Sunday, July 1, 2012

メキシコ人らによるサウジ大使の暗殺未遂と、イランの企みについてWhy the crazy Iranian plot to pay Mexicans to kill the Saudi ambassador isn’t so implausible.By C.Hitchens


昨年秋にメキシコ人ドラッグマフィア・メンバーによる
サウジ・アラビアの駐米大使暗殺未遂のおきた際に
故Hitchensが書いていたコラム─


なぜメキシコ人たちを使ってサウジ大使を殺害しようとのクレイジーなイランの企みは、
さほどあり得なくはないのか?
─彼らは次に何を考えるのか?
 By クリストファー・ヒッチンズ (10/24, 2011 Slate.com)

イラン・イスラム共和国の「クッズ・フォース(Qudz Force)」が、サウジ・アラビア大使の暗殺者を金で雇いつつそれを偽証するために、殺人のフリーマーケットに突入した…という、オバマ政権の主張の真実味を疑うことには、妥当な理由があるのかもしれない。しかし、この事件が明らかに、超現実的な風味や芳香を湛えているということは、その理由を形づくることにはなり得ない。我々は以前にも、ここに来たことがある…最近のすばらしい本がそれを思い出させてくれるように…そして我々は、テヘランのならず者たちの部隊に何の告発もなされていないことも知るのだが、それは一見、信じがたいことにも思われる。

 この、紛いようのない本の題名とは「ターコイズ宮の暗殺者たちAsassins of the Turquoise Palace 」というもので…その著者は亡命イラン人のロヤ・ハカキアン(Roya Hakakian…私は彼が友人であることを誇りにしたいが)である。その書は、1992年9月17日のベルリンでの殺人事件の落穂を拾って、そのディテールを述べている。その日その都市には、イラン系クルド人亡命者たちのグループが、社会主義インターナショナル 社会主義インターナショナル(それは社会民主主義の政党を結びつける傘組織だ)の会議に出席するべく滞在していた。代表団のチーフであったのはサデグ・シャレフカンディSadegh Sharefkandi…つまり、クルド人のディアスポラに高い敬意を抱いている人物だった。彼が、亡命者らや移住者ら(émigrés)の愛用していたレストラン、ザ・ミコノス(The Myconos)の席に着くやいなや、彼とその同僚たちは、マシンガンによる冷血な銃撃をあびた。そして、その殺害者は素早く姿を消した。

 動機や方法…そして、その機会に関する論議が間もなく始まったものの…それらはことごとく、政治的な派閥主義に関するパラノイア(偏執狂)的な内輪揉めの論争の泥沼へと嵌りこんだ。当初、明らかに名指しされていたのは、テヘラン(イラン政府)だったのだが、しかし、イランの政権とドイツの関係は良好であったがために、イランのムラー〔宗教指導者〕がトラブルに関与した、などと考えるのは非合理的だ、と論じられた。そして代わりに、クルド系の支流のグループ─トルコを拠点とするPKKや、あるいはクルディスタンの労働者党などに責任がある、という可能性が論じられた(あなたは、テヘランが今や、サウジ大使の事件に関する同様なおとりの情報についても、論議しているのだと気づくかも知れない…ハメネイ政権に反対するムジャヒディーン・ハルクや、その他のサークルの間を軽やかに出入りする陰の人物などについても言及しながら。

 しかしながら、ミコノスにおける事件の、より一層シリアスな法医学的証拠が現れ始めるまでに、時間はかからなかった。アヤトラ・ホメイニの生命が衰えつつあった晩年の日々には、彼の体制への批判者や反対者らを、物理的に排除する為の特別な部門が設けられていた。それらの者たちは標的にされ、チェスボードから排除されるべき者たちだったのだ─彼らが、イランに住んでいようと、海外に住んでいようと。金は武器と同様に有用だった。汚れ仕事を喜んで請負う者たちにより、安全な住み処と偽のアイデンティティが供給されていた。ドイツ当局は徐々に、彼らの領土が…彼らが儲けのいいビジネスの相手としている悪夢の政権の手によって、何十名もの人間たちを移住させるために用いられている、ということに気づき始めた。

