"掘削の同盟国”を呼ぶがいい!
アフガニスタンの巨大な埋蔵資源のもたらす問題に、なぜそんなにこだわるのか?
By クリストファー・ヒッチンズ (6/21, Slate.com)
アフガニスタンのもつ潜在的な鉱物資源についてのあっと息を呑むようなニュースは、これまで2006年と07年のシステマチックな航空調査によって把握され、そして確認された─しかしそれは、同国の悲惨さをより増幅させる力にもなりうるため、いまや、控えめに語られ始めている。鉄・銅・コバルト・金・リチウム(ラップトップPC電池の主要材料)の鉱石の膨大な埋蔵量は、タリバンとその同盟者たちにこの国を再び掌握させ、そればかりか、彼らをさらにリッチにしてしまう可能性も強めるのだ。またそれは、同国のそれ以外の敵、つまり戦争領主たちや、寄生的なオリガルキー独裁者など…周辺諸国に散らばり、その国がどんな政府を持とうが比較的関心の薄い者たち…にも、勢力拡大へのインセンティブをも与えかねない。もちろん、アフガニスタンの鉱業大臣がすでに3千万ドルの賄賂を受け取って、莫大な銅鉱石の採取権を中国(その資源帝国主義的傾向は、北朝鮮からダルフールに至る恥辱だ)に渡そうとしていたとして、米国の圧力により解任されたのはつい最近のことだ。
資源が豊富であるがゆえに、国が貧しくなった、というのは、古いストーリーだ。コンゴという国は、19世紀にベルギーの王族の個人資産として掌握されて以来の、そのスキャンダラスな実例だ。そして、資源の搾取による略奪行為に晒された国のリストに加えられるべき国々とは、ハイチ、アンゴラ、インド、そして(公平にいって)中国がある。アフガニスタンには、社会資本(インフラ)やプロフェッショナルな市民サービスがなく、採取産業の伝統もなく、そしてその広く分散した行政県や地方の間で、資源を分かち合うというメカニズムもない。カイバル峠の向こうのKlondike(*)こそが、この国が必要としているものだ。 (*Klondike Gold Rush: 19世紀カナダのKlondike川沿岸のゴールド・ラッシュと、それによりもたらされた移民のラッシュ)
それでもなお、最低でも兆ドル単位の規模の国の天然資源の宝が、ほとんどGDPの脈動すらもないようなこの国に存在している。NATOの各国政府…ドイツからカナダ、英国から米国に至るまで、鉱物資源の掘削に豊富な経験をもつ国々…はこの国の経済に資金援助をする以外には、殆どやるべき仕事すらもたないが─ それらの各国はしばしば怒り(反発)を招く行為、つまりアフガニスタンのその他の唯一の既存の資源であるアヘンという資源の開発を「禁止する」ために、時間を浪費することもある。─そのような、地球をも動かす掘削の大国たちの同盟ですら、最終的には…その再建事業が既に国連の管轄化にあるこの国では…真に建設的な意義ある事業を見つけることもできないのだろうか?アフガンの議会や政府には資源管理の経験がないことは事実だが、しかしその議会と報道メディア、そして同盟諸国のNGOたちをプッシュして、それが中国がよく好んでやるような暴利行為ではないこと、そしてアフガンの人々がその主な利益の享受者であるということを、保証させることが可能なはずだ。これは余りにも、見逃すべからざる機会だ。それはまた、タリバンが入札する手に収めさせるには、余りにも重要すぎる機会のようにもみえる。
イラクの膨大な石油資源の新たな発見とも同様、こうした埋蔵資源が、その地域とその民族にどのように分配されるのか、について知ることは重要なことだ。この地域には多くの、成功した、そしてよく組織化されたアフガニスタン人のグループ…たとえばタジク人や、ハザラ人などがいるのだが、彼らはタリバンを真に憎んでおり、そして彼らは彼らの発展する機会、彼らの地域を豊かにしその人々の力を強化する機会にはすぐに飛びつく姿勢にある。そこにはまた、多くのパシュトゥン人がいるが、彼らはタリバンをパキスタンによる植民地化の影のエージェントだとみなしており、それは実際に、真実だ。威厳のある、そして経済的に強固なアフガニスタンというものはまた、優れた能力を持ちながらも失業しているアフガニスタンの膨大な数のプロフェッショナルな人材たちに対しても、巨大なアピール要素を持っている─彼らの多くは、何十年にもわたった戦争と野蛮な時代の後に、故郷に帰国してきたのだ。
