Sunday, December 27, 2009
イランがアラブ世界への介入を拡大!…エジプトのメディアが警告? /Egypt Warns about Iran's Growing Interference in Arab World
イランとイスラエルの利害の微妙な一致はほんとにあるのか…
“アラブ世界ヘのイランの介入拡大を、エジプトのメディアが警告!” (12月18日、MEMRI)
エジプトの政府高官の声明や政府系メディアの記事は最近、イランのアラブ世界への影響力の拡大や介入の強化に対する批判を強めている。ホスニ・ムバラク大統領は冬の議会の開会スピーチで、「アラブ諸国間の問題に対するイランの介入について警告する。我々はエジプトを不安定化しようとする企みには反対する。それは、ペルシャ湾岸と紅海沿岸地域、そして中東全域の安全に関わるものだ…」と述べた。
エジプトの外相 Al-Gheitは、イランに対してアラブの支配地域のドメインで行動しないように要求した。なぜならそれが地域の不安定化のひとつの原因となっているからだ。明らかに、イランの拡大する影響力はイラクやレバノン、イエメンのみならず、北アフリカやアフリカの角地域のアラブ系諸国にまで及びつつある、と彼は述べた…
以下はこの問題について、エジプトのメディアが報じた記事の抜粋である…
「イランは紅海地域での戦略にフォーカスしている…」とRoz Al-Yousef紙─
Roz Al-Yousef紙の'Abdallah Kamal は書いた: 「今や、イエメンでのフーティ派の反乱へのイランの支援や、エリトリアのAssab港の反対側に位置する公海でイラン船舶からフーティ派への武器荷揚げの支援が進行中であることに、全ての注目が集まっている。イランはこの地域での恒常的な緊張状態の継続を望み、交易や石油の輸送を妨害し、アラブ諸国を一種の包囲下に置こうと狙っている。その目的にむけてイランは不穏な状態を喚起し、それに反対するアラブ諸国に爆発を起こさせることすら狙っている。」
「イランは数個の代理戦争を同時に手がけ、その全てがアラブ国家の安全を攻撃目標としている…長年のあいだ同国はヒズボラを通じて地中海地域に〔その影響範囲を拡大し〕、メディアや専門家が「シーア派の三日月地帯」と呼ぶものを作り上げようとしてきた。同国はそれをガザ地域のハマスとの連携みならず、その地で最も不安定な海上ルート・紅海地域にフォーカスした努力をも通じて拡大している。」
Kamalはそして、イランの資金で活動する数個の武装グループを挙げる──それらはフーティ(Houthis)、ヒズボラ、ハマスのみならずイラクのJaysh Al-Mahdi(マハディ軍)、Al-Qaeda in Yemen(イエメンのアルカイダ)も含んでいる。彼はイランがまた──アラブ諸国(特にイランとはポリシーが異なり、イランの影響力拡大の障害となる国々)の背中を後ろから刺すために──バーレーンのシーア派運動やエジプトのMuslim Brotherhood(ムスリム同胞団)、メッカの巡礼団体等の非武装組織にも資金を援助している、と述べる。
イランのもう一つの目標とは、アラブ諸国を弱体化し、それらの国々がペルシャの拡大と対峙するよりも、国内的な緊張状態に直面するよう仕向け…そして同地域でのシーア派の包括プランを推進することであり──特に政治的な次元において─そしてペルシャ湾岸からレバノンに至るシーア派の三日月地帯によりアラビア半島を包囲することである…そしてイラン革命をその地へと拡大し、それらの国々の安定性を阻害し、イランの繁栄を強化する運動を支援することだという…
「イランはイラクの選挙に対し破壊工作をしている…」とアル・アフラム紙──
エジプト国営アル・アフラム紙のエディターOsama Sarayaは書いている──「イランは、スンニ派とシーア派が交わした約束…すなわちお互いの(国々)を改宗させるよう試みたり、宗派間の隠れた敵がい心を利用したりしない…と取り決めた合意を破った。イランはこの地域の不安定な状況を煽り戦争を喚起してこの地域の国々を疲弊させ、アラブのさまざまな宗派やグループ間の緊張に付けこみ、住民たちを傷つけている。
もしもこれに同意しかねる人がいるなら、今やあちこちで立ち現れつつある状況に目をやらなければならない──イエメンで展開されはじめた(対イスラム過激派の)作戦行動や、いま丁度戦われているイラクの消耗戦での状況、またイランの都市での民兵組織による作戦などの現状を。
イランは米国による占領が始まって以来、イラク人を取り囲んでいるトラブルにおいて最大の役割を演じているのだ…」
「イランは、イスラエルに反対してはいない。イランはその地域(イスラエル)を、限定的な、または全面的な戦争の瀬戸際に押しやることに何の心の咎めもない、なぜなら彼らの国はその危険から遠く離れているからだ。そしてイランはまた、イスラエルを、アラブ諸国に対する攻撃の場に押し出そうとしている…
イランはこの地域での外交的、または平和的な解決策には関心をもっていない。事実イランは、オバマの和平提案やパレスチナ国家樹立への提案をイスラエルが妨害することを助けてさえいる…なぜならイランはそうした和平提案が、その国益やその地域における彼らの未来への脅威だとみなしているからだ─
イランはそれは、アラブ人たちの死と彼らの国の崩壊によってのみ達成することが可能だと思っている…イランの影響は今やすべてのアラブ諸国…ペルシャ湾岸諸国や紅海沿岸諸国のみならず、アラブ系マグレブの諸国にまでも達している…」
「我々は今、イエメンとサウジアラビアの一部で、フーティ(Houthis)に対して起きつつある戦争がイランの資金と武器によって遂行されている、ということを忘れてはならない、そしてレバノンの政府というものは、イランがヒズボラを通じて常に拒否権の行使の脅迫を仕掛け続けるなかで、シリアとイランの合意によってのみ設立された、ということを…」
「我々はイランとアラブ諸国との関係を、そして〔アラブ+シーア派イラン〕と、〔アラブ+スンニ派イラン〕との間の関係を…それらの間に誠実な対話が求められる今、再び見直す必要があるだろう。我々は米国や欧州諸国によって推進されるイランとの対話に、我々の期待を懸けることは出来ない…今や協調的関係にあるアラブ諸国は、彼らの国におけるイランの影響力〔介入〕を阻止し問題の解決のためのプランを共に組むべき時なのだ…」
これ以外の記事でSarayaは、最近のバグダッドの爆破事件の背後にはイランがいると示唆した──それは、イラクで起きている政治的プロセスを押し止める目的でなされたものだ、と彼は言う。