 ハカキアンの本には、何人ものヒーローが登場するが…その多くは、レジスタンスを生き永らえさせようとの考えのために、全てを危険に晒してきたクルド人や、イラン人の世俗主義者たちである。しかし、なかでもブルーノ・ジョスト(BrunoJost)には、特別な敬意を払わねばならない─彼はドイツ人の判事で、暗殺部隊の策謀を露見させるべく、全てを賭けた人物だった。Costa-Gavrasの ”Z ”という映画を観たことのある者なら、誰でも、完全にこのストーリーの虜になることだろう─それは、ドイツ・イランの間の交易関係や商業関係が、殆ど破廉恥なほどに温まっていた時に、公けになった事件である。イランの前・諜報大臣のAli Fallahianは、この親密な関係が、いかなる不都合な尋問というものも阻止するだろう、と考えた。しかしこの裁判は、どうにか最後には176人の証人を喚問し、喜んで証言しようとする者たちを脅しから守ることにも成功して、非常に精密な訴追を言い渡すことにも成功した。イラン・イスラム共和国はもちろん〔当然ながら〕その国内でも国境の外側でも、国家が後ろ盾となって殺人ビジネスを行っていることが露呈された。ドイツのみならずEU諸国も、彼らの大使をイランから呼び戻した。そして法廷の外には、真の正義が行われたことを、今や一度だけ目にした、喜びにあふれた何千名ものイラン人の民主主義者たちが集まっていた。私がそうであったように、読者たちにとっても、その時には涙を拭えなかったろう。私は、あなた方に是非、この本を手にするようにと求めなければならない。

 政府が犯罪的行為のために特別部門を維持している、という現象─は、イランに限ったことではない。ファイナンシャル・タイムズ(への寄稿)では昨今、マンスール・イジャズMansoor Ijaz が、パキスタンの諜報部Inter-Services Intelligenceのなかの「Section S」の存在を暴露した。時に「S-Wing」として知られる…そのオフィスの目的とは(パキスタン・ISIと)、タリバンおよびハカニ・ネットワークとの関係を維持するためのものだ…と、イジャズ(パキスタン系アメリカ人で、かつて一度クリントン政権のためにスーダンと交渉したことのある)は書いていた。5月にオサマ・ビン・ラディンが殺害されたすぐ後に、彼はホワイトハウスでの(オバマとの)会見を求める、パキスタンの大統領Asif Ali Zardariからの接触を受けた。この会合でパキスタンは、それまでSectionSの存在を否定していたにも関わらず…譲歩と引き換えにその閉鎖を申し出ようとしていた!それは、何よりもその方法によって、マイク・マレン総督(Adm. Mike Mullen)(オバマの前参謀チーフ)が─「ISIはアフガンの民衆のあいだの両勢力の側についていたと断定することも可能にさせたのだ。

 そして再び、ここには…純粋に息を呑むほど困惑させられるようなものは不在だといえる。我々はあなたを裏切ってきた…そして今、さらなる賄賂を貰ってでもそれを止めたいと思っている(フローベールFlaubertは、彼自身を売る喜びのために報酬を貰おうとする、酷く腐敗した銀行家を雇っていなかったか?)

 私はパキスタンの二重取引とは、ザルダリがこうして白状したことで改善したと思う。我々は白昼堂々と、国境を跨いでパキスタンが米軍とアフガニスタン軍へのダイレクトな爆撃を発したことの第一次証言をも読むことができる。我々はまた、考えられないほど傲慢なアシュファク・ペルベス・カイハニ(Ashfaq Parvez Kayhani将軍)〔パキスタンの軍服を着た総督〕が─Haqqani network は武装させておく必要があると述べたことも、そして…同盟諸国の勢力が秩序ある引継ぎと撤退を行おうととしている間でさえも(Haqqaniたちには)オフィシャルに報酬を支払い続けたい、といっていることも知っている。

 最後に、バーナード・ヘンリー・レヴィ(Bernard-Henri Levy)の著した、パキスタンの2005年5月以来の背信行為についての名高きタイムラインに言及して以降、私はそれをもっと容易にみつけられるようにして欲しいとのリクエストを数件受け取った─それはここで.読める。それは気落ちするほどの長い年月にわたって、米国議会を騙すことにとてつもない成功を収めてきた企みと…またアメリカからの援助金や、その戦略というものを操っていたことの記録だ。もう一度言うが、その主なるメソッドとは、パキスタンの政権が敵視して、戦っているとだけ言っていたタリバンとアル・カイダの人物らとの間で、彼らが抜け目のない取引きをしていた、ということだ。

 ここにこれらの事例から共通して学べる教訓がある。全体主義の、あるいはテロリストである敵が彼らの痕跡を隠せるほどに賢いものだ、とは考えないほうがよい。もちろん彼がそうすることに関心を持っているとさえ、仮定しないほうがいい。そのことの(…それを、あえて隠さないという)徹底した図々しさとは…当初の段階ではその戦略の一部であることも多いのだ。
://www.slate.com/articles/news_and_politics/fighting_words/2011/10/why_the_crazy_iranian_plot_to_pay_mexicans_to_kill_the_saudi_amb.single.html

No comments: