Saturday, July 31, 2010

今、話せる?…[CNN、オクタビア・ナスールを解雇] Can We Talk? - By THOMAS L. FRIEDMAN


今、話せる? By トーマス・L.フリードマン(7/16, NYタイムス)

 7月7日にCNNは、その中東問題関連のシニア・エディターOctavia Nasrを… 彼女が「自分はSayyed Mohammed Hussein Fadlallahの逝去をきいて悲しく思う」とTwitterのメッセージに書き込んで公表した後に、解雇した。
─Fadlallahとは、ヒズボラ武装組織の創立にも関与したレバノンで最も著名なシーア派の精神的リーダーの一人だが、Nasrは彼を「私が尊敬してやまない、ヒズボラの巨人の一人」と描写していた。

 私は、彼女の解雇には問題があると思う。…そう、彼女は過ちを犯した。スクープ記事のレポーターたちは、記事で扱ういかなる登場人物についても、個人的感情もまじえてはならない。それはメディアの信用性を損ねる。でも我々は、アラビア語を話すレバノン人キリスト教徒の女性ジャーナリストがCNNのために中東情勢をレポートしてくれることによって多大な恩恵を受けていたし、そして彼女が20年間に犯した唯一の罪がFadlallah のような複雑な人物に関して書いた140字のメッセージであるなら、彼女への制裁はより緩やかであるべきだ。彼女は1ヶ月ほどは謹慎すべきだったかも知れないが、でも解雇されるべきではなかった。そこにはいくつかの理由がある。

 まず始めに、それが我々にどう影響したのか?たった一言の動詞の誤用で、1時間以内にデジタル世界のリンチ・モブ(リンチ集団)があなたを追いかける─そしてあなたの上司たちが、状況を取り繕うべくスクランブル発進する。でもジャーナリストというものは、レポート上のミスや間違った言説の引用、記事の捏造や盗用、システム的な偏見などで、彼・彼女の職を失うべきもので─ このようなメッセージのために失うべきものではない。

 我々は、若い世代にどんなシグナルを送っているのだろうか?風向きに向かって帆を調整せよ、政治的公正さを持て、どこか特定の政治的支持層に非難を浴びるようなことを決して言うな。そしてあなたがもしも、政府関連の仕事や、全国的なジャーナリズムの仕事、あるいはハーバード大の学長の様な仕事をしたい望みがあるなら、安全に振る舞い、誰かを立腹させる可能性のある知的な挑戦などを決して行うな。あなたが言ったすべての言葉が永遠に検索可能になるグーグル時代には、未来とは、何も足跡を残さぬ者だけの手にあるのだ。

 また、そこには中東問題から見たアングルが存在する。もしも我々米国がレバノンやアフガニスタン、イラクにおいて行った介入から学ぶべきことがあるとすれば─それはこうした地域を知る米国人というものがいかに少ないか、ということだ。我々には彼らのニュアンスで情勢を生き生きと通訳してくれる通訳が必要なのだ。

 私は米国の侵攻後にバグダッドに居た、そしてブッシュが任命したこうした若い人間たちに会った─彼らは(Rajiv Chandrasekaranが“Imperial Life in the Emerald City”でも書いたように)しばしばブッシュに対して、100%忠実だったがゆえに選ばれた─たとえ、イラクについては100%無知だったとしても。彼らの無知さは、その地での我々の失敗というものを助けた。「米国の占領当局の仕事を探していた2人の人物がいうことには、彼らは彼ら自身のRoe v. Wadeに関する意見さえも問われていた」、とChandrasekaranは書いている。 (*'73年のRoe対Wadeの米最高裁判決以来、今に続くabortion right 堕胎の自由論争の代名詞¨ブッシュ政権は強いanti-abortionだった)

 私はOctavia Nasrにも、Fadlallaにも会ったことはない。Fadlallahは明らかにイスラエルを憎んでいて、イスラエル人に対する攻撃を支持し、米軍のレバノン及びイラクへの侵攻に対して反対していた。しかし彼はまた、ヒズボラの窒息的なドグマチズム(教条主義、独断主義)や、イランに対する従順さにも反対していた;彼はレバノンのシーア派が独立的でモダンであるよう望み、そして彼は彼の書く社会的な論評(commentary)を通じて、この地域で影響力を打ちたてていた。

 “Democracy: A Journal of Ideas”のエディター、Michael Tomaskyが指摘するのは、リベラルな世俗的シーア派のレバノン人(女性)ジャーナリストのHanin Ghaddarの(Now Lebanonのサイト上での)回想だ…それは、彼女がベイルートで一人暮らしをすることについて、Fadlallahがいかに彼女の保守的な父親に介入をしてくれたか、だった━Fadlallahは父親に「彼女が独立した、精神的に健全な大人の女性である以上、父親は彼女のやりたいことに口を出す権利はない」という内容の手紙を書いて、それを許可させたのだという。

 Ghaddar は「Fadlallahのような人物だけが、status quo(現状、体制)を変える事ができる」と理解するに至った、と語っている。アンチ・ヒズボラ派を自認するような人は、批評家であれ反対勢力であれ、あるいは無神論者であれ、シーア派のコミュニティーにはまれにしか存在しない─何故なら、人々が彼らのような者の言うことに耳を貸さないからだ。…一方Fadlallahは、人々の心に達する事ができた─なぜなら、彼は人々のうちの一人だったからだ。…彼のような人々こそ、強力になれば真の変革をもたらすことができるのだ。彼はヒズボラやイランの指導者たちが恐れを抱く、まれな人々の一人なのだ…なぜなら人々が彼を好み、彼への尊敬を抱いているからだ。

 もちろん、Fadlallahはソーシャル・ワーカーなどではない。彼にはダークな面がある。CNNの人々は私に、Nasrが彼の両方の面について知っていたと語った。しかし、私が知っていることはこれだ:中東は、繁栄のためには変わらねばならない、そしてその変革とは、内側からもたらされる変革である必要がある。その変革推進者(change agents)とは彼らの目から見て正当性を有する、彼ら自身の文化に根ざした誰かである必要がある。彼らとは、米国製のカップ一杯の紅茶ではないだろう、しかし我々は彼らについて知る必要がある、そして我々の興味関心が収束する点を知る必要がある─彼らの、その全てを悪者扱いするのではなく。

それゆえ私は、自分の情報源として…何千人もの男性や女性がなぜ、一人の年老いたシーア派の聖職者<我々がそれを、テロリストとしてしか捉えない人物>の死を悼んでいたのかを実際に説明できる様なCNNレポーターによるニュース報道の方を好みたい━そのことを何も知らないか、もっと悪ければ…敢えて言おうとしないレポーターによるニュース報道よりも。
http://www.nytimes.com/2010/07/18/opinion/18friedman.html?ref=thomaslfriedman

 











Sayyed Mohammed Hussein Fadlallahのウェブサイト(英語ページ)
http://english.bayynat.org.lb/
同師の語る、Woman、Familyについてのページ…
http://english.bayynat.org.lb/WomenFamily/index.htm

Sayyed Mohammed Hussein Fadlallahの葬儀
http://english.bayynat.org.lb/news/Tashi3.htm

CNN's firing of Octavia Nasr protested
http://www.arabamericannews.com/news/index.php?mod=article&cat=USA&article=3180
(*註:Octavia Nasrは解雇の後も、Hussein Fadlallahについて全面的に支持するとはいっていない¨)
イラク戦争の経験後は米国メディアの異文化への態度も、少しは軟化したようにもみえるのだが?

