Thursday, December 3, 2015

トラブルに見舞われた楽園モルディヴ- Q&A: The Maldives - Trouble in paradise

(※関連記事:モルディブに非常事態宣言 …政情不安に揺れるラグジュアリー・リゾート?

IN RETROSPECT
水中閣議でCO2削減を訴えたモルディヴの前大統領、モハメド・ナシードは、
今は獄中の身に…

トラブルに見舞われた楽園:
モルディヴ、Q&A
Q&A: The Maldives - Trouble in paradise 
(2012/2/11, CNN

2008年の大統領選で、政治改革のプラットフォームを掲げて当選した元反体制派、モハメド・ナシードは(警察が抵抗して叛乱したのを受けて)火曜に辞任。元副大統領Dr. Mohamed Waheedに政権を委ねる直前、彼は「自分が大統領を続ければ、人々がより一層の苦しみを被るだろう」と述べた。しかし、翌日には更なる暴力沙汰でナシードや他のモルディヴ民主党員らが殴打され、ナシードの支持者らによれば彼が銃口を突き付けられて辞任を強いられた、という。 ナシードの辞任は、彼の行なった判事の拘束が憲法上の危機を招き、野党が週間の抵抗を図った挙句の事だ─しかし、世界の注目を集めたのは、昨年のクリスマスに野党リーダーたちからモラルの弛緩が指摘されて…突如リゾートでのスパやアルコールの提供を彼が禁じた事だった。

<モルディヴとは何か?> 
インド南端の沖合いにつらなる千二百の島々とは、人口35万人の前・英国保護領のスンニ派イスラム国家だ。しかし、そのビーチの手つかずの自然と、豊かな海洋動物がハネムーン客に特に人気で、2010年には80万人近くが訪れた─世界中からの旅行客がフォーシーズンズやバニャン・ツリー、シャングリラ等の多国籍ホテルチェーンの運営するリゾートに結集、コンデ・ナスト・トラベラー誌の2011年の読者投票では島国国家の旅行先のトップを飾り、2005年以来英国のツアー会社Kuoni でも顧客の旅行先の筆頭だ。国家経済の1/3を観光業で賄うモルディヴは、2004年の南アジアの津波では数島の島々が破壊されて幾百万ドルもの犠牲を払った。

<モハメド・ナシードとは何者なのか?>
 ナシードは2008年、この島国で初めて真に民主的に選ばれた大統領として喝采の下に着任。44歳の彼は30年間政権を握ったMaumoon Abdul Gayoomを破った。彼は前任のGayoom政権下では政府を批判する記事を書いた等の咎で繰り返し投獄され、合計6年間を刑務所で過ごした。 ナシードが2009年に国際的注目を集めたのは…海抜が最低の位置にある国家モルディヴにとっての地球温暖化の脅威に対する認識を高めるべく、スキューバ・ダイビングのギアを身につけた閣僚たちと共に彼が水中閣議を開いた事だ─この国の最高海抜地点とは海面から2メートル程しかない。

<スパはなぜ問題を引き起したのか?>
  トラブルの第一の兆候とは、クリスマス休暇に訪れた─観光省が国中のスパの営業を禁じて、世界を驚かせたことだ。この動きは、高級客向けのリゾートでの マッサージやスキン・トリートメントを客が受ける権利を巡って対立を引き起こした─多くの高級顧客は、ひと晩の宿泊に何千ドルもの金を投じるが─反対派の グループは、このモスリム国家でのイスラム的価値のより厳格な実施を求めた。 この状況は、野党グループが1223日にデモを実施して…特に首都マレその他の人口過密地域でのマッサージ・パーラー等の禁止を擁護した後に、頂点に達した。政府はその要求を無視せずに、全てのマッサージ・パーラーとスパの閉鎖を命じて更にリスクを拡大し、反対派による政府非難が激化した。 首相府は当時─この禁止令の拡大の意図は、反政府派の人物らの立場のコントラストを際立たせる為だったという声明を発し、こうも言った、「皮肉なことに、旅行者に向けた スパやアルコール、豚肉等の販売に反対している同じ野党リーダーたちとは、この国最大のリゾートオーナーたちでもある…」、そして政府は、1月初旬にその 決定を撤回した。 

