Tuesday, April 15, 2014

クリミア:ノー・モア・マクドナルド?Crimea: no more McDonalds?



Crimea: no more McDonald's or methadone after annexation
クリミア/ノー・モア・マクドナルド、または併合後のメタドン(By Peter Walker)
(4/4, The Guardian)

もしもクリミアの人々がいまだに、ロシアによるクリミア半島の併合によって、その生活がどのように変わるのかを知りたいなら─今や、その答えが与えられた。それは「ノー・モア・マクドナルド」だ。

マクドナルド・ウクライナのウェブサイトによれば、同社はクリミアの主要都市、Simferopol Sevastopol Yaltaの店舗を「製造業務上の都合」で閉店するという。同社は、この3店舗の閉鎖が「一時的な休業」にすぎないといいながらも─れらの店舗のスタッフは、希望すればウクライナの店舗で、同額の給与も保証されるのみならず、ウクライナの永住権も得て移り住むことができ、スタッフ自身と家族の引越し費用、そして、3か月分の家賃も同社によって負担されると提案している

 同社は、そのことは、「スタッフ各人の意志に、完全にゆだねられる。もちろん、ウクライナに転勤を希望しないスタッフは、ウクライナの法に従って解雇手当を受け取って、辞職することも可能だ」、とつけ加える。

 ヨーロッパのマクドナルドが、上記とは別に出した声明によれば、この閉鎖の理由とは、「厳密な、ビジネス上の理由─必要な金融的サービスや、銀行のサービスが得られなくなるため」であり、政治的な理由とは一切関りがない、という。

(中略)…ロシアによるクリミア併合による、そのほかの目だった影響と言えば、クリミアの、800人ほどのヘロイン中毒患者が、(更生プログラムのために)、毎日服用の必要な治療薬のメタドンの補給をこれ以上、得られなくなることだと言う。ロシア当局によれば、すでに、あまりにも多くの患者がメタドンを入手できず、ブラック・マーケットに依存しはじめている。これにより、中毒患者は注射針の(使い回しによる)他人との共用を余儀なくされ、HIV感染率が高まる危険性もある。(…この治療プログラムが開始されて以来、クリミアでのHIV感染率は減少していたのだが。)


Please, Russia, Don’t Vindicate Tom Friedman’s Silly McDonald’s Theory 
By Joshua Keating
どうか、ロシアよ、トム・フリードマンの馬鹿げた「マクドナルド理論」を実証しないでほしい By ジョシュア・キーティング(4/14, Slate.com

トム・フリードマンは、1999年の彼の著書「レクサスとオリーブの木」で、その有名な「(国際」紛争防止のためのゴールデン・アーチ理論」を主張した。その理論とは、つまり─「ひとたび、マクドナルドが国内にオープンした国同士は、決して互いに戦争をしない」、というものだった。フリードマンは基本的に、経済的な統合によって武力紛争の生じる可能性が低減されるという点を、論理的に指摘していたのだが─しかし、不運にも同書の出版後まもなく、NATOがユーゴスラビアを空爆しはじめた際に、その理論が正しくないことが証明された。情報性豊かなウィキペディアのページによれば─その理論には、すでに1989年の米国によるパナマ侵攻と、1999年のインド対パキスタンのカーギル紛争というものによっても反証が出されていた。

その後も同理論は、2006年のイスラエルによるレバノン攻撃と、2008年のロシアとグルジアの軍事衝突によっても否定された。そしてまた、ウィキペディアの匿名筆者による秀逸な短いコメントもある─「マクドナルドのグローバルな出店拡大とは、国際紛争のコンテクストと比べてみれば、比較的最近の出来事である。」

ロシアのクリミアの武力による併合もまた、新たなる反証のようにみえる─ロシアとウクライナは共に、ゴールデン・アーチを愛してきた。しかし今回は、フランチャイズ店舗は両国に挟まれて宙吊り状態になっている。マクドナルドは今日、「我々のコントロールの範囲を超えた、営業上の理由」によって閉鎖すると発表した。このことは、ナショナリスのウラジミール・ジリノフスキーVladimir Zhirinovsky(つまり この男だ)を刺激して─そして、彼は、ロシア全土のマクドナルド店舗を閉店させよ、という要求を発するにいたった。

そんなことは、おそらく実際には起こらないだろうが─ロイター通信も述べたように、「もしもロシアで、大規模な反・マクドナルドの気運が高まるようなことがあったら、同社の帳尻にとってはかなり劇的な結末」をもたらすだろう。モスクワのプーシキン広場のマクドナルドとは、2012年には、世界のいかなるマクドナルドの支店よりも多くの顧客に利用されたのだ。それは、ロシアのソビエト崩壊後の資本主義への移行の、ある種の象徴ともなっていた。

