Friday, September 25, 2015

シリアの叛乱勢力曰く、「ロシアによる軍事展開は戦争の激化と長期化を生む」


ロシア軍がシリア紛争への介入を宣言した…空爆の契機となったのは、アラウィ派拠点への叛乱勢力の侵入だったという
Syrian rebels say Russian involvement will escalate and prolong war- Rebels see tougher war with Russians in Syria, evoke Afghanistan
By Suleiman Al-Khalidi and Tom Perry (2015/9/21, Reuters)
シリアのバシャール・アル・アサド大統領の側に大きな損害をこうむらせた叛乱勢力はこういう─もしもロシアが、その同盟者らに加担して介入してきたなら…単に、戦争のさらなるエスカレーションを招くだけではなく…叛乱勢力を支援する湾岸アラブ諸国も一層の軍事支援を注入してくるかもしれない─と。
ロケットランチャーの傍らで、Daraa,にいる
アサド大統領に忠実な空軍基地への攻撃
作戦準備をしつつ、携帯無線で話す自由シリア軍兵士(7/27)

ロシアによる軍事力派遣は、叛乱勢力の間でも紛争を再評価しようという動きを喚起している。叛乱勢力が、この何か月かにわたって西部シリアに侵攻したことが、ロシアの決断の触媒となった可能性がある。米国の政府担当者はロシア軍はすでに到着しつつあるという。
Reutersがインタビューを行ったある叛乱軍の兵士は…すでに、こうした地域でシリア政府勢力からの強い抵抗に遭遇したと語った─とりわけアサド一族のアラウィ派が中央拠点とする地中海沿岸地域で。そして、ロシアの参戦を契機に一層、激しい闘いも予想されるという。
ロシアによる武力の展開とは、サウジなどによる武力支援の拡大の契機になると予測する人々もいる。そのことは、ロシアの関与が導くかもしれない危険性のひとつを示唆する─すなわち、サウジやイランといった地域勢力の間で複雑に錯綜しつつある戦局が、外国の介入によりさらにスパイラル的に拡大していく、という危険性だ。

より一層の武力支援を喚起したいと望む叛乱勢力は、アフガニスタンでのソ連軍敗退の記憶を彼らの闘争のモデルに想い起しながら、ロシアを新たな占領者として描写している。しかし彼らは…このことは、すでに5年目に突入したこの戦争がさらに長引く可能性も示唆しているという。
「我々の計算によれば…この闘いはロシアが参加しなかった場合よりも、はるかに長く引き延ばされる可能性がある」と…ロシア軍が空軍基地(飛行場)で軍備を展開しはじめたラタキア地方において、叛乱軍兵士として戦うアブ・ヨウセフ・アル・ムハジェルAbu Yousef al mouhajerいう。
「ロシアによる関与とは、シリア政府を救うためのものだ」と、アサドが支配する西部地域に侵攻中の同盟軍の一翼をなすグループ、Ahrar al-Shamの兵士がいう。この記事のためインタビューした他の叛乱軍兵士たちとも同様に、彼とはインターネット上で会話した。
米国政府担当者はロシアがその空軍拠点に大規模な軍を派遣しつつある、という─そこには戦闘機や攻撃用ヘリコプター、重火器や海軍の歩兵師団500人も展開していると。ロシアはその究極の目標を明らかにしていないが、ダマスカス政府への支援とは、テロリストとの闘いが目的だとし─西部地域における叛乱勢力もまた、アサドにとっての最も切迫したリスクをもたらしている彼らの作戦区域が第一のターゲットになるものと認識している。
 
ロシアは、地中海岸のラタキアに近いシリアの都市、タルトスTartous に唯一の海軍基地を持つ。増大するイスラム国の脅威とは今や、アサドにとって第一の脅威ではなくなっているが…それでも、彼らも(ロシア軍の)攻撃目標となると予想される。
海岸地帯で戦闘を続けている(アルカイダのシリア支部である)ヌスラ戦線Nusra Frontなどの叛乱勢力は、その兵力の3割が外国出身のジハード戦士だが…彼らは、アラウィ派率いるアサド政府との闘いというものに鼓舞されて参加している。彼らの中にはロシア人やアジア人、チェチェン人もいると、今年の初めヌスラ戦線のリーダーは語った。
モスクワのロシア政府は、ダマスカスのシリア政府に対する軍事支援とは、テロと闘うためのものであり…シリアの国家体制を守り、「全面的なカタストロフ(災厄)」を避けるためだ、と称する。同政府は、より大量のニュータイプの武器を、人手の足りないシリア軍に送っている。そうした支援とは、アサドがすでに数年前から獲得している同盟相手のイランや、レバノンのヒズボラといった外国の支援に、さらに加えた支援となる。
 イランは、シリア政府を支援すべくイラク人やアフガン人の民兵勢力も動員している。