<そして今週何が起きたのか?> 
1月16日に、軍はモルディヴ刑事裁判所の首席判事Abdulla Mohamedを逮捕した─彼が国の司法を支配し、腐敗への捜査を怠ったとの容疑で。火曜日のガーディアン紙では、ナシードの元アドバイザーMark Lynasが「力ある前政権の連盟者を守るべく、腐敗の容疑の訴追をたびたび拒否した上級裁判所判事の逮捕で、危機はスパークした」などと書いた。1月下旬には、この騒動に国連が乗り出し─政府がモハメド判事を釈放しないなら彼を犯罪容疑で訴追すべきだ─と述べた。そんななかで政府は、国連の人権高等コミッショナーに、この案件に関する国際的な司法パネルを設置し聴聞会を開くようリクエストした。 「この地では幾つもの抵抗デモが野党連盟者らの手で行われて…彼らはすでに19晩にわたり政府によるモハメド判事の釈放を求め続けている」、とモルディヴのジャーナリストAhmed RasheedはCNNに語った…その日、抵抗デモの暴徒が国営TV局を乗っ取ったとされ…同日遅くに、暴力の激化を怖れたナシード大統領は辞任した。 水曜日、ナシードのモルディヴ民主党は、前・大統領が警察に殴打された、と述べた。首都マレが暴力の掌中に陥るなかで議員4人が逮捕され、同党の党首は重篤な状態で病院に搬送されたと、議員のEva Abdullaは言う。

<この国への旅は安全なのか?> 
英国政府は、モルディヴの首都マレへの重要性の薄い旅行を差し控えるように警告したが、マレの国際空港やリゾートでのストライキは、特に、報じられなかった。オーストラリアと米国も、旅行者に警告を発した。新大統領のWaheedは、 市民や旅行者に対して─同国が安全で、ビジネス環境もオープンである旨を保証した。その声明で、彼は政党や大衆間の相違も国の団結の下では脇に置くべき事 柄である、と述べた。「ごく最近、この国は難しい事態に見舞われているが、モルディヴ国民は重大な決断を行った。その決断に従って、いかなるコストを払お うとも法のルールが維持されるべきだ」。
水曜日に警察はマレで催涙ガスを噴射し、デモの参加者を警棒で殴打したとAbdullaはいっている。その暴力で路上では、幾人かの抵抗者の血が流された。彼女は、「その瞬間に秩序は完全に失われたが、誰も秩序を維持する任にはなかった」、と言う。国連の最上級官僚Oscar Fernandez-Tarancoは、火曜日に、政府リーダーや各政党との対話のためにこの島を訪れた。その声明のなかで、彼は世界が「モルディヴで獲得されてきた民主的な成果を維持するよう」望むとも述べた。 http://edition.cnn.com/2012/02/08/world/asia/maldives-dispute-explainer/index.html

モルディヴ政府、水中閣議で温暖化に警鐘
 この土曜日、地球上で最も低海抜にある国家として、地球温暖化による脅威を訴えようと…モルディヴの閣僚メンバーらがスキューバ用ギアを身に付け、ハンド・シグナルで合図を送りつつ、水中閣議を行った。大統領ナシードと13人の閣僚らは軍用の島Girifushi島のラグーン沖の、水面下6>メートルの海底に置かれたテーブルで会議をした。 サンゴ礁が背景のこのミーティングでは極地の氷が溶けて100年以内にインド洋の島へと押し寄せる危険性に注意を促す、という目的で、閣僚らがCO2削減を誓う書類にサインをした─ http://www.huffingtonpost.com/2009/10/17/maldives-meeting-underwat_n_324772.html






※動画:
 地球を救おうと、モルディヴの閣僚らが水中閣議


https://www.youtube.com/watch?time_continue=16&v=g0VhOcuPWkI 
Maldives cabinet meets underwater to save the earth(News)

Democracy Now!英語版: Maldives Holds Cabinet Meeting Underwater 1 https://www.youtube.com/watch?v=QGupkz3ZCb8

Democracy Now!日本語版 追放されたモルディブ前大統領モハメド・ナシードが語る
http://democracynow.jp/video/20120409-2 


モルディヴ大統領、辞任を強いられる(2012/10)

http://edition.cnn.com/2012/02/08/world/asia/maldives-dispute-explainer/index.html


←(ナシードの取組みや水中閣議を映画化 『南の島の大統領-沈みゆくモルディブ-The Island President:気候変動問題に取り組む大統領ナシードを描いた、2011年のドキュメンタリー映画、製作はアメリカのドキュメンタリー映画会社アクチュアル・フィルムズ。ジョン・シェンク監督、音楽はRadio Heads…)

ISIS Oil イスラム国の石油 By Vijay Prashad


ISIS(イスラム国)の石油 ISIS Oil BY Vijay Prashad (12/3/2015 Counter Punch)

12月2日、ロシアの防衛副大臣Anatoly Antonovは、トルコIS共謀していると訴え強い抗議の声明を発した。その容疑を述べた書面とは長大かつ詳細にわたっていた。それは、多くの側面について特に、「ISの石油」に対する憤激を表明していた。ISはMosul近郊で油田を支配しているが彼らはそれらの油田から毎日、何百万ドルもの資金を得ている。ISはいったいMosulの油田からどのようにして石油を市場に届け、売り捌いているというのだろうか?