フリードマンは、おそらく─クリミアがこれ以上の紛争拡大には至りそうにない、という事実が、この理論を立証する、と唱えることだろう。今日の国家同士とは、長らく、戦争をするには余りにも相互の経済的依存性が高まっており、もしも戦争した場合に生じる金融上の悪影響とは深刻すぎるのだ。

しかし「ゴールデン・アーチ理論」とは、この点を主張するには、あまり適してはいない。「マクドナルド-レス(McDonald’s-less)」となったロシアが、国際的な武力紛争に向かう─といった状況で、フリードマンの唱えた説が最後に立証されないように願いたいものだ。


 McDonald's Leaves Crimea After Russian Annexation 
ロシアによる併合後、マクドナルドがクリミアを出る (NewsWeek、4/4) (抄訳)

(クリミアの店舗はフランチャイズではなく、マクドナルドの直営店だった…)

  この店舗閉鎖の措置は、ドイツ郵便サービスが、ジュネーブを拠点とするUPU(万国郵便連合)に対して、リミアあての郵便物の受け入れと配達を停止する─と宣言したことに続いて行われた。

  親ロシアの政治家ヤヌコヴィッチの追放に反応して行われたロシアのクリミア併合後、ロシアとウクライナの経済関係は悪化した。経済制裁は多くの著名なロシア人に対して行われ、またEUは海外投資家たちへの警告を発した。 (中略)

ロシアの機動隊は、先月リペツク市において、ウクライナの製菓業界の大立者が所有する工場を(同社の業務に関する家宅捜索のために)占拠した。チョコレート王(Chocolate King)」としても知られるオリガルキーのPetro Poroshenkoは、525日のウクライナの大統領選に立候補しているフロント・ランナーである。

ウクライナは今週、ロシアの7つの食品会社のウクライナ国内での販売を一部禁止した。
マクドナルドは近い将来に、クリミアでの営業を再開できることを希望しているともいう。

反欧米的な主張で知られ、ロシア議会の議長を務めるジリノフスキーは、ロシア全土でのマクドナルドの店舗の撤退を求める、と主張した。彼は、それはロシアにとって良いことで…その次はペプシ・コーラ社だとも言ったのだと、ロシアのメディアは伝えている。マクドナルドは現在、ロシアで400店舗以上を運営しているが、同社はソ連の崩壊が起こる以前から、モスクワのプーシキン広場で営業をはじめた最初の海外ファーストフード・チェーンでありそれを誘発する一助ともなったものだ。 2012年には同広場の店舗が、世界の支店中でも最大の売り上げを挙げており…2013年のアニュアル・レポートによれば、ロシアは米国・カナダ以外の世界のトップ7市場の内の一つだという。ロシアからの店舗撤退とは、同社のビジネスにとって甚大な影響を及ぼすことになる。しかし、ロシアの通信社RBKは、マクドナルドが撤退した場合にロシアの食品供給業者が蒙るだろう被害の大きさというものも詳しく伝えている…。
 http://www.newsweek.com/mcdonalds-leaves-crimea-after-russian-annexation-244291

http://english.pravda.ru/news/russia/04-04-2014/127270-mcdonalds_zhirinovsky-0/
McDonald's restaurants should be closed throughout Russia, Zhirinovsky says

Saturday, January 4, 2014

次に、叛乱はどこで起こるのか?Where will it kick off next?- By Paul Mason

 
次に、叛乱はどこで起こるのか?By ポール・メイソン
(2013/12/27, the Guardian)

 それはまるで、CDがトラックの曲をスキップしたか、ビデオの映像が突然、次のシーンへと飛んだかのようだった。私がイスタンブールのバリケードで映像を撮影しながら─その視界が、警察の撃ち放つCSガスのキャニスターの射程レンジに入らぬよう、注意深く構図をリセットしていた瞬間に…キャニスターのひとつが私の額に当たったのだ。私のヘルメットに空いたくぼみの画像とは,、いまや、ジャーナリストの訓練コースで、警戒に関するパワーポイント・プレゼンテーションの一部分になっている

A boy wears a Guy Fawkes mask in Gezi Park, Istanbul
 
 ゲジ公園における占拠の最中には、完璧なる秩序で統制のとれたミドル・クラスの人々がバリケードを築き、トルコ警察を4日間にわたり追い詰めていた。公園の中で彼らは、彼らの暮らしたいと考えるような、急ごしらえのバージョンの社会を形成した。彼らは宗教保守派の政府に反抗して…無料の食べ物を山と積みあげ、歌を歌い、ビールを飲んでいたのだ。

 日中にはそこで、学生たちが宿題もしていた。 夜には広場へと至るアプローチの道路に、マスクをかぶった若い男たちが溢れていた…彼らは、イスタンブールのサッカー・クラブ同士の百年にわたる憎悪の休戦のシグナルとして、互いのスカーフを交換し合うサッカーファンたちだった。彼らの職業を尋ねると…彼らは私に、こう囁き返した─「建築家、海運会社の事務員、ソフトウェア・エンジニア…」。

