Friday, July 16, 2010

カルザイは、西欧によるタリバン打倒を疑問視?/ Karzai Is Said to Doubt West Can Defeat Taliban- By DEXTER FILKINS


マクリスタル前司令官の解任の少し前、
カルザイ政権の長年の諜報長官サレハ氏と、内務大臣アトマール氏が突如辞任…その理由とは?


カルザイは、西欧によるタリバンの打倒を疑問視する By デクスター・フィルキンズ (6/11, NYタイムズ) 

 その二人のアフガン政府高官がハミド・カルザイ氏大統領に、今月(6月)の初めにアフガン全土で開催された平和会議に対して起きた大規模なロケット弾攻撃に関する証拠を見せた際、カルザイ氏は、それはタリバンの仕業ではないと信じている、と語ったという。

 「大統領は、その証拠に何の興味も示さなかった…何にもだ…彼はそれを価値の無い塵や埃のように扱ったのだ」と、当時アフガン諜報長官だったAmrullah Saleh(サレハ)氏は言う。Saleh氏は、カルザイ氏がその様な態度をとった詳しい理由について語ることを拒否した。しかし、その会合を知るある匿名のアフガン高官によれば、カルザイはそのときそれは米国の仕業かもしれないと指摘していたという。

 このSaleh氏とのやり取りの何分か後、Saleh氏と内務大臣Hanif Atmar氏は職を辞任した─それはカルザイ政府が9年前に権力を掌握して以来の、最も劇的な背信ともいえた。Saleh氏とAtma氏は、カルザイ氏が彼らをもはや忠実とはみていないと明らかにしたことが、彼らが職を辞した理由だと述べた。

 しかしSaleh氏と、アフガンおよび欧米政府の関係者たちによれば、現状の底に横たわる緊張状態はより一層根源的なものになっているという: つまりカルザイ氏は、米国人とNATOがアフガニスタン情勢で優勢を握り続けられる、ということを信じられなくなっているのだと。

 そのような理由によりカルザイ氏はタリバンと、そして同国の宿敵で長年のタリバン支援者のパキスタンとの交渉を、彼独自に進めようと試みてきた…と、Saleh氏と他の官僚たちは言う。あるアフガンの元上級官僚によればカルザイ氏のやり方とは、米国とNATOの視界の外で、タリバンとの秘密交渉を行うことを含んでいた。

 「大統領は、同盟国やまた彼自身の政府それ自体にこの国を守りうる能力がある、との信頼感を失っていた」とSaleh氏は自宅でのインタビューで語った。「カルザイ大統領は、NATO軍は敗ける、と宣言したことはないが、彼がこの作戦にプライドを抱いて対処していないことでも、彼がその実効性を信じていないことは明らかだ」

 大統領に近い人々は、昨年夏の国政選挙において、独立した選挙監視機関のモニターたちが…カルザイ氏の名の下で100万票近くの票が不正に盗まれた、との結論を出して以降、彼が米国人への信頼を失い始めたのだという。12月にオバマ大統領が、2011年までに米軍兵力を削減するという意志の宣言を発して以来、その亀裂はより深まった。

 「カルザイ氏は私に、この国の状況の解決のためには米国人はもはや信頼できないと言った」と、カブールのある欧米の外交官は匿名を条件に語った。

 「彼は、昨年の選挙の期間中に、欧米人が彼の法的な正当性を奪った、と信じている。そしてその後彼らは、この国を去ることをも公式に宣言した、と。」

 ─金曜日に、カルザイ氏にこの件でコメントを取るためのコンタクトはとれなかった。

 もしもカルザイ氏が、米国との密接な協働関係と、彼自身の軍とによってタリバンと戦うという決意が弱まっているのなら、それはオバマ大統領にとって問題となる。米国の戦争の戦略とは、タリバンの掌握した地域を奪回し、その地でカルザイ氏の軍と政府が取って代わり、このますます米国民にとって不人気な、費用の嵩む戦争への米国の関与のスケールを縮小していく… ということに大きく依存しているからだ。

 これまで、カルザイ氏との関係は時に不安定で、国際社会の関係者たちは過去にも彼が誤った判断を下す可能性がある、との懸念を表明していた。

 昨冬、カルザイ氏は、NATO軍が北部アフガニスタン全域でタリバン兵士たちをヘリコプター輸送していた折に、その作戦を批判した。今年の初めには、オバマ政権から批判を受けた後に、カルザイはその支持者グループに対し、彼自身がいっそタリバンに合流する可能性さえある、などと語った。

 米国政府関係者たちは先月、カルザイがホワイトハウスを訪問した折に、カルザイとの関係修復を試みた。無論多くの課題においては─例えばタリバンの指導者たちの一部と接触し、彼らの武装戦士たちの立場を翻させて(政府の側につくように)説得するというようなことで、カルザイ氏と米国の関係者たちは同じ立場の側にあるのだ。
 
 しかし、彼らの間で動機が異なることははっきり見て取れた。米国人とNATOのパートナーたちは、何千何万もの追加勢力を同国に追加派遣し筋金入りのタリバンを弱体化して、彼らグループを交渉のテーブルに着かせよう、としている。しかしカルザイ氏は、米国主導の攻撃的戦略には実効性はない、と信じているように見える。

 大統領宮殿における記者会見で今週、カルザイ氏は、6月2日のロヤ・ジルガ(国民平和会議)への攻撃におけるタリバンの役割についての見解と、NATO軍への信頼感についての質問を受けた。彼はどちらの質問への答えも拒絶した。

 「誰がやったのか?」と彼は攻撃についてたずねた。「その問いへの答えは、我々の治安組織が用意すべきことだ」と彼は言った。

 「我々はすべての状況の改善のため、引き続き努力している」とカルザイは(英国のデビッド・キャメロン首相に続いて現れて)英語で言った。あるNATOの上級官僚は、NATO同盟国の強力な支持を得ていたAtmar氏と Saleh氏の辞任とは「極度に破滅的な」ことだ、と述べた。


 その官僚はカルザイ氏について─「私が懸念するのは、彼に戦時のリーダーとしての能力があるか、ということだ」と言った。

 そのNATOの官僚は、米軍司令官たちがカルザイ氏に、平和会議への攻撃が、タリバン傘下で戦う有力指導者の一人Jalalhuddin Haqqanに忠実な武装兵士たちによる行為だとする、圧倒的な証拠を提示した調査書類を渡したと述べた。

 「これには疑いがない」とその官僚は言った。

 Saleh氏とAtmar氏の辞任は、アフガン指導部の中でタリバンと彼らのパキスタンのパトロンたちとの交渉の最適の手段であった部分の深い亀裂を暴露した。

 Saleh氏はタリバンと、またソ連軍と戦った伝説的司令官・故Ahmed Shah Massoudの元側近だった。Massoudの元副官たちは主にタジク人であり、彼らは現在、北部アフガニスタンで重要なリーダーを務めていて、国民平和会議ロヤ・ジルガには参加していない。Saleh氏のごとく、彼らはタリバンやパキスタンに対する強硬派(ハードライン)的なアプローチによる交渉を望んでいる。

 カルザイ氏は圧倒的多数のタリバンと同様に、パシュトゥーン人である。彼は今や、より和解的なアプローチを望んでいるようだ。

 ロヤ・ジルガの最後にカルザイ氏は、拘束中のすべてのタリバン兵士の逮捕のケースを再調査して、極端に危険度の高いと思われる人物以外を釈放するための委員会発足を宣言した。同委員会は、カルザイ政府の数名の上級メンバーが率いているものの、Saleh氏の束ねる諜報機関National Directorate of Securityは除外されている。

 Saleh氏はインタビューで、この委員会からの排除は彼の感情を害したと語った。彼にとって主要な職務とは、タリバンを理解することなのだと彼は言う…そして彼の諜報機関をこの委員会から排除することで、カルザイ氏が札付きのタリバン兵士たちを解放してしまう可能性があることを、彼は懸念している、という。