実のところISは、クルドの自治政府が、バグダッドのイラク政府の主権の意志に何ら左右されることなく石油密輸を行ってきた古いネットワークを利用している。は、クルド政府が〔イラクの〕北部で自治権を握って以来、幾十年も論議を呼んでたものだ。クルドの石油は密輸業者の手へと売り渡されて、彼らはそれをトルコ国境を跨いで、タンカーまで陸上輸送する。そして、トルコ領内ではトラックは地中海岸の港のCeyhanまで、一カ国ほどの距離を運ばれる。トルコ政府の管理する港Ceyhanから、石油はMalta島までの海上輸送を担う業者へと売却された後に─イスラエルのAshdodなどの最終目的地に向けて、運ばれる。このことは、長らくイラク政府とクルド自治政府の間で論争の種なってきた。この件については、2015年にTolga Tanışが彼の著書、Potus ve Beyefendiのなかでも描写していTanışは、この不法なもくろみに、トルコのRecep Tayyip Erdoğan首相の義理の息子Berat Albayrakが関与している、とも告発した。ISとはただ単に、こうしたクルド自治政府の役割を新たに引き継いだに過ぎないのだ。

ISは、それをどうやって実行しているのだろうか。ISは、その石油をCeyhan港への陸上輸送の業者へと売却する。しかし、このストーリーは、今や、ますます面白味を増している。…トルコ国内で、この石油に関与している者とは誰なのだろうか?ロシア人は、BMZグループが石油の輸送に関する大口の代理店である、といって非難した。BMZのオーナーの一人Bilal Erdoğan(BMZグループ総裁の息子)は、〔ファイナンシャル・タイムズ紙によるなら、〕先月、新しいタンカー2購入したのだという。それらの船の石油積載量は、増大しているのだ。これはISの石油なのか?ロシア人らによる訴えに関しては、さらなる調査が必要だろう。英国議会では労働党党首のJeremy Corbynがこういった、「我々は、ISの石油の密輸にどの銀行・どの国が関与しているのかを知る必要がある」。これは、最も重要な問いなのだが…そのことは、看過されてきた。

トルコではその大半が、周知の事実でもある─その国では、勇敢にもジャーナリストたちが、抜け穴だらけのトルコ-シリア国境地帯でのトルコ政府の役割について書いてきた。それが、すなわちErdoğan政権がメディアの後を容赦なく追い回す理由でもある 

Cumhuriyet紙のエディターCan Dündarと、同紙のアンカラ支局長Erdem Gülの逮捕とはそうした弾圧のごく一部だ。DündarGülは、向う見ずにも、トルコがシリアの過激派勢力に補給を行っている写真を公表した。Erdoğanは、トルコ国内のISのリクルート・センター(の幾つか)を取材したNew York Timesの(女性)記者、Ceylan Yeginsuの後を付けまわし。そこには、こうした事柄の報道の自由など全くありはしない。もしも誰かがこうした者たち(Bilal Erdoğan, Berat Albayrak, Ahmet Çalık等)のうちの誰かの名を口にしたなら、告発される危険に遭遇する。 

Çalıkとは、Cehyn製油所の王国の鍵を握る人物だ─それを通じて、ISの石油が海外へと運ばれている。それに対する偏りのない捜査は、行われるのだろうか?そうとは思えない。あまりにも多くの権益が関与し過ぎている。Erdoğanは、もしもそうした繋がりが僅かでも証明されたなら、辞任すると言っている。そのような繋がりの一つが暴露される可能性など、ほとんど存在しない。

それゆえに、ロシア人たちがこうした告発を行ったことも、トルコ政府とロシア政府の間の緊張を高めたというだけだった。もちろん123日には、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が〔トルコ軍によって領空侵犯を口実に〕撃墜された〔ロシア軍の〕航空機に関する報復が行われるための機は、未だに熟さないと述べた。脅威のテンポは増しているのだ。

驚くべきことに、Ceyhan港とは、米軍機が離陸してシリアで目標を空爆するIncirlik 空軍基地からは、車で数時間の距離にある。そのことは、すなわちISの石油の密輸が文字通り米軍機の鼻先で行われている、ということだ。米国がISの目標を攻撃しはじめてから14カ月間、米国は石油タンカーへの攻撃を避けてきた。米国政府担当者たちは、彼らが石油タンカーを「コラテラル・ダメージ(付随的被害)の発生を怖れて」避けてきたという。事実─米軍が先月石油タンカーを空爆したとき、彼らはドライバーにリーフレットによって事前に警告していた(*註)。それは非常にノーブル(高貴)な行為だったが、もちろん…柄に合わない行為だ。米国は通常、攻撃目標に警告を行わない。それはただ、ロシアのジェット機が石油タンカーを攻撃した後に、攻撃し始めたというだけだった。
 

