Sunday, January 24, 2016

サウジ・アラビアからの手紙- Letter From Saudi Arabia By トーマス・フリードマン


Mohammed bin Salman (credit AFP)
サウジ・アラビアからの手紙 Letter From Saudi Arabia By トーマス・フリードマン2015/11/25, NYtimes
サウジ・アラビアという国は、遠くから描いて表わすのは簡単でも…ひとたびそこに足を踏み入れたならば、最も禁欲的で、多様性に対しては非寛容なイスラム教の湧き出る源泉によって苛々させられるような場所だ─その手のイスラム教の最も極端なバージョンは、イスラム国(ISIS)が実践するものだ。私が最も困惑するのは…その地を訪問して人々に出会えば、彼らが本当に好きになってしまうことだ…そこには、とても興味深い、拮抗する正反対のトレンドがある。

先週、私はこの地をISISのルーツを解く手がかりを求めて訪問した─ISISはそのグループの兵卒に1,000名のサウジの若者を引き込んでいる。私はISISがリクルートの対象とするような─サラフィー(*サラフィー主義=厳格派))やワッハーブ主義のイスラム教の教えにのめり込んだ、英語も話さぬ髭面の若者たちの集まるモスクに侵入してきたように装うつもりはない。だが、私が知っていることは、この地では依然として保守派の宗教家たちが駆け引きの支配権を握っている、ということだ。この地で最も人気のあるTwitterの投稿者とは、宗教的な扇動者たちだ─そしてこうした宗教指導者たちが、依然としてここでは司法制度をつかさどり、リベラルなブロガーたちに鞭打ちの刑を宣告したりしている。そして、彼らは未だに─彼らが世界にばら撒いてきたイデオロギーがいかに世の平和を妨害したのか─ということには、否定的な認識しか持っていない。
 しかし、私は私の知らなかったものにも出くわした─この社会では何かが沸騰中なのだ、という事実に。これは、あなたの祖父がお馴染みだったようなサウジ・アラビアではない。「実のところそれは、もはや私の世代にとってのサウジ・アラビアですらない」─と、この国の52歳になる外務大臣のAdel-Jubeirは私に言う。
たとえば、私は私のホストであるKing Salman Youth Centerの招待を受けた─それは印象的な教育基金だ─何よりも、それはカーン・アカデミーKhan Academy(*註)のビデオをアラビア語に翻訳し続けている。彼らは私に対して、テクノロジーの力が職場にいかに大きな影響を与えているのかをレクチャーしてほしい、との依頼で招聘した。私はどのように期待すべきかわからなかったが、そこには500人以上の観客が訪れてホールを満杯にしており…そのおよそ半分は、男性とは別に隔離された場所に座る、伝統的な黒いベールを纏った女性たちだった。サウジがサラフィー主義のイデオロギーを輸出することに批判的だったコラムニストが、なぜその意見を述べる場を与えられるのか…という反発の念による反動がTwitter上に溢れていた。しかし、私の講演に対する受け止め方は温かかった(私は無報酬だったが)─そして、聴衆からの質問とは、彼らの子供たちを21世紀のためにいかに準備させるべきなのかという…探求的で思慮に溢れるものだった(*カーン・アカデミーKhan Academy: 2006年にサルマン・カーン (教育者)によって設立された非営利の教育ウェブサイトであり、運営NPO:ネットを通して高水高水準の教育を、誰にでも無償で、どこでも受けられるようにするというサルマンの理念を現在、Googleビルゲイツ財団も支援する。 現在、3000本以上の教育ビデオが登録され、初等教育から大学レベルの講義まで、物理、数学、生化学から美術史、経済学、ファイナンスまで、内容は多岐に渡る~Wiki)
この国では保守主義者たちが、彼らの未来のアイデンティティにおいては、一層多くの競合に晒されそうにもみえる─いくつかの流れ(傾向)が統合しつつある、という現状のせいで。第一に、サウジ・アラビアの人口の大半とは30歳未満なのだ。第二に、アブドラ国王は、海外で学びたいと思う者には誰にでもその費用を支払うと宣言した。その結果、現在では20万人のサウジ人が海外で学んでいる(10万人のアメリカ留学者を含めて)─そしていまや、年間で3万人の者たちが欧米の学位を手に帰国して、就労人口に加わっている。いまや、どこのオフィスにでも女性の姿がみられる─幾人かの上級官僚たちが私に囁いたことによれば、かつては女性の職場参加を拒否していた…その同じ保守主義者が、自分の娘をよい学校・よい職場に入れるために、静かにロビーイング活動をするといった例があまりにも頻繁にみられる、という。