ゲジ公園での出来事は、我々が共に生きる、グローバルな動乱のターニング・ポイントでもあった。公式にはBRICSの諸国には含まれないが…トルコとは、その一国ともみなされる属性の大半を備えていた─高度の経済成長、若年人口の多さ、汚職や腐敗、勝手放題な振る舞いを特徴とする抑圧的国家。それゆえゲジ公園(における騒乱)の後に、ブラジルでの抗議運動が何百万もの人々を街頭へと引き出したことにも、驚きは覚えなかった。あるいは、エジプトで1700万人の人々がモハメッド・ムルシの政権を転覆させたデモに加わったということにも、ウクライナの抵抗運動が未だ継続している、という事実にも驚かされることはなかった。
 
 これらの社会とは…おそらく、グローバリゼーションと市場化の恩恵を享受してきた国々なのだ。しかし、間近で見るなら、そこで台頭しつつあるミドル・クラスの人々は、締め出されているように感じている。だから、今や─「フィットネス・ジムのメンバー・シップをもち─マスクを被った─腐敗を憎む男たち…("masked guy with gym membership who hates corruption")」といった種類の者たちが─我々が、そうした彼らを通して動乱を理解しようと試みていたような「未来を喪った卒業生たち」の社会的原型(ソーシャル・アーキタイプ)のリストに、加わっているのだ。
 
もしも、あなたがエコノミスト・インテリジェンス・ユニット〔エコノミスト誌の調査部門〕が実施した─<次に叛乱(kick off)の起こる場所は何処なのか>という、最新の推測の試みを読むならば─従来的な考え方によってそれを推測することがいかに困難なのか、が明らかとなるだろう。同ユニットにとって、うした場所とは─不平等性が著しく、重度の腐敗や、経済危機、信頼の崩壊─が生じているような場所なのだ。それゆえに、ナイジェリア(アフリカ最大の経済国)や、エジプトや、アルゼンチンなどはすべて─政治的秩序を脅かす紛争が発生する「とてもハイ・リスクな(very high-risk)」場所の、赤いリストの上位にある…。そして、ブラジルと南アフリカ、中国とは単に、「リスクが高い(high-risk)」場所とされている。それは、これらの叛乱が─単に2008年の経済危機に起因するとみなす直線的思考の延長でもあるのだが─私は未だに、それが何かを看過ごしているように思う。次に、それが何処で起こるか…と人々に尋ねられたときには…私は言う、「人々の頭の中でだ」、と。
 
いまや、抑圧の規模()(スケール)とは、安定した民主主義国家のなかでさえも、非常に高度なものなのだそれゆえに、苦悩する人々というものは…行動に移すまでには、(逮捕される危険性を冒しながらも)より長い期間、というものを過ごしている。彼らのなかの武装した勢力とは、ますます、戦争をめぐる法律(国際法)に関する懸念によっても包まれているのだが─暴動鎮圧部隊と、抵抗者らのあいだの現代的(モダン)な紛争には、ジュネーブ条約の取り決めは存在しない。それゆえに…黙諾されている…と見えるものも、黙諾ではないのだ。(*現状において、多くの国々で、当局の治安部隊が市民に対する暴力的な武力鎮圧を躊躇なく実行している─)
 

社会的秩序であるようにも見えるものとは単に─深い、無秩序の表皮でしかないのだ。中国ウォッチャーたちにとっては、こうしたコンセプトとはお馴染みのものだ。中国のインターネットには不満が沸騰している─たとえ公衆のなかの誰もが、公けの方針(オフィシャル・ライン)への屈服を表明していようと…。しかし、より一般的なレベルでは、それは先進国世界を通じても、本当のことなのだ。過去には運動とは思想(アイディア、考え)がすべてであり、行動(アクション)というものの占める位置は少なかったがゆえに…それに対する(当局側の)恐れというのも小さかった。しかし我々は今や、情報経済(information economy)のなかに生きている。決定的な思想(アイディア・考え) というものは、(SNSなどで即座に行動に移され、当局にとって)実体性をもち始めて─(それに対する)抑圧が行われるなら、(いまや、)批判が煽られるようにみえる。
 
チェルシー・マニングと、エドワード・スノーデンは─欧米メディアのなかでは、フォーク・ヒーロー(民衆的英雄)とされているにはほど遠い。しかし、非公式(インフォーマル)な世界というもの─(つまり、)オンライン上でなされる会話の世界では─彼らは「何が起きているのか」の暗喩(メタファー)でもある。国家による違法な監視に挑戦して、イラクでの軍による残虐行為の秘密をうっかり洩らした者たちは、グァンタナモ収容所スタイルの拷問と、心理ゲームの犠牲になる。そうした状況下においては─(ある社会の)貧困や、不平等性、あるいは信頼度といったものを測定する「測定基準(metrics)」などは、動乱の予測を立てることにおいてはほとんど意味をなさないものだ。

それにも関わらず、アナリストのグループであるガートナーは、今年(*2013年)─先日、こうも予測しているのだ─「ウォール・ストリート占拠運動」が一層、その規模を拡大したバージョンの運動が、2014年の末頃からはじまることだろう…と。ガートナーのアナリストたちは、その理由にも接近している。情報テクノロジーというものは「先例のないレベルで」、商品とサービスに関与する労働の量を削減している、といわれる。我々はグローバル・サウス(後進国世界)の都市化を通じ、(世界に存在する)資本に対する労働量の比率を倍増させ…そして旧共産圏の国々をも、市場経済へと組み入れてきた。しかしそこには、世界の人口の大部分にとっての…高い報酬や、繁栄したライフスタイルを獲得できるような明瞭なルートなどは見当たらない。その結果として、ガートナーは予測する─2020年までにそれは、「成熟した数か国ほどの社会(だけ)においての、新たな経済モデルの探求」に繋がるのだろう、と。

ネットワークされたモダンな社会…というものの呈する特徴が、特定の国に限定した動乱の予測というものを、無意味なものにする。そのリアリティにおいては、一つの政治的(ポリティカル)存在(エンティティー)が問題となるのだ。たった今そこには、かつてない一層の不平等性があり…そしてその中核となる経済モデルというものも破壊されている─市民、という立場で政府に統治されることへの合意が、浸食されてしまった(のだ…─それが、この世界だ。

 
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/dec/27/political-protest-networked-age-edward-snowden?commentpage=1


 
 
 

Monday, September 30, 2013

オバマ&ロウハニ:ライト、カメラ、アクション!Obama-Rouhani: lights, camera, action -By Pepe Escobar



 
オバマ-ロウハニ:ライト、カメラ、アクション!By ペペ・エスコバル(9/19, Asia Times
 
 舞台の準備は整った。今日までにイランの最高指導者Ayatollah Khameneiは、Hassan Rouhani大統領による新たな政権に、イランの核開発プログラムについてワシントンと討議するための全権を委ねた。
 これは、アメリカ大統領バラク・オバマがロウハニとの間で手紙を交換している、と明かした、たった数日後のことだった(ロウハニへの全権委任は、信任の厚かった前任の核問題交渉担当大使Seyed Hossein Mousavianが日本のメディアに寄稿したop-edコラムで最初に確認された…)

 最高指導者の立場がどこにあるのか、を考えるのは重要だ。先の火曜日、彼は革命防衛隊(IRGC)のエリートたちに向けたスピーチのなかで、「我々は核兵器を受け入れない…これは、アメリカやそれ以外の国の存在のためにでなく…我々自身の信念のためだ…そして、我々が誰も核兵器を持つべきではないというときには、我々が、それらを追及してはいないことは確かだ」、と言った。

 ハメネイは、ロウハニの外交攻勢を全面的に支持して、公けに二つの概念を強調した…それはすなわち、「英雄的な柔軟性」(ちょうどレスラーが戦術的な理由で相手に道を譲りつつ、ライバルに注意を注ぎ続けるような…)であり、また「チャンピオンの余裕」なのだという─その言葉はハメネイ自身がアラビア語から翻訳した著書のサブタイトルとも一致する(その本は、シーア派第2の預言者、Hasan ibn Aliが、7世紀にいかに敵に柔軟性をみせて戦争を回避したかを伝えた書だ)
 
 …このことは来週火曜にオバマとロウハニの歴史的会談が、NYでの国連総会に付随して確実に持たれることを意味しているのか?(否。─恐らく、ホワイトハウスは既に、オバマはロウハニに「会うことはないだろう」、と否定した。しかし、そのプロセスが暗示するのは、ワシントンとテヘランは近いうちに、最高レベルにおいて対話すべき、ということだ)
 
妨害者を監視せよ  Watch the Spoiler

 ハメネイは、革命防衛隊IRGCに対し「防衛隊が、政治的なフィールドで活動せねばならない、という必要はない」と語った…これは、彼らが新たな核開発交渉から外れるということの暗示…(核問題の関係書類が外務省に手渡されたことで)でもある…

 イランの外相、Mohammad Javad Zarifとはその任にある人物だが… ここに彼の考え方に関する優れた洞察記事がある…ロウハニがイランの原子力エネルギー機関の長官に任命した前・外相のAli Akbar Salehiもまた、ウィーンでIAEAに対して、そろそろ「nuclear fileと呼ばれるものを終わりにすべき時だと語った。

