっと率いられてきたのだ。我々は彼らに今、言わなければならない、"我々は怖い”─と。""意志決定権は間違った者たちの手にある。我々はもう、戦争をとめるために米国に頼ることもできない。もっと悪いことに、我々は我々の政府にこの国の船の安全な航海を任せることもできない。危険な政府をもったパレスチナ人たちとの合意の達成の機会を逃した政府に…”http://www.haaretz.com/print-edition/opinion/israelis-should-be-afraid-of-their-leaders-not-iran-1.411087

*Juan Coleは2/3のBlog(「司令官たちが、イラン戦争を阻止しようと努力している」)で、こう述べている…


- 米国の統合参謀議長 Martin Dempsey が、イスラエルはイラン攻撃したいのなら自分たちのみでやれと警告したことがリークされた… これは、パネッタ国防長官やメディアがイランのウラン精製が1,2年以内に核兵器製造に充分なレベルになると報じたことに基づくが、その情報自体が虚偽だ。イランの核施設には今週もいまだに国連査察団がおり、平和利用の核開発が軍事利用に転じられたとは確認されておらず、それは行われていない。

- ネタニヤフや、リクード党、米国のイスラエル・ロビーは必死に米国がイラン攻撃に加担することを望んでいるが、イランは脅威を示していない(米国の親イスラエル右派のシンクタンク(Washington Institute for Near East Policyや、AIPAC、WINEPなどが米政府にプレッシャーをかけようと騒いでいるだけだ)WINEPの大物Denis Rossなどが、オバマがイランを攻撃する準備をしているとの、虚偽の噂も流している。

- 民主党のキャンペーン・マネジャーのDavid Axelrodは、中間選挙シーズンにコントロール不能になりがちな戦争を起こすことは考えられない、としている。

- イスラエルの前参謀総長を含むイスラエルの退官した政府官僚らもイラン攻撃について警告し、それが招く大災厄を予告している。

- テヘランはどこの国も攻撃してはおらず、国連安保理の許可していないイランへの攻撃は、戦争犯罪となる。イランはイラクの3倍もの人口を擁する国で、それへの攻撃はイラク攻撃の3倍の費用を要することになる…
http://www.juancole.com/2012/02/the-generals-try-to-stop-an-iran-war.html


*Iran's key nuclear sites
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-11927720
Natanz - uranium enrichment

Arak - heavy water
Bushehr - reactor

Friday, February 3, 2012

"信ぜよ、されど証明せよ" Trust, but Verify - By THOMAS L. FRIEDMAN


"信ぜよ、されど証明せよ" Trust, but Verify By トーマス・L.フリードマン(1/18, NYタイムス)

 先週、私がデスクの上でであった記事のアイテムのいくつかは─イスラム原理主義者のムスリム同胞団が、アラブ世界全域での反乱による初期の「便益の享受者」として現れ出たことに対して…政策の立案に直面しているアメリカの挑戦というものを強調していた。最初のひとつは1月11日付のニュース記事だが、国務長官代理のBill Burnsがムスリム同胞団の政党の党委員長、Muhammad Morsiとカイロで会談したというものだ。そのなかでMorsiは、「米国とエジプトの関係の重要性を信じている」としながらも、「それは、バランスをとらねばならない」と語ったという。

 その2日後には、アラブ世界のメディアを追跡するMEMRI(Middle East Media Research Institute)が、ムスリム同胞団が自身のウェブサイトIkhwanonline.com.に最近、掲載していたという記事をレポートしていた。(*)そのレポートでは彼らのサイトが「ホロコーストの否定」や、「ユダヤ人の特徴とは、強欲で、搾取的で、人間社会の悪の根源である」とする反ユダヤ的モチーフを含む記事をのせていたとし…それらの記事のなかには「シオニストを殺せ」と要求したり、2011年9月11日のカイロのイスラエル大使館への攻撃を称賛しているものもあった─それらのなかには、その事件がエジプトの革命におけるランドマーク的出来事だ、と呼ぶものもあったという(*http://www.memri.org/report/en/0/0/0/0/0/0/5992.htm )