Friday, July 16, 2010

ペトラエウス司令官の初仕事とは?/U.S. May Label Pakistan Militants as Terrorists By MARK LANDLER and THOM SHANKER


ハカニ族ネットワークをブラックリストに、資産も凍結?
パキスタンの反対を押し切リ、支配的な強硬策を実施するつもりなのか

 U.S. May Label Pakistan Militants as Terrorists By MARK LANDLER and THOM SHANKER 米国、タリバン武装勢力リーダーをテロリストに認定する可能性(7/14、NYタイムス) 

 アフガンの新司令官となったペトラエスは、反乱勢力でも特に恐れられているリーダーたちをテロリストとして認定すべきだと推している。これはアフガニスタンとタリバンとの間の最終的な政治的解決を複雑化させ、この地域の政治的緊張を高める可能性もある。

 ペトラエウスはオバマのアフガン・パキスタン戦略アドバイザーたちとの議論で、Haqqani networkをブラックリストに載せることを提案。この動きはHaqqani族と親密な関わりをもつパキスタンとの関係を悪化させる危険がある。そして反乱勢力全体との和解を推進する、カルザイ大統領の独自の戦略を挫折させることもあり得る。

 戦争領主が率いるHaqqaniネットワークのケースは、─タリバンと組する何れの反乱グループが何らかの恩赦を受け、未来のアフガニスタンの政治で役割を果たすべきかどうかも考慮した上で決めるべき─こうした困難な決断を浮き彫りにする。カルザイはすでに国連に対しタリバンの数十名のメンバーに対する制裁措置の解除を申し立ているが─アル・カイダと袂を分かち、暴力の放棄とアフガニスタン憲法の受け容れを誓った人々の開放に関しては─オバマ政権からも条件つきながら支持を約束されている。

「彼らが(軍事的解決の)一線を越えて冷たい荒野から歩み寄ってきたなら、彼らを受け容れる余地がある」とオバマ政権のAf-Pakの特別代表のRichard C. Holbrookeはいう。

 パキスタンとアフガンの国境地帯をベースに、Sirajuddin Haqqaniのネットワークは首都カブール近辺やアフガン東部全域での多くの反乱攻撃…爆破攻撃や誘拐、米軍基地への大規模な攻撃を指揮していると疑われる。彼らはアル・カイダとも連携し、パキスタンQuetta近郊を本拠にしたオマール師率いるタリバンの一派のリーダーたちとも連携している。

しかし彼らの真のパワーとは、彼らをアフガンへのそれ自身の影響力維持のための支え(レバレッジ、てこ)とみるパキスタンの諜報機関ISIのなかにあるといわれる。パキスタンのリーダーたちは最近、カルザイと彼らの間の対話を仲介したという。

 米国の高官たちは、Haqqani networkの上層部がアフガン政府と和解する可能性に、極めて強い疑念を抱く─彼らの中間層の司令官や下層レベルの兵士たちは別として。こうした上層部に対して制裁を加えることが、すでに武装の解除を受け容れた兵士らによる、再度の造反を誘うのではとの危惧もある。

 Haqqani 族をブラックリストに載せるとの案は当初、火曜日の会議で、パキスタンとアフガニスタンの視察から帰ったばかりの民主党ミシガン州上院議員Carl Levin(議会の軍事委員会の議長で強い発言力を持つ)が提案したものだ…(中略)

 …この政治的解決案は、来週カブールでカルザイ大統領とクリントン国務長官出席の下で開かれる会議の場で、強く焦点が当てられるだろう。カルザイ氏は最近、タリバン下層兵士たちを(政府側に)再統合するプログラムの法令に署名したが、ペンタゴンによる1億ドルの出資に加えて日本・英国その他が1億8000万ドルを出資するこのプログラムは、同会議の場を通じ実施に移されるとみられる。

 カルザイ氏は上層部にもオリーブの枝を差し延べる意志を持ち、同政権は国連安全保障委員会のブラックリストにある137名のタリバンの名前のうち50名の削除を求めている。Holbrooke氏は米国はその努力を支持はするが、あくまでリストの選択はケース・バイ・ケースで、オマール師などはもちろん範囲外だとしている。

 この件で米政権は下層レベルの兵士たちへの働きかけを強調するが、これは上層部リーダーたちを和解になびかせるかも知れないと専門家は語る。Holbrooke氏はカルザイ氏とパキスタンのリーダーとの最近のミーティングが、疑念を抱くこうした近隣諸国の人々とのあいだにゆっくりと信頼関係を築いている様であり励まされる、と述べた…
http://www.nytimes.com/2010/07/14/world/asia/14diplo.html?scp=1&sq=U.S.%20May%20Label%20Pakistan%20Militants%20as%20Terrorists&st=cse

*上写真はJalaluddin Haqqani(1998)

http://www.youtube.com/watch?v=v1W6zQi2cV8&feature=related
Afghanistan - Pashtoon Taliban leader Mullah Haqqani

http://www.longwarjournal.org/archives/2010/02/the_talibans_top_lea.php

The Afghan Taliban's top leaders

http://www.outlookafghanistan.net/news_Pages/main_news.html#01
Karzai, Petraeus in Talks on Afghan Militias: Spokesman

カルザイは、西欧によるタリバン打倒を疑問視?/ Karzai Is Said to Doubt West Can Defeat Taliban- By DEXTER FILKINS


マクリスタル前司令官の解任の少し前、
カルザイ政権の長年の諜報長官サレハ氏と、内務大臣アトマール氏が突如辞任…その理由とは?


カルザイは、西欧によるタリバンの打倒を疑問視する By デクスター・フィルキンズ (6/11, NYタイムズ) 

 その二人のアフガン政府高官がハミド・カルザイ氏大統領に、今月(6月)の初めにアフガン全土で開催された平和会議に対して起きた大規模なロケット弾攻撃に関する証拠を見せた際、カルザイ氏は、それはタリバンの仕業ではないと信じている、と語ったという。

 「大統領は、その証拠に何の興味も示さなかった…何にもだ…彼はそれを価値の無い塵や埃のように扱ったのだ」と、当時アフガン諜報長官だったAmrullah Saleh(サレハ)氏は言う。Saleh氏は、カルザイ氏がその様な態度をとった詳しい理由について語ることを拒否した。しかし、その会合を知るある匿名のアフガン高官によれば、カルザイはそのときそれは米国の仕業かもしれないと指摘していたという。

 このSaleh氏とのやり取りの何分か後、Saleh氏と内務大臣Hanif Atmar氏は職を辞任した─それはカルザイ政府が9年前に権力を掌握して以来の、最も劇的な背信ともいえた。Saleh氏とAtma氏は、カルザイ氏が彼らをもはや忠実とはみていないと明らかにしたことが、彼らが職を辞した理由だと述べた。

 しかしSaleh氏と、アフガンおよび欧米政府の関係者たちによれば、現状の底に横たわる緊張状態はより一層根源的なものになっているという: つまりカルザイ氏は、米国人とNATOがアフガニスタン情勢で優勢を握り続けられる、ということを信じられなくなっているのだと。

 そのような理由によりカルザイ氏はタリバンと、そして同国の宿敵で長年のタリバン支援者のパキスタンとの交渉を、彼独自に進めようと試みてきた…と、Saleh氏と他の官僚たちは言う。あるアフガンの元上級官僚によればカルザイ氏のやり方とは、米国とNATOの視界の外で、タリバンとの秘密交渉を行うことを含んでいた。