 今や、そのすべてのプロセスが目も眩む速さで行われているのは…アフマディネジャドの時代からのラディカルな決別である(彼のもとでは、IRGCというものが過激に政治化されていた)。ハメネイによるスピーチの前日にロウハニは彼自身IRGCに対して…「政治的な潮流に関与せず、その上で超然とあってほしい」と要請した…。
 
 それゆえに、イランは今やチェス盤の駒を進めている。今のところ、アメリカからの何らの実質的な回答はないが、ゲームを損ねる妨害者たちはすでに過熱状態だ。

 イスラエルが、それ自身に対する大いなる「現存する脅威」にストレスを与えるべく動こうと手筈を整えている対象とは、「テヘランからダマスカス…そしてベイルートへと至る戦略的な弧」…に関してだと(退任する駐米イスラエル大使)Michael Oren.が語ったのは、偶然ではない。
 
 今や、明らかなのは…テル・アビブの政府が、バシャール・アル・アサドの世俗的なアラブ共和国政権よりも、むしろ…ダマスカスでの力関係に埋め込まれた…Jabhat al-Nusraの、アル・カイダ・タイプのJihad戦士たちの力の強化を望んでいることだ。

 それには─必要ならば他の証拠もある─イスラエルと、そしていま一つの民主主義の模範を気取っている湾岸協力会議(GCC)の石油王族らの間の利害の集約点に関する証拠が。こうしたプレーヤーたちはことごとく、アラブの民衆からは苦々しい軽蔑の念を抱かれていることは、驚きではない。
 
 テル・アビブの政権は、シリアの化学兵器についての関係書類に無条件な砲撃をしかけている…イランの存在しない武器をも含むかもしれぬ「現状(condition)」…に関する記述に圧力をかけ、そして誰もが、アサドが国連の化学兵器査察官の調査に協力していない(ヒズボラとイランとの共謀のもとに)と信じるよう…圧力をもかけているのだ。シリアの「反乱勢力」の軍事的リーダー、General Selim Idrissは、イスラエルとGCCの操り人形として─既に…ダマスカスが化学兵器をレバノンとイラクに移送したと述べる宣伝作戦をも始めている。

…サウード家に関して言えば、同王家は…ロシアの外交は毒よりも悪しきものだ、とみなしている─彼らは、ジュネーブでの第2回会議すらも望んでいない─サウジの諜報機関幹部の長Bandar bin Sultan王子─又の名をバンダル・ブッシュが、プーチンに個人的に語ったように…。彼らは、体制の転換を望んでおり、そして彼らはそれを今望んでいるのだ…彼らは、最も致死的な「反乱軍」の勢力たちを武装させ続けているが、それは今や、暴走状態だ。

 オバマ政権は─シリアとはもちろん、ロシアにとっての「レッドライン〔赤線〕」だ(ロシアにとってそれが、アメリカにとってイスラエルが重要であるのと同じ位、重要なものとして)─というモスクワのメッセージというものを銘記しているべきだ…そして、ホワイトハウスは─ハメネイ自身による、オマーンのSultan Qaboosを通じたメッセージをも銘記すべきなのだ…その骨子とは、「シリアを破壊しようとする者は誰でも、その地域での彼らの石油とガスを失う準備をすべき」だ、ということだった…。
 シリアの化学兵器に関する膠着状態の解決策とは、Asia Timesによって報じられた通り─ダマスカスと、テヘラン、モスクワによって講じられており、のちには、北京にも支持された。それは実際に、オバマ政権をそれ自身から救うものなのだ。

 
しかし、先週末に行われたインタビュー でオバマは…イランに関して言及し、相変わらずの…誤ったメッセージに立ち戻っていた─
 「私は、イラン人たちが理解していることとは、核問題が我々にとって化学兵器問題よりも、はるかに大きな問題だということだと思う─核のイランが…イスラエルに対して与えている脅威とは、我々の権益の核心により近い、ということだ。同地域での核武装競争とは地域の安定性を深く損ねるものとして…」
 ─そこには、イスラエルに対する「脅威」は存在しない、なぜなら核武装したイランというものは存在しなくなるからだ…とハメネイは再び強調した。宣言ないまま核武装している国とは、イスラエルであってイランではない。そして、化学兵器の問題とは、オバマ自身の無謀な「レッドライン」の議論(それによって、おそらく…彼の「アサドは去るべきだ…」という先のレッドラインを強化する手段にされている…)の対象ではありえない…

 ここ に、私は大きな構図を捉えたワンショット(RTの記事)を寄稿した。先週、行われたキルギスタンでの上海協力機構(SCO)の会合で、ロウハニはプーチンと、中国の習近平首相とも会談した。彼らは今や、シリアだけでなく、イランの核開発の一件に関しても協調的な戦略を模索している。
 
