ダマスカスとテヘランの政府が戦闘地域を北部へと拡大して、南部トルコに侵攻したいと望んでいるとみられる理由は、昨年、トルコがシリア北部に自国軍を派兵する許可を発した判断とも同じ理由に基づく─すなわちシリア領内に、クルド兵力によるトルコへの攻撃を妨げる「セーフゾーン」を作りたいとの理由だ。それならば、ダマスカスのシリア政権とイラン軍は、シリア人(反政府勢力)と外国人武装勢力を含む勢力を押し返すといった口実で、国境を越える決断を下すかもしれない。それによってトルコ勢力を弱体化し、シリア政府に反対する何百万人ものシリア人勢力を排除しようという目的だ。
アンカラのトルコ政府は、ソチにおいてイランとロシアとの間で交わしたシリアに関するすべての合意に関しては、過去2年間にあらゆる国益を費した結果、自らが貧乏くじを引いたのだと見出した。それが同国が米国との同盟を破って(北部シリアのクルド勢力を攻撃し)、かつ米国政府にそうした動きへの支持を求めたことの理由だ。
米国は、シリアに関するトルコとの最近の合意に反対して、トルコの立場を批判している。もちろん、米政府はシリアの反政府勢力に同国の政府の役割を果たすよう要求して、イラン勢力とその傭兵勢力をシリアから排除するよう求めている。おそらくこのことは南西シリアの、ヨルダンに近いダラアでの戦闘が2年近くにわたる停戦の後に再開された理由も説明するだろう。これは、主な戦力を殆ど北部に移したシリア政府の方向性を逸らす可能性がある。
エルドアンはいまや軍事侵攻の遅れの対価を支払わされており、シリアの反政府勢力の(拡大を許すという犠牲のもとに)イランとロシアに接近している。地図をひと目見れば、主な戦闘がトルコ国境から数マイルの地域で起きていることがわかる。
過去数週間にシリア政府軍とその同盟勢力は、イドリブ県と周辺地域で激しい攻撃と破壊作戦を展開した。トルコは何もせずにこれを非難した。その結果、何千何万もの人々がトルコに向かって避難を行った。トルコ政府はこれ以上の言葉濁しで、うそをつく時間はない。彼らが同国国境に近接するイドリブとその地のシリア人たちを守る行動に出ない限り、戦闘は拡大する。そして、さらなる何百万もの人々が住処を追われ、国境を越えてトルコの都市に向かわざるを得なくなるだろう。