  最後に、エジプトのテレコミュニケーション業界の大立者で、新しい世俗的リベラル政党の創設者でもあるNaguib Sawiris に関するニュースがあった(*)─彼は昨年の6月に、髭面のミッキーマウスが伝統的なイスラム的な衣装(ローブ)をまとい、ミニーマウスが顔全体を覆い目だけを出しているベールをかぶった画像をTwetterで再Tweetしたことで、「宗教に対する侮蔑的行為」を行った、とされ有罪を言い渡されていた。(* http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-16473759 )

  こうしたニュースのレポートには、2つの読み方がある。ひとつは、ムスリム同胞団とその他のイスラム原理主義者たちが、ナイーブな外国人たちに彼らが欲するようなニュースのタイトルを提供して、賢く騙しているという見方だ。もうひとつの見方とは、原理主義者たちはエジプトの新しい議会を支配して、他の政党よりもこの国の民主的体制への移行や、憲法の起草、大統領選出にいっそうの責任を負うなどとは、けっして予測はしていなかったが…彼ら自身のイデオロギーと、これらすべての新たな責任とを折り合わせる方法を見出そうとしている…というものだ。

 私の見方では、これらはおそらく両方とも本当であり得るし─本当だろう、と思う。私の気持ちでは、我々はみなエジプトの原理主義政党の台頭についての怠惰なハッピー・トーク(TVキャスターなどの楽観的な冗談のいい合い)や、怠惰な決定主義(「彼らがアラビア語のサイトで何を言っているかをみてみようじゃないか。彼らは明らかにエジプトをのっとる秘密プランを持っている」などといった…)に対しては、防衛線を張るべきなのだ。

 そのハッピー・トーク部門ではどうか、私にこんなことは言わないでほしい─トルコの与党勢力のイスラム正義と発展党(AKP)の例というものが…原理主義政党が国の権力を民主的に掌握したところで誰も何も恐れることはないことの証明だ、などということを。私にはAKPについて感嘆していることが、沢山ある(最近、テキサス州知事のRick Perry が、AKPは「イスラム・テロリスト」だと指摘したのも、ショックなほど馬鹿げている)しかし私は、AKPが選挙に負けて権力を他の政党に譲った後にだけ、それがイスラムと民主主義との調和を再確認できる例であると示したいのだ:それこそが、真のテスト(検証)なのだ。

   「エコノミスト」誌はその11月26日号で、トルコのAKP政権について、「76名前後のジャーナリストが、いまや(同政権のもとで)裁判にかけられている」と書いていた─中国におけるそれよりも多くの人数が、テロ犯罪容疑によって捉えられている…西欧諸国が気づいていないのは、トルコとはアラブの春の(体制的な民主化の)モデルとして称賛される代わりに、人権が恒常的に悪化している国なのだ、ということだ。

 米国の政策はこのような仮定を基礎とすべきだ─他の政党とも同じく、イスラム原理主義政党というものも、そのなかには穏健派や中道派、そして強硬派も含んでいる─そしてムスリム同胞団の場合は、多くの小規模なビジネスマンも含んでいるということだ。彼らが政府の責任を引き受けた際に、それらのうちのどの勢力が支配するかという問いは、未だに答えの出ていない問いだ。

  アメリカはイスラム原理主義者たちに対する、確実で、静かな、辛抱強い取り組みを提供する必要がある(そこで我々は彼らに「我々は自由で公正な選挙や、人権や女性の権利・マイノリティの権利の保護、自由主義経済や、軍の文民支配、宗教的な寛容性や、エジプトとイスラエル間の平和条約のことを信じている…こうした原則を尊重するならば我々は誰にでも助力をしよう」と告げるような)…そこでは、ナショナリストたちによる反発を容易に招いてしまう可能性はあるだろうが。