「それは特にイランが…イラクからの米国の撤退計画を妨害して、イラクでの政治的プロセス進展を阻止しつつ、イランの核関連の危機に対して米国がより過激なオプションを取ることのないよう維持し続けることに利益があるからだ。
イランは、イラクの議会選挙を遅れさせることが米国のイラク撤退の引延ばしを保証する手段だと信じており、それが米軍の駐留延長へとつながり、結局米国のイランに向けたいかなる軍事行動も遅らせるものだ、と信じている…
(*MEMRIの英語訳による/MEMRIはイスラエル諜報機関の元出身者が設立した中東報道モニタリング機関だが、I/P問題では比較的客観的な記事を載せる…ワシントンに本部が存在し全世界に支部を持つとか)
http://www.memri.org/report/en/0/0/0/0/0/0/3853.htm
オバマ、「米国がこれ以上、イスラエルのイラン核施設への軍事攻撃を牽制し続けるのは不可能」と胡錦濤主席に語る (12/17、ハーレツ *要旨)
オバマ大統領は、中国の胡錦濤主席に対し、米国はイスラエルがイランの核関連施設を攻撃しないよう、これ以上牽制し続けることはできない、と語った。
オバマ大統領は先頃の北京訪問中に、イランがその核開発に関して西欧の提案を受け容れない場合、経済制裁を課すことを中国が支持するよう警告した。これを胡主席はオバマからの個人的なリクエストと受け止めたゆえ、中国はオバマの訪問の1週間後に早くもIAEAによるイランへの警告を支持することに同意した。しかし中国は制裁に関する政策は変えず硬い態度を維持している。
中国はまた、サウジアラビアが主導して中国に対して提唱している─イランへの石油依存を終わらせよとの要求さえも拒絶した─(それは中国にとって、イランへの制裁支持を可能にする条件ともなるが)
サウジアラビアもまたイランの核開発を懸念し、同国への国際的な制裁に対して前向きだが…同国は中国に対して、イランが現在供給しているのと同量の石油をより低価格で供給すると提案した。しかし中国はその取引を拒絶した。
オバマの訪中以降も、中国はイランへの制裁実施を拒否し続けている。イスラエル政府担当者は、「中国は西欧諸国の求めに対し制裁を行うのはまだ尚早だとし、はっきりしない回答をし続けているのだ」、という。
1月に国連安全保障理事会の持ち回り議長国が中国に交代することからも、中国の態度は問題だ。西欧の外交官は、もしもロシアがイランへの制裁を支持する場合、中国も支持する以外選択の余地はない、という。しかし、中国はフランスが同理事会の議長国になる2月までその討議を延期することができるという。
イスラエルの政府高官はロシアのメドジェエフ大統領について、彼は同国のラブロフ外相とは異なり、イランへの制裁に積極的態度を見せているのだ、と語った。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1135730.html
*昨今のイラク・イラン国境の油田占拠事件についてTanaka Sakaiもこんな憶測をしていた──
(「イランとイラクの油田占拠劇」~) 「…私から見ると、イスラエルに侵攻してもらいたがっているのは、むしろイラン上層部の方である。イスラエルがイランを空爆したら、世界的に、悪いのはイスラエルだという話になる。ヒズボラやハマスがイスラエルを攻撃する口実ができる。
中東大戦争になれば、イスラエルがテヘランに核ミサイルが撃ち込むかもしれないが、最終的にはイスラエルは敗北し、レバノン、シリア、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、エジプトまでの中東の地中海岸地域のすべてが、イラン寄りの地域になる。間にあるイラクとトルコは、すでに親イラン的である。
オスマン帝国以来100年ぶりに、中東は欧米系勢力の支配下を出て、イラン・アラブ・トルコという3頭立てのイスラム勢力の地域に転換していくことになる。イランは、中東の英雄的存在になれる。イランのアハマディネジャド政権は、イスラエルからの攻撃を待っている観がある。戦争になれば、石油も大高騰する。米オバマ政権は、イランに対して強硬姿勢と譲歩を繰り返すことで、イランの立場を強化している。」
http://tanakanews.com/091219iraq.htm
*アラブ過激派へのイランによる資金援助の話は、保守リベラルな人やユダヤ系米国人が訴えるトピックの定番でもある。
イラン人の描くイラクのグランドデザイン/Iran's Grand Design for Iraq - By Amir Taheri
イラン人にイラクについて尋ねると、彼らは大抵こういう…
イラクは歴史的にも、イランの延長なのだ…
あるいはイラクとイランの間に境はない、という風に。
‥西欧で知られるアミール・タヘリでさえも遠慮なく述べている
「イラン人が描くイラクのグランドデザイン」 By アミール・タヘリ(11/13、Asharq Alawsat)
カルバラにあるシーア派第3のイマームHussein Ibn Aliの霊廟には、まもなく新しい門が完成する。その門とは、数十人のイランの職人たちが数年がかりで作り上げたもので、専門家がいうにはペルシャの手工芸品の傑作なのだという。
先週、イランのメディアが報道したそのニュースには一見、何ら目立ったものはなかった。ともかくその霊廟は、他のイラクのシーア派の巡礼の聖地同様、イラン人によって建てられ、彼らの寄付で何世紀もにわたり維持されてきたものなのだ。
しかし目立ったのは、イランの国営メディアがそれを報道するときに「国内ニュース」として報道したことだ。公営放送のIRNAは、そのニュースアイテムを「地方県のニュース」の部で放映した。
カルバラとは、しかしイラクの国内にある─イラクはイランの隣国とはいえ、90年近くにわたる独立国家だ。
多くのイランの支配層エリートにとって、その事実は明らかに認めるのは困難だ。彼らにとっては、国家の独立主権といったことには余り意味がない。
公的なイスラム聖職者(mullah)たち、例えばテヘラン大学の金曜礼拝の導師のアフマッド・ハタミ(Ahmad Khatami)などは「イラク」という言葉を一度も聴いたことがないかの如くよそおう。彼らにとっては、イラクとは"Bayn al-Nahrayn" (メソポタミア) または、 "Atabat al-Aliyat"(聖廟群)といったものだ。8年も続いて何百万人もの戦死者を出した戦争すらも、明らかに、彼らにイラクが独立国だと納得させはしなかった。
イラクを支配することは、1797年のKarim Khan Zandの逝去後にオスマントルコがペルシャの地から撤退して以来、イランのエリート層にとっての野望だった。
第1次大戦の終焉とスマントルコ解体の後、シーア派聖職者はテヘランのカジャル・シャー(Qajar Shah)に対して、イラクの「聖なる」いくつかの都市を併合するようにと説得を試みた。しかし、Qajar一族は…彼らが墓場へと至った歴史上の過程のなかで、そうした征服を夢見る立場にはなかった。
イラクが英国の援助のもとで独立国となることが一旦明白になると、聖職者はそのプロセスをボイコットし、イラクのシーア派を傍観的立場に留まらせようと決意した。
1940年代までには、イランのエリート層は独立国イラクという既成事実をどうにか受けいれた。1950年代には、二つの国は王族同士の結婚で姻戚関係を結ぼうとしたが…周囲が企んでいたシャーの娘Princess ShahnazとイラクのFaisal王との間の恋愛関係が十分に進展しなかった時、その試みは失敗した。
1960年代から1970年代の半ばにいたるまでイラクの政権は、彼らイラク人が (uruba) Arab人である…ことを強調してイランの影響を振り払おうとした。1968年から75年までに、100万人ほどのイラク人がイランとの関係を理由に追放された。代わりにバース党は、エジプトやパレスチナから移民した"純粋アラブ人”と彼らとを置き換えることを画策した。
長年にわたる敵対関係の後に(両国が)関係を修復した1975年の合意以降、 Shahはイランの存在感を貿易や巡礼、文化交流によって復活させようとした。
彼のアイディアはイラクの街々に、イランからの巡礼者や旅行者を溢れさせ、イラク経済をになう主要な要素としようというものだった。その計画は1979年にテヘランで聖職者達が政権を掌握したことで終わった。イランの新たな支配者アヤトラ・ルハラ・ホメイニは、イラクにおける単なる影響力を欲しなかった;彼は支配を欲した。ホメイニの野望は1980年から始まった戦争の引き金となった…サダム・フセインによって開戦された戦争ではあったが…アヤトラはその戦争を1988年まで引きのばした。
サダム・フセインの凋落はイスラム革命共和国に脅威と、そして機会を与えた。脅威とは、イラン以外に唯一、シーア派が多数派の国であるイラクが近代的な民主主義国家となって、ホメイニの国家モデルのライバルとなるという可能性だった。機会とは、旧イラクの消滅による真空状態をイランが埋めることで、イラクを支配する夢を実現できるという可能性だった。
イランによる現状分析では、イラクの状況からもたらされる脅威の部分は消えたという。イラクは米国その他の西欧諸国の長期的なサポートのもとでのみ民主主義を確立し、ホメイニ主義者のモデルを脅かすことができるだろうからだ。2008年にはイラク情勢が、西ドイツの1948年の状況に酷似していた。もしもその時に、欧米諸国が新興の西ドイツに対する援助を引き揚げていたなら、ソ連がその真空を埋めていたかもしれないのだ。
テヘランの政権の見解とは、現在のオバマ政権はトルーマン政権が1948年に西ドイツに積極的に関与していたほどには、イラクにコミットしていないだろう、というものだ。
かくしてイランは真空に入り込み、空隙を埋めようと準備している。そして、テヘランは異なる前線において前進を続けている。
過去5年の間にイラクにおいて何百ものフロント企業やビジネス事業がイランの資金によって設立された。イランによる"投資”はナジャフやカルバラで不動産バブルすらもひきおこした。バスラでは、2008年以降に新たに発された70%以上のビジネス免許は、イラン人に益するものだった、と報告された。
イランが出資し、コントロールを握る武装グループ──いわゆるMahdi軍を含め─は都市戦のための新たな武器と訓練とを受けた。何千人ものイランの諜報部員が2003年来、6百万人の巡礼者にまぎれてイラクに入りそこに居住している。
これまでイラン政府は、多くの聖職者たちがナジャフの重要な"howza"(神学校)を支配することに失敗してきたが─そこでは大アヤトラのアリ・ムハマド・シスタニ師のもとでイラクの主権の保証者(guarantors)としてふるまっている。
しかし、イランはイラクのために、新世代の聖職者たちを訓練してプロモートした…モクタダ・サドル(Muqtada Sadr)はその中の一人で、彼は何年かのうちにアヤトラに指名されるという希望のもとに、聖都Qomでの速成コースに通った。
政治の面では、イランはイラクのNuri al-Maliki 首相を追い出し、シーア派の宗派ブロックを2010年1月の総選挙で躍進させたいと願っているのだ。もしもそれに失敗するならば、その代案とは選挙自体を行わせないようにすることだ。
それは州制度と称して、8つのシーア派の主要県がイランの影響の傘下でグループ化されるという新たな状況を生み出すだろう。イラクの政治エリートたちは、すでに"イランの党”と、イラクの独立を支持する党とに分裂してしまっている。
聖職者たちのイラクへの冒険主義的ポリシーはイラン国内でも公の外交アナリストたちによる批判を呼んでいる。その議論とは、イラクを支配しようとすることは、イランが噛める以上のものに噛り付こうとしているというものだ。
イラン独自の利益のために必要とされるのは平和なイラクであり、そこでは多様な民族・宗派のコミュニティーが権力を分けあい、安定を生み出すべきである。現今の攻撃的な聖職者たちのスキームはイランとイラクの双方に、苦悩の嘆きだけをもたらすだろう。
http://www.aawsat.com/english/news.asp?section=2&id=18793
*アミール・タヘリはイラン生まれの保守派論客、イランの各紙で執筆後、ヨーロッパに在住する…。London Sunday Times、 Pakistan Daily Times、The Daily Telegraph、The Guardian、The Daily Mail、Asharq Al-awsatなどにイスラム過激派等に関しても書いており、CNN、BBCのコメンテーターもつとめ、西欧でよく知られているようだ。(「イスラム過激派」という本も書いている…)
*Asharq Al-awsatはLondonにあり、サウジアラビアの国営紙Arab Newsの姉妹紙だという
Wednesday, December 16, 2009
オバマの「アフガン戦争計画」への 高まる疑念?…Obama, Peace and War?
─しかしさすがに、このご都合のよい”Just War"議論は、米国人の間でも批判を呼びおこしている
[例] R.Mackeyは "Just War、Unjust War"の議論はイラク戦争開戦の前夜に、同じノーベル平和賞受賞者だったジミー・カーターがNYTに寄稿していたテーマだ、とも論じている… ↓
http://thelede.blogs.nytimes.com/2009/12/10/just-war-theory-and-afghanistan/
‘Just War’ Theory and Afghanistan By ROBERT MACKEY
── “Global Research”のウェブサイトでは、戦争を拡大させるオバマは、”Economic elite” …で軍産複合体のdecoyなのだといっている…
(http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=16410 )
Af-Pak War Racket: The Obama Illusion Comes Crashing Down by David DeGraw
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──昨今の米政権は、いわゆるテロリストのアルカイダと、穏健派も含むタリバンとは別の存在、のように認めつつもあったのではなかったのか?… 米政権が新たに発表した「Af-Pak戦略」の軍事的基本方針というのが、なぜまた強硬なタリバン掃討の継続に立ち戻ってしまったのか疑念を述べる人も少なくない… ↓例えば Juan Coleのブログも我々の心に浮かぶ一抹の疑念を代弁するかも
オバマ、平和と戦争 Obama, Peace and War (12/11、By Juan Cole)
ノーベル賞委員会がオバマに平和賞を授与した理由は…オバマがGeorge W. Bushではないからだ…というのが本当ならば、彼らはオバマの授賞スピーチのなかにブッシュの対テロ戦争の枠組が残っているということを知って、狼狽するに違いない。
…それは、偉大なスピーチだった… ガンジーやキング牧師、人権思想や経済的な正義にも触れて語られたスピーチとして。ブッシュができるスピーチではなかった。
しかしオバマは、最終的には、GWOT(Global War On Terror)の引力には逆らえなかったようだ。その責任のありかは他者にある、とされ、米国に責任は課せられなかった…イラクで犯した戦争犯罪によって、告訴される米国高官なども居りはしない…。
(極端で、周縁的な)テロリスト・グループであるアルカイダは、米国国防省(ペンタゴン)への挑戦であるとされたが、インターポール(国際警察)への挑戦とはみなされなかった。そして、アフガニスタンの反乱勢力は、アルカイダと同等だと見なされた。イラン、それは核兵器開発プログラムを持っていないにも関わらず、北朝鮮と同一視された。
オバマは、平和的な紛争解決は望ましいと示唆していたが、しかし、そこには軍事的な解決を求めるとの挑戦が提起された。しかし彼は無意識に、うっかり軍産複合体に好意的に、その机上に物事を積み上げた──ブッシュ主義者のレトリック…敵を'evil'(悪)と呼ぶいい方…をキーフレーズの継ぎ目に用いたり、テロリズムへの返答は軍事行動であると論じていた… そして誤った同一化を断定的に用いることによって、戦争は不可避だとみせかけた。
オバマは彼自身が空想家なのか、テクノクラートなのか、未だに決めてはいない。ノーベル賞委員会は、彼が前者であることを望んでいた。しかしこのスピーチでは、彼らに対して、オバマは後者の姿をみせた…
http://www.juancole.com/2009/12/obama-peace-and-war.html
また、Asia timesのG.Porterの記事では、米政府はタリバンからの<平和的提案>があったものも、拒否しているという↓
US silent on Taliban's al-Qaeda offer By Gareth Porter (12/17、Inter Press/Atimes)
…タリバン指導部は12月初めに、オバマ政権に対し、彼らがアフガニスタンを「他の国への攻撃のための拠点にしないとの法的な保証 (Legal guarantees)を与える」、との提案をおこなったという…。しかし、これに対して米政権は沈黙を守っている。
タリバンからのオファーに関しての米政権の沈黙は… ヒラリー・クリントン国務長官が公式声明のなかで述べたこと…「タリバンが自分たちをアルカイダから切り離して、いかなる提案を行うことにも疑念がある…」との見方にも関わらず、そのような提案をベースにした交渉のドアは開かれていることを示している。
…しかし、タリバンはオバマ政権の立場としては提案を拒否したとみている。
タリバンは報道各社に12/5に、4日付の声明メールを送った。そのなかで彼らは「我々には、他国の内政に干渉するいかなるアジェンダもない。もしも外国軍がアフガンから撤退するならば、そのことへの法的保証(Legal guarantee)を与える」としていた。
…その声明文にはアルカイダへの言及はまったくなく、またそうした「干渉」に対する「法的保証」の意味とは何か、についての詳しい説明もなかった。しかし明らかにそれは、米国が過去に行った主張──アフガニスタンでの戦争は、アルカイダが同国を安全な避難地(safe haven)とすべく再び戻って来ることを阻止するために必要だ という議論への回答だといえる。
このことから、タリバン自身がアルカイダとの連携を否定することでの米国との間の合意に関心があり、また米軍の撤退とそれとを交換条件とすることに関心がある、と推測された…。
これに関して、この2、3週間インタープレス・サービスは、国務省スポークスマンのP J Crowley氏や National SecurityCounsilの報道担当 に、オバマ大統領がこの件を知っているのか繰り返し確認を試みていたが何の回答もなかった。12/5付のWSJの記事はこの件に関して唯一、政府高官へのインタビュー内容を伝えた。その高官はビンラディンとの繋がりを断たなかったグループが、アルカイダとの連携を断つとは信じがたい、との立場をとった。
翌日、ABCのジョージ・ステファノポロスのインタビューでクリントン長官はタリバン上層部との交渉の可能性について訊かれ「我々はまだ知らない」と答えた。またその件は、アフガン戦争開戦前に米国はオマール師に確認しており彼らが意思を変える筈はないと長官は付け加えた─
ゲイツ長官は同じインタビューでタリバンの上層部はタリバンが弱体化するまで、米国との交渉に臨むことはない、そして「それはたった今、我々が彼らの勢いを削ぐかどうかにかかっているだろう」と推測を述べた…しかしその2日後"Mujahideen"と名乗るタリバン指導者が、米国は彼らの提案を拒否したとネット上に投稿し…彼は同時に、彼らの次なる政府は外国政府が撤退するなら他国に干渉することはないと繰り返した─