 「彼の結論というのは…多くのタリバン兵士が誤って拘束されており、彼らを釈放すべきだということだ」、「タリバン(政権)の崩壊以来、すでに10年が経過している─それは我々が敵とは誰なのかを知らない、ということだ。我々は人々を誤って拘束している」 と、(カルザイは考えている)。


 Saleh氏はさらにロヤ・ジルガを批判して言う、「ここにジルガの意味がある─」、「"私はあなたと戦いたくはない。私はドアを開けてあなたを待っている。私があなたを山岳地帯に追いやったのは間違いだった。” ジルガはアフガニスタンにとっての勝利ではない、それはタリバンにとっての勝利、というわけだ」─

 カルザイ氏はここ何ヶ月か、タリバンとの間の橋渡しを試みてきた。今年の初め、彼の弟Ahmed Wali Karzaiはタリバンの副司令官Mullah Abdul Ghani Baradarと秘密会合をもっていた、とアフガンの元上級官僚は言う。

  カルザイ政府の初期の内務副大臣だったHilaluddin Hilal氏によれば、Ahmed Wali KarzaiとBaradarは1月に2度ほどパキスタン国境近くのSpin Boldakで会合した。その会合は、カンダハル県の影の知事(shahow governor)であるMullah Essa Khakrezwaと、タリバンの諜報官僚Hafez Majidの仲介によるものだった、という。

 カブールのある欧米のアナリストはHilal氏の情報は正しい、と保証した。前述のNATOの上級官僚は、彼もSaleh氏もその会合のことを知らなかったという。Ahmed Wali Karzai氏はその件に関するメールでの質問状に回答していない。

 その会合における決議の内容は判らない、とHilal氏はいう。Baradarは1月に、パキスタンと米国のカラチでの合同襲撃作戦において逮捕された。しかしカルザイ氏による、タリバンとの交渉の試みは継続された。

 「彼は、米国は留まり続けるための余力を持たない、と考えている」とHilal氏はいう。Saleh氏は、カルザイの戦略はパキスタンへの、より和解的なラインも含んでいるという。それが本当なら、それは就任以来9年間、パキスタンによるタリバン反乱勢力への支援を常に非難してきたカルザイ氏にとって状況の大転換に達する可能性がある。

 Saleh氏はアフガニスタンが、パキスタンとの間で、国の弱体化に繋がる(彼の呼ぶところの…)「不名誉な取引」の受け容れを強いられることを恐れているという。

 彼はカルザイ氏は愛国者だ、とみているという。しかし大統領は、もしもパキスタンによる支援に依存するならば、それは過ちを犯していたのだという(パキスタンの指導者たちは長年カルザイ氏に、彼らが強硬派とみるSaleh氏の罷免を求めていた。)

 「彼らは彼を尊敬しているように装いつつ、彼の弱体化を図っている。彼らは弱いアフガンの指導者は支持するが、彼のことを決して尊敬はしない」、…とSaleh氏は言った。
http://www.nytimes.com/2010/06/12/world/asia/12karzai.html?pagewanted=all


*上写真:1月のカブールでの勲章授与式で、当時アフガン内務大臣のHanif Atmar氏、。

*下写真:前アフガン諜報部長官のAmrullah Saleh氏、水曜日にカブールで。

* [ 田中宇:アフガン撤退に向かうNATO ]

http://tanakanews.com/100712afghan.htm
↑田中宇氏の解説では、アフガン政権はすっかりタリバンとの和平に傾いているとする…が、ペトラエウス着任後は180度情勢が急転。新司令官は反乱勢力タリバンのリーダーらのテロリスト指定を要求した…

*ペトラエウスはまた、着任早々カルザイ大統領との最初の会談で、彼の強固な反対を押し切って、アフガンの内務省が直接統括するとの条件で、反タリバンの全国的民兵組織の設立にも同意させた(イラクのスンニ派覚醒部隊をコピーした戦略)



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