Houthi fighterin Yemen |
シーア派とスンニ派が、イエメンをずたずたに引き裂いている─
米国は、その軍事中枢をフーシ族に乗っ取られたイエメンの政権が、反アル・カイダの闘いの協力関係から撤退するのでは、と怖れている─
By Zvi Bar’el (ハーレツ、2014,12/27)
Shi'ites and Sunnis are tearing Yemen to shreds
アラビア半島の南端にあるのは、イエメンと呼ばれる国だ。そこにはおよそ2千4百万人の人々が住み、その半数は貧困ライン以下で暮らしている。イエメンの子供たちは約60%が栄養失調を患い、また家族の約70%は政府や国際機関からの生活保護を必要としている。米国は、その軍事中枢をフーシ族に乗っ取られたイエメンの政権が、反アル・カイダの闘いの協力関係から撤退するのでは、と怖れている─
By Zvi Bar’el (ハーレツ、2014,12/27)
中東で最も貧しい国・イエメンは、西欧諸国やメディアの関心のレーダーの許にあるといえる。イエメンはアラブの春以降、解体しはじめた国々のリスト上に…リビアとシリアに次いで最期に連なるのだ。紅海航路のルートの戦略的な要衝にも位置しながら、推定30億バレルの石油埋蔵量を有するその国は、サウジ・アラビアからの援助にも大きく依存している─2012年におけるサウジからの援助金額とは、40億ドルにのぼる。
今やサウジ・アラビアは、主に同国の市民たちの燃料費を賄っていた援助金カットを検討しており…イエメンにかけた首縄は、よりきつく締めつけられそうだ。このことは7月以来、イエメンの人口の約45%を占める少数派のシーア派と、多数派のスンニ派との流血の争いが続くためで─イエメンでは中央政府というものが、単なる理論的な概念にすぎないことを意味する。その戦争とは宗教的な戦争ではなく政治的なものだ。それは権利や機会のための…そして、政府や予算を分け合うための戦いである。
イエメンのシーア派とは、イランのシーア派やシリアのアラウィ派などとは異なる。彼らの多くは、シーア派のなかでも主流とはかけ離れたザイド(Zaidi)派に属している。イランのシーア派は、彼らのことを異端とみなしている。しかし、その戦争とはザイド派(※イラクでISISにメンバーが処刑・虐殺されたヤズィーディYazidisと彼らとを混同してはならない)と、イエメンのスンニ派の主流勢力、あるいは、ワッハーブ派の急進勢力との戦いではない。ザイド派の多くは北イエメンのサウジ国境地帯のSaada行政県の中枢的存在であるフーシHouthi部族の長に忠誠を誓っているのだ。
フーシHouthi族の"ファミリー"の間での暴力的な抗争が生じて以降、北部イエメンでは近年、反政府勢力として戦ってきた彼らのリーダー、35歳のアブドル・マリク・アル・フーシ(Abdul Malik al-Houthi)がこのグループを鉄拳支配しているらしい。この戦いに加担しているのは”神のパルチザン”を自称するフーシ族と、スンニ派のアル・カイダ、そして、民衆総合会議(the General People’s Congress=イエメンの支配政党であり追放された前大統領アリ・アブドラ・サレハAli Abdullah Salehや現大統領アブド・ラブハ・マンスール・ハディAbd Rabbuh Mansour Hadiにとっての苦々しききライバル)などだ。サウジ・アラビアはこの国内的抗争にも参画して、政府側を支持しているのだ。イランは、フーシ族を支持して援助しているものとみられる。彼らの頭上には、米国の軍事ドローン(無人偵察機)が飛び交っており、イエメンのアル・カイダ基地を攻撃し続けている。しかし、イエメンという国は、中東の革命運動の結果、生まれた分裂国家の主な事例としてみられるにも関わらず、実はこの国は、それよりずっと以前から分裂していたのだ。同国は、大金で購われた部族間の不安定な同盟関係や、南部と北部の歴史的な反目関係などにも依存している。