(この後国務省とNSC担当者はクリントン、ゲイツ長官らの懐疑論をあえて繰り返さずに沈黙を守っている)
しかしPhiladelphia Inquirerのコラムニストによると、11月にKabulで匿名の米高官が「もしもタリバンがアルカイダと縁を切り彼らの目的が非暴力で非政治的だと宣言するなら──米国はここで6万8千の兵力に加えた追加兵力を維持する必要などない」と語ったという…。
オバマ政権の多くの人間がそれをタリバンの大きな詐欺工作だと考えた。ブルッキングス研究所のBruce Riedelもそれは目眩ましだろうという。しかしRiedelでさえも、昨今のパキスタンのタリバンによるパキスタン軍とISIへの攻撃は…ISIとアフガンのタリバンの間の密接な繋がりに脅威を与えているという──そしてパキスタンのタリバンはアルカイダとの密接な繋がりも維持している。
タリバンは2007年以来米国とNATOとの交渉にオープンな関心を示してきたが、彼らが米軍撤退との引き換えにアルカイダと手を切るとの提案は、3ヶ月前に発されたに過ぎない。
9月中旬のEid al-Fitrの祭日の際、オマール師は声明で「我々には他国を危機に晒す意図はなく、他国が我々を危機に晒すことも許さない。我々の目的はイスラム体制としての独立だ」と述べた。しかし反乱勢力のリーダーたちは交渉は米国の出方次第だとも表明し続けた。
オバマが新戦略を発表した直後の11/25に、オマール師は3000語の声明を発し「アフガンの民衆は軍事的な駐留延長を法的に正当化し続ける侵略者との交渉はありえない。米国の侵略者は交渉の名を借りてムジャヒディーンを降伏させようとしている」、と述べた。それはタリバンが米軍撤退を条件に交渉する余地があることも示している。
タリバンの提案の翌日カルザイ大統領はCNNのインタビューで、米国とタリバン指導者との交渉が緊急に必要だが、オバマ政権はそれを拒否したとした。彼は交渉への米国への参加を明らさまには求めなかったが、米国が参加しない限りアフガン政府だけでは無理であると述べた…
http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/KL17Df02.html
Tuesday, December 15, 2009
米軍の増派計画は、タリバンの手の中に…!?/US surge plays into Taliban hands By Walid Phares
オバマ政権の、アフガンからの撤退をみすえた増派計画には…
リアリティがあるのだろうか─
Af-Pak新戦略に対してはこのような手放しの反対論もある
米軍の増派計画は、タリバンの計略に叶うものとなる… By ワヒド・ファーレス (12/11、Asia Times)
我々は今や、オバマ政権の新アフガン戦略とは何かを知った。米軍に抗して戦うタリバンの戦略はどうなるのか?タリバンとアルカイダの作戦司令室は、オバマの戦闘プランにもとづき3万人の兵力を増派するNATOとアフガン政府軍に、いかに対抗するのだろう?
両者の戦略がどう衝突するのかを予想し、米国の現在のこの地域でのポリシーの正確さを評価するためにも、我々はそうした問いを発する権利がある。
戦略的な認識 Strategic perceptions
ジハードの作戦司令室は、米政権が今や「いわゆるアル・カイダ組織」の打倒に視野を絞ったことを察知する…タリバンに関しては、彼らが全面的勝利を達成することを阻止すること…彼らが勢いを得ることのみの阻害にゴールを絞ったのだ。戦略的な言い方をすれば米政権は、タリバンの全面的打倒のために必要な長期的な関与をやめるだけでなく、時間や手間をかけることも、やめたのだ。
ジハードの戦略家たちは今や、ワシントンのアドバイザーたちが未だにタリバンとの…タリバン全体との対話を推奨してはいるが、それはタリバンが自らの弱さを自覚して、対話の必要性に押し戻された時にだけ、可能だと考えている、と理解する。このような認識のもとで、原理主義的なイスラム主義勢力についてのアナリストたちは、いま米国がアル・カイダとタリバンを二つの異なるものと考え、まず初めに前者を打倒すれば、やがて後者の打倒も可能だ、と結論づけていると実感する。
そのような米国の欠陥だらけの認識をジハーディストたちが理解することは、まず、タリバンとアルカイダに有利なアドバンテージを与える :貴方の敵である米国は、貴方が何者なのかを本当によく見てはいないのだ…とわかるから。
戦略的な関与 Strategic engagement
米国は、アフガニスタンでのミッションのゴールとは、アルカイダの打倒やアフガニスタン軍の訓練ではあっても、アフガンの国の建国作業に取り組むことではないことを、再確認した。前回までの米国のコミットメントのし方(アフガンとの関わり方)とは異なり─それはとにかくあまり成功していないが─現在の戦略ではオフィシャルに、(そのような)思想的な面での論争は無視している。
かくして、タリバンは彼らの生命線であるマドラサ(イスラム神学校)の卒業生を基盤としたさらなるリクルート活動が、広くオープンな状態だと知る。ワシントンの努力も、資金援助も、ジハード主義の思想工場にタッチすらできないのだが、それがタリバンとアルカイダの戦略的な深層部分なのだ。
そうしてアフガニスタンのジハーディストのネットワークは継続し、その教化活動の組織をさらに発展強化させていくだろう…米国の軍事力拡大からも影響を受けず、妨害をされることもなく。米国の海兵隊と他のNATO同盟軍が今日のタリバンと戦っているとき、明日のジハード主義者たちは彼らの指導者からの教えを、完全な静寂のもとで受けているだろう。
米国が2011年か、2012年、あるいはそれ以降の撤退の期限に到達するころまでに、未来の敵の勢力は配備を敷くばかりに陣容をととのえているだろう。ひとつのテロリスト勢力の波が米軍とNATO軍によって弱体化されても、その後にそれに代わる次なる波が待ち構えているだろう。
致命的デッドライン Deadly deadline
米政権のプランは、アフガニスタンからの撤退のタイムライン(スケジュール)を含んでいる(それは"撤退の始まり"と再解釈されてはいるが)。 …それが"期限を設けない取組みではない(no open-ended engagement)"、との査定評価にもとづけば、新しいアフガン戦略のいかさま師たちは、敵の作戦司令室にある中継カメラを通じて、米国のアフガン関与が最大でも2013年までで、その後は再びタリバンの時代が戻ってくる、と彼らに告げてしまったのだ。
多くのアナリストが結論するように、すべてのジハード主義者の戦争プランナーたちがするべきことは、ハリケーンの拡大が止むまで、時をしのぎ待つことだ。その米国の戦略において提案された致命的なデッドライン(撤退の期限の設定)は、全体主義的勢力との対決においては先例がないことだ。タリバンはすでに、8年間待っていた; だから彼らは、更にあと2年、3年、または8年待ってはどうなのか…米国主導の同盟軍の軍事行動は質的にも(量的にではないにしろ)、これと違わないのではないか?