 「大統領は、同盟国やまた彼自身の政府それ自体にこの国を守りうる能力がある、との信頼感を失っていた」とSaleh氏は自宅でのインタビューで語った。「カルザイ大統領は、NATO軍は敗ける、と宣言したことはないが、彼がこの作戦にプライドを抱いて対処していないことでも、彼がその実効性を信じていないことは明らかだ」

 大統領に近い人々は、昨年夏の国政選挙において、独立した選挙監視機関のモニターたちが…カルザイ氏の名の下で100万票近くの票が不正に盗まれた、との結論を出して以降、彼が米国人への信頼を失い始めたのだという。12月にオバマ大統領が、2011年までに米軍兵力を削減するという意志の宣言を発して以来、その亀裂はより深まった。

 「カルザイ氏は私に、この国の状況の解決のためには米国人はもはや信頼できないと言った」と、カブールのある欧米の外交官は匿名を条件に語った。

 「彼は、昨年の選挙の期間中に、欧米人が彼の法的な正当性を奪った、と信じている。そしてその後彼らは、この国を去ることをも公式に宣言した、と。」

 ─金曜日に、カルザイ氏にこの件でコメントを取るためのコンタクトはとれなかった。

 もしもカルザイ氏が、米国との密接な協働関係と、彼自身の軍とによってタリバンと戦うという決意が弱まっているのなら、それはオバマ大統領にとって問題となる。米国の戦争の戦略とは、タリバンの掌握した地域を奪回し、その地でカルザイ氏の軍と政府が取って代わり、このますます米国民にとって不人気な、費用の嵩む戦争への米国の関与のスケールを縮小していく… ということに大きく依存しているからだ。

 これまで、カルザイ氏との関係は時に不安定で、国際社会の関係者たちは過去にも彼が誤った判断を下す可能性がある、との懸念を表明していた。

 昨冬、カルザイ氏は、NATO軍が北部アフガニスタン全域でタリバン兵士たちをヘリコプター輸送していた折に、その作戦を批判した。今年の初めには、オバマ政権から批判を受けた後に、カルザイはその支持者グループに対し、彼自身がいっそタリバンに合流する可能性さえある、などと語った。

 米国政府関係者たちは先月、カルザイがホワイトハウスを訪問した折に、カルザイとの関係修復を試みた。無論多くの課題においては─例えばタリバンの指導者たちの一部と接触し、彼らの武装戦士たちの立場を翻させて(政府の側につくように)説得するというようなことで、カルザイ氏と米国の関係者たちは同じ立場の側にあるのだ。
 
 しかし、彼らの間で動機が異なることははっきり見て取れた。米国人とNATOのパートナーたちは、何千何万もの追加勢力を同国に追加派遣し筋金入りのタリバンを弱体化して、彼らグループを交渉のテーブルに着かせよう、としている。しかしカルザイ氏は、米国主導の攻撃的戦略には実効性はない、と信じているように見える。

 大統領宮殿における記者会見で今週、カルザイ氏は、6月2日のロヤ・ジルガ(国民平和会議)への攻撃におけるタリバンの役割についての見解と、NATO軍への信頼感についての質問を受けた。彼はどちらの質問への答えも拒絶した。

 「誰がやったのか?」と彼は攻撃についてたずねた。「その問いへの答えは、我々の治安組織が用意すべきことだ」と彼は言った。

 「我々はすべての状況の改善のため、引き続き努力している」とカルザイは(英国のデビッド・キャメロン首相に続いて現れて)英語で言った。あるNATOの上級官僚は、NATO同盟国の強力な支持を得ていたAtmar氏と Saleh氏の辞任とは「極度に破滅的な」ことだ、と述べた。


 その官僚はカルザイ氏について─「私が懸念するのは、彼に戦時のリーダーとしての能力があるか、ということだ」と言った。

 そのNATOの官僚は、米軍司令官たちがカルザイ氏に、平和会議への攻撃が、タリバン傘下で戦う有力指導者の一人Jalalhuddin Haqqanに忠実な武装兵士たちによる行為だとする、圧倒的な証拠を提示した調査書類を渡したと述べた。

 「これには疑いがない」とその官僚は言った。

 Saleh氏とAtmar氏の辞任は、アフガン指導部の中でタリバンと彼らのパキスタンのパトロンたちとの交渉の最適の手段であった部分の深い亀裂を暴露した。

 Saleh氏はタリバンと、またソ連軍と戦った伝説的司令官・故Ahmed Shah Massoudの元側近だった。Massoudの元副官たちは主にタジク人であり、彼らは現在、北部アフガニスタンで重要なリーダーを務めていて、国民平和会議ロヤ・ジルガには参加していない。Saleh氏のごとく、彼らはタリバンやパキスタンに対する強硬派(ハードライン)的なアプローチによる交渉を望んでいる。

 カルザイ氏は圧倒的多数のタリバンと同様に、パシュトゥーン人である。彼は今や、より和解的なアプローチを望んでいるようだ。

 ロヤ・ジルガの最後にカルザイ氏は、拘束中のすべてのタリバン兵士の逮捕のケースを再調査して、極端に危険度の高いと思われる人物以外を釈放するための委員会発足を宣言した。同委員会は、カルザイ政府の数名の上級メンバーが率いているものの、Saleh氏の束ねる諜報機関National Directorate of Securityは除外されている。

 Saleh氏はインタビューで、この委員会からの排除は彼の感情を害したと語った。彼にとって主要な職務とは、タリバンを理解することなのだと彼は言う…そして彼の諜報機関をこの委員会から排除することで、カルザイ氏が札付きのタリバン兵士たちを解放してしまう可能性があることを、彼は懸念している、という。

 「彼の結論というのは…多くのタリバン兵士が誤って拘束されており、彼らを釈放すべきだということだ」、「タリバン(政権)の崩壊以来、すでに10年が経過している─それは我々が敵とは誰なのかを知らない、ということだ。我々は人々を誤って拘束している」 と、(カルザイは考えている)。


 Saleh氏はさらにロヤ・ジルガを批判して言う、「ここにジルガの意味がある─」、「"私はあなたと戦いたくはない。私はドアを開けてあなたを待っている。私があなたを山岳地帯に追いやったのは間違いだった。” ジルガはアフガニスタンにとっての勝利ではない、それはタリバンにとっての勝利、というわけだ」─

 カルザイ氏はここ何ヶ月か、タリバンとの間の橋渡しを試みてきた。今年の初め、彼の弟Ahmed Wali Karzaiはタリバンの副司令官Mullah Abdul Ghani Baradarと秘密会合をもっていた、とアフガンの元上級官僚は言う。

  カルザイ政府の初期の内務副大臣だったHilaluddin Hilal氏によれば、Ahmed Wali KarzaiとBaradarは1月に2度ほどパキスタン国境近くのSpin Boldakで会合した。その会合は、カンダハル県の影の知事(shahow governor)であるMullah Essa Khakrezwaと、タリバンの諜報官僚Hafez Majidの仲介によるものだった、という。

 カブールのある欧米のアナリストはHilal氏の情報は正しい、と保証した。前述のNATOの上級官僚は、彼もSaleh氏もその会合のことを知らなかったという。Ahmed Wali Karzai氏はその件に関するメールでの質問状に回答していない。

 その会合における決議の内容は判らない、とHilal氏はいう。Baradarは1月に、パキスタンと米国のカラチでの合同襲撃作戦において逮捕された。しかしカルザイ氏による、タリバンとの交渉の試みは継続された。

 「彼は、米国は留まり続けるための余力を持たない、と考えている」とHilal氏はいう。Saleh氏は、カルザイの戦略はパキスタンへの、より和解的なラインも含んでいるという。それが本当なら、それは就任以来9年間、パキスタンによるタリバン反乱勢力への支援を常に非難してきたカルザイ氏にとって状況の大転換に達する可能性がある。

