Saturday, July 31, 2010
今、話せる?…[CNN、オクタビア・ナスールを解雇] Can We Talk? - By THOMAS L. FRIEDMAN
今、話せる? By トーマス・L.フリードマン(7/16, NYタイムス)
7月7日にCNNは、その中東問題関連のシニア・エディターOctavia Nasrを… 彼女が「自分はSayyed Mohammed Hussein Fadlallahの逝去をきいて悲しく思う」とTwitterのメッセージに書き込んで公表した後に、解雇した。
─Fadlallahとは、ヒズボラ武装組織の創立にも関与したレバノンで最も著名なシーア派の精神的リーダーの一人だが、Nasrは彼を「私が尊敬してやまない、ヒズボラの巨人の一人」と描写していた。
私は、彼女の解雇には問題があると思う。…そう、彼女は過ちを犯した。スクープ記事のレポーターたちは、記事で扱ういかなる登場人物についても、個人的感情もまじえてはならない。それはメディアの信用性を損ねる。でも我々は、アラビア語を話すレバノン人キリスト教徒の女性ジャーナリストがCNNのために中東情勢をレポートしてくれることによって多大な恩恵を受けていたし、そして彼女が20年間に犯した唯一の罪がFadlallah のような複雑な人物に関して書いた140字のメッセージであるなら、彼女への制裁はより緩やかであるべきだ。彼女は1ヶ月ほどは謹慎すべきだったかも知れないが、でも解雇されるべきではなかった。そこにはいくつかの理由がある。
まず始めに、それが我々にどう影響したのか?たった一言の動詞の誤用で、1時間以内にデジタル世界のリンチ・モブ(リンチ集団)があなたを追いかける─そしてあなたの上司たちが、状況を取り繕うべくスクランブル発進する。でもジャーナリストというものは、レポート上のミスや間違った言説の引用、記事の捏造や盗用、システム的な偏見などで、彼・彼女の職を失うべきもので─ このようなメッセージのために失うべきものではない。
我々は、若い世代にどんなシグナルを送っているのだろうか?風向きに向かって帆を調整せよ、政治的公正さを持て、どこか特定の政治的支持層に非難を浴びるようなことを決して言うな。そしてあなたがもしも、政府関連の仕事や、全国的なジャーナリズムの仕事、あるいはハーバード大の学長の様な仕事をしたい望みがあるなら、安全に振る舞い、誰かを立腹させる可能性のある知的な挑戦などを決して行うな。あなたが言ったすべての言葉が永遠に検索可能になるグーグル時代には、未来とは、何も足跡を残さぬ者だけの手にあるのだ。
また、そこには中東問題から見たアングルが存在する。もしも我々米国がレバノンやアフガニスタン、イラクにおいて行った介入から学ぶべきことがあるとすれば─それはこうした地域を知る米国人というものがいかに少ないか、ということだ。我々には彼らのニュアンスで情勢を生き生きと通訳してくれる通訳が必要なのだ。
私は米国の侵攻後にバグダッドに居た、そしてブッシュが任命したこうした若い人間たちに会った─彼らは(Rajiv Chandrasekaranが“Imperial Life in the Emerald City”でも書いたように)しばしばブッシュに対して、100%忠実だったがゆえに選ばれた─たとえ、イラクについては100%無知だったとしても。彼らの無知さは、その地での我々の失敗というものを助けた。「米国の占領当局の仕事を探していた2人の人物がいうことには、彼らは彼ら自身のRoe v. Wade*に関する意見さえも問われていた」、とChandrasekaranは書いている。 (*'73年のRoe対Wadeの米最高裁判決以来、今に続くabortion right 堕胎の自由論争の代名詞¨ブッシュ政権は強いanti-abortionだった)
私はOctavia Nasrにも、Fadlallaにも会ったことはない。Fadlallahは明らかにイスラエルを憎んでいて、イスラエル人に対する攻撃を支持し、米軍のレバノン及びイラクへの侵攻に対して反対していた。しかし彼はまた、ヒズボラの窒息的なドグマチズム(教条主義、独断主義)や、イランに対する従順さにも反対していた;彼はレバノンのシーア派が独立的でモダンであるよう望み、そして彼は彼の書く社会的な論評(commentary)を通じて、この地域で影響力を打ちたてていた。
“Democracy: A Journal of Ideas”のエディター、Michael Tomaskyが指摘するのは、リベラルな世俗的シーア派のレバノン人(女性)ジャーナリストのHanin Ghaddarの(Now Lebanonのサイト上での)回想だ…それは、彼女がベイルートで一人暮らしをすることについて、Fadlallahがいかに彼女の保守的な父親に介入をしてくれたか、だった━Fadlallahは父親に「彼女が独立した、精神的に健全な大人の女性である以上、父親は彼女のやりたいことに口を出す権利はない」という内容の手紙を書いて、それを許可させたのだという。
Ghaddar は「Fadlallahのような人物だけが、status quo(現状、体制)を変える事ができる」と理解するに至った、と語っている。アンチ・ヒズボラ派を自認するような人は、批評家であれ反対勢力であれ、あるいは無神論者であれ、シーア派のコミュニティーにはまれにしか存在しない─何故なら、人々が彼らのような者の言うことに耳を貸さないからだ。…一方Fadlallahは、人々の心に達する事ができた─なぜなら、彼は人々のうちの一人だったからだ。…彼のような人々こそ、強力になれば真の変革をもたらすことができるのだ。彼はヒズボラやイランの指導者たちが恐れを抱く、まれな人々の一人なのだ…なぜなら人々が彼を好み、彼への尊敬を抱いているからだ。
もちろん、Fadlallahはソーシャル・ワーカーなどではない。彼にはダークな面がある。CNNの人々は私に、Nasrが彼の両方の面について知っていたと語った。しかし、私が知っていることはこれだ:中東は、繁栄のためには変わらねばならない、そしてその変革とは、内側からもたらされる変革である必要がある。その変革推進者(change agents)とは彼らの目から見て正当性を有する、彼ら自身の文化に根ざした誰かである必要がある。彼らとは、米国製のカップ一杯の紅茶ではないだろう、しかし我々は彼らについて知る必要がある、そして我々の興味関心が収束する点を知る必要がある─彼らの、その全てを悪者扱いするのではなく。
それゆえ私は、自分の情報源として…何千人もの男性や女性がなぜ、一人の年老いたシーア派の聖職者<我々がそれを、テロリストとしてしか捉えない人物>の死を悼んでいたのかを実際に説明できる様なCNNレポーターによるニュース報道の方を好みたい━そのことを何も知らないか、もっと悪ければ…敢えて言おうとしないレポーターによるニュース報道よりも。
http://www.nytimes.com/2010/07/18/opinion/18friedman.html?ref=thomaslfriedman
Sayyed Mohammed Hussein Fadlallahのウェブサイト(英語ページ)
http://english.bayynat.org.lb/
同師の語る、Woman、Familyについてのページ…
http://english.bayynat.org.lb/WomenFamily/index.htm
Sayyed Mohammed Hussein Fadlallahの葬儀
http://english.bayynat.org.lb/news/Tashi3.htm
CNN's firing of Octavia Nasr protested
http://www.arabamericannews.com/news/index.php?mod=article&cat=USA&article=3180
(*註:Octavia Nasrは解雇の後も、Hussein Fadlallahについて全面的に支持するとはいっていない¨)
イラク戦争の経験後は米国メディアの異文化への態度も、少しは軟化したようにもみえるのだが?
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