また、この新たな調査結果が発表された数日後に、アフガニスタンの新しい鉱業大臣、Wahidullah Shahraniが、彼の対抗相手であるインドのB.K. Handiqueに招待状を出した、ということは勇気づけられる事実だ。インドはすでに、Hyderabadでアフガンの地理学者たちを訓練し、アフガンの広範なインフラ建設のプロジェクトに対して、資金を援助している; この両国の地理的調査における密接な連携は、よい結果のみをもたらすだろう。私がこれまで常に指摘してきたように、インドは我々の到着する以前からタリバンやアル・カイダと戦ってきたし、我々がアフガンから撤退するというような臆病な決定をした場合にも、その後も戦い続けることだろう。インドはまた、巨大で、繁栄した、世俗的で、多民族的な、そして近代的軍備を持つ民主主義国家であり…この地域における米国の天然の同盟国(natural ally)─つねに変幻自在な存在であるパキスタン人たちに対抗する勢力としての─であり、そして中国の野望に対抗するための天然の重し(natural counterweight)でもある。同国はさらに、名声ある鉱山業セクターをもっている。アフガニスタンの鉱山資源の計画的な開発は、こうした同盟関係を深化させ、発展させるための殆ど理想的な機会を与えることだろう。
もちろん、この発見がもたらすいかなる利益も、明白にそれが経験されるまでには時間を要するだろう。しかしそれは、そうした間にもめったにない希望の種を与え続け、またしばしば失敗に終わっているように見える事業への取り組みにむかう方向性の感覚も与えるだろう。西欧に対して疑念を抱いているような、シリアスなアフガニスタン人たちは…一人でも、彼の国の先祖の遺産(歴史的遺産)が、中世的な<腕を切断したり女性を盲目にしたりする>ギャングたちのもとに預けられることを望んでいるだろうか?また、シリアスな非・アフガン人というものはひとりでも…この国が、単にローカルな神権主義者や外国からきたジハード主義者たちからだけでなく、その国を苦しめ悩ませ、発展を阻害してきた何世紀もの貧困や停滞から解放されないことを望むだろうか?オバマ大統領はこれに関して米国議会と国連とにアピールする、素晴らしい、道理に適った地政学的なスピーチを行えるに違いない。私には、彼がこれを決意するかどうかは分からない。しかし平和主義者たちも、彼らの新たなスローガンを掲げることができる、"No Blood for Lithium."(リチウムのために血を流すなかれ”、といったスローガンを。
http://www.slate.com/id/2257659/
*写真:アフガニスタンのPanjshir Valleyのエメラルド鉱山に立つ鉱夫
*6月に来日したカルザイ大統領は、米国に次ぐアフガンへの第2の援助国、日本の企業に鉱物資源開発を任せたいと表明。
日本問題研究所のフォーラムに出席し、三菱グループなどと会談して帰国したという。商談は成立しなかったとも言われる?…
…3兆ドルと見積もられる資源開発のうち既に多額の契約を、鉄道建設を条件に中国政府系企業が獲得しているとも。
http://www.english.rfi.fr/asia-pacific/20100618-afghan-president-offers-mineral-resources-japan
Afghan President offers mineral resources to Japan
*欧米きっての人気コラムニスト、クリストファー・ヒッチンズは6月末、食道ガンの治療を宣言、新刊の自伝"Hitch-22"の全米販促ツアーを中止する旨を発表し、ファンにショックを与えました。ヒッチンズの病状の回復が待たれます。
let us pray for Mr. Hitchens' healing, overcoming his serious illness and regaining the health
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