 エジプトはイランの辿ったような運命にはない、しかしムスリム同胞団は、ムスリム・バージョンのキリスト教民主主義になるということもありえないのだ。
 そこでは、進化がその途上にある─それは、とても可塑的な瞬間だ─そして、我々にとっては、イスラム原理主義者たちと信念にもとづく取引を確実におこなうことが、最も効果を生み出すための機会だ(そしてまた…イスラエルに対してはさらに、イスラム原理主義者たちはいかなるダブル・スタンダードも監視するだろう…エジプト軍に対しても)。エジプト軍もまた、彼らのエジプトでの新しい役割を模索している。彼らは国の経済的権益を守りたいとの願望と、デモ隊の市民の殺害へのいかなる告訴をも避けて、エジプトの世俗的ナショナリストの伝統的な保護者としてのステータスを維持したい、という願望のバランスをとろうと試みている。我々はエジプト軍にはトルコの軍がかつて演じたような建設的な役割を演じてもらうことが必要だ─民主主義への漸進的移行の産婆役として─彼らにはまた、パキスタン軍のようになられてはならない(それは巨大な予算を正当化する攻撃的な外交政策に殉じて、暴利をむさぼる組織機関と化しているが)

 手短かに言えば、エジプトとの交渉にはたった一人の男に電話すればよかった、というような日々は過ぎた。そこには、複数のプレーヤーたちが一週間休みなく働く、本当に…本当に…本当にソフィスティケートされた外交政策こそが要求されるのだ。
http://www.nytimes.com/2012/01/18/opinion/trust-but-verify.html
*Trust, but verifyはソビエトの諺を元に、V.Leninや、R. Reaganが使ったキャッチフレーズとか…http://en.wikipedia.org/wiki/Trust,_but_verify 

*この神経質なコラムに対して…アメリカ人読者のコメントはだいぶ冷静で、批判的なもののほうが多いようだ…
例)
D. R. Van Renen Boulder, Colorado 「Friedmanが言うように、エジプトの民主化プロセスを操作することが我々の想定されるゴールだなどと考えるのは、民主化プロセスへの軽侮であるのみならず、エジプトの国の主権を侵害している」

WH Virginia 「我々は兵士たちを皆、帰国させて、中東に関わるのをやめるべきだ。米国はもう破産しているし、世界を運営する力なんてない。Friedmanはイスラエルは米国の51番目の州だと思っているみたいだ」

tewfic el-sawy NY
「Friedmanは間違いだらけのグループ・シンク(集団思考)におちいっている。宗教保守政党だろうと世俗派政党だろうと、エジプトの政党は今、国内で余りにも多くの、解決しなければならない社会的問題、経済問題に直面している。そして彼らには時間がなく、彼らには優先順位がある。多くの机上の空論家にとっては悔しかろうが、そこではいまはイスラエルは関係ない」

Gary Misch VA
「ヘイ、トム。AKPがなぜ政権を明け渡さなければならないんだ?彼らは死ぬほど恐れている野党のリーダーシップの一部分を未だに収監していないし、それでもなお彼らには、残りの人間たちに関する終わることのない告訴と裁判が待っている。何故君はその人間たちに関して書かないんだ?」

Phyllis Kahan, Ph.D. New York, NY
「「あなたの記事の前の方であなたは、同胞団に関する悪いニュースには2つの読み方があると書いていた、つまり彼らは"ナイーブな”非・エジプト人らをオトリで釣っているのだと、そして、彼らはエジプトで多数派政党になるとは、全く予想していなかったと。この悪いニュースのなかの、特に悪質なプロパガンダに、彼らによるホロコーストの否定もふくまれると。

私が信じるに、このことの3番目の読み方とは:つまり、こうしたニュースは、単に真実を語っているだけだ、ということだ!」