 ロシアと中国は、イランの平和的核開発プログラム遂行の権利をも強く支持している。そしてまず第一に、BRICS諸国と、インドネシア、アルゼンチン、そしてイラン自身のような地域的台頭勢力というものも、彼らの…アメリカによる無制限な覇権の濫用に代わる、法の下での多極的な国際秩序の推進をはかっている…
 外交は、シリアの悲劇を解決するために一策を講じようと試みている。そして、外交的な努力は、「34年間のワシントンとテヘランの間の不信の壁」を解決する策を持つべきだ…問題は、オバマが妨害者たちをにらみ倒すことのできるような「英雄的な柔軟さ」を持てるかどうかなのだ。
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MID-01-190913.html
*NYの国連総会のロウハニ大統領の演説の際にはオバマが欠席…期待された両者の握手はなかったが、9月28日にははじめて両首脳が15分間電話で会話(1979年以来の直接対話を開始)

ホメイニ師の孫娘─私はカラー・レボリューションを起こしたい 10/13, Asharq Al-Awsat)

Zara Eshraghiは、フェミニストとしてはっきり物を言うイランの人権活動家だが…彼女はたまたま、イラン・イスラム共和国の創始者Ayatollah Ruhollah Khomeiniの孫娘でもある…彼女は穏健派のリーダーHassan Rouhaniの大統領選出にひき続き、この国の状況に対する見解を述べている。彼女は、論議を呼んでいるイランでの警察による女性の服装規制〔dress code〕について語り、伝統的な黒いチャドルを廃止して「カラー・レボリューション」を起こすのだと誓っている。

 彼女は、彼女のユニークな服装のセンスを彼女の家族から受け継いだという。彼女の祖母は常に、誰よりも美しく装っていた…また、ホメイニ師自身が黒を纏うことを嫌っていたと語る。Eshraghiは改革派の前首相Mohammad Khatamiの弟Mohammad-Reza Khatamiの妻で、イランの音楽や、ファッションや、その国の未来への希望についても語っている…

ホメイニ師の孫娘…戦争に関するジョークが批判されて、フェイスブックを閉鎖 (Radio Free Europe, 10/20) 
 Khomeini's Granddaughter Quits Facebook Over War Joke 

 1980-88年のイラン・イラク戦争はイラン人に傷ましい記憶を残し、何千何万人もの兵士たちが命を失い殉教者と称えられた─故ホメイニ師が言ったとされるあるセリフが彼の孫娘のFacebookに掲載された際には論議が起こった…ホメイニの孫娘Naeimeh Eshraghiはジョークを投稿したことを否定したがそれは最近彼女のFacebookに彼女のIDで書き込まれていた。
 「私たちがよく、イマームに言っていたジョーク、…そして彼が常に冗談交じりに想いだしていた事とはこうだ…
─"ヘイ、Pasdaran(革命防衛隊のメンバーの名)、殉教戦士(Matyrs)たちの未亡人を娶ったらどうだ…俺も、自分がPasdarだったならなと思う"…」
…騒動のなかでEshraghiSNSサイトのアカウントを閉鎖した…
 殉教戦士(Martyrs)とは戦争で命を落とした兵士や革命防衛隊(IRGC)のメンバーを指し、イスラム共和国では特別なステータスを持ち、通りには彼らの幾人かの名がつけられその顔が街角の壁画にも描かれている。
Zahra Eshraghi, Iranian activist
and granddaughter of Ayatollah Khomeini
 戦中戦後には、兵士やIRGCのメンバーたちが戦争未亡人たちと結婚するよう奨励された(彼女らはしばしば自分や子供たちを食べさせていくことができなかった)
 幾人かの人々は、多くの人を戦場に送り戦争を長引かせたと批判されてきたホメイニが…そうしたジョークを言った可能性もあるというが、他の人々はそのような傷ましく暗い歴史の一章にEshraghiが光を当てたことに憤り、批判はあらゆる側からもたらされる─強硬派メディアや殉教兵士らの遺族、穏健派、反体制派などのすべての側がこのジョークには否認を表明している
http://www.rferl.org/content/iran-ayatollah-khomeini-joke-facebook-grandaughter/25140665.html
※Ayatola Khamenei's gotta facebook
https://www.facebook.com/www.Khamenei.ir
 

Tuesday, September 10, 2013

ヴラッド・ザ・ハマー(対)臆病オバマ Vlad the Hammer vs Obama the Wimp By ペペ・エスコバル


鉄槌のウラジミール V.S.臆病者オバマ By ペペ・エスコバル (8/9 Asia Times)   

「計画を立てよ、そして、また別の計画を立てよ。どちらも機能しないから」─(ベルトルト・ブレヒト)
Make a plan; then make another plan. Both won't work.
- Bertolt Brecht