 Saleh氏はアフガニスタンが、パキスタンとの間で、国の弱体化に繋がる(彼の呼ぶところの…)「不名誉な取引」の受け容れを強いられることを恐れているという。

 彼はカルザイ氏は愛国者だ、とみているという。しかし大統領は、もしもパキスタンによる支援に依存するならば、それは過ちを犯していたのだという(パキスタンの指導者たちは長年カルザイ氏に、彼らが強硬派とみるSaleh氏の罷免を求めていた。)

 「彼らは彼を尊敬しているように装いつつ、彼の弱体化を図っている。彼らは弱いアフガンの指導者は支持するが、彼のことを決して尊敬はしない」、…とSaleh氏は言った。
http://www.nytimes.com/2010/06/12/world/asia/12karzai.html?pagewanted=all


*上写真:1月のカブールでの勲章授与式で、当時アフガン内務大臣のHanif Atmar氏、。

*下写真:前アフガン諜報部長官のAmrullah Saleh氏、水曜日にカブールで。

* [ 田中宇:アフガン撤退に向かうNATO ]

http://tanakanews.com/100712afghan.htm
↑田中宇氏の解説では、アフガン政権はすっかりタリバンとの和平に傾いているとする…が、ペトラエウス着任後は180度情勢が急転。新司令官は反乱勢力タリバンのリーダーらのテロリスト指定を要求した…

*ペトラエウスはまた、着任早々カルザイ大統領との最初の会談で、彼の強固な反対を押し切って、アフガンの内務省が直接統括するとの条件で、反タリバンの全国的民兵組織の設立にも同意させた(イラクのスンニ派覚醒部隊をコピーした戦略)



Wednesday, July 14, 2010

ペトラエウスと「増派」の神話/ Petraeus and the 'Surge' Myth- By Robert Parry


マクリスタル氏の突然の解任。
後任司令官となったペトラエウス氏の過去の業績を取りざたする記事も氾濫!…

ペトラエウスと「増派」の神話 By ロバート・パリー (6/30、Middle East Online)

 もしも今、ワシントンのオピニオン・リーダーたちの間で、何事にも優先するコンセンサスがあるならば、それはイラクで同様な功績を挙げたデビッド・ペトラエウス大将が、アフガニスタンでの失敗続きの戦争を建て直すための完璧なチョイスだ、という見方だろう。しかしそのような世間の一般通念が、もしも誤っていたなら?

 もしも2007年にペトラエウスがイラクを継承したことと、ブッシュ大統領が大いに称えた米軍の“surge” (増派作戦)が、イラクでの最終的な暴力の減少とはあまり関係なく、これらの原因がもたらした結果というよりも、単なる偶然だったとしたら?

 それならば…バラク・オバマ大統領が昨秋、イラクと同様な兵力“増派"を承認したアフガニスタンでの戦争…では、より一層の人命と金銭的な犠牲をもたらすことすら予想される。ペトラエウスは来年、個人的な失敗を認めるよりも、むしろさらなる兵力増派を求めるだろう、との予測もある。

 我々はConsortiumnews.comにおいて、事実や客観的な分析が違った見方の方向性に向かうことを示して、ワシントンの“group think 集団的発想” への挑戦を行った。なぜなら、いい加減な世間一般の通念というものがワシントンの権力の中枢を支配するとき、多くの人命が失われるかもしれないからだ。

 イラク戦争は、誤った仮説がいかに破滅的な政策に繋がるかの古典的な例だった。それは確かに、侵攻以前にほとんど全ての重要な人物たちが、大量破壊兵器や、サダム・フセインとアル・カイダのテロリストとの関係についての偽の諜報情報を信じて、それに加担したケースだった。

 その後には未成熟な勝利宣言と祝賀が続いていた…MSNBC のアンカーマンChris Matthewsによる、「我々はいまや皆ネオコンだ」という宣言から、ブッシュ大統領による"Mission Accomplished” のスピーチまで。

 こうした全ての仮定が間違っていると判ったとき─そしてイラク戦争がとても醜悪なものになっていったとき─イラク侵攻の扇動に便乗していたジャーナリストや政治家たちに対する信頼は殆ど失われてしまっていた。
 そして2006年には、シーア派とスンニ派の宗派戦争が残忍さを増してイラクを引き裂き、米国人の犠牲者数は増加し続け、留まるところが見えなかった。

 しかし、他でもなく幾人かの要職の人物たちが彼らの落ちた名声を回復したいとの欲求を抱いても、ワシントンは依然としてイラクの雷雲のなかに希望の兆しの光を見ることはできなかった。…そうした機会は2006年の大虐殺のさなかに、自ら出現した。

 暴力の悪化にも関わらず、George CaseyやJohn Abizaidといった司令官たちは、米国の「足跡」をできる限り小さくして、イラクのナショナリズムを鎮圧しようという主張に固執した。彼等はそれ以外にも幾つかの仕事のイニシアチブをとった。

 そのひとつは、Casey とAbizaidがアル・カイダの主要なリーダーたちを討伐する秘密作戦を行ったこと─ …最も成功したものとしては2006年にAbu Musab al-Zarqawiを殺害したことだ。彼等はさらに、スンニ派の間で高まるアル・カイダの過激派に対する敵対意識を利用して彼らを買収し、Anbar 県での“Awakening”(覚醒部隊)とよばれる運動に参加させた。

The ‘Surge’ Cometh 「増派」の開始

 それはブッシュ大統領が、Casey とAbizaidの解任と、ペトラエウスの後任司令官への指名とに相伴って、 2007年1月に約3000名の米軍兵力の‘Surge’増派宣言を発するより前に起きていた。そして“small footprint”(小さな足跡)戦略は、廃案になった。

 疑いもなくペトラエウスは、シーア派の原理主義的リーダー、Moktada al-Sadr が全面的停戦宣言を発したこともあって、ラッキーだった(伝えられるところでは、al-Sadr は彼のイランのパトロンからの、地域的な緊張をクールダウンするようにとの要請に応じたのだともいう)

 米軍の追加勢力の到着により、‘Surge’(増派)は米軍とイラク人の戦死者数の史上空前レベルへの激増ももたらしていた。

 ペトラエウスはまた、イラク人の“military-aged males(軍事的適齢期の男子)”またはMAMSの無差別な殺害や一斉検挙も容認していた。そうした残虐行為がよく記録された例は、2007年12月に米軍がヘリコプターから、ロイター通信のジャーナリストたちを含むイラク人の男たちを爆撃し殺害した様子の、リークされたビデオがある。

 2台ほどのカメラを武器と誤認して、米軍の減りは司令部から承認を受けて、バグダッドの通りを何ら、攻撃的様子もなく歩いていた彼らを無差別に殺害した。その殺戮のシーンにはヘリのクルーによるマッチョなジョークとくすくす笑いも伴っていた。

 米軍の攻撃者はそこにバンで到着して負傷した通信社の人間たちを救助し病院に連れて行こうとした数人のイラク人をも爆撃した。バンに乗っていた2人の子供は重い怪我を負った。

 Wikileaksに “Collateral Murder” として投稿されたこのビデオに、ある米国人は「戦闘に子供を連れてきたことは彼らの手落ちだ」、とコメントした。

 イラクのMAMSに対する他の攻撃として、ペトラエウスの司令の下で米軍は同様な無実の一般市民を誤って殺害していたと思われるが、こうした行為はまた実際に、街の武装勢力も確実に一掃していた。

 4年間にわたる米軍のハイテク戦争の後、イラク人たちは確実にトラウマと疲弊に襲われていた。何万人もの人々が殺され、不具にされた後、イラクの人々が彼ら自身のサバイバルに目を向けはじめたことは理解に難くない。

 ブッシュの“surge” はまた、さらに1000名に上る米兵の命を奪い、戦争全体を通じた米軍の犠牲の4分の1を占めている。

‘Successful Surge’ 「成功した増派作戦」

 2008年に暴力のレベルが徐々に減少してきたとき、ワシントンの影響力あるネオコンたちはすかさず、増派の成功、という名の功績を訴えた。ワシントンの報道機関では、CNNの有名キャスターのWolf Blitzerなどが、このテーマを繰り返し唱えていた。

 しかし、この新たな世間の一般通念が固定化したとき、実際に戦闘に参加した者たちをあえてインタビューした数人のアナリストたちは、異なる現実を発見していた。ブッシュの戦争初期の判断を誉めそやしたベストセラーを書いた作家のBob Woodwardですら、“surge” は唯の要素にすぎなかったこと…それはおそらく暴力の減少の大きな要因のひとつですらなかったとの結論を導いた。

 彼の著書”The War Within”でWoodwardは書いた、「ワシントンでは、世間一般の通念というものがこうした事件を、増派が功を奏したという単純化された見方に翻訳してしまう─しかし、全体のストーリーはもっと複雑だった。最低でもその他の3つのファクターが、増派と同様に重要か、あるいは増派よりも重要だった」

 Woodwardの本の内容はペンタゴンのインサイダーから多くの情報を得ているが、アンバール県においてスンニ派がアル・カイダの過激派を拒絶したこと、そしてal-Sadrによる驚くべき停戦の決断、という二つの重要なファクターをリストに挙げている。

 そして、Woodwardが最も重要かもしれないと論じている三つ目のファクターとは、米国が新たに採用し始めた高度に機密的な諜報戦略が、反乱勢力のリーダーの迅速な標的化と殺害を可能にしたことではないか、という。Woodwardはその機密戦略の今後の成功を妨害しないため、著書ではその詳細を明らかにしないことに同意している。

 しかしこの、より複雑なリアリティ… そして「成功した増派」作戦の暗い面(ダークサイド)というものは…米国での政治的な/メディアでの論議からは、大幅に排除された。侵攻開始以前にはワシントンの報道関係者たちは、疑念を抱くジャーナリストというよりも、はるかにブッシュのプロパガンダ扇動者として振るまっていたのだ。
 
 「成功した増派作戦」の神話に関する、その他の二つの危険な事項は、ペトラエウスがその華々しいリーダーシップのお陰で聖人のように祀り上げられたり、また若さをとり戻したネオコンたちも、再びアフガニスタンでの「増派作戦」を実施すべきだ、と主張するかもしれないことだ。どちらの危険性もオバマが大統領に選ばれてから発生したものだ。

 ペトラエウスと、オバマにより国防長官として留任したもう一人の「増派のヒーロー」Robert Gatesは、新大統領に対して特殊作戦の司令官Stanley McChrystalを推し、中央司令部からペトラエウスが肩越しに監督する下で、McChrystalがアフガンでの米軍の指揮を執るようにプッシュした。

 出番を迎えたMcChrystalはアフガンへの兵力増派を要求し、そして(Joe Biden副大統領が主唱した)代替戦略には反対を唱えた─その戦略とは、米軍の攻撃的な反テロ戦略による「足跡“footprint”」をより小さくするもので、イラクで「増派作戦」より以前にCaseyと Abizaidが行っていたものに類似していた。

 しかし、「増派の成功」に関するメディアの通念や、オバマお抱えのタカ派のアドバイザーGatesやHillary Clinton国務長官などのお陰で、PetraeusとMcChrystalは… 大統領をたやすく後に引けない状況に追い込んだ。彼はさらなる3万の兵力をアフガンに増派し、総兵力を10万に拡大することを容認した。

 新たなる派遣兵力にも関わらず、アフガンの「増派」は─ Marja地区の田舎での戦略の行き詰まりやKandahar侵攻作戦の延期により、たいした牽引力を発揮できなかった。それはRolling Stone誌のフリーランス・ライターが、McChrystal や彼の内輪の者たちが、大統領とホワイトハウスのアドバイザーたちに対しいかに軽蔑的かを暴露する以前の話だった。

 Rolling Stoneの記事以降、大手メディアの記者たちは当初、オバマがどうすべきかについてはアンビバレントな(相反する)思いを抱いていた。それでもとにかく、辛らつなMcChrystalは、ペトラエウスと同じ位に彼のお気に入りだった。(多くのジャーナリストは彼の反抗的な(非服従の)態度を知っていたが、McChrystalチームに対して取材する継続的な「アクセス」を維持するため、そうした情報を出すことを抑えていた。

 しかし、オバマがMcChrystalを解任させぺトラエウスを後任にすえたとき、ワシントンのニュースメディアは賞賛で応えた。それはアフガニスタンの戦場で、ペトラエウスのような魔法を使える人間は他に誰もいないとの考えであり、その証拠とはイラクでの作戦を再現することのなかにあった。

 一流のコメンテーターたちが再度考察することを厭うのは、「成功した増派」というような通念や、ペトラエウスがそれを成し得たのは天才だからだといった考えが… 以前にイラクの大量破壊兵器について皆が誤認していたのと同様の"group think" なのではないか、ということだ。

 そこにはワシントンの誰もが受け容れたがらない、もうひとつのイラクからの教訓があるようだ: 米軍兵力とイラクの一般市民の犠牲が最も劇的な減少を示したのは、米国が2008年の暮れに米軍のイラクからの撤退を求める'status-of-forces agreement'(軍のステータス合意)を受け容れた後のことだ、という事実だ。

 イラクの民衆もアフガニスタンの民衆も、世界中からきた外国人が彼らの国を占領しているということを余り好んでいないようだ。しかしそれはデビッド・ペトラエウスも、そしてワシントンのメディア関係者も…心に留めようとするような現実ではないようだ。

注:Robert Parry は1980年代にAP通信とNewsweek.に対しIran-Contra事件の多くのストーリーを暴露した。彼の最新の著書には、"Neck Deep: The Disastrous Presidency of George W. Bush ”、その他の著書では、”Secrecy & Privilege: The Rise of the Bush Dynasty from Watergate to Iraq"、そして ”Lost History: Contras, Cocaine, the Press & 'Project Truth' がある。

http://www.middle-east-online.com/english/?id=39842

*…筆者のロバート・パリーはイラン・コントラ事件を暴くなど、共和党政権を批判してきた人物…レバノン系のメディアが、中東寄りでやや反米的な英米の論者の記事を載せている
 

Tuesday, July 13, 2010

アフガン─ひとつの脱出方法 /One Way Out -By ROSS DOUTHAT


元の記事タイトル
"The Only Way Out of Afghanistan”だったらしい?
筆者が「唯一の」…から「ひとつの」脱出方法に変更している…


ひとつの脱出方法 By ロス・ドウザット (6/27、NYタイムス) 

 ここに、米国のアフガニスタン介入の残酷なパラドックスがある:状勢がより暗くなって、我々にとって後退(セットバック)を蒙らされればされるほど、我々が半永久的にそこに留まることになる、という可能性も増大する。