イエメンでは、アラブの春で起きた革命が政府に変化を呼び醒ました後、希望の「切れはし」が生じて…昨年中には、フーシ族が9月の武装蜂起を通じて首都サヌアと他の多くの地域を急激に制圧してから進展した戦闘によってのみ込まれている。彼ら(フーシ)は…自らの法的制度や、独立した警察ノ勢力を設立し、同時に各省庁を司る6人の閣僚を含む公式の政府も樹立している。彼らは防空システムを支配して、イエメン軍上級幹部らを自宅に軟禁し、主要な軍の基地の支配権も奪っている。
木曜日に彼らは、(フーシ族の拠点の)サアダ行政県の諜報部の前司令官で、イエメンの諜報部の長でもある、Yahya al-Maraniを誘拐した。11月上旬に就任発表した36の閣僚からなるイエメン政府は、フーシ族の命令に従うことはできない─フーシは、7月に首相に対して燃料の補助金の削減中止を強いた後に、国家予算の見直しも要求している。2004年に、北イエメンのフーシ族がひどい差別待遇に対して抵抗蜂起して以来、生じてきた(こうした)動きというものが、今や、民衆の広範な支持を得ながら政府に要求を発するものとなっているのだ─しかし政府は、自らの采配によって彼らの要求を満たせるほどには、十分なリソースをもっていない可能性がある。
一方、フーシ族とはイエメンのアル・カイダ分子の仇敵でもあり…また、彼らはアル・カイダの影響力をけん制するためにイエメン当局とも協力している。それを理由として、米国は彼らをこの地域のポジティブな勢力だとみなしており、同時に、彼らはイエメンでは(その宗教的信条の類似性ゆえに)イランの代理勢力として疑われてもいる。彼らの類似性とは、サウジや湾岸諸国の懸念の種ともなっているのだ。そうした国々は、自国の領土内におけるシーア派勢力の反乱(2011年にバハレーンで生じたような…)が起きる事を、懸念しているのだ。
イランの影響力による脅威とはフーシ族が、サヌアの西200キロのAl Hudaydahの港湾都市(イエメンの輸入物資の70%を輸入する貿易港である)を制圧して以来、高まっている。何らの抵抗も生じずに実現したこの重要都市の制圧が、フーシ族に海の玄関口というものを与えた─その海港によって彼らは、イランからの軍事的援助をも得ることができる。…それでも彼らは、バブ・エル・マンデブ海峡にまで支配を拡大しよう、とは考えていないようだ─なぜなら、イエメン南部には、スンニ派の多数派の勢力と、ワッハーブ派の活動勢力が、アル・カイダ分子と共に、居住しているからだ。米国やカナダ、英国、フランスの駆逐艦も、バブ・エル・マンデブ海峡を巡回しており、彼らが軍事介入したならば、地域の奪取を阻止することもできる。
これまでのところ、フーシ部族は彼らの闘争を、倫理的、あるいは宗教的な戦いと捉えることを避けて、彼ら自身の要求を、社会経済的な正義(…それを通じて、貧しく不遇な人々を保護し、国の資源を偏見や差別なく分配するための…)のマニフェストである、と位置付けているようだ。彼らは、イランからの支援を得ていることを強く否定する。彼らフーシは、イエメン国家の分裂を阻むために、2014年に決議された州制度への分割案の廃止をも求めて…それが彼らを石油産出の豊富な地域から締め出し、彼らの「生得権」を奪うものだ、とも主張する。フーシはまた、彼らがサヌアから撤退することを求めている国連決議にも反対しない、と宣言しており…彼らがこれまでに設置した検問所の廃止や、彼らが徴収した武器の明け渡しにも応じる、としている。彼らのリーダーは、そうした要求には従う…と約束しているものの、具体的にいつ、実行するかは約束していない。
そんななかで、欧米超大国は、イエメン情勢への介入を避けている。米国は、2011年以来イエメンに9億ドルの援助を与えているが、フーシが主要な役割を演じているイエメン人たちの政府に何が起こるのか、を注視しつづけている。米国は、フーシが軍事的な中枢を掌握して以来、イエメンの新たな政権が米国との対アル・カイダの共闘関係をおりるのではないか、とも危惧している。一方で、フーシは(厳密にいうならば)m彼ら自身の力と、アル・カイダやイスラム原理主義勢力とのライバル性によって米国の効果的な同盟者にも転じる、可能性がある。
イラクや、アフガニスタン、シリアでも存在した状況のごとく、米国は、その国の政府よりも地元の民兵や部族勢力との協力関係を見出すことで、対テロ戦争のポリシーを実現できるのかもしれない。これらの国々でも起きたことのように、国内勢力の対立と、そして主に、極端な貧困というものがテロリストのグループとの戦いの主な障害となる。しかしいずれかの超大国や国家連合が、イエメンの経済的な看護婦の役割を買って出ることは疑わしいことだ。イラクとシリアは、より一層、面白味のある(利権にかかわる)国であるとともに一層の脅威ともなりうる。イエメンもまた…それらの国々とも一線に並ばねばならないのだ。
http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.633964
イラクや、アフガニスタン、シリアでも存在した状況のごとく、米国は、その国の政府よりも地元の民兵や部族勢力との協力関係を見出すことで、対テロ戦争のポリシーを実現できるのかもしれない。これらの国々でも起きたことのように、国内勢力の対立と、そして主に、極端な貧困というものがテロリストのグループとの戦いの主な障害となる。しかしいずれかの超大国や国家連合が、イエメンの経済的な看護婦の役割を買って出ることは疑わしいことだ。イラクとシリアは、より一層、面白味のある(利権にかかわる)国であるとともに一層の脅威ともなりうる。イエメンもまた…それらの国々とも一線に並ばねばならないのだ。
http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.633964
(関連記事)
http://mainichi.jp/select/news/20150121k0000m030150000c.html イエメン:武装組織フシ、大統領府突入し制圧の情報
(1月21日)イエメンのシーア派武装組織フシは20日、首都サヌア中心部にある大統領府で、治安部隊と交戦、内部に突入し大統領府を制圧した模様だ。ロイター通信などが治安関係者の話として伝えた。
Yemen Civil War? Masses Rally in Capital & South Secedes
(1月26日)フーシ武装勢力にのっとられた首都サヌアで、市民たちが反フーシの抗議デモを展開
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/cat_73689.html
(2月15日)イエメン情勢(中東の窓)
イエメン情勢につき、湾岸協力理事会は14日外相会議の最終コミュニケで、クーデターを非難するとともに、国連安保理に対して、憲章第7章(強制措置)に基づく決議の採択を呼びかけました。
コミュニケは、正当性(hadi大統領)の支持とこれを妨げるものに対する制裁を呼びかけているので、hothyグループやサーレハ前大統領等に対する、制裁を求めているものと思われますが、al jazeera net は軍事行動を可能とするとコメントしています。
このような動きについては米ロシア等の常任理事国始め、安保理メンバー内でも大方の支持がありそうですので、イエメンに関する次の段階は安保理決議に基づく制裁、と言うことになりそうです。
しかし、これまでも制裁だけで物事が解決した事は殆どなく、al jazeera netの言うような軍事行動の問題となりそうですが、一体だれが主導するのでしょうか?オバマはそれでなくとも中東への介入に消極的な上に、イラク、シリアで手いっぱいです。
結局は湾岸諸国と言うことになるのかなと言う気もしますが、米国の関与なしで、彼らにそれだけの力があるのか、又そもそも対岸の怖いお兄さん(イランのこと)を前にして、それだけの勇気があるのか否か、今後彼らの結束力と実行力が問われる事態が予想されます..........
No comments:
Post a Comment