これはもう、ばかげたレベルに達している。アメリカ大統領(POTUS=Pres.of the United States)は、彼のスパイ(エドワード・スノーデン)を返してもらいたいと、喚き叫んでいる。スノーデンはロシアの法に基づいて、暫定的な亡命を受け入れられた。…ホワイトハウスは「失望」した。
 
するとPOTUSは、9月初旬のサンクト・ペテルスブルクでのG20に伴って行われる予定だった、モスクワでのロシアのウラジミール・プーチン大統領との二国間サミットを冷たくあしらい(キャンセルした)。…そして、クレムリンも同様に、「失望した」。

プーチンはジョージ・"Dubya"・ブッシュに公電を送り、彼が心臓手術から素早く回復することを願っている…と表明した。POTUSはアメリカのトークショーに出演して、ロシアは、「冷戦期の思考と冷戦期のメンタリティーにスリップバックしがちだ」、と述べた。

ブレヒト風の冷ややかな言い方をすれば、「ばかげている」というのは、この状況を描写しはじめることにすらならない。冷戦期のメンタリティというものは、実際のところ、Beltway(ワシントンの中心部)の遺伝子というものにすっかり染み込んでいるのだ─連邦議会からペンタゴンに至るまで。POTUSに関しては、彼は、外交的なディレッタント〔素人芸術家〕として振る舞った、というのがせいぜいだろう。「Yes, We Can」のコピーは、「Yes, We Scan(我々はネットを>検閲する)」に変形し、そして今や、それは「Yes, We Scorn〔そうだ、我々は軽蔑する〕」になった。これは、ヨーロッパでブリーディングされたプードル犬の一団には適用されるだろうが…Vlad the Hammer(鉄槌のウラジミール…)には適用されないのだ。

ホワイトハウスはその決断に関して…ミサイル防衛から武器の規制、交易や商業問題、グローバル・セキュリティ問題、人権問題から市民社会などに至る…すべてを含んだ分野での、「進捗のなさ」をあげつらって正当化しのだた。ナンセンスだ─これはすべて、POTUSが彼の内部告発者との戦いの遂行を阻まれている、という無能性の問題なのだから…。プーチンの外交問題アドバイザー・Yury Ushakovが、「アメリカには、平等な立場で関係性を構築することへの準備がない」と述べたとき、彼は真実というものにより近いところにあった。
 
Vlad the Hammerはそこに…北極グマがアザラシを狩るように〔ジミー・〕カーター風な臆病さのプロポーションを感知しているか知れない。彼は、オバマ政権がその、既にぐらついた信頼を、二つの同時的問題の矢面で灰燼に帰させたことを、素早く評価した─彼(オバマ)の…オーウェル的な、パノプティコン(監視社会)の設置にこだわるコンプレックスの大きさが、スノーデンのリークによって詳述されたことや、また…スノーデンが情け容赦のない狩りの対象とされたことによって。
 
主流派〔メインストリーム〕メディアが打ち付けた棺の蓋の釘というものを、もうひと打ちするなら…New York Timesが掲載した社説は、こう述べていたのだ─ホワイトハウスは、(ほぼ間違いなく)…「プーチン氏は、彼の国民自身を軽蔑的に扱う、抑圧的で傲慢なリーダーだ」と「指摘して」…、サミット会議をキャンセルしたことを正当化したのだ、と。そのとおりだ─そして、白雪姫とは、ホワイトハウスに住んでいるのだ。

全員、トランス・シベリア(鉄道)に乗車せよ All aboard the Trans-Siberian

POTUSの青くさい不機嫌さとは、冷戦とは何の関係もない。入門者のために説明すれば、アメリカとロシアと、は様々な問題分野において相互依存的なのだ。最小限…理論的にみるなら、今週末にワシントンで討議をする大人たちが居るだろう…ロシアの外務大臣Sergei Lavrovと、防衛大臣のSergei Shoiguが、アメリカの国務長官John Kerryと、ペンタゴンの長官Chuck Hagelとの会談を行うに際して。

Vladは、アメリカとNATOがすでに行った、アフガニスタンからの屈辱的な撤退を…偽造のカラシニコフ銃を持ったパシュトゥーン族(*タリバン勢力)どもに、彼らの尻をどつかれたのだと言って…地殻変動レベルの災害へと転じることだろう。


Vladは、シリアのBashar al-Assadに対するロシアのサポートというものの、微妙な照準をつけることもできる─特に、サウジの諜報長官Bandar "Bush" bin Sultan王子が、既にモスクワで彼を訪問して…ロシアが手を出さない限りは、彼らが大量のロシア製武器を購入しようと、提案して以来…。[*]プーチンは、それには余り、興味を示さなかった。そしてBandar王子は、未だに、それをアメリカの主人たちに「相談なしに」、実行してはいないのだ。
 