出口戦略のための兵力増派 A surge to the exit
アフガニスタンの人々に対して示されたように、米国政府の戦場に関する新たなプランは、アフガンからの総体的な退去を前にした最後の増派だと思われている。タリバンの作戦司令室はそのような、見積もりを理解している。3万3千人の重武装の米軍追加兵力が、5千から1万人の同盟軍兵力のバックアップを受けて派兵される。南ヘルマンド県や、その他のエリアには攻撃が行われるだろう。特殊部隊は多くの地点に移動展開し、砲撃がイスラム過激派の武装勢力を2年間以上にわたって悩ますだろう。
タリバンは損害をこうむり、アルカイダの活動家たちはより重い圧力のもとに置かれるだろう:それらすべてはタリバンの指導者、オマール師の本に書いてあり、アルカイダの副代表アイマン・アル・ザワヒリのラップトップにも保存されていることだ…そして何が起こるのか?
そこに出国のときが訪れて、米軍とNATO軍は撤退を開始する。それが起きるとき、生き延びていたタリバン兵士と、新たにマドラサを卒業したニューウェーブたち、または、ボランティアのジハーディストたち…バーチャルなカリファテ<1400年前のイスラム・カリフ公国を想像上で復興した国際的な領土>の4つのコーナーから送られてきた者たち…が次の選択を迫られる: 米国の交渉者たちが推奨するアフガン政府への参加の提案を受けいれるか、またはその提案を蹴って、撤退中の"異教徒の勢力”を砲撃でみまうのか?
簡単に要約すれば、新戦略はタリバンの作戦司令部にとって都合がよいことなのだ: 彼らにとっては、そのことはマヤ暦の2012年までに…そしてその後においてもずっと、ことごとく実感されるにちがいない。
全体主義者に勝利を提供することが民主主義の役割だ、と取りちがえることは、後者の長期的なゴールが何なのか、を理解しないことだ──そしてそれをちょうど今、米国は行ってしまった。
(*Dr Walid Phares is director of the Future Terrorism Project at the Foundation for Defense of Democracies and author of The Confrontation: Winning the War against Future Jihad.)
http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/KL11Df03.html
Sunday, December 13, 2009
ギラニ首相が、オラクザイへの攻撃開始を示唆/Gilani Threatens Orakzai Campaign
オバマ大統領の新たなアフガン戦略、
さらなる兵力増派の発表のなされる直前…
パキスタン政府が極度に動揺していたという、その事情とは?
Pakistan eyes Taliban front after S. Waziristan By Nahal Toosi (12/12、AP)
パキスタン軍は近隣・南ワジリスタンでのタリバン掃討作戦を逃れた反乱勢力のリーダーたちが逃亡している、と思われるアフガン国境付近の地域で、新たな軍事攻撃を行うかもしれない、と土曜日に同国の首相は語った。
ギラニ首相は次なる前線はオラクザイだという…南ワジリスタンの北の、無法な部族エリアのその地域で、政府はすでに幾度も空爆作戦を実施しており、国連はすでに4万人の住民が避難したという。
「南ワジリスタンでの作戦は終わった。今はオラクザイについて討議している」とギラニ首相はラホールで記者たちに対して語った。
http://news.yahoo.com/s/ap/20091212/ap_on_re_as/as_pakistan_12
ギラニ首相が、オラクザイへの軍事作戦を示唆 By Juan Cole (12/13, Informed Comment)
パキスタンのYousuf Raza Gilani 首相は、パキスタン軍の南ワジリスタンでの軍事作戦の終結を宣言したが、しかし、その継続の可能性も未だに残そうとしているようだ。
その曖昧さの理由は、南ワジリスタンが広大な地域で、パキスタンのタリバン運動の多くの武装兵たちがパキスタン軍が侵攻する以前に地域住民に紛れ込んで隠れてしまったかも知れないからに違いない。
…つまり、南ワジリスタンは最近の短い軍事作戦で決定的に平定されてはいないようだ。逃亡した反乱勢力は、いまや国境のアフガニスタン側のサイドにいると目され、米国とNATOの頭痛の種となっている。もちろんギラニ首相は、オバマの兵力増派計画が、何千人もの怒れるPashtun族を、国境を超えてパキスタン側に送り返すかもしれないということに、茫然たる戸惑いを感じている。
ギラニ首相はさらに、パキスタンのタリバンに対する次なる大きな軍事作戦は、Orakzai Tribal Agency(部族エリアのオラクザイ地区*)を焦点とすると表明している。それはカイバル峠へのルートを筋違いに横切り、パキスタンのタリバンがペシャワルを攻撃したり、NATOのコンボイや、米軍・NATO軍が物資を蓄えるペシャワル地域の倉庫を攻撃する際に拠点とするのに好都合な地域だ。Orakzaiはタリバンのベイトラ・メスードの後継者ハキムラ・メスードによって支配され、彼らの典型的な、厳格な宗教的支配のもとにある。しかし、パキスタン軍がこの2つの地域に介入することは、イスラマバードにとって脅威をよりいっそう凝縮する。
多くのオブザーバーたちは、Haqqani族ネットワークとアル・カイダの同盟者たちの一大拠点・北ワジリスタンへの攻撃が(…これらグループによる奥地からのアフガンへの攻撃がなされる限り)オバマ大統領の戦争努力の一層の必然的成り行きだ、と感じている。オラクザイが次の攻撃目標となるかも知れないことは、イスラマバードで感じられるパキスタン本土への攻撃の脅威が未だに続いている(カブールでカルザイ政権にとって最も危険なグループに直面するよりも、重大な事項として)ことを示している。
ギラニ首相は反政府的なBaluch族との和平交渉について語ったが、その反乱勢力とはイスラム過激派としてではなく、準ナショナリズムと部族主義を特徴としている。Baluch族の活動家たちは、国家政府が(徴税して)首都イスラマバードで公共サービスとして還元している分よりも、州政府が天然ガスや他のコモディティ(常用品)として、より多くのとり分を奪取しているのだと指摘する。…再びいいたいが、ギラニ首相はパキスタンの国内問題に取り組んでいるのだ──