米軍はタンカーを、ロシア機が(それ以上)現れて欲しくなかったがために攻撃し始めたのだろうか?私が、この疑問を米国国務省の担当者に投げかけたところ、彼女は異議を唱えた。彼女は…米国は単に、タンカーの航行ルートに関する諜報情報を組み立てただけだった…ということそして今や、彼らはコンボイの車列を攻撃する準備がある…、とも語った。ロシアによるタンカー攻撃の後に行われたのは、単なる偶然だったのだ、という。

欧米によるシリアに対する空爆は今や、さらに激化している。フランスも、米国と共にこれに加わった。ドイツ人たちがフランスを支援しようとするなかで、今や英国人も空爆による攻撃を始めようとしている。空爆の歴史とは、ゲリラ勢力というものが空からの攻撃では容易に敗退しないことを示している。米国はベトナム軍を空から攻撃したが、戦争には負けたきりなのだ。第二次大戦において英国は、ドイツ軍の空爆が英国人の抵抗の意志を強めただけだった知っている。彼らは、こうした過去の教訓を忘れている。ヨーロッパ人たちは、難民問題の危機の解決を探っている。彼らはその空爆が彼らの利益となる、と信じている。それは、シリアでの難民の発生を加速させるに違いない。

トルコ政府が求める「緩衝地帯(バッファーゾーン)」の設定とは、ヨーロッパ人の利益に叶うものだ。彼らは、それが難民の為にもなると信じている。しかし、それは同様にタンカーを空爆するロシア軍を保護するものにもなる。それは、Corbynの要求の重要性を形造るものでもある─ISの石油パイプラインに対する完全な調査の必要性だ。こうした問いかけは次の様な疑問を呼ぶ:
 

1.Mosulから、トルコ国境へは誰が石油を陸輸しているのか?それらのトラックの所有者とは誰なのか?

.トルコ国境からCeylan港まで石油を陸輸している者とは誰なのか?それらのトラックの所有者とは、誰なのか?

3.ISの石油は、トルコ政府が所有する港Ceylanをどうやって通過しているのか?

4.ISの石油をトルコ国外で、遠方へと輸送している船舶は誰が所有していのか?

5.ISの石油の販売と、外国のバイヤーとの間の取引を仲介る銀行とはどこなのか?彼らもまた、ISの石油の〔犯罪的な〕密輸の関与者なのか?


こうした各項目への調査は、もはやその期限を過ぎている。ロシアによる告発を受け入れるだけでも、あるいは無視するだけでも、不十分なのだ。これらの調査とは、現実にISの資金源となっているパイプラインを明らかにするための機会として、用いられねばならない。シリアのオマール油田(Omar fields)に対する空爆(英国が今日、それを行った)とは、それだけでは十分ではない可能性がある。それは、ISの石油というものに関するより一層、大きな証拠の塵払いをして露呈させるためのものであらねばならない。
http://www.counterpunch.org/2015/12/03/isis-oil/ 

Vijay Prashad, director of International Studies at Trinity College, is the editor of “Letters to Palestine” (Verso). He lives in Northampton.

*註:Newsweekより
「…国防総省の広報担当者によれば、今月行われた米国主導の有志連合による空爆で、イスラム国の石油密輸に使われる燃料輸送車116台が破壊された。攻撃の45分前には運転手に逃亡を呼びかけるリーフレットが散布されていた。これに加えて21日には、イスラム国の燃料輸送車283台が有志連合の攻撃によって破壊されたという。
また、8日には、有志連合の空爆により、トルコ国境に近いシリア領内の石油精製所3カ所が破壊された。
米国が「史上最も裕福なテログループ」と呼ぶイスラム国は、国防総当局者によれば、10月までは月4700万ドル(約58億円)もの収益を石油の密売によって得ていた。」
(焦点:イスラム国との経済戦争、米国が投入する「新兵器」~11/25, Newsweek)

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2015/11/160306.php

Friday, September 25, 2015

シリアの叛乱勢力曰く、「ロシアによる軍事展開は戦争の激化と長期化を生む」


ロシア軍がシリア紛争への介入を宣言した…空爆の契機となったのは、アラウィ派拠点への叛乱勢力の侵入だったという
Syrian rebels say Russian involvement will escalate and prolong war- Rebels see tougher war with Russians in Syria, evoke Afghanistan
By Suleiman Al-Khalidi and Tom Perry (2015/9/21, Reuters)
シリアのバシャール・アル・アサド大統領の側に大きな損害をこうむらせた叛乱勢力はこういう─もしもロシアが、その同盟者らに加担して介入してきたなら…単に、戦争のさらなるエスカレーションを招くだけではなく…叛乱勢力を支援する湾岸アラブ諸国も一層の軍事支援を注入してくるかもしれない─と。
ロケットランチャーの傍らで、Daraa,にいる
アサド大統領に忠実な空軍基地への攻撃
作戦準備をしつつ、携帯無線で話す自由シリア軍兵士(7/27)

ロシアによる軍事力派遣は、叛乱勢力の間でも紛争を再評価しようという動きを喚起している。叛乱勢力が、この何か月かにわたって西部シリアに侵攻したことが、ロシアの決断の触媒となった可能性がある。米国の政府担当者はロシア軍はすでに到着しつつあるという。
Reutersがインタビューを行ったある叛乱軍の兵士は…すでに、こうした地域でシリア政府勢力からの強い抵抗に遭遇したと語った─とりわけアサド一族のアラウィ派が中央拠点とする地中海沿岸地域で。そして、ロシアの参戦を契機に一層、激しい闘いも予想されるという。
ロシアによる武力の展開とは、サウジなどによる武力支援の拡大の契機になると予測する人々もいる。そのことは、ロシアの関与が導くかもしれない危険性のひとつを示唆する─すなわち、サウジやイランといった地域勢力の間で複雑に錯綜しつつある戦局が、外国の介入によりさらにスパイラル的に拡大していく、という危険性だ。

より一層の武力支援を喚起したいと望む叛乱勢力は、アフガニスタンでのソ連軍敗退の記憶を彼らの闘争のモデルに想い起しながら、ロシアを新たな占領者として描写している。しかし彼らは…このことは、すでに5年目に突入したこの戦争がさらに長引く可能性も示唆しているという。
「我々の計算によれば…この闘いはロシアが参加しなかった場合よりも、はるかに長く引き延ばされる可能性がある」と…ロシア軍が空軍基地(飛行場)で軍備を展開しはじめたラタキア地方において、叛乱軍兵士として戦うアブ・ヨウセフ・アル・ムハジェルAbu Yousef al mouhajerいう。
「ロシアによる関与とは、シリア政府を救うためのものだ」と、アサドが支配する西部地域に侵攻中の同盟軍の一翼をなすグループ、Ahrar al-Shamの兵士がいう。この記事のためインタビューした他の叛乱軍兵士たちとも同様に、彼とはインターネット上で会話した。
米国政府担当者はロシアがその空軍拠点に大規模な軍を派遣しつつある、という─そこには戦闘機や攻撃用ヘリコプター、重火器や海軍の歩兵師団500人も展開していると。ロシアはその究極の目標を明らかにしていないが、ダマスカス政府への支援とは、テロリストとの闘いが目的だとし─西部地域における叛乱勢力もまた、アサドにとっての最も切迫したリスクをもたらしている彼らの作戦区域が第一のターゲットになるものと認識している。
 
ロシアは、地中海岸のラタキアに近いシリアの都市、タルトスTartous に唯一の海軍基地を持つ。増大するイスラム国の脅威とは今や、アサドにとって第一の脅威ではなくなっているが…それでも、彼らも(ロシア軍の)攻撃目標となると予想される。
海岸地帯で戦闘を続けている(アルカイダのシリア支部である)ヌスラ戦線Nusra Frontなどの叛乱勢力は、その兵力の3割が外国出身のジハード戦士だが…彼らは、アラウィ派率いるアサド政府との闘いというものに鼓舞されて参加している。彼らの中にはロシア人やアジア人、チェチェン人もいると、今年の初めヌスラ戦線のリーダーは語った。
モスクワのロシア政府は、ダマスカスのシリア政府に対する軍事支援とは、テロと闘うためのものであり…シリアの国家体制を守り、「全面的なカタストロフ(災厄)」を避けるためだ、と称する。同政府は、より大量のニュータイプの武器を、人手の足りないシリア軍に送っている。そうした支援とは、アサドがすでに数年前から獲得している同盟相手のイランや、レバノンのヒズボラといった外国の支援に、さらに加えた支援となる。
 イランは、シリア政府を支援すべくイラク人やアフガン人の民兵勢力も動員している。

"MORE FEROCIOUS"

より一層、獰猛に─
政府側よりも一層の武器や、組織力に優れている叛乱勢力は…トルコやカタール、サウジなどによる支援を得ながら…アサドに対して、今年は北西部でも南西部でも、未曾有の挑戦を展開してきた。そうした国々はことごとく、アサドの権力の座からの放逐を願っている。
そして、最近の成果として、叛乱勢力は海岸線を望むアラウィの山地のすぐ東側に広がるガーブ(Ghab)平原へと侵入した。
ロシアの軍事展開が報じられる前でさえも、その地域では叛乱勢力が政府軍兵力のより強硬な抵抗に遭遇したと報じられた。「我々は、今やこれまでになく獰猛かつプロフェッショナリズムに優れた新タイプの兵士たちと戦闘を交えている」と、al-Mouhajerは言う。
「戦闘は変わった…我々は今や、彼らアラウィ派の本拠地に居る。」
そしてまた、別の叛乱軍兵士は言う、「我々が海岸線に近づけばづくにつれ、相手は戦闘のなかで、より獰猛になる。」
幾人かの叛乱勢力の兵士は、ロシアによる支援拡大の兆候はまだないと証言するが…空爆の精度が増しつつあり、新たなタイプの装甲車両も目につく、という者もいる。
シリア軍の情報筋がロイターに語ったところでは、先週には彼らの軍がロシアから供給された新たなタイプの武器の使用を始めたという。
「我々はロシアが海岸線の防衛をはじめており…そしてまた彼らは、我々が現在戦っていJoreen近郊での戦闘を先導しているとの情報も得ている。」と─戦時名Abu Anas al-Lathkaniと称するヌスラ戦線の司令官は語った。


"ANOTHER AFGHANISTAN" 
「新たなるアフガニスタン」
ソ連時代からモスクワの政府の同盟者だったダマスカスのシリア政府は、ロシア軍の勢力に対してその必要が生じれば共闘を要請する、としているが、現今の時点でのロシアの地上兵力の存在は否定する。しかし、政治・軍事状況に詳しいレバノンの情報筋によればロシア軍はすでに軍事行動に加わっているという。そして、それに対する叛乱勢力側の反応もみられる。
大規模な叛乱勢力のひとつであるジャイシュ・アル・イスラムJaish al-Islamは、インターネット上に、ロシア軍の使用するラタキアの飛行場に対するミサイル攻撃の様子の動画を投稿した。Jaish al-Islamにはサウジが後ろ盾に居ると広く信じられているが、ダマスカスの近郊にも新たな攻撃を仕掛けている。他の叛乱勢力はイドリブ県やアレッポでの新たな攻撃をエスカレートさせている。
別の叛乱勢力の兵士は、ロシア人たちが「棺に入って帰国することになる兵士の一群を送る…新たなるアフガン戦争を経験する」危険を冒している、と語る。1980年代にソ連に対抗したアフガンの叛乱勢力・ムジャヒディーンの成功には、米国とサウジの支援が不可欠だった。
だが、一部の叛乱勢力への限定的な軍事支援のみを行う米国は、武器が過激勢力の手に渡るリスクを恐れるなどの理由から、大規模な軍事支援を避けている。彼らは特に、対空砲ミサイルの供給のリクエストを拒否し続けている。米国の抱く警戒にもかかわらず、叛乱軍のなかにはサウジのような支援国が彼らへの支援を拡大せざるを得なくなる、と信じている者もいる。

「我々にもたらされている報告を超えた、シリアへのロシアのシリアスな介入というものは──戦闘のさらなる継続を意味するものとなる」と…自由シリア軍の南部シリアのグループ勢力のひとつAlwiyat Seif al-Sham のスポークスマンであるAbu Ghiath al-Shamiはいう。
「ロシアには、政治的な解決を図るという意志はない。彼らには、シリアの現体制の維持だけが望みなのだ。我々(自由シリア軍)を支持する諸国に関しては─私はそうした国々の我々への態度には変化があるだろう、と思う…支援の仕方において─あるいは政治的な方針転換を通じて」、と彼は述べる。(記者、トム・ペリー)
http://www.reuters.com/article/2015/09/21/us-mideast-crisis-syria-rebels-insight-idUSKCN0RL0E720150921
JapanTimes

Saturday, May 30, 2015

ボルチモアの州検察官、マリリン・モスビーの巻き起こす政治的旋風 Baltimore State’s Attorney Marilyn Mosby Is an Instant Political Sensation


 
(※前項:我々は知っている:何がフレディ・グレイを殺したのか?」のつづき)


フレディ・グレイ事件の州検察官、マリリン・モスビーが市の動揺を鎮める (5/2, NYtimes)
 
(冒頭略)父や祖父が警察官だったMarylin J.Mosby米国の大都市で最年少の州検察官の職に就く少し前に、黒人男性に対する国の犯罪司法制度のあり方に対しては厳しい見方を抱いていた。モスビーは、10月に母校のアラバマのタスキジー大学において行ったスピーチで、こう述べていた「マイケル・ブラウンが路上で警官に撃たれてから、78日が経過した」、「そして、エリック・ガーナーがニューヨークで警官に窒息死させられてから101日がたちNYの検死官が、それを殺人だと断定してから54日が経過したがいずれのケースも告訴には至っていない。」.

金曜日の朝モスビーは、それらとは別の独立したペースで手続きを進めることを表明した。フレディ・グレイを死に至らせた警官たちを告訴するとの驚くべき声 明は彼女を、全米のスポットライトのもとに正面きって晒して、全米各地で黒人男性に対する扱いの改善を求めている者たちのヒロインに押し上げた。しかし彼 女が余りにも早く動き過ぎるといった批判や政治的アジェンダを追い求めているといった鋭い批判の声も、多くの都市から上がっている。
35歳のモスビーの公的な肩書とはボルチモアにおけるメリーランド州検察官だ彼女には自ら、その町の問題の多いエリアで黒人として育った、という経験がある。ボストンのドーチェスター地域の学生として朝5時に起床して、裕福な白人地域へと1時間のバス通学をしていた彼女は、そこでは唯一の黒人の子供だった。 

Mos
byにスポットライトが当てられたのは、その職務に就いて4ヶ月目のことだった。11月に、彼女は警察の誤った行為を告発するとの強い訴えを発した結果、現職のGregg L. Bernsteinを破って当選したのだ。彼女の支持者の一人であるTawanda Jones〔彼女は兄弟のTyroneが警察との暴力的な争いで殺害されていた〕は、金曜日の彼女の声明を聞いて落涙した。

だが彼女に批判的な人々は、Mosbyの立ち回りは政治目的によるもので、そのやり方は拙速に過ぎ案件の進捗を損なう可能性がある、とも批判する。Grayの死から2週間もたたぬうちに、彼女が素早く容疑を宣言したことはボルチモア市を驚かせ、市の内外の法の専門家たちをも驚かせたなかには、彼女が不穏な情勢を鎮めようという願いから行動したのではないか、との疑いを抱く人々もいる。
警察による、マイケル・ブラウンの射殺事件(加害警官のDarren Wilsonは、告訴を逃れた)に言及して、「ファーガソンの事件で(司法当局が)すべての事実や細かな証拠を検討するために、いかに長くかかったのかを想い起すべきだ」と、ボルチモアの前・殺人事件検事(homicide prosecutor)のIvan Batesはいう。「告訴するのは簡単だが、有罪にすることは困難なのだ。」http://www.nytimes.com/2015/05/02/us/marilyn-mosby-prosecutor-in-freddie-gray-case-seen-as-tough-on-police-misconduct.html?_r=0

Marilyn J. Mosby金曜日にボルチモアの警官らの告訴を宣言(By Gabriella Demczuk, NYTimes
 
冒頭略)彼女に、警察への尊敬の念がないなどと考えるべきではない。Mosbyは、金曜日に彼女の母親も、そして、父親や祖父も警官だったと述べた。彼女の祖父は、マサチューセッツ州の黒人警官たちの、最初の連盟創立メンバーだったという。そうした歴史にもかかわらず、彼女はインタビューで、彼女自身が警官になることは一度も考えなかった、とも語ったのだ。 彼女は、未来の夫に出会ったTuskegeeのカレッジを修了し、2005年に学位を得たボストンのロー・スクールも卒業した後に、Mosby氏とともに彼の生まれ育った地のボルチモアに住むことを決意した。その地はボストンよりも物価が安く、彼らは、Reservoir Hillのうらぶれた地域の、ことさらに砂利に覆われた地所に家を買った。 
 
彼女は新居探しの道中を思い起してこういう「彼は築20年になる、屋根もなく、地面の真ん中から樹木の生え出た荒れ果てた空家を指さして、こう言ったのよ─”ここが、俺の住みたいところだって。」「そして、私はドラッグの青空マーケットや、路上のごみや、居並ぶ空家を眺めてこう言ったわあなたはクレージーだって」。

彼女は、2006年に州検察官のアシスタントとなる以前、ボルチモアの検察官オフィスで法務事務員として働いていた。彼女の被告人弁護をつとめるPettit氏は、彼女が頑固な、妥協しない性格だったと回想する。あるとき彼は、その行為が正当防衛だったと彼が信じている依頼人を、司法取引に応じさせようとしたという「私がみたものは、彼女が一寸たりとも譲歩などしない、という態度だったのだ」。