Vladは、イランのRouhani大統領の新政権に対しても、いくらでも、追加的な〔エクストラの〕外交的サポートを提供できるのだ…究極的には…テヘランがワシントンに対して可能な交渉のポジションを強化できるような、新型武器のセールスをも含めて。

 

コーカサスでは、Vladは活躍の場に立っている。グルジアは、モスクワに対する敵対性は、かなり低いのだ。そして〝パイプライニスタン"(天然ガス/石油パイプラインの通る国々)においては、ロシアはアゼルバイジャンがトランス-アドリアン横断パイプライン(TAP)での優越性を得ること…〔多年にわたるNabucco West社の衰勢を挽回すべく…〕への決断を下すことに影響力を及ぼし、そして即座に…アゼルバイジャンのSOCARと、ロシアのRosneftとのエネルギー分野での協力をも固めた。グルジア、アゼルバイジャンの両国は共に、アメリカの「盤石な」同盟国として知られていたのだが。

 

ヨーロッパでは…ライン川のクルーズ船の船長なら誰もが知っているのが、ロシアのドイツとの戦略的パートナーシップというものだ。たとえば…イタリアやフランス、ポーランドとの間の天然ガス取引交渉では、ロシアのプレイするゲームの名前とは、価格破壊や税金対策を織り込んだ長期契約を確実にすることなのだ。


中央アジアと東欧においては、Vladはさらに…他でもなく…活躍の場にある。そこではロシアが、何十もの戦略的な…製造関連、化学関連、運輸交通関連の資産を購入している。

 
するとそこに、トランス-シベリアの重大な策略が展開される。私は、トランス-シベリアには、2回ほど旅行したことがある(1990年代初頭と、1990年代末期に)が─それは最悪な旅だった。その当時には、そこでは殆ど─貧困なロシア人が中国で目に入るすべてのものを買い込んでおり、狡猾な中国人たちが何でも売れる物をすべて、ロシアで売っていた…今や、それも、すべて重量貨物列車の積荷となったのだ。トランス-シベリアの動きとは、年間1億2千万トンを下らぬ貨物の輸送であり…そして、それはヨーロッパ-アジア間のコンテナ貿易の13%を占める計算だ。ロシアは、170億米ドルをその拡大に対して投資し、貨物輸送の許容量を、さらに55百万トン増加させようとしている。
 
それに加えて、サンクト・ペテルスブルグの港の拡大によって、ロシアの太平洋岸のターミナルのキャパシティを2020年までに3倍にすることも計画している─シーメンス社は32億ドルの契約の一部として、675台の貨物車両を追加供給している。

ここでのロシアのゲームの名前とは、あらゆる手段を用いた原材料商品の輸出拡大だ。最低、125万バレルの…そしてそれは、ロシアからアジアへの動きともみなされる。アップグレードされたトランス-シベリアとは、欧州アジア間の貿易の驚異となるだろう。トランス・シベリアを通して、アジアの製品がヨーロッパに10日以内で届く。韓国か日本からドイツまでは、海上輸送では少なくとも28日かかる。日本と韓国が、大いなるトランス-シベリア・ファンであることは驚くに値しない。そして、ヨーロッパ人の視点からすれば、より安くて速いトランス-シベリアのアジアへのルートというものは、何者にも負けないものだ。

解決のヒントがない
 Ain't got a clue

冷戦?…そんなものは、ノスタルジーのビジネスの一種なのだ。昏睡状態のヨーロッパや、ヨーロッパとアメリカの多重摩擦、北京が国内を見つめて、その発展のモデルを調整してパズルを解こうとしていることや、麻痺に陥ったオバマ政権…などとともに、モスクワは完璧なるオープニングを見出し、その無制限なる商業的拡大の戦略へと乗り出そうとしているのだ。

オバマ政権の愚鈍さ─〔アメリカのシンクタンク王国は言わずもがな〕─とは、誇張しようがないものだ。Beltwayでは誰も、健全なロシアの政策というものを明言したことがなかった…プーチンを悪魔化する以外には。それはVlad the Hammerにとっては、ちょうど、好都合だった…彼は忙しく、ヨーロッパの周縁においてのみならず、その中心における新たな戦略的リアリティをも入念に、構築しているところだ。ロシアは帰ってきた─大音響と共に。
 
こうしたより大きな物事のスキーム(枠組み)のなかでの、ポスト冷戦時代の環境に彷徨いながら、スノーデン事件とはちょうどパズルの一片に過ぎないのだ。そして、ここに、政治を完璧に映し出す個人がいる。Vlad the Hammerは、彼が何をしているのかを、はっきり理解している-臆病者のオバマが、トランス-シベリアの貨物列車のヘッドライトに囚われた鹿のごとく、見えているというなかで。