Tuesday, May 3, 2011

サウジ・アラビアによる反革命が「アラブの春」の熱気を奪う Saudi counter-revolution cools Arab Spring - By Jim Lobe


サウジ・アラビアによる反革命が、「アラブの春」の熱気を奪う
─石油価格の高騰を怖れる米国の恭順さが、湾岸でのサウジのアジェンダ実現を助ける─By ジム・ローブ (4/24, アル・ジャジーラ英語版)


「リヤドの政府とその同盟者らが描写する、中東のスンニ派・シーア派間に一層深まっているという紛争のなかで…サウジは地域のイランの最大のライバルとして台頭しつつある」

  いわゆる「アラブの春(Arab Spring)」がその6ヶ月目に入る今、それは深刻な冬の逆風に直面しているかのようだ。ウォッチャーたちのなかには、サウジとその近隣のスンニ派首長の国々を、湾岸諸国に吹きつける凍てつく風を巻き起こしている主な源として非難する人たちもいるが、米国や西欧の「価値観」と彼らの利益との間の食い違いが拡大していることが、この季節外れの悪天候を加速させているのだ。

 かくして米国政府が…バーレーン(米国第五艦隊の母港の国)の多数派シーア派住民へのますます暴力的で無差別な弾圧とは賢明なものかどうかについて、強い疑念をプライベートに表明しつつも、サウジが後ろ盾となるその抑圧に対し明白な非難を述べることに失敗した…ということが、こうしたトレンドの最も露骨な実例となっている。

 より知られていないが─非難さえもされていないことは、木曜日にUAE(アラブ首長国連邦)の政府が同国の法学者協会(Jurist Association)の幹部の会議を解散させたということだ─その会議とは同国での最も顕著な市民社会組織だったのだが…彼らは今月、先に政治的改革を求める嘆願書に(向こう見ずにも)署名していたのだ。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、その動きが政府による「平和的な反政府運動への拡大的弾圧」の一部であると述べたが、同国の事実上の国防大臣Mohammed bin Zayed Al Nahyan皇太子は来週、バラク・オバマ大統領に会う予定であると、金曜日にホワイトハウスが発表した。

 もちろん、オバマによるリビアの「政権交代」への拡大する軍事的投資(たとえ不承不承といえども)にも関わらず、彼が手がける─ワシントンをアラブ世界における「歴史の正しい側に置く」ための素直な努力─ というものは、ますます不首尾で偽善的なものに見えつつある。

 米国のみならず─他の西欧諸国もまた─サウジの政策、特に湾岸での政策を効果的に尊重して扱いながら、その地域で最も民主的な変革とは逆の方向へと賭けている(例えばエジプト軍への支持を強化しつつ、同時に実質的な経済援助を廃止するなど)─それによりエジプト軍が同国の防衛や外交政策、特に対イスラエル政策での支配権を維持するよう、明らかに望んでいるのが実態だ。

 そんななかで、より一層理想主義的な…チュニジアのZine Al Abidine Ben Ali大統領やエジプトのHosni Mubarakの放逐に成功したような…初期の「民主主義志向のデモンストレーション」のイニシアチブをとった若者主導の運動は、イエメンやリビアでと同様に、より狭い宗派や部族・親族の利益のために行動するより利己的な勢力に取って代わられて、周縁に追いやられつつある。

 サウジ主導の湾岸協力会議(GCC)が現状においてイエメンのサレハ大統領辞任を仲介しようとしている努力は─ワシントンはその件も何となく、不承不承に認めているのだが─ひとつのエリートのグループが…民主主義的な自由や自治拡大といったことに何らの展望も持たない、別のエリートのグループに取って代わられるだけの結末を生む可能性もある。

 「米国は、現在の状況に関して主に語られる説明(ナレーティブ)、…つまり民主主義者と、抑圧者が今後もこの舞台を演じていくだろう、ということ…そしてそれが、部族vs.部族の争いや、持てる者vs.持たざる者の争い、あるいはより悪くすれば、イスラムvs.十字軍のキリスト教徒の争い…などに取って代わられていく恐れはないだろう…との確信をもっているのか?」と前・米国土安全保障省長官のMichael Chertoffと前CIA長官Michael Haydenは、金曜日のワシントンポスト紙で問いかけている。

石油、武器、そしてイラン問題 

 地域の明らかな反革命勢力であるサウジアラビア王国に対して表された尊重の念は、多くの要素によって説明される─それは少なくとも同国が、米国で石油価格がガロン当たり4ドルの高値に達したなかでの、日和見主義的な世界的産油国という役割だけからなされる説明ではない。米国の政治アナリストたちは、オバマの再選へのチャンスは─現状ではその可能性もとても高いが─来年のこの時期までに石油価格が下がることなしには、政治的に顕著な方策を失うだろう、と警告する。