最後にこうした人口の突出した若者層の爆発と同時に、TwitterやYouTubeも爆発している、ということだ─閉じられた社会にもたらされた、神からの使者として。若いサウジ人たちはTwitterを使って政府に反発を訴えている…そして、お互いに日々の出来事を語りあっている…ひと月に5千万本ものツイートを発しながら。ここで足りないものとは、こうしたエネルギーを改革のために注ぎ込むことのできるリーダーシップなのだ。新たな国王、Salmanの息子Mohammed bin Salmanとは、30歳の副皇太子だが─彼はもう一人の穏健派の皇太子であるMohammed bin Nayefとともに…サウジ・アラビアをいかに変革すべきか…のミッションへと乗り出した。

私は、とある夕べにMohammed bin Salmanを彼のオフィスに尋ねたが…彼は私をすっかり疲れ果てさせた。跳躍するようなエネルギーを爆発させながら、彼はその計画の詳細を語ってみせた。彼のメイン・プロジェクトとは…オンライン上の政府のダッシュボードなのだという…そこには各省庁の月間目標が、K.P.I.[(Key performance indicators主要パフォーマンス指数)─に基づいて、透明度を伴って表示される。各省の大臣はその目標の達成への責任を負う。彼のアイディアとは、国全体を政府のパフォーマンス目標の達成に関与させることなのだ…大臣たちはこういう、「彼─モハメッドが就任する前には、大きな決断とは2年をかけて行われてきたが…今やそれが2週間でなされている」。

主なチャレンジ課題とは、石油に対する我々の過剰な依存と、我々が予算を準備しそれを費やす…そのやり方、そのものなのだ」、とモハメッドは説明した。彼のプランとは、サウジの富裕層に対する補助金を減らし、彼らが安いガスや電力や水道水を得られる特権を廃止すること…そしておそらくは付加価値税と、煙草や甘い飲み物に対する罪悪税をも創設し、鉱山と未開発地を民営化してそれに課税し、何十億もの利益の創出を解禁するという方向に導くことなのだ─たとえ、石油価格が1バレル30ドルに下落しようと、リヤドの政府が国を建設するために、貯蓄を削ることなく十分な収入を得られるようにと。彼はまたサウジの国民に対して、官公庁の仕事を辞めて私企業へと転職させるインセンティブの奨励金を作りつつある。 サウジ人の70%とは30歳未満なのだ、そして彼らの物の見方(パースペクティブ)とは残りの30%とは異なる」、とモハメッドはいう。「私は彼らのために、彼らが未来にそこに住みたいと望むような国を作るべく働いている。」
 これは、果たして砂漠のオアシスの蜃気楼なのだろうか?私にはわからない。それは、より開かれたサウジ・アラビアを生み出すのか…あるいは、より効率的な保守派のサウジ・アラビアを作り出すのか?私にはわからない。だがそれは絶対に…見まもるに値するものだ。「私はこんな楽観主義をこれまでに見たことがない…」と、サウジの資本市場局(Saudi Capital Market Authority)の長官、Mohammed Abdullah Aljadaanは私に言った。「我々は今まで見たことのない脈動を目にしている、そして我々は政府のなかに、過去には予想もしなかったようなロールモデル(役割モデル)の存在をみている」。
そして、肝心要めなことは─この国にはいまだに思想的な不寛容を輸出しているダーク・コーナーが存在している、ということだ。しかし、それらは真の競合にも晒されている…草の根から湧き出る競合と、そして実績に基づく正当性(信仰心の深さや一族の名による権威などではなく)を打ち立てようとするリーダーたちによる競合に…。あるサウジの教育者が私にこう告げたように─「そこにはいまだに、変化に対するレジスタンス(抵抗)が存在する」、しかしそこにはいまや、より多くの、「レジスタンスに対するレジスタンス(抵抗することに対する抵抗…)」がある。
モハメッドには、彼の父親であるサルマン王による重要な後ろ盾があった…彼は、政府を専門職化(プロフェッショナライズ)し、民間部門を活性化して、国家経済のうちで政府が占める役割を拡大する幅広いシフトの一環として…健康大臣や住宅大臣などの重要ポストを王族以外のビジネス・エグゼクティブたちによって挿げ替えた。新たな健康大臣とは、かつては国のもっとも重要なCEOだった国営石油会社アラムコ(Aramco)の前CEO、Khalil al-Falihなのだ。
モハメッドは、政府の効率化とは「我々が腐敗と戦うことを助けるために」肝要なことだという…それは「我々の最も重要な挑戦の一つ」なのだと。さらに、補助金を削減したり国内でのエネルギー価格を上げることによってのみ、サウジ・アラビアはいつの日か、「原子力発電か太陽光発電」を打ちたてることができ、地域市場での競合力を得られるのだと。それは激しく求められており、そのためにはより多くのサウジの石油が、国内消費されるよりも輸出されねばならないと彼は言う。
しかし、そうした展望はすべて、トリッキーだ。サウジの労働者たちは所得税を払っていない。「我々の社会は、税金というものを受け入れない。(市民たちは)それに慣れていない」、とモハメッドは言う。それゆえに、政府が何らかの手段で増税するか、それを形づくろうとすれば、政治的な影響を生じる可能性がある─リーダーたちは、「議会制度なき租税制度というものはありえない」、といった宣言に対して耳を貸すのだろうか? (*註:サウジにはもちろん、議会が存在しない)
「社会の一部として、それを代表しないような政府は政府として継続できない」。とモハメッドはいう。「我々はアラブの春を目にした。生き延びた政府というものは人々との繋がりを持っていた政府だけだ。人々は我々の王制を誤解している。それは、ヨーロッパの国々のような王制ではない。それは部族的な形態の王制なのだ、多くの部族と、副部族と、地域というものがトップとの繋がりを持っている」。彼らの願望や関心は考慮される。「王というものは単に、朝起きれば、何をなすべきかを決意できる…といったようなものではありえない。」
今回の訪問で私の目を引いたものには、これ以外にも、小さな事柄がいくつか存在する─例えば、ある日の午後、欧米の交響楽団がサウジの国営のテレビ放送で演奏していたことや…あるいは(通信省に展示されていた…あるサウジ女性の描いた、サウジ女性の像を含む…)サウジのアーチストによる現代絵画のコレクション、といったものだ。(*サウジでは長年、宗教的な理由から女性の顔の写真や絵画を、公共メディアに晒すことが禁じられていた)
ISISに関してはモハメッドは、それがサウジの宗教的思考の産物だとの説に反論して、こう語った、つまりそれは実際のところ、(イランに操作された)バグダッドのヌリ・アル・マリキの率いるシーア派政権の行ったイラクのスンニ派への残虐行為への反動であり…(イランに支援された)ダマスカスのシリア政府によるシリアのスンニ派弾圧への反動なのだ、と。「アメリカがイラクから去る前には、ISISは存在しなかった。その後に、アメリカが去ってイランが入り込み、そしてISISが現れた…」、と彼はいった。
彼は─ISISがサウジ・アラビアの政権を不安定にすべくモスクを爆破していたときに、国際社会はサウジがISISを触発したといって非難した─と述べた。「ISISのテロリストたちは私に、私がイスラム教徒ではないという…そして世界は私に、私がテロリストであるという。」
しかし、このことは、一方にはサラフィ-主義のイスラムというものを擁しつつ…一方には、ジハード戦士を抑え込もうとして西欧と協力しようとする別の部分を持つ、サウジの政府やその社会が生みだした数十年来のレガシーでもある。
モハメッドが論ずるには、ISISのナレティブ(言説)というものは、サウジの若者層に直接、ツイッターを通じて照射される。そして、そのメッセージとは、「西欧はそのアジェンダを君に押し付けようとする。そして、サウジ政府は彼らを助けており…イランは、アラブ世界を植民地化しようと試みている─それゆえに、我々ISISはイスラムを防御する…」、というものだ。
彼は、こう付け加えた─「我々は、西欧が我々を読み違えているというような苦言はいわない。それは、部分的には我々の失策でもある。我々は我々の状況についての説明はしない。世界は急激に変化しており、我々はその世界と共にあるためには、優先事項を再検討(re-priotize)せねばならない。今日の世界とは異なっている。あなたは、世界から孤立することはできない。世界は、あなたがたの近隣で何が起こりつつあるかを知らねばならないのだ─それはグローバル・ビレッジなのだから」。
イエメンでは、サウジが率いる湾岸諸国の同盟が、フーシの武装勢力や(イランの支援を受けた)前大統領、アリ・アブドラ・サレハに忠誠を誓う反乱勢力と戦っている。反乱勢力は、3月にイエメンのオフィシャルな政府を首都サナアから追い出し、サウジの同盟が、それを力づくで復活させようとした。これまでに米国が報じたことによれば…5,700人の人々が殺害されたが、その多くは一般市民だった。サウジの政府の官僚たちは、私に─彼らには解決策をさぐる交渉に望む準備があるといい、そこにある泥沼には嵌りたくない─ともいう。しかし、フーシの勢力は…もしも(以前彼らがあった状態と同様に)領地を失うなら、それだけでシリアスになるに違いない。
「相手方は、政治的なコンセンサスを打ち立てることに問題を生じている」と国防大臣でもあるモハメッドは言う。「しかし、地上における損害と、国際的な圧力の継続に出逢ったなら、彼らは常に交渉にシリアスになるものだ。我々はこれを終わりにしようと試みている。」
UAE、クェート、サウジを訪れたこの旅のあいだに、私が会話をしたすべての官僚たちと同じく、モハメッドは、アメリカに対してこの地域を放棄しないでほしい、との希望を述べた。「そこには、リーダーのいる時もあり…いない時もある。そして、リーダーがいない時には、カオスが引き続くものなのだ…。」
http://www.nytimes.com/2015/11/25/opinion/letter-from-saudi-arabia.html?rref=collection%2Fcolumn%2FThomas%20L.%20Friedman&_r=0
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モハメッド副皇太子の関連記事1
若き剛腕、サウジけん引 30歳副皇太子、軍事・経済動かす(朝日新聞、2016/2/5)
中東の大国サウジアラビアのサルマン国王が即位して1年がたった。イエメンへの軍事介入やイランとの断交など強硬な姿勢が目立つ新体制で、政府の「顔」として頭角を現したのが国王の七男ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30)だ。国防相として軍を動かす一方、経済政策にも影響力を持つ。謎めいた若き指導者の実像を追った。

 ■異例の任命、「独断」の批判
 「この記念日に改めて忠誠を誓う」。1月23日、サルマン国王の即位から1年を迎えたサウジの首都リヤドには、こんな一節を添えた国王の巨大な肖像写真が並んだ。銀行や料理店、ショッピングモール。張り出したのは、政府ではなく有力王族などが経営する企業だ。多くの場合、欧米の研究者が「MBS(ムハンマド・ビン・サルマンの頭文字)」と呼ぶムハンマド副皇太子の肖像写真も一緒だ。
 重々しい「忠誠」の言葉が掲げられたのは、新国王による人事に対して一部から生じていた「疑義」の裏返しにもみえる。
 昨年1月に即位した国王は4月、前国王が「決して覆してはならない」と勅令で指名していたムクリン皇太子(70)を突然解任した。おいのムハンマド・ナエフ王子(56)を皇太子に据え、息子のムハンマド氏を副皇太子にした。年齢の近い異母兄弟への王位継承が続いていたサウジで、この人事は国王が属する有力王族「スデイリ家」の権力固めと受け止められた。
 特に、目立った実績がなかったムハンマド副皇太子の任命は波紋を広げた。ムハンマド副皇太子は国王の息子たちのなかでは珍しく欧米への留学経験がない。人物像は謎に満ち、SNSで「粗野な問題児」と指摘する投稿も相次いだ。昨年3月に始めたイエメンへの軍事介入が長引くと、批判は強まった。国防相を兼ねる同副皇太子の「実績づくり」との指摘が当初から出ていたためだ。
 副皇太子は今年1月、イランとの外交関係断絶に踏み切ったサウジの決定にも関わったとみられ、その姿勢を「独断専行」「冒険主義的」と報じた欧米メディアは少なくない。

 ■聖域にメス、評価も
 だがサウジ国内では、ムハンマド副皇太子を「若き改革者」と評する声もある。
 昨年末、政府はガソリンや電気、水道料金の大幅値上げを発表。年約1千億ドル(約11兆7千億円)を超えるとされるバラマキによる料金抑制を縮小し、痛みを伴う改革に踏み込んだ。
 改革のとりまとめ役を担ったとされるのがムハンマド副皇太子だ。22閣僚を束ねる「経済・開発評議会」の委員長を務め、民間企業の意見にも耳を傾けながら案を練ったという。
 サウジの大手投資銀行ジャドワ・インベストメントのチーフエコノミスト、ファハド・トゥルキ氏は「家計や企業に短期的打撃はあるが、長期的には欠かせない政策だ」と評価する。
 ムハンマド副皇太子は1月発行の英誌エコノミストのインタビューで、国営石油会社サウジアラムコの一部株式を公開する考えも明かし、その理由を「腐敗をなくすため」と述べた。同社は王族の利権が絡むサウジの「聖域」。そこに切り込む姿勢は、改革への本気度を印象づけた。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)の三束尚志リヤド所長は「副皇太子は王族や官僚に加え、米英のコンサルタントと議論して決断を下していると聞く。決して独断専行型ではない」と評する。
 一方、国防相として安全保障も担う副皇太子は、国交断絶で緊張が高まったイランとの関係について「サウジはイランと戦争しない」と述べ、欧米メディアの懸念を否定した。

 ■財政・外交、難しいかじ取り
 新婚旅行で日本を訪れたことがあり、日本のアニメにも詳しい親日家としての顔も持つムハンマド副皇太子。その手腕は、原油輸入の3割をサウジに頼る日本のエネルギー政策にも影響を与えかねない。
 サウジは歳入の8割以上を石油の輸出に頼る。だが、この30年で人口が4倍に急増したのに伴って石油の国内消費が増え、あと20年前後で「石油輸入国になる」との試算もある。サウジが発表した2016年予算は、10兆円以上の財政赤字を見込む。原油安が続けば、赤字幅はさらに拡大する。
 一方、米国が中東への関与を減らすなか、サウジは14年に65億ドルを武器購入に投じ、世界最大の武器輸入国となった。イエメンへの軍事介入の戦費は毎月数億ドル単位とされ、財政をさらに圧迫する。
 改革に取り組むムハンマド副皇太子の姿勢があだになるとの見方も出始めている。中東の地政学に詳しいアナリスト、セオドア・カラシク氏は「急激な改革を進め、結果的に国家の崩壊を招いたソ連を思い起こさせる。性急な改革が国民の反発を招く恐れもある」と警告する。
 (リヤド=渡辺淳基)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12194637.html?_requesturl=articles%2FDA3S12194637.html&rm=150
 
モハメッド副皇太子の関連記事2
サウジ副皇太子が存在感 シリアや原油、主要政策動かす(2016/2/22 日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08H9P_R20C16A2FF8000/

モハメッド副皇太子の関連記事3(転載)
石油王のサウジアラビア、一気に石油に依存した経済からの脱却を目指す(2016・1/23 International Business Times)


サウジアラビアの国営石油企業、サウジアラムコの
取締役会を統括するハリード・アル・ファリ(Khalid al-Falih)氏
サウジアラビアの国営石油企業、サウジアラムコの取締役会を統括するハリード・アル・ファリ(Khalid al-Falih)氏 GETTY IMAGES
サウジアラビアは、今週開催されている世界経済フォーラムにおいて、外国からの直接投資を誘致しようとアピールしている。新工場の 建設、銀行業や健康産業の促進等、外国資本が流入し、失業者のために何百万もの仕事を創出してくれることを歓迎している。同国は、石油に依存した経済から 抜け出したいと考えている。

サウジアラビアの国営石油企業、サウジアラムコの取締役会を統括するハリード・アル・ファリ(Khalid al-Falih)氏は21日、スイスのダボスで開催されたパネルディスカッションの中で、「私たちは、外国からの直接投資を大きく受け入れようとしてい る。(投資家の条件としては、)サウジアラビアにおけるこれからの発展を利用する意志があることが重要である」と述べた。同氏は、サウジアラビアの健康相 でもある。

サウジアラビア政府は、石油に依存した経済を多角化させるべきだという圧力に直面している。原油価格はここ18か月で70%下落し、今週は1バレル 27米ドル近くまで下がった。石油輸出から得る同国の収益は、急降下している。政府は、今年における財政赤字として870億米ドルを見込むと述べた。同国 における国内総生産(GDP)の13.3%に相当する金額である。昨年の財政赤字は980億米ドルであった。
サウジアラビアの指導者たちは、経済を石油以外へシフトさせようと、数十年間にわたって試みてきた。しかし、そのほとんどは成功していない。採掘、 観光、石油化学、および金融サービスといった石油以外のセクターを発展させようとした試みは、堅実で大きな石油収益という壁に直面することが少なくなかっ た。サウジアラビアの収益の80%は石油が占めている。
経済開発評議会議長を務めるムハンマド・ビン・サルマーン(Mohammed bin Salman)副皇太子は今年、いくつかの国営セクターの民営化、医療・教育・軍事部門における公共支出の大幅削減など、全面的な改革を導入することを誓約した。

世界最大のエネルギー企業であるサウジアラムコは、株の一部を資本市場で販売することや、収益を上げるために複数の子会社を上場することを検討しているという。今月初め、同社は正式にそのことを認めた。
2015年4月までサウジアラムコの社長兼CEOを務めていたアル・ファリ氏は21日、ダボスの委員会で副皇太子の戦略を賞賛し、「私たちは改革を加速させている。副皇太子には、サウジアラビアをいち早くあるべき姿にしようとする野心がある」と述べた。
同氏によると、政府の計画には、外国人労働者によって担われている役割をサウジアラビア国民自身が引き継げるように、国民を訓練することも含む可能 性がある。現在、同国における労働力の半分以上は、数千万人もの非サウジアラビア労働者が占める。その多くは最低賃金で一時契約として雇用されている。同 氏は、サウジアラビアは調薬、医療機器、医療サービスといった領域における輸入を減らし、国内生産を拡張することもできると述べた。

12月にマッキンゼー・グローバル・インスティテュートが公開したレポートによると、サウジアラビアへの外国からの直接投資は、2003年から2013年の10年間で、約3,000億米ドルだった。
しかし、近年については、外国からの直接投資のフローが減少している。地域の社会的および政治的緊張が高まっていることや、サウジアラビアの法規や 保守的な文化の影響である。同国では、男性従業員と女性従業員を職場で別々にすることが求められている。世界銀行は昨年、「ビジネスのやりやすさ」につい て、サウジアラビアを189か国中89位であると位置づけた。
国連の「2015年 世界投資報告(2015 World Investment Report)」によると、2014年、サウジアラビアへの外国からの直接投資は、総額で約80億米ドルであった。2012年における直接投資は122億 米ドルであり、34.4%減少したことになる。

ロシア直接投資ファンド(the Russian Direct Investment Fund)のCEOを務めるロシア人事業家、キリル・ドミトリエフKirill Dmitriev氏は、「ロシアはサウジアラビアの多角化戦略を利用したがっている」と指摘した。同氏はダボスの委員会で、「私たちロシアは、いくつかの プロジェクトに投資したがるでしょう」と述べた。同氏はサウジアラビアの観光部門に注目し、イスラム教の聖地・メッカ周辺のインフラ拡大を潜在的な投資分 野として挙げた。
ドミトリエフ氏は「私たちが目撃しているのは、石油から脱却して、多角化していくという本当に興味深い試みである。それは、とても急速に動いている」と述べた。
たとえそうでも、アル・ファリ氏は、サウジアラビアが世界最大の石油輸出国としての地位を明け渡すつもりはまったくないことを明確にした。同国は、世界の石油市場の10分の1以上をコントロールし、世界の石油埋蔵量の約20%を保持する。
サウジアラビアは、仲間のOPECメンバーや他の石油産出国から、1日当たりの石油生産量を減らすようにと圧力をかけられている。石油供給のだぶつきを緩和することにより、石油価格を押し上げるためである。

ベネズエラとエクアドルは、6月に予定されているカルテル内の石油生産見直し会議に先駆けて、緊急集会を要求してきた。これらの国々は、サウジアラ ビア同様、石油価格の急落の影響を受けて、石油輸出による収益が蒸発している。結果として、政府は公共支出を減らし、インフラプロジェクトを延期せざる得 なくなった。
しかし、サウジアラビアだけは、石油市場の低迷を切り抜けるための外貨準備高として、6,000億米ドルを保持している。
アル・ファリ氏は、「私たちは、他の人たちのために余地を作るためだからという理由では、(石油)生産を減らすことを受け入れないでしょう」と述べた。
*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事: MARIA GALLUCCI記者:「World Economic Forum: Saudi Arabia Is ‘Opening The Door’ To Foreign Investment As Kingdom Aims To Break Oil Addiction」)
 
http://jp.ibtimes.com/articles/1637048

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