Friday, October 16, 2009

オバマのノーベル平和賞授賞を無効に?/Critics Smell Politics in Decision to Honor Obama - By Anthony Faiola


…「政治的」と非難されたオバマ大統領へのノーベル賞授与に、今反撃がはじまった!?

オバマへのノーベル賞授与には政治のニオイがする…と批評家達 ─ By アンソニー・ファイオラ (10/9、Washington Post)

 彼らのオスロの会議室で、同国の議会によって選ばれた5人のノルウェー人とは、まるで最高位のキングメーカーのようだ…彼らは毎年、最低でも1人の個人、または1グループによるランドマーク的な仕事を名誉の対象に選んでいるのだ。

 委員会がオバマ大統領に名誉をあたえるという決定は、その就任後、9ヶ月を待たずになされたが、批評家たちはこの地球上で最も名誉をもつ賞のひとつが、ヨーロッパによる政治上の“保証(お墨つき)”、“容認”をあらわす賞になっているのではないか、との問いを発している。彼らは、オバマを選ぶことでノルウェーのノーベル賞選定委員会が、ヨーロッパ自身のものとほど近い政治的ポリシーをもつオバマ大統領(もう一人の平和賞受賞者ジミー・カーター以来のいかなる米国大統領よりも近い…)という米国のリーダーを祝福しているのだろう、という。

 ロンドンのシンクタンク・Chatham Houseのディレクター・Robin Niblettは、“この決定はヨーロッパ人の世界観を代弁しているのだ”、という。“ノーベル賞委員会が大西洋の向こうから(米国に)手をさし伸ばししつつ、"見ろ、ついに米国のリーダーも我々と同じ価値観を代表し始めたぞ」といっていると…”

 1901年のノーベル賞創設以来ノルウェー人たちは、その平和賞の受賞者を毎回19世紀の客観的な仲介者のように選んできた、という実績から信頼を得ていた。しかしそれでも同委員会は、ここ何年かは、そのミッションをヨーロッパで人気のある社会運動にスポットライトをあてて拡大的に捉えたりしている(…貧困や地球温暖化を阻止するキャンペーンへの姿勢を含めて)。民主党の前・副大統領アル・ゴアの2007年の同賞へのノミネートは…ヨーロッパでとても不人気だったG・ブッシュ大統領への外交上の強打を狙ったものともみられた。

 金曜日に、ノルウェーの元首相で同賞委員会の理事を務めるThorbjorn Jaglandは… 同委員会がオバマを──彼の達成した業績よりも彼が熱望しているもの(aspiration)のみで選んだ、との批判を拒絶した。彼は、批評家たちはオバマがすでに米国の政策において達成した実体的な変化を過小評価しているという。 ”我々はこの賞を、未来に起こるかもしれないことに対して与えたのではない、〔オバマ〕が昨年成し遂げたことに対して与えたのだ”─ と彼はオスロで語った。

 Council of Europe(ヨーロッパ及びその周辺での人権と、法のルールに焦点を当てる団体)の長を務めるJaglandは、ノルウェー全土の政界からのメンバーによる委員会も率いている。彼らのなかには、Kaci Kullmann Five(同国最大の石油会社の重役会に属する保守派の人物)──やAgot Valle(社会主義左派党の人物)などもいる。

 Jaglandはオバマについて、“この賞の授与が彼のやろうとしていることをより力づけるよう、我々は望みたい”、という。
 専門家たちは、5人の回り持ちのメンバーからなるノルウェーのノーベル賞委員会がかつて、論議を呼ぶ選択をしたことを指摘する:彼らは、1973年に米国の外交官Henry A. Kissingerに、1994年にはパレスチナのリーダーYasser Arafatに賞を与えたのだ。

 地球全土で、オバマへの平和賞の授与に対するリアクションは彼に政治的に反対する勢力からの怒りにはじまり──タリバンのスポークスマンはこの選出を非難した… ──そして世界の多くの人から変貌の途上にあるリーダーだとみなされる人物を選ぶ、というオプティミズミに歓喜の声もあがった。国家元首たち…特にヨーロッパの元首たちは大方がこの決定を称えた。特にEU委員会の大統領、José Manuel Barrosoはこれを、“オバマ大統領による平和とヒューマニティーの進化という価値観へのコミットメントに対するトリビュートだ”といっていた。

 しかしオバマに彼の政権のこれほど早い時期に名誉を与えることで… ノーベル賞委員会は大きく期待感を盛り上げ過ぎるというリスクを賭けた、特にアラブ世界の一部では…米国のリーダーはそこで人々の新たな心の琴線に触れようとしているが──たとえばイラクでは、オバマは平和への何の実体的な実績もないうちに報償をうけた、と多くの人が驚いている。

 “私は委員会は気が狂ったのだろうと思った”とファルージャ出身の43歳の弁護士Omar Mohammadはいう。“我々は彼が何かをしたのをまだ、みたこともない。言葉と約束だけで、行動は何もない。彼の軍隊はいまだにここにいるし、グアンタナモ収容所はまだ閉鎖されず、そしてイスラエルは新しい入植地を作り続けている…”
 ホワイトハウスは未だに外交上の重要課題においては何の目だった進歩もなしとげていない─たとえばイスラエル・パレスチナ紛争に対しても…と多くの人が指摘する。

 “これは委員会がウィッシュフル・シンキング(希望的観測)に対して賞を授与した、最初のケースだ”とイスラエル議会与党リクード党のDanny Danonはいう。彼はオバマがイスラエルに西岸地域での入植地建設凍結を求めることに批判的だ。

 金曜日に、ノーベル賞委員会はそのミッション推進の新たな一歩にあると評された。しかし他の人たちはその(オバマを選んだ)決定はある意味で、以前の受賞者の選定よりも、賞の精神のより一層の真実を語るものではないかともいった。

 "Nobel's Will”のノルウェー人著者、Fredrik S. Heffermehlは選定委員会がオバマを受賞者に選び、そのアナウンスメントに用いた言葉(国際社会の相互協力や核軍縮の重要性に焦点を当てたていた…)とは、スイス人のダイナマイト発明者で、その意思によってノーベル賞に基金を寄付したAlfred Nobelの、オリジナルな願いの表現であるとも言う。 

 とはいえ、Heffermehlすら、その決定には政治的なものをみている。彼は“ノルウェーは8年にわたるヨーロッパと米国の緊張関係の後に、米国にオリーブの枝をさし伸べているのだ”という─
 その賞とは理論上では、ノルウェーの政治を反映しない独立的なものだ…とはいえ“真の状況では、それはオフィシャルな政治を非常に大きく反映している”と彼はいう。
 それが起きたのは、今年が初めてではない。Heffermehlは、1906年のTheodore Rooseveltのノーベル賞への選定は“米国との好い関係を維持したいという長きにわたる伝統の、最初の例だった”のだという…
*写真はThorbjorn Jagland
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/09/AR2009100904381.html
 
オバマ氏に平和賞、ノーベル賞委員長が独断?(10/16 読売新聞) 

 【ロンドン=鶴原徹也】オバマ米大統領へのノーベル平和賞授賞を決めるノルウェー・ノーベル賞委員会による選考過程が、異例ずくめだったことが明らかになりつつある。 

 決定に自身の意向を強く反映させたとされるヤーグラン委員長に対しては、辞任を求める声も上がってきた。 

 人権擁護・研究機関「ノルウェー人権センター」のニルス・ブテンション所長は「米国のアフガニスタン軍事作戦の帰すうも分からない中でオバマ氏への授賞は危険なゲーム。委員長自身がオバマ氏を候補に加え、授賞を主導したのではないか」と本紙に語った。

 委員会は2月1日を期限に各国政府・議会、識者、歴代の平和賞受賞者らから推薦を募った。同所長は、大統領就任(1月20日)間もないオバマ氏の名はその時点で候補者名簿になく、同委が選考初会合を開く2月下旬までに委員長が追加した、と推測する。

 同委はノルウェー議会任命の5人で構成され、人選は議会勢力を反映する。今年1月に任命されたヤーグラン氏は与党・労働党の元党首、かつ5人のうち唯一の首相経験者で、いきなり委員長に就いた。ノルウェー紙ベルデンスガングは15日、「(委員長と中道左派の委員を除く)3人はオバマ授賞は時期尚早として反対だった」と伝えた。

 このため選考はオバマ氏による非核化包括構想発表、米露戦略兵器削減交渉などの動きを追う形で進む。「通常、授賞者決定は発表の2、3週間前」とされるが、今回は選考に時間がかかり、「1週間前の10月2日」(ノーベル賞委員会)にずれ込んだ。オバマ氏が主導した9月24日の国連安保理首脳級会合で、「核兵器なき世界」を目指す決議が採択されたことを受けて、ようやく合意ができた。

 ブテンション所長は「今回の授賞は、オバマ氏支援を明確に打ち出したことで、ノーベル賞委員会自体を国際政治に巻き込んだ。委員長は辞任すべきだ」と語る。

 さらには、野党の進歩党と保守党もここにきて公然とヤーグラン委員長の辞任を求め出した。委員長が9月、民主主義と法治を促進する国際機構・欧州会議(47か国加盟)事務局長に就任し、兼職となったことでノーベル平和賞の公正中立が損なわれるとの主張だ。保守党のギトマーク下院議員は「事務局長である限り、例えば欧州会議加盟のロシアの反体制活動家に平和賞を与えることはできなくなる」と本紙に述べた。

 こうした批判は、「平和賞の政治化」を懸念する声とも重なる。米政治家の平和賞受賞者は、セオドア・ルーズベルト大統領からオバマ氏まで計11人で、共和党5人、民主党6人の内訳。だが、第2次大戦後はキッシンジャー国務長官を除く全員が民主党。選考に際し、近年は特にブッシュ前米大統領の「一国主義」に対する反発が濃厚だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000135-yom-int

*米国の保守派によるオバマの授賞へのし烈な批判がノルウェー国内からの攻撃も煽っているのか? 
*Sakai Tanaka:オバマのノーベル受賞とイスラエル
http://tanakanews.com/091021israel.htm

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