米政府担当者たちは、Baluchisutanの州都のQuettaは依然、オマール師と古いタリバン勢力の本拠地であり続けていると考え、もちろんそれがアフガニスタン国内に攻撃を仕掛けるQuetta Shura(パキスタンのタリバン部族会議)の中心地だとみなしている。
…ギラニ首相が、オマール師とQuetta Shuraとの交渉よりも、イスラマバードでのBugti 族の分離主義者(連邦脱退論者)との紛争解決の件に捉われているのは、アフガンでの戦争においてはオバマ政権が未だに、パキスタン政府の完全な協力を得るためにハードルに直面していることのあらわれなのだ…(地図はBBC)
http://www.juancole.com/2009/12/pakistani-prime-minister-yousuf-raza.html
*註:オラクザイ地区はパキスタン政府公認の部族エリアの一つ
★英政府、ビンラディン容疑者追跡などで資金援助 73億円 (12/3、CNN)
英国のブラウン首相は12月3日、訪英したパキスタンのギラニ首相と会談、同国のテロ対策と対アフガン国境の山岳部に潜伏しているとされる国際テロ組織アルカイダの最高指導者、オサマ・ビンラディン容疑者の追跡作業を拡大・強化させるため総額5000万ポンド(約73億円)の資金援助を表明した。
ギラニ首相は共同記者会見で、ビンラディン容疑者の潜伏先などを質問され、同国は米国と共同し優れた諜報(ちょうほう)活動を推進していると指摘、「パキスタン内にいるとは思わない」と語った…
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200912030027.html
★Yousaf Raza Gilani, Pakistan PM, Says Bin Laden Not In Pakistan パキスタン首相、「ビンラディンはパキスタンにいない」 (12/3、AP)
…パキスタンのギラニ首相は木曜日(3日)、ロンドンで会見したG.ブラウン首相からのリクエストに答えて、自国のテロ勢力との戦いの努力を擁護…ビンラディンはパキスタンにいるとは思えず、パキスタン軍はテロ勢力に対する戦いに成果をあげていると主張した。首相は同時に、米国のオバマ大統領の新Af-Pak戦略として発表された米軍主導の兵力増派案への賛同を拒否する、との慎重な回答へのシグナルを発した。ギラニ首相は、彼の政府はアフガンでの米軍のプレゼンスの拡大計画と、パキスタンへの援助拡大に関するより一層の情報が必要としている、とした。
ギラニ首相と同国は火曜日にオバマ大統領が発表したポリシーを…CIAが秘密人員をパキスタン(その中央政府はイスラム過激派からの強い脅威に晒されている)に派遣するとの示唆を含め…検討しているという。「オバマ大統領の新戦略に関し我々は検討中だが、より一層の明確な情報が必要だ。それが得られれば我々が何をそこで実行できるかも判明するだろう」と彼はいう。…オバマの戦略を強く支持し、自身も500人の兵力をアフガンに増派中のブラウン首相とは違い、パキスタンは今回の首相の用心深く言葉を選んだコメントの発表までは沈黙していた。
2001年以来、米国はパキスタン軍のアフガン国境でのイスラム武装勢力との戦闘に数十億ドルの援助を行ってきた。また昨年以降、米国は国境付近の目標への隠密なミサイル空爆作戦を開始した。そこには良し悪しの結果が生じ、軍はパキスタンのタリバンと対戦しているが、一方で国境地域の部族エリアを根拠とするアフガンのタリバン指導者たちの追跡に失敗している。同時に国内では、これらの軍事作戦に触発された反西欧の気運が爆発している。
西欧の政府関係者やアナリストたちは、パキスタンが国境の両側で決戦をしていると信じている…パキスタン側の武装勢力粉砕への米国の資金援助を受け、一方でアフガンのタリバンについては、もしも米国がアフガンから撤退すればイスラム過激派勢力が支配権をとり戻すと予期しつつ、今は彼らを見のがしている。
英国ブラッドフォード大学のパキスタンの治安専門家Shaun Gregoryは、パキスタンはオバマ大統領が発した2011年7月以降の米軍撤退の誓いを銘記するだろうという。「パキスタン人たちはワシントンからのシグナルを賢く読みとるだろう。アフガニスタンのタリバン勢力を広汎に支持するかのような、より長期的な軍の戦略は清算されつつあるようにみえる。そうした勢力は今元気旺盛になっている」
ギラニ首相は米国のアフガン司令官Gen.Stanley McChrystalと、Adm. Mike Mullenがパキスタンを訪れる際に、米国の戦略をより詳しく知りたいという。首相は米軍の兵力増派には煮えきらぬ態度を示し…それが単にアフガン側の武装兵力を、国境の山岳を越えてパキスタン側に押し込むのではと怖れていると述べる──また米国と英国はパキスタンに圧力をかけ、国境のパキスタン側の武装勢力根絶を求めている。Hillary Clinton国務長官を含めた米軍高官たちはビンラディンが部族エリアにいると信じ、パキスタンがビンラディンを見つけられないことを酷評している。ギラニ首相は、パキスタンはテロリスト制圧にとても成功していると強調、主なタリバンのテロリストはアフガン側にいる、と主張する。
http://www.huffingtonpost.com/2009/12/03/yousaf-raza-gilani-pakist_n_378887.html?show_comment_id=35630771
(*写真下はオラクザイ地区で撮られたHakimullah MesuhdのPhoto)
Wednesday, December 9, 2009
ハマスは穏健派ではないかもしれないが、過激派を弾圧している?/Hamas may not be moderate, but it's cracking down on extremism - By Avi Issacharoff
ハマスは穏健派ではないかもしれないが、過激派を弾圧している - By アヴィ・イサチャロフ(12/4、Ha'aretz)
イスラエルの批評家たちがいうには、ハマスは最近、ガザ地区の人々に示せるその達成の実績が少ないために、Gilad Shalit[ハマスが人質に捉えているイスラエル兵]の解放に関するイスラエルとの交渉を完遂したいと願っているという。