 この国の舞台にいま9万の米軍部隊が駐留し、NATO諸国の軍を寄せ集めた部隊がその脇を固め戦っている現在の状況では、まだそうとはいえまい。しかしもしも、現今の対・反乱勢力の軍事作戦が失敗したなら、米国が何らかの軍事的な駐留を2020年まで、あるいはそれ以降も継続し、アフガニスタン国家を支え続けるだろうことがほぼ確実に保証される。失敗は確実に我々にとっての罠となる: 成功だけが我々の唯一の脱出へのチケットなのだ。

 なぜか?そこには3つの考察がある。一つ目は、9月11日の記憶というものが、どんな米国大統領にも、タリバンのカブールでの権力の回復というものを嫌悪させるからだ。二つ目は、パキスタンの北西国境の地域にアル・カイダのリーダーたちが居座り続けているということが、どんな米国大統領にも、アフガニスタンに設けうる対テロのための基地の放棄を、困難にさせるからだ。三つ目は、より広汎にみたこの地域の情勢の不安定さだ: そこは世界のなかで、核兵器で武装したテロリストという悪夢が現実になる可能性が最も高い地域なのだ、そのためどんな米国大統領も安全保障上の真空状態を残してここから退却し、地域情勢のバランスを不安定にすることなどできない。

 このことは、オバマ政権が、そのすべての内部的な議論と戦略のレビューを尽くしても、この国に残るか、この地での戦いから撤退するか未だに選択していないことを説明する。同政権は、二つの策によるアフガンへの継続駐留のどちらかを、選んできただけだ。

 その一つめの策とは、我々が現在進めている作戦だ:つまりペトラエウス大将がその作戦を支持していた(そして今や、彼が引きつづき見とどけるよう任命された)作戦で、他国の支えなしに生き延びられるアフガニスタン国家の土台の建設の途を探ろうとするものだ。 

 二番目の策とは、「対テロ・プラス(counterterrorism-plus)」の戦略、つまり政府高官たちの中でも特にジョー・バイデン副大統領が昨秋、最もロー・コストな代替戦略として提案したものだ。(http://www.newsweek.com/2009/10/09/an-inconvenient-truth-teller.html#)
 即時撤退を主張する者たちはバイデン大統領を彼らの同盟者のように見がちなのだが、ある意味でそれは本当だ。彼のプランではアフガンにおける米国の足跡を減らし、そしておそらく、米国人の犠牲者の数も減らすことになるだろう。

 しかし米国のアフガン関与の延々と長引いている状況、そして我々の排除してきた敵対勢力との武力衝突の多大さからいって、そうした戦略は現実にはより流血の多い、より一層長引くこう着状態を導く可能性がある。

 ひとつには、それは現実的に米軍の駐留を削減させることはないだろう、ということだ。その代わり、そのようなプランでは我々の兵力をアフガンの首都の周辺に集中させ、反乱勢力の各派との取引交渉の途を探りながら、現存の政府を守ろうとさせることになるだろう。歴史的には、そうした交渉は米軍がこの国に居残っている限り可能なことに過ぎない…つまり我々の兵士たちは首尾よく罠に捕らわれることになる─それは、実質的にはカブールの市長程度の力しかないその国のリーダー(Hamid Karzaiだろうが、それよりも少しは腐敗をしていない後継者だろうが)が、アフガニスタンの大統領であるかのように振るまう、ポチョムキン村のような国(見掛けだけの、こけおどしの国)を防護するべく、我々がそこにずっと足止めされ続けるということだ。

 …それと同時に、もしもアフガンの人々の安全を保障するための努力を放棄し、その代わりに無人偵察機による空爆と特殊部隊による敵勢力の急襲だけに頼る、といったアプローチをとるのなら、おそらく、この地での米国の声価をすでに翳らせている一般市民の犠牲者数のようなものをも一層、飛躍的に高めることになるだろう。

 このぞっとする様な可能性は先週、Stanley McChrystal将軍の解任をもたらしたRolling Stone誌上の(彼の)プロフィール記事のなかでも、暗に示されていた。表面上は左翼的で、対・反乱勢力作戦を反戦論者として批判するMichael Hastingsによるこの記事は、現状における戦略が… 罪のないアフガン市民の命の価値に「奇妙な仕方で」過剰な重きをおきすぎている、との不平不満に大きく論拠をおいている。Center for a New American Security(米国新安全保障センター)のAndrew Exumが指摘するように、Hastingsは終いには対反乱勢力戦略というものを「それがわが兵力に、充分な数の人間を殺すことを許さないから」、との理由で批判している。

 そのようなアイロニーは、もしも現状の戦略が効果的に立ち行かない場合に、オバマ政権が立ち戻る代替戦略というものが、反戦的なものはにほど遠いだろうことを指し示す。その代わりに、その戦略は依然として一層のアフガニスタン人の犠牲と、半永久的な米軍駐留へと向かうレシピとなるだろう。そして長期的には、それはタイムズ・スクエアでのテロ未遂犯、Faisal Shahzad(彼はアフガニスタンの一般人の犠牲が、テロへと向かった動機なのだと供述した)のような敵が、より一層増えることを意味するだろう。

 そして、このプランBのそのような侘しさとは、それが我々の兵力に、反乱勢力に成功を収めさせるよう試みるのに必要な時間を与えるのでは、といった論議を喚起する。我々は現状の方向性を無期限に守り続けることはできない、そして我々はそうはしない: オバマ大統領が、米軍の駐留にパブリックな期限を設定しよう、とした決断は間違いだった… しかし誰もが、軍が兵力増派を続けるにはリミットがあることを知っている。しかしこの、ホワイト・ハウスが考えたいとしているらしいオプションとは、アフガニスタンからの真の撤退を可能にしたいという希望を抱き続けるオプションであるようだ。

 そしてそれはペトラエウス将軍が今年から来年にかけて、さらにその後にかけてもそのために戦うもの─ つまり我々は永久的には滞在しないこと、脱出のための最後のチャンスなのかも知れぬものを掴みたい、ということであるようなのだ。
http://www.nytimes.com/2010/06/28/opinion/28douthat.html?_r=1&sq=ROssDouthat&st=cse&scp=3&pagewanted=print

*昨年4月新たに登場したNYT史上最年少、29歳のレギュラーコラムニスト、ロス・ドウザット。

一応、ビル・クリストルの後任で、「保守派」だが、本人は憧れのNYTに移ってからリベラル色を強めて書いているとか。
彼がNYTの前に属していた組織は、1857年創刊のボストンの有名紙"The Atlantic"だとか。 



*ロス・ドウザットの紹介記事:
Douthat enters new Times zone http://www.politico.com/news/stories/0309/20679_Page2.html
Times Hires New Conservative Columnist
http://www.nytimes.com/2009/03/12/business/media/12douthat.html

Monday, July 5, 2010

“アル・クッズ・インデックス”と、真のパレスチナの革命/The Real Palestinian Revolution - By Thomas L. Friedman

 パレスチナ自治政府寄りで、ハマスの嫌いなフリードマンが…
イスラエルと共存するパレスチナの自立を訴える…

真のパレスチナの革命- By トーマス・L・フリードマン(6/29、NYタイムス)  

 ちょっと君、ここに株式投資のための耳寄り情報がある。用意はいいかな?─ それはAl-Qudsインデックス(アル・クッズ株式指標)だ。

 Al-Qudsインデックスとは何なのか?つまりそれはP.S.E.、またの名をPalestine Securities Exchange(パレスチナ証券取引所)の株価による指標のことだ。西岸のナブルスを本拠地にして、この1年間の間は堅実な状況を維持している。ここに、そのストーリーがある。

 「それは、ほとんどのアラブ諸国の市場の指数をも上回っているのだ」と、その取引所のオーナー・Palestine Development and InvestmentのCEO、Samir Hulilehはいう。P.S.E.は1996年に19社の企業と共に開設され、今や41社の企業が上場している。今年はさらに、8社が上場する予定だ─ ここに上場する企業は、パレスチナの商業銀行や、ナブスルの外科医療センター、パレスチナの電力会社、そして、アラブ・パレスチナ人のショッピングセンターといった企業だ。「これらの企業の株の多くは、政治的不安要因から割安な状況にある」とHulileh氏はいう。それゆえ、あなたがさほど株価の不安定さを気にさえしなければ、ここには多くの上向きのチャンスがあるのだ… もちろん、ここでは間もなく、E.F.F.(an exchange-traded fund:P.S.E.売り出しの投資ファンド)も導入されるので、Al-Qudsインデックスを追跡すれば、あなたは米国に居ながらにして、パレスチナの長期物や短期物の債券を買うことだって可能になる。

 Al-Qudsインデックスの普及とは、西岸地域で過去数年の間に…元・世界銀行のエコノミストであり真のパレスチナの"革命"をリリースしてきたSalam Fayyad首相のリーダーシップのもとに始められた、一連の広汎な改革の一部分なのだ。それは、パレスチナの地位(法的有効性、capacity)や、社会的制度(institutions)を打ち建てる革命だ… それも、単にイスラエルの占領への反抗として打ち建てるようなものではなく─ もしもパレスチナ人が、真の経済やプロフェッショナルな治安部隊、効果的で透明性のある官僚組織を設立できるなら、西岸および東エルサレム近隣でのパレスチナ国家の樹立というものが、イスラエルにとって否定し難いものになるだろう、とのセオリーのもとに打ち建てる革命だ。

 Hulileh氏は言う、「私は、民間企業部門(private sector)が変わったと認めざるを得ない」、「以前まではつねに、我々には出来ることは何一つないと、文句ばかりを言っている雰囲気があった。そして政治家たちは、そのようなレジスタンスの雰囲気を創りだそうとしていた…レジスタンスというのは、占領下では何ら発展をしない、という意味だった」

 Fayyad首相と、彼のボスであるMahmoud Abbas大統領が、今やこの雰囲気を変えたのだ。Hulileh氏はこう言う─ 今や雰囲気は改善されて、パレスチナ経済が「我々に抵抗力と、しっかり振るまう力とを与えた。Fayyad首相は我々にこういったのだ…“君らビジネス・コミュニティには、占領を終わらせることに責任があるわけではない。君らは人々の雇用をはかり、国家の設立に向けて準備を整えておくことに責任があるのだ。それは、君らがグローバルな世界の一部となり、輸出や輸入を行う、ということだ、つまり国家ができた暁に、君らがゴミ捨て場を持つような必要がないように、ということだ。君らは準備しておくことが必要なのだ”…と」

 私は、Fayyad首相が彼のRamallahのオフィスで、上々の機嫌でいるのを見た。エコノミストから政治家に転身した彼は、彼の西岸の選挙区民たちと交ざりあって、より居心地がいいようだった… そこで彼は給水用の井戸や学校などを新設し(…それゆえ、もうそこには二交代制の工場や、使用済汚水の再処理施設はないのだ)静かにその人気を確立していた。イスラエル軍の最長老の人々は私に言った、Fayyadがこの真の取引契約によって新たに設立した治安維持勢力は、イスラエルが西岸の殆どのチェックポイント(検問所)を閉鎖したとしても、治安を維持するに充分なのだ。それゆえ、地域内部の商業活動や投資活動が動き始めたし、そしてガザの中にすら、こちらに移住し始めている人々がいる。「我々は変化のポイント(変曲点)というものから、さほど遠くはないのかもしれない。」とFayyadは私に言った。

 AbbasとFayyadによる国家建設の努力とは、未だにか弱いものだ…それはテクノクラート(技術官僚)の小規模なグループ・チームと、パレスチナのビジネス・エリート、そして新設された職業的治安部隊が担当しているものだ。このチームがより一層強くなれば、彼らはより一層の挑戦をおこない、また西岸にいるFatahの古参の幹部たちからの挑戦も受けるだろう…ガザにいるハマス勢力からの挑戦も勿論のこととして。しかしこれは、二国家併立主義における解決策として唯一残る希望であり、それゆえこれは、静かに支持を受ける必要がある。

 Obama大統領が7月6日にイスラエルのBibi Netanyahu首相に会見する際にできる最も重要なことは、彼を小突いて…西岸地域の主要なパレスチナの都市において徐々にパレスチナ自治政府へと権力の移譲を行わせること─そして、それによりFayyadが彼の人々に対しても…その言葉どおりに彼が独立国家を作りつつあり、それは"占領の永久性を受け容れるためにやっているわけではない" のだと示せるようにすること…、それによってイスラエルも、パレスチナの新治安維持勢力というものが本当に、イスラエル軍による夜間の家宅捜索(急襲)などに頼らずに平和を維持できるかどうかも検証できるようにすることだ。Fayyadism(ファイヤドの思想)を強化するために、これ以上の方策はない。

 しかし私は、Fayyadism がアラブ人とイスラエル人にとってどの程度、居心地の悪いものかをみても驚愕を覚える。パレスチナ人は永遠の犠牲者だ、という考えに魅せられている(その思想に恋愛感情を持つ)、こうしたアラブ人たち…パレスチナとアラブの尊厳を回復する為の英雄的な「武装闘争」に永久に関与する彼らにとって…Fayyadの方法論的な国家設立というのは、オーセンティック(正統的)な考えではない。アラブ人たちのなかには…恥さらしなことに、この考えを中傷する者たちもいる、そして唯一、アラブ首長国連邦(UAE)だけがこれに財政的な援助を申し出ているのだ。

 そして右派のイスラエル人たち…特に、現状を変えるために話をするに足る相手としての責任あるパレスチナ人の組織は存在しない、というような考えを愛している、西岸の入植者たち…にとっては、Fayyadの思想というものは真の脅威なのだ。イスラエルの日刊紙、Haaretz のコラムニストAkiva Eldarは先日、こうしたグループを完璧に描写していた─ 彼らがいかに、アラブ人たちに"No” を言わせることを断念しないか、あるいは、詩人のConstantine Cavafyが書いた‘Waiting for the Barbarians’のなかから引用した、「そしていま野蛮人たちの存在なしに、何が我々に起きようとしているというのか?/彼ら…彼らという人々の存在、それ自体が解決の一つなのに」…などという言葉のように。
http://www.nytimes.com/2010/06/30/opinion/30friedman.html
*写真上:Salem Fayyad首相 写真右:P.S.E.(パレスチナ証券取引所)の狭い一室に集うトレーダーたち
*Al Quds:エルサレムのアラビア語名
 al-Quds Sharif : "The Holy Sanctuary"、Yiddish語でYərusholáyəm:イスラエルの首都。東エルサレム地域とその住民を含む

Sunday, July 4, 2010

アフガニスタンに、"掘削の同盟国”を呼べ /Bring on the Coalition of the Digging-Why are we so focused on the problems Afghanistan's vast mineral deposits could bring?


"掘削の同盟国”を呼ぶがいい!

アフガニスタンの巨大な埋蔵資源のもたらす問題に、なぜそんなにこだわるのか?
By クリストファー・ヒッチンズ (6/21, Slate.com)


 アフガニスタンのもつ潜在的な鉱物資源についてのあっと息を呑むようなニュースは、これまで2006年と07年のシステマチックな航空調査によって把握され、そして確認された─しかしそれは、同国の悲惨さをより増幅させる力にもなりうるため、いまや、控えめに語られ始めている。鉄・銅・コバルト・金・リチウム(ラップトップPC電池の主要材料)の鉱石の膨大な埋蔵量は、タリバンとその同盟者たちにこの国を再び掌握させ、そればかりか、彼らをさらにリッチにしてしまう可能性も強めるのだ。またそれは、同国のそれ以外の敵、つまり戦争領主たちや、寄生的なオリガルキー独裁者など…周辺諸国に散らばり、その国がどんな政府を持とうが比較的関心の薄い者たち…にも、勢力拡大へのインセンティブをも与えかねない。もちろん、アフガニスタンの鉱業大臣がすでに3千万ドルの賄賂を受け取って、莫大な銅鉱石の採取権を中国(その資源帝国主義的傾向は、北朝鮮からダルフールに至る恥辱だ)に渡そうとしていたとして、米国の圧力により解任されたのはつい最近のことだ。

 資源が豊富であるがゆえに、国が貧しくなった、というのは、古いストーリーだ。コンゴという国は、19世紀にベルギーの王族の個人資産として掌握されて以来の、そのスキャンダラスな実例だ。そして、資源の搾取による略奪行為に晒された国のリストに加えられるべき国々とは、ハイチ、アンゴラ、インド、そして(公平にいって)中国がある。アフガニスタンには、社会資本(インフラ)やプロフェッショナルな市民サービスがなく、採取産業の伝統もなく、そしてその広く分散した行政県や地方の間で、資源を分かち合うというメカニズムもない。カイバル峠の向こうのKlondike(*)こそが、この国が必要としているものだ。 (*Klondike Gold Rush: 19世紀カナダのKlondike川沿岸のゴールド・ラッシュと、それによりもたらされた移民のラッシュ)

 それでもなお、最低でも兆ドル単位の規模の国の天然資源の宝が、ほとんどGDPの脈動すらもないようなこの国に存在している。NATOの各国政府…ドイツからカナダ、英国から米国に至るまで、鉱物資源の掘削に豊富な経験をもつ国々…はこの国の経済に資金援助をする以外には、殆どやるべき仕事すらもたないが─ それらの各国はしばしば怒り(反発)を招く行為、つまりアフガニスタンのその他の唯一の既存の資源であるアヘンという資源の開発を「禁止する」ために、時間を浪費することもある。─そのような、地球をも動かす掘削の大国たちの同盟ですら、最終的には…その再建事業が既に国連の管轄化にあるこの国では…真に建設的な意義ある事業を見つけることもできないのだろうか?アフガンの議会や政府には資源管理の経験がないことは事実だが、しかしその議会と報道メディア、そして同盟諸国のNGOたちをプッシュして、それが中国がよく好んでやるような暴利行為ではないこと、そしてアフガンの人々がその主な利益の享受者であるということを、保証させることが可能なはずだ。これは余りにも、見逃すべからざる機会だ。それはまた、タリバンが入札する手に収めさせるには、余りにも重要すぎる機会のようにもみえる。

 イラクの膨大な石油資源の新たな発見とも同様、こうした埋蔵資源が、その地域とその民族にどのように分配されるのか、について知ることは重要なことだ。この地域には多くの、成功した、そしてよく組織化されたアフガニスタン人のグループ…たとえばタジク人や、ハザラ人などがいるのだが、彼らはタリバンを真に憎んでおり、そして彼らは彼らの発展する機会、彼らの地域を豊かにしその人々の力を強化する機会にはすぐに飛びつく姿勢にある。そこにはまた、多くのパシュトゥン人がいるが、彼らはタリバンをパキスタンによる植民地化の影のエージェントだとみなしており、それは実際に、真実だ。威厳のある、そして経済的に強固なアフガニスタンというものはまた、優れた能力を持ちながらも失業しているアフガニスタンの膨大な数のプロフェッショナルな人材たちに対しても、巨大なアピール要素を持っている─彼らの多くは、何十年にもわたった戦争と野蛮な時代の後に、故郷に帰国してきたのだ。

 また、この新たな調査結果が発表された数日後に、アフガニスタンの新しい鉱業大臣、Wahidullah Shahraniが、彼の対抗相手であるインドのB.K. Handiqueに招待状を出した、ということは勇気づけられる事実だ。インドはすでに、Hyderabadでアフガンの地理学者たちを訓練し、アフガンの広範なインフラ建設のプロジェクトに対して、資金を援助している; この両国の地理的調査における密接な連携は、よい結果のみをもたらすだろう。私がこれまで常に指摘してきたように、インドは我々の到着する以前からタリバンやアル・カイダと戦ってきたし、我々がアフガンから撤退するというような臆病な決定をした場合にも、その後も戦い続けることだろう。インドはまた、巨大で、繁栄した、世俗的で、多民族的な、そして近代的軍備を持つ民主主義国家であり…この地域における米国の天然の同盟国(natural ally)─つねに変幻自在な存在であるパキスタン人たちに対抗する勢力としての─であり、そして中国の野望に対抗するための天然の重し(natural counterweight)でもある。同国はさらに、名声ある鉱山業セクターをもっている。アフガニスタンの鉱山資源の計画的な開発は、こうした同盟関係を深化させ、発展させるための殆ど理想的な機会を与えることだろう。

 もちろん、この発見がもたらすいかなる利益も、明白にそれが経験されるまでには時間を要するだろう。しかしそれは、そうした間にもめったにない希望の種を与え続け、またしばしば失敗に終わっているように見える事業への取り組みにむかう方向性の感覚も与えるだろう。西欧に対して疑念を抱いているような、シリアスなアフガニスタン人たちは…一人でも、彼の国の先祖の遺産(歴史的遺産)が、中世的な<腕を切断したり女性を盲目にしたりする>ギャングたちのもとに預けられることを望んでいるだろうか?また、シリアスな非・アフガン人というものはひとりでも…この国が、単にローカルな神権主義者や外国からきたジハード主義者たちからだけでなく、その国を苦しめ悩ませ、発展を阻害してきた何世紀もの貧困や停滞から解放されないことを望むだろうか?オバマ大統領はこれに関して米国議会と国連とにアピールする、素晴らしい、道理に適った地政学的なスピーチを行えるに違いない。私には、彼がこれを決意するかどうかは分からない。しかし平和主義者たちも、彼らの新たなスローガンを掲げることができる、"No Blood for Lithium."(リチウムのために血を流すなかれ”、といったスローガンを。
http://www.slate.com/id/2257659/
*写真:アフガニスタンのPanjshir Valleyのエメラルド鉱山に立つ鉱夫

*6月に来日したカルザイ大統領は、米国に次ぐアフガンへの第2の援助国、日本の企業に鉱物資源開発を任せたいと表明。
 日本問題研究所のフォーラムに出席し、三菱グループなどと会談して帰国したという。商談は成立しなかったとも言われる?…
…3兆ドルと見積もられる資源開発のうち既に多額の契約を、鉄道建設を条件に中国政府系企業が獲得しているとも。

http://www.english.rfi.fr/asia-pacific/20100618-afghan-president-offers-mineral-resources-japan
Afghan President offers mineral resources to Japan


*欧米きっての人気コラムニスト、クリストファー・ヒッチンズは6月末、食道ガンの治療を宣言、新刊の自伝"Hitch-22"の全米販促ツアーを中止する旨を発表し、ファンにショックを与えました。ヒッチンズの病状の回復が待たれます。




let us pray for Mr. Hitchens' healing, overcoming his serious illness and regaining the health