その後Mosby昨年、市の検察官に選出される前には保険会社Liberty Mutualの弁護士を3年にわたって務めた。彼女が民主党の予備選挙の場で、白人のBernstein氏に挑戦した際には、多くの人が彼女が敗北するだろうと予想したそして、彼女ははるかに多くの資金を投じたのだ、とPetit氏はいう。  メリーランド州のACLUの弁護士、Sonia Kumarは、家族にMs.Jonesのような警察官に殺された近親者を持つ)メンバーがいることはMosbyに票を投じるために〕投票に足を向けるか否かに。大きな影響を及ぼすものだと語る。  Kumarは、Mosbyに関して「彼女の行動とは、今日、彼女が誰なのかを示している」、ともいう。「何年ものあいだ、我々の市での、警察暴力による犠牲者たち(それは圧倒的に黒人である)は、愛する者たちのために正義を追い求めてきたものの、何も得られることがなかったこれは、歴史的な瞬間だ」。  

だが、Bates氏を含むMosbyの批判者たちは、彼女がGray事件のような複雑な案件を訴追するためには経験不足だ、とも指摘する。 警察の友愛会のボルチモア支部(Baltimore chapter of the Fraternal Order of Police)の長官である、Gene Ryanは、Mosbyが本件の利害に個人的な関わりをもっているとも非難する彼女は、Gray氏の家族の顧問弁護士だったWilliam H. Murphy Jr.の政治的支援をも受けていた、というのだ。彼は、彼女の夫の政治的な未来もまた、彼女と同様この件の行く末に左右されるだろうという。

金曜日にMosbyは、Gray氏の案件から手を引くべきだ、との勧告も拒否し彼女の夫に関して、「私は法を優先的に支持する。彼が、法律を作ってきたのだから」、と述べた。「そして、私は私の司法管轄地域における、いかなる訴追をも進める」と。

インタビューのなかで、彼女は市民と警察の間に長年、蓄積した緊張を見てきたといい、そのために困らされてきた、ともいう。ボルチモア市の戦争記念堂の前で行われた金曜の記者会見で、彼女は、ここ何週間かの出来事が彼女の心に強くのしかかっている、と明言した。
Mosbyの夫、市議会議員Nick Mosbyのインタビュー(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=OWs2jTi16iI 
Baltimore City Councilman Nick Mosby tells Sky News he understands protesters' frustration 

Baltimore States Attorney Marilyn Mosby Is an Instant Political Sensation By Ben Mathis-Liley ボルチモアの州検察官、マリリン・モスビーの巻き起こす政治的旋風(Slate.com,) 

前半略)…35歳のMosbyは、検察官オフィスの仕事に選ばれこの1月に就任したが米国の大都市の、トップ検察官のうちで最年少とされる。ボストン生まれの彼女は、ボストン・カレッジの法学部に通う以前、アラバマのタスキジー大学の学生だった時期に、夫となるボルチモア・シティカウンシル(市評議会)の議員NickMosbyに出会った(木曜日には、彼自身もスターになりつつある、とNPRのラジオ番組によって報じられた。)彼女は、2006年から11年にかけてはボルチモアの州検察官のアシスタントとして働き、その後、リバティ・ミューチュアル保険会社の、「フィールド・カウンセラー」としても働いた。

この1月の「Baltimore」誌のインタビューは…Mosbygが、法の執行官たちと、彼らの奉仕する地域コミュニティとの信頼の重要性について抱いている信念を論じたそれは、彼女が金曜日におこなった、力強く、時に雄弁でもある記者会見の場でも語られていたテーマだ。彼女は語った「ボルチモア市警組織の人々へどうか、6名の警官に対するこれらの告発というものが、警察全体へのものではないことを知って頂きたい。私は、5 代にわたる、法の執行官の家族出身だ。私の父は警官で、母も警官だった。叔父や、叔母にも数人の警官がいる。最近、亡くなった最愛の祖父は、マサチュー セッツの黒人警官組織の創立者の一人だった。私は、こうした警官たちの行動が、警察と検察官の重要な、機能する関係性にダメージを与える事があってはなら ない、ともいい得る我々が、今後も継続して、ボルチモアの犯罪を減らすべく協力しあっていくために。」  
 
そして彼女はその発言を「市の若者たち」にむけた言葉で締めくくった 「この街の若者たちへ私はあなたがたに代わって正義を追及するつもりだ。今がその時なのだ今があなたの時だ、我々は平和的で生産的な(抵抗の)集ま りを催して、来たりくる世代のために構造的でシステム的な変化をもたらすことを確実にしよう。あなたがたはその運動の前線にいる、そして若者たちとしての 我々の時とは、今この時なのだ。http://www.slate.com/articles/news_and_politics/politics/2015/05/marilyn_mosby_is_charging_six_baltimore_police_officers_with_freddie_gray.html