しかし、多くのパレスチナ人批評家たちはこう指摘する──ハマスは最近、その慈善事業ネットワークでガザの失意の人々を援助できる能力のお陰で、イスラム主義運動としては平静になっているようだと。そして、今日ハマスにとっての本当の脅威はイスラム過激派の方向から来る、と指摘する人々がいる…それが今後の数年間に、ハマスの支配体制にとっての最も顕著で、深刻な挑戦となるのだ、と。
イスラエル軍は先週の金曜日、ガザ地区の北部でカッサムロケットを発射していた男たちへの攻撃を行った。ひとりのパレスチナ人が殺され、他の3人が負傷した。多くの筋の推測によれば、その男たちはJaljalat運動と呼ばれるイスラム過激派の活動家のセルに属しているという。
この何ヶ月か、彼らやその他の小さな組織グループが運動の勢いを増していた。ハマスの側では、彼ら過激派を内に抱え込み、法に従って行動するように説得すべく試みていた(…これらの3つの派閥を包含することが、人々のハマスへの支持に害を与えるとしても…そして特に彼ら過激派はハマスを、ジハードの本質を忘れたイスラエルの協力者だと捉えていたとしても)──例えば、多くのJaljalatのメンバーたちは元ハマスの活動家たちだったが、ハマスが余りに穏健になりすぎたと感じて組織を出た者たちだった。彼らは今や、イスラエルに関するより過激なポリシーの先鋒となろうとしている。
こうした過激なグループのなかには、the Army of the Nation、the Armyof Islam, Jund Ansar Allah, そして Hizb ut Tahrirなどがいる。
過激派の小グループとハマス政府の間の緊張は、数週間ほど前にJund Ansar Allahの活動が活発化しているRafah地区で発生したモスク乗っ取り事件などで特に明瞭に示された。しかしガザをコントロールするのはいまだにハマスで、その支配は2007年7月の彼らによるクーデター以来さらに、より堅固になっただけだった。ファタハの方は最近、ガザでの公有の組織(Public domain)としては殆ど存在を止めているに近い。そして同時にハマスは──たとえばイスラム銀行や、ハラル製品(イスラムの戒律に即した製品)を監督する企業、といった有益性の高い機関を設立することで、過激派に対する人気の高まりを押しとどめようと絶大な努力をしている。
慎み深さと、マネキン人形
ハマスは、官公庁でおこなう午後の宗教レッスンを提供しており、また民事の訴訟費用でシャリア法にもとづいた法廷裁判を行うことを奨励している。学校や大学では宗教的カリキュラムが拡大されている。ガザの全土でイスラム和解委員会が業務を行い、家族間や個人間の争いごとの仲裁をしている。金曜日には今や多くの市場や商店が仕事を休み、海岸では男性と女性が別々に離れたエリアで座っている。ハマスの政府は学校での不謹慎な衣服の着用を禁じ、生徒たちが制服を着用することを好んでいる。
そしてさらに、ハマスのメンバーのみで構成されるガザの議会は最近、シャリア法式の刑罰(たとえば盗人の手を切り落とすといった)の実施について議論しているが、未だにその決断は下していない。結婚していないカップルが一緒に車に乗ったり、孤絶した場所にいることも禁じられ、若い女性たちは“非モラル的な会話”から遠ざかるようにと求められる。ハマスはまた、インターネット・カフェのオーナーたちに、問題のあるウェブサイト(例えばポルノグラフィックの様な)への人々のアクセスを許さないようにせよと警告している。女性はオートバイに乗ることを禁じられている。ハマスの宗教大臣はガザ地域全土にポスターを掲示し、女性は慎ましい服装をし…ヒジャブ(ヘッドスカーフ)だけでなくロングドレスを着用するようにと奨励している。
商人たちは、商店のウィンドウの女性のマネキン人形に慎ましさを欠く衣類を着せないよう、また人形の頭部は取外すように要求されている。そのようなリクエストは公式命令ではないようにみえるが、推奨的事項とされている。このようにしてハマスは、政府が市民に対して、厳格にイスラム的であれと命じているわけではない、との言い訳が可能になる。
先週のId al-Adha(犠牲祭)の前夜にハマスの代表たちは3万軒以上の家々(約250万人の人々が居住する)を訪問し、貧困の度合いを査定する調査をおこなった。貧困の発生率はガザ地区で新記録を更新し、最近では北部へと拡大しつつある。
ガザでの社会福祉活動をおこなっているのは慈善事業を行う組織であり、それがハマス政府である必要はない。昨今、そうしたグループとして一層目立つのは、2001年に活動を始めたAl Falahというグループだが、それはハマスの有名な人物Ramadan Tanburaに率いられている。こうした慈善事業は政府の補完部門であり、その足元を堅固にすべく助けている。ハマスはたとえば多くの資金を、相互扶助のためのAl Takaful program──失業中の労働者たちに数多くの仕事口を与えているプログラム──に投じている。
ハマスはRafah地区でのトンネルの運営により、イスラエルによるガザ地区の封鎖を改善(緩和)することに成功した。イスラエルの攻撃や、トンネルの崩壊事故で発生した100人以上の死者も密輸活動には影響していない。そして無論、地下のネットワークは中央のシステムと、第2のトンネルへと拡張されている。
いずれにしても(ガザの)封鎖は外部から完全に密封されたものではない。イスラエルは、Id al-Adha(犠牲祭)を前に何千匹もの羊を地区に入れてもよいと許可し、また花を外に輸出することも許可した。今年は、1万5千人の外国人がガザを訪れている。外国の組織により持ち込まれた物資は、昨年の何百%にも増加した。同時に、ハマスの幹部たちは、Gilat Shalitの解放への合意が、結果としてガザの封鎖の解除を容易にし、そしてガザの経済に計り知れないほどの改善をもたらすことを期待している。http://www.haaretz.com/hasen/spages/1132553.html
*下右:Gilad Shalitは3年以上前からハマスの人質。イスラエルのパレスチナ人人質100人余とマルワン・バルグーティの身柄との引換え交渉が実りそうだとか…
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