"MORE FEROCIOUS"

より一層、獰猛に─
政府側よりも一層の武器や、組織力に優れている叛乱勢力は…トルコやカタール、サウジなどによる支援を得ながら…アサドに対して、今年は北西部でも南西部でも、未曾有の挑戦を展開してきた。そうした国々はことごとく、アサドの権力の座からの放逐を願っている。
そして、最近の成果として、叛乱勢力は海岸線を望むアラウィの山地のすぐ東側に広がるガーブ(Ghab)平原へと侵入した。
ロシアの軍事展開が報じられる前でさえも、その地域では叛乱勢力が政府軍兵力のより強硬な抵抗に遭遇したと報じられた。「我々は、今やこれまでになく獰猛かつプロフェッショナリズムに優れた新タイプの兵士たちと戦闘を交えている」と、al-Mouhajerは言う。
「戦闘は変わった…我々は今や、彼らアラウィ派の本拠地に居る。」
そしてまた、別の叛乱軍兵士は言う、「我々が海岸線に近づけばづくにつれ、相手は戦闘のなかで、より獰猛になる。」
幾人かの叛乱勢力の兵士は、ロシアによる支援拡大の兆候はまだないと証言するが…空爆の精度が増しつつあり、新たなタイプの装甲車両も目につく、という者もいる。
シリア軍の情報筋がロイターに語ったところでは、先週には彼らの軍がロシアから供給された新たなタイプの武器の使用を始めたという。
「我々はロシアが海岸線の防衛をはじめており…そしてまた彼らは、我々が現在戦っていJoreen近郊での戦闘を先導しているとの情報も得ている。」と─戦時名Abu Anas al-Lathkaniと称するヌスラ戦線の司令官は語った。


"ANOTHER AFGHANISTAN" 
「新たなるアフガニスタン」
ソ連時代からモスクワの政府の同盟者だったダマスカスのシリア政府は、ロシア軍の勢力に対してその必要が生じれば共闘を要請する、としているが、現今の時点でのロシアの地上兵力の存在は否定する。しかし、政治・軍事状況に詳しいレバノンの情報筋によればロシア軍はすでに軍事行動に加わっているという。そして、それに対する叛乱勢力側の反応もみられる。
大規模な叛乱勢力のひとつであるジャイシュ・アル・イスラムJaish al-Islamは、インターネット上に、ロシア軍の使用するラタキアの飛行場に対するミサイル攻撃の様子の動画を投稿した。Jaish al-Islamにはサウジが後ろ盾に居ると広く信じられているが、ダマスカスの近郊にも新たな攻撃を仕掛けている。他の叛乱勢力はイドリブ県やアレッポでの新たな攻撃をエスカレートさせている。
別の叛乱勢力の兵士は、ロシア人たちが「棺に入って帰国することになる兵士の一群を送る…新たなるアフガン戦争を経験する」危険を冒している、と語る。1980年代にソ連に対抗したアフガンの叛乱勢力・ムジャヒディーンの成功には、米国とサウジの支援が不可欠だった。
だが、一部の叛乱勢力への限定的な軍事支援のみを行う米国は、武器が過激勢力の手に渡るリスクを恐れるなどの理由から、大規模な軍事支援を避けている。彼らは特に、対空砲ミサイルの供給のリクエストを拒否し続けている。米国の抱く警戒にもかかわらず、叛乱軍のなかにはサウジのような支援国が彼らへの支援を拡大せざるを得なくなる、と信じている者もいる。

「我々にもたらされている報告を超えた、シリアへのロシアのシリアスな介入というものは──戦闘のさらなる継続を意味するものとなる」と…自由シリア軍の南部シリアのグループ勢力のひとつAlwiyat Seif al-Sham のスポークスマンであるAbu Ghiath al-Shamiはいう。
「ロシアには、政治的な解決を図るという意志はない。彼らには、シリアの現体制の維持だけが望みなのだ。我々(自由シリア軍)を支持する諸国に関しては─私はそうした国々の我々への態度には変化があるだろう、と思う…支援の仕方において─あるいは政治的な方針転換を通じて」、と彼は述べる。(記者、トム・ペリー)
http://www.reuters.com/article/2015/09/21/us-mideast-crisis-syria-rebels-insight-idUSKCN0RL0E720150921
JapanTimes