Saturday, January 15, 2011
ヒズボラの、最新のスイサイド・ミッション/ Hezbollah’s Latest Suicide Mission - By THANASSIS CAMBANIS
サアド・ハリリ首相がワシントンのオバマを訪問しているその間に、レバノン政府のヒズボラ閣僚が総辞職し政権が崩壊した。ハリリ氏の政府は今、暫定的なケアテイカー・ガバメントの状態におかれた…
水曜日夜、イランの支援をうけたヒズボラの一掃作戦で、11人の閣僚が突然、Saad Hariri首相の政府を辞職した…これは30人の閣僚からなる政府を自動的に解散させる最低数だった。
この動きは、長らく論争をまきおこしてきた国連後援のレバノン特別法廷(STL)とつながっている… それはヒズボラの上層部メンバーを、2005年の前首相Rafiq Hariri(Saadの父)の暗殺に関与したとして訴追しようとしていたとされる。
シーア派武装グループ(ヒズボラ)は、そのような告発はレバノンに深刻な影響を与えるものだとし、欧米の支援するHariri首相に、彼らがそれを米国-イスラエルの手先と称する国際法廷を否認するように求めてきた─
http://www.middle-east-online.com/english/?id=43625
ヒズボラの最新のスイサイド・ミッション By タナシス・カンバニス (1/12, the New York Times)
火曜日のレバノン政府の崩壊は、ヒズボラが反政府グループから支配勢力へとのし上がる最終ステージを示すシグナルだった。ヒズボラが、法的にはベイルートで、政治的な野党勢力の頭目として留まっていることは、誤ってはいない: "神の党"はそのレバノンへのコントロール力を結集してその地位を守るためなら、何に対しても止まることはない─内戦を含めて。
この危機は、国連がバックで進めていた、2005年の前首相Rafik Haririの暗殺に対する調査法廷への、ヒズボラの反対によって勢いづけられた─ アナリストの中には、暗殺された前首相の息子であるSaad Haririによって率いられたレバノンの現政府は、同法廷の合法性を拒絶することで、情勢の安定を得られるのではないかと考える者もいる。
Hariri氏には、ヒズボラとの間のチキンゲーム(*)において厳然とその立ち場を守る以外に、本当に選択肢はない: 彼がヒズボラに屈することで短期的には苦境に追い込まれ得るにしても、彼は最終的に(父Haririの暗殺者は訴追すべきという)法的なルールを放棄する権限はない。 (*食うか食われるかの、限界のゲーム)
彼は、彼の父親を暗殺した者たちに対しての責任を主張せねばならないだろう…そのプロセスにおいて彼の立場を失うにしても。彼と同盟を組むことは、ヒズボラにとっては…ヒズボラが多元性を容認する、法律に準拠した価値観にこだわり、神権的かつ好戦的なその敵勢力とは異なる存在であろうとする限りは、有効なオプションであり続けるだろう。
今日のレバノンの苦境は、しばしば正義を犠牲にすることによってしか安定性が得られない、多くのアラブ世界諸国の事情のミラーイメージ(鏡像)でもある。さらに、それは米国の影響力の限界をも示している。ワシントンは2005年にHaririが政権を握ったとき、彼の政治的同盟に対して強いレトリカルな支持をあたえたが、しかしヒズボラの軍とその支持者たちがベイルートの支配権を掌握し、政府の30閣僚のうち10閣僚のポストを強圧的に占めたこと(“the blocking third”:ブロックできる3分の1)によって、拒否権を獲得するのを阻止できなかった。
今週、Hariri首相がワシントンでオバマ首相と会っていたその最中に、反主流派勢力の10人の閣僚が、他の独立系の閣僚たちとともに辞任したことは、ヒズボラによるそうした力(拒否権)の発動なのだ。
アウトサイダーにとっては、この危機は当惑を感じさせるかもしれない。Rafik Haririの車両爆弾による暗殺から5年以上たって、未だに国際法廷は容疑者を訴追できずに逡巡を重ねている。2006年夏のイスラエルとの戦争の後に再武装し再起したヒズボラは、政治的な、かつ大衆の支持を集めた一連の勝利をおさめた。そのスポンサー(資金供給者)であるシリアやイランによる影響力も、ただ、強化されただけだった。そして政府の安定を招いたかもしれない、シリアとサウジアラビアの間の対話は今週、分裂した。
それならヒズボラは今、政治的なダイナミクスを変えつつあるのだろうか?
