Monday, July 5, 2010

“アル・クッズ・インデックス”と、真のパレスチナの革命/The Real Palestinian Revolution - By Thomas L. Friedman

 パレスチナ自治政府寄りで、ハマスの嫌いなフリードマンが…
イスラエルと共存するパレスチナの自立を訴える…

真のパレスチナの革命- By トーマス・L・フリードマン(6/29、NYタイムス)  

 ちょっと君、ここに株式投資のための耳寄り情報がある。用意はいいかな?─ それはAl-Qudsインデックス(アル・クッズ株式指標)だ。

 Al-Qudsインデックスとは何なのか?つまりそれはP.S.E.、またの名をPalestine Securities Exchange(パレスチナ証券取引所)の株価による指標のことだ。西岸のナブルスを本拠地にして、この1年間の間は堅実な状況を維持している。ここに、そのストーリーがある。

 「それは、ほとんどのアラブ諸国の市場の指数をも上回っているのだ」と、その取引所のオーナー・Palestine Development and InvestmentのCEO、Samir Hulilehはいう。P.S.E.は1996年に19社の企業と共に開設され、今や41社の企業が上場している。今年はさらに、8社が上場する予定だ─ ここに上場する企業は、パレスチナの商業銀行や、ナブスルの外科医療センター、パレスチナの電力会社、そして、アラブ・パレスチナ人のショッピングセンターといった企業だ。「これらの企業の株の多くは、政治的不安要因から割安な状況にある」とHulileh氏はいう。それゆえ、あなたがさほど株価の不安定さを気にさえしなければ、ここには多くの上向きのチャンスがあるのだ… もちろん、ここでは間もなく、E.F.F.(an exchange-traded fund:P.S.E.売り出しの投資ファンド)も導入されるので、Al-Qudsインデックスを追跡すれば、あなたは米国に居ながらにして、パレスチナの長期物や短期物の債券を買うことだって可能になる。

 Al-Qudsインデックスの普及とは、西岸地域で過去数年の間に…元・世界銀行のエコノミストであり真のパレスチナの"革命"をリリースしてきたSalam Fayyad首相のリーダーシップのもとに始められた、一連の広汎な改革の一部分なのだ。それは、パレスチナの地位(法的有効性、capacity)や、社会的制度(institutions)を打ち建てる革命だ… それも、単にイスラエルの占領への反抗として打ち建てるようなものではなく─ もしもパレスチナ人が、真の経済やプロフェッショナルな治安部隊、効果的で透明性のある官僚組織を設立できるなら、西岸および東エルサレム近隣でのパレスチナ国家の樹立というものが、イスラエルにとって否定し難いものになるだろう、とのセオリーのもとに打ち建てる革命だ。

 Hulileh氏は言う、「私は、民間企業部門(private sector)が変わったと認めざるを得ない」、「以前まではつねに、我々には出来ることは何一つないと、文句ばかりを言っている雰囲気があった。そして政治家たちは、そのようなレジスタンスの雰囲気を創りだそうとしていた…レジスタンスというのは、占領下では何ら発展をしない、という意味だった」

 Fayyad首相と、彼のボスであるMahmoud Abbas大統領が、今やこの雰囲気を変えたのだ。Hulileh氏はこう言う─ 今や雰囲気は改善されて、パレスチナ経済が「我々に抵抗力と、しっかり振るまう力とを与えた。Fayyad首相は我々にこういったのだ…“君らビジネス・コミュニティには、占領を終わらせることに責任があるわけではない。君らは人々の雇用をはかり、国家の設立に向けて準備を整えておくことに責任があるのだ。それは、君らがグローバルな世界の一部となり、輸出や輸入を行う、ということだ、つまり国家ができた暁に、君らがゴミ捨て場を持つような必要がないように、ということだ。君らは準備しておくことが必要なのだ”…と」