 「私の支持率は最近の危機のなかで上下しており、現状ではガソリン価格高騰が人々のうえに大きく影響している」とオバマ自身、今週初めにカリフォルニアでの資金集めイベントで述べている。
 石油危機に加えてその大きな影響が及ぶものとして、サウジアラビアとUAEは米国の最新鋭の武器システム(その製造者たちは国内での顕著な国防予算削減の兆候を懸念しているが)を購入しているので、ワシントンと彼ら大口海外顧客との間の関係が緊張するリスク、という結果ももたらされる。

「大方のアメリカ人は、彼らの想像の及ぶ範囲では、米国がサウジにどの程度のレバレッジをもつのかを理解していない」と、前Defence Intelligence Agency (DIA)の中東アナリストで、退任したパット・ラング提督が、先週彼自身のブログSic Semper Tyrannisで語っている。

 「彼ら(サウジ)は米国とのベーシックな関係性のあり方を変えることを決意し、今後はより独立的なコースを取り、これからは地域全体の革命的勢力に対してのレジスタンス(反動的な弾圧)をより奨励していく方向をとる」と彼は言う。

 そして最後に、サウジアラビアは、UAEやバーレーン、クウェイト、ヨルダンの熱烈な支持を受けながらも、地域におけるイランとの第一の敵として台頭している─ リヤドの政権とその同盟者たちはより一層、それを中東のスンニ派とシーア派コミュニティに実存する紛争なのだと描写している。

 彼らがテヘラン政府を、アラブ世界の内政に干渉していると非難することは、パワフルな「イスラエル・ロビー」(*米国の)の耳には心地のよい(音楽のような)ものだ─彼らが辛抱強く培ってきた、スンニ派主導の諸国政府を反イランのもとで統一するという「戦略的コンセンサス」のアイディアが遂に…彼らの分かち合う懸念…この地域での民主化がもたらすかもしれない重大な結果への懸念…という果実となって実ったかのようにもみえる。

 かくして米国議会が、傷つき、沈みつつあるエジプト経済に対し、同国が政治的進化を遂げるこの決定的瞬間において実質的な援助をすることに躊躇するその理由とは、ワシントンが予算カットマニアに牛耳られているという故だけでなく、エジプトの未来の政府がキャンプ・デービッド合意に誠実であり続け、ガザ政策でもイスラエルに協力し続けることを確実化したい、という願望にも、同じく大きく依存している。

 先週、エジプト政府がテヘランとの関係の正常化を開始すると決断したことは、民主的なエジプトというものが余りよい投資先ではないかもしれない、との信念を拡大させた。しかし、アラブの春を冷却させている風は、灼熱の暑い夏に向かう可能性もある、とアナリストたちは警告する(アナリストたちは、サウジによる反革命によって同国内や中東全域で益々深まる二極化が、米国と現状でのその地域の同盟国により大きな加速的リスクをもたらすと信じているが)

 「現状は、特にイランとそのアラブの近隣諸国との間のとげとげしさが拡大していることによって、益々緊急さを増している」と、米国平和研究所が今週発表したルトガース大学のToby Jonesの論文は指摘する。その論文は、もしもワシントンの米政権が、より確実な役割を果たさない場合に、それは「いまひとつの軍事闘争に引き込まれるかもしれない」と警告している。

 彼は、ワシントンとその同盟国が、サウジに対し自制と改革を促してきた静かなアピールは無視されるか、拒否され続けてきたとしつつもこう付け加える… 怖れられているイランの影響力の拡大というものが(サウジによる)自らの予言の成就をももたらすであろうと─それは確かに、バーレーンによって実現した─。Elliott Abramsのごとき著名なネオコン強硬論者が今週、自らのブログにおける「破滅に向かうバーレーン(Bahrain Heads for Disaster)」と題する投稿できっぱりと同意していた点だ─それがサウジアラビア自体を含みつつ、より広範な地域におけるものではないにせよ。

 「リヤドの政府がその現在行く道を守り続けるべきなら、米国は、軍事的な関与についての再考が必要であることを明かにせねばならない」と─ ワシントンは1979年のイラン革命以前と同様、その地域での利益を「水平線の彼方から」保護できるだろう、と指摘するJonesは述べている。
Jim Lobeは Inter Press Serviceのワシントン支局チーフ)
http://english.aljazeera.net/indepth/opinion/2011/04/2011424133930880573.html

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http://hummingwordiniraq.blogspot.com/2011/04/sweet-smell-of-counter-revolutionby.html 




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