単純に言えば、ヒズボラは、Haririの暗殺の犯人だと規定されることによって、その大衆的な人気を集めている彼らの合法性(legitimacy)を傷つけることはできない。同グループの力は、そのおよそ100万人の支持者たちの無条件の支援によって支えられている。ヒズボラにとって重要なのは、そうした選挙民だけであり、彼らはそうした人々に対し自らがイスラエルと米国による侮辱からアラブの尊厳を守る唯一の保護者、というスタイルをとっている。
こうした支持者たちは、もしも彼らの党が… この国のスンニ派ムスリムに愛され、キリスト教徒にも、ドゥルーズ派やシーア派ムスリム(=ヒズボラの主要な支持グループ)からも尊敬されていたリーダーを殺害したと証明されたなら…余り許せるとは思わないだろうが、どうにか必死に理解したいと思うことだろう。それゆえにヒズボラは… 2008年にレバノンをイスラエルに対する内戦の際に追いやった戦争をはじめたことの責任は臆面もなく認めたにも関わらず… Hariri暗殺におけるいかなる役割も否定している。
しかし、彼らの言い訳は通じなくなりつつある。携帯電話の記録に基づいて漏洩された証拠が、ヒズボラが暗殺現場にいたと証明している。ヒズボラのリーダーたちは、彼らの部下たちがRafik Haririを保護しようとしていた、そして暗殺の背後にいたのはイスラエルだ、と主張する。しかし、もしも彼らがHaririを討ったことと他の穏健派のレバノンの人物たちの暗殺計画に加担していたことが証明されたなら、多くの市民たちの眼には、ヒズボラも権力に酔った武装派グループの一つに過ぎないと見られることになるだろう。
Haririの若い息子にはどんな選択肢があるのだろうか?彼は2009年に過半数の議席を獲得し(今は)断片化し縮小している政治同盟を率いているが、ヒズボラとその同盟者たちよりも支持票は少ない。しかし、彼の最良の戦略はシンプルだ…もしも彼に、その度胸があるなら: 国連法廷にこだわり続け、そこで得られた証拠を、裁判にかけることだ。
ヒズボラ(またはシリアの彼らの後援者たち)がRafik Haririを暗殺した、と信じざるを得ない証拠を整えることは国際的な法廷の訴追人に負っている。今は、首相はより説得性あるやり方で、その課程の公平さを信頼していることを主張すべきだ。もしもヒズボラが無実ならば、彼らは法廷で罪を免れるだろう; もしも有罪な場合、なぜ彼らは逃げねばならない?
この戦略が成功する確率は大きくはない: ヒズボラは最終的な勝者として現れる可能性が強い、なぜなら彼らは中東での、そしてイスラエルとの戦争における彼らの立場を維持するために、レバノンの国を喜んで犠牲にするからだ。しかしレバノンの孤独な首相には、解決のために長い射程のショットを撃つ以上のよい選択肢はない; さもなくば彼は、ヒズボラが罪を免れるために奉仕する従僕になってしまう。
(Thanassis Cambanisは“A Privilege to Die: Inside Hezbollah’s Legions and Their Endless War Against Israel.” の著者)
http://www.nytimes.com/2011/01/13/opinion/13cambanis.html?_r=1&hp
*最近立ち消え状態にあった国際法廷…暗殺の真相を知られたくないナスララは終の一手を打ったのだろうか?
*関連記事
http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2010/10/how-party-of-god-became-lebanons-most.html
神の党はどのようにして、レバノンで最強の勢力になったのか─ヒズボラの進化 (2010/10/10)
http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2009/06/new-evidence-points-to-hezbollah-in.html
ヒズボラがハリリを暗殺したのか?/国際法廷捜査のブレークスルー: ハリリ暗殺へのヒズボラの関与をさし示す新しい証拠 (2009/6/12)
http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2009/03/lebanese-split-over-hariri-tribunal-by.html
ハリリ暗殺事件の特別法廷の近況とは? (2009/3/8)
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