 私は、Fayyad首相が彼のRamallahのオフィスで、上々の機嫌でいるのを見た。エコノミストから政治家に転身した彼は、彼の西岸の選挙区民たちと交ざりあって、より居心地がいいようだった… そこで彼は給水用の井戸や学校などを新設し(…それゆえ、もうそこには二交代制の工場や、使用済汚水の再処理施設はないのだ)静かにその人気を確立していた。イスラエル軍の最長老の人々は私に言った、Fayyadがこの真の取引契約によって新たに設立した治安維持勢力は、イスラエルが西岸の殆どのチェックポイント(検問所)を閉鎖したとしても、治安を維持するに充分なのだ。それゆえ、地域内部の商業活動や投資活動が動き始めたし、そしてガザの中にすら、こちらに移住し始めている人々がいる。「我々は変化のポイント(変曲点)というものから、さほど遠くはないのかもしれない。」とFayyadは私に言った。

 AbbasとFayyadによる国家建設の努力とは、未だにか弱いものだ…それはテクノクラート(技術官僚)の小規模なグループ・チームと、パレスチナのビジネス・エリート、そして新設された職業的治安部隊が担当しているものだ。このチームがより一層強くなれば、彼らはより一層の挑戦をおこない、また西岸にいるFatahの古参の幹部たちからの挑戦も受けるだろう…ガザにいるハマス勢力からの挑戦も勿論のこととして。しかしこれは、二国家併立主義における解決策として唯一残る希望であり、それゆえこれは、静かに支持を受ける必要がある。

 Obama大統領が7月6日にイスラエルのBibi Netanyahu首相に会見する際にできる最も重要なことは、彼を小突いて…西岸地域の主要なパレスチナの都市において徐々にパレスチナ自治政府へと権力の移譲を行わせること─そして、それによりFayyadが彼の人々に対しても…その言葉どおりに彼が独立国家を作りつつあり、それは"占領の永久性を受け容れるためにやっているわけではない" のだと示せるようにすること…、それによってイスラエルも、パレスチナの新治安維持勢力というものが本当に、イスラエル軍による夜間の家宅捜索(急襲)などに頼らずに平和を維持できるかどうかも検証できるようにすることだ。Fayyadism(ファイヤドの思想)を強化するために、これ以上の方策はない。

 しかし私は、Fayyadism がアラブ人とイスラエル人にとってどの程度、居心地の悪いものかをみても驚愕を覚える。パレスチナ人は永遠の犠牲者だ、という考えに魅せられている(その思想に恋愛感情を持つ)、こうしたアラブ人たち…パレスチナとアラブの尊厳を回復する為の英雄的な「武装闘争」に永久に関与する彼らにとって…Fayyadの方法論的な国家設立というのは、オーセンティック(正統的)な考えではない。アラブ人たちのなかには…恥さらしなことに、この考えを中傷する者たちもいる、そして唯一、アラブ首長国連邦(UAE)だけがこれに財政的な援助を申し出ているのだ。

 そして右派のイスラエル人たち…特に、現状を変えるために話をするに足る相手としての責任あるパレスチナ人の組織は存在しない、というような考えを愛している、西岸の入植者たち…にとっては、Fayyadの思想というものは真の脅威なのだ。イスラエルの日刊紙、Haaretz のコラムニストAkiva Eldarは先日、こうしたグループを完璧に描写していた─ 彼らがいかに、アラブ人たちに"No” を言わせることを断念しないか、あるいは、詩人のConstantine Cavafyが書いた‘Waiting for the Barbarians’のなかから引用した、「そしていま野蛮人たちの存在なしに、何が我々に起きようとしているというのか?/彼ら…彼らという人々の存在、それ自体が解決の一つなのに」…などという言葉のように。
http://www.nytimes.com/2010/06/30/opinion/30friedman.html
*写真上:Salem Fayyad首相 写真右:P.S.E.(パレスチナ証券取引所)の狭い一室に集うトレーダーたち
*Al Quds:エルサレムのアラビア語名
 al-Quds Sharif : "The Holy Sanctuary"、Yiddish語でYərusholáyəm:イスラエルの首都。東エルサレム